【21Questions】Rin音に聞いた21の質問「口で吐く言葉だけではなく、指先にも愛を込めてほしい」

「2018 天神U20MC battle Round1」での優勝を皮切りに数々のラップバトルを総ナメし、脚光を浴びたRin音。そんな彼が2020年2月にリリースしたメロウ・ラップ「snow jam」は瞬く間にTikTokを中心に拡散され、リアリティに溢れる切ない歌詞が若者の心を捉えている。今回は、現代社会のドリームを掴み取った彼のこれまでとこれからを問う21の質問にお答え頂いた。何よりも言葉を重んじる若干21歳のラッパー、Rin音の歴史に迫る。

Q1:普段は何をされていますか?

主に、ゲームですね(笑)。昔からゲームが好きで、1日1回は必ずプレイしています。もちろんNintendo Switchもしますし、PlayStationも持っています。バトルロワイヤル系からサッカーゲームまで、ゲームの種類も色々。寝ている時以外はスマホを触っているか、ゲームをしているかのどちらかです。

Q2:Rin音さんにとってゲームの魅力とは?

ゲームの世界観とやっていることって、すごく面白いなって思うんです。例えば、映画には選択肢がないけど、ゲームには選択肢がある。最近は選択肢が選べる作品もありますけど、やっぱりゲームの世界に自分が入り込んで操作している感じがめちゃくちゃ好きなんです。サッカーだと選手になった気にもなれるし、夢がありますよね。

Q3:ちなみに今までご自身の楽曲にゲームの世界観を取り入れたことはありますか?

『ネオネットヤンキー』という楽曲を作ったんですが、ゲームのドット感というか、昔のドラクエや、ゲームボーイが全盛期だった頃の画質の荒さを楽曲の中で表現しました。昔流行った洋服や、“写ルンです”が再び流行るのと同じで、魅力的な昔のゲームを現代風にアレンジしてもう一度世に出すことに魅力を感じますね。

Q4:Rin音さんの楽曲制作のスタンスを教えてください!

「なんかつくりたいな〜」って思った時に集中して2時間くらいで作ります。「今だ!」みたいなマインドなんですかね…(笑)。トラックは前もって聴いてはいるんですけど、歌詞は書けそうだなと思った時に書く感じですね。

Q5:ラップバトルをきっかけにHIPHOPにのめり込んだとお伺いしました。それ以前はどんな楽曲を聴いていましたか?

流行りの楽曲を一通り聴いている感じでしたね。僕が中学生の頃に流行ったGReeeeNさんとか、湘南乃風さんとか。“歌ってみた動画”もよく見ていました。

Q6:Rin音さんの書く歌詞はストーリー性があり、1つの物語のような印象を受けるのですが、何か影響を受けた映画や小説などの作品はあるのでしょうか?

これに影響を受けたというより、中学の時に恋愛映画を初めて観て、衝撃を受けたことがあります。恋愛映画ってどんな人でも共感しやすいじゃないですか。逆にHIPHOPの世界は、どこかアングラな文化があるから一般の方にはどうしても良さが伝わりづらい。恋愛は多くの人が経験していることだから、映画を観てもこういうことありそうだな、素敵だなって感じると思うんです。僕自身も普通の生活を送ってきたので、自分の歌詞にはそういう共感やリアルな経験を歌詞に活かしています。

Q7:ありのままのリアルを投影した結果なんですね。逆に聴いてくださる方の体験や、社会的な流れを楽曲にインプットすることはありますか?

僕のリリックは日記みたいなもので、ただその時に思ったことを書いています。例えばニュースを見て、悲しいなと思ったことや感想を綴っているというか。自分が見たものを一度俯瞰して、みんながわかるように第3者の目でリリックを書いている感じです。断言することはあまりしたくなくて、聴く人には歌詞の意図を考えて、自分で理由づけをしてほしいと思っています。

――解釈をあえて委ねるんですね。

そうですね。一般的なHIPHOPのリリックは、俺はこう思う!みたいにしっかりと主張されていますけど、そうすると聴く人の考える余地がなくなってしまうので、「こうじゃない?こういう考え方もあるんじゃない?」ということを提示す出来るようなリリックにしています。

「snow jam」 Official Music Video

Q8:ラップバトルから音楽の世界に入り、「snow jam」をはじめとする共感性を呼ぶ歌詞で反響を呼んだRin音さんですが、個人的に共感性と主張を戦わせるラップバトルにはギャップがあるような気がします。その辺りはいかがでしょうか?

楽曲自体とラップバトルは分けて考えています。僕はラップバトルの言い争いよりも、ラップ技術の比べ合いに惹かれたので、基本的には冷静に戦おうと思っていました。熱い言い争いはもちろん面白いし、何回戦か勝ち上がると熱量も同時に上がってくるので、そういうのも楽しかったりするんですけどね。

Q9:今も福岡で暮らしているとのことですが、福岡のストリートや音楽シーンはRin音さんからみて如何ですか?

僕の場合「U-20 MC BATTLE」で優勝してから、有名なSTAND-BOP大きなライブにも呼んでもらえるようになったんですが、オーナーのRYOTAさんによくしてもらったり、みんな色々なジャンルを受け入れて、良い感じに高め合う感じでした。トラップ系が流行っていたり、ブーンバップをやっている人がいたり、良い意味でジャンルが混在していますね。

Q10:因みに、東京のストリートの印象は?

東京はあまり分からないんですが、それこそジャンルレスって感じがします。でもジャンル毎にコミュニティーが出来ている印象なので、そういう面で比べると、福岡の方が色々なジャンルがイベントで関わっているかなと思います。

――福岡はコミュニティー同士に壁が無く、みんなで盛り上がっている印象ですね。

そうなんですよ。それこそ「RUDE SPECIALS」っていうイベントで、舐達麻さん、AWICHさん、 JIN DOGGさん、PEAVISさんたちの前座を、自分とトラップ系のJUCTION THREEさんが務めたんですけど、福岡の人たちは若い子を育ててくれるというか、貴重な体験をさせてくれる寛大さがありますね。大きいイベントに出るためのオーディションに受かったら、1000人キャパのライブに出演できたり、憧れの人と同じステージに立てたり出来るんです。僕も、特に舐達麻さんと共演できた時は、夢を感じましたね。

Q11:今後東京に進出したいと思いますか?

全然思わないです(笑)。シンプルに人が多いのが苦手なので…。私生活の方が大事です(笑)!

Q12:フロウ・リリック・メロディー、Rin音さんが思う自分の強みはどこにあると思いますか?

あまり人の曲を分析しないので、他のアーティストと比較できないんですが、一番はやっぱりリリックですかね。言葉遣いは普段から気をつけているんですけど、その上でリリックを書くときも、この言い方はどう伝わるかな?とかは結構気にしています。僕のリリックは色々な想像ができるし、想像をしてもらいたいと思っている分、マイナスな方向に受け取られることもあるので、そういう可能性のある要素は消すようにしています。

Q13:それはさっきおっしゃっていたように、一度俯瞰してみるという事でしょうか?

そうです。そして、基本的に肯定したいんです。よく自分を愛せない人は、他人も愛せないって言いますけど、他人のことはもちろん、まずは自分を肯定したいんです。自分を肯定するためのリリックが回り回って誰かを肯定するのは、自分とその誰かが似ているからだし、何だかんだ不安に思う要素には共通点があるじゃないですか。だからこそ、何かを否定することはしたくないし、断言しないようにしています。

Q14:幼少期はどんな子供でしたか?

親の転勤で特に保育園の頃は引っ越しが多かったんですけど、一度引っ越した先で人間関係が上手くいかなかったことがあって。その頃から人の目を気にするようになりましたね。人の機微が気になって、良い意味でも悪い意味でも人に対して深く立ち入らないようになりました。相手のタイプを分析した上で、こういう言い方はしない方がいいなって言葉遣いも気にして、正直最初は「めんどくせ〜」って思ってたんですけど(笑)、今はその頃の経験がリリックづくりにも活かされているし、良かったのかなって。

――言葉を大事にするRin音さんのスタイルは、そういった経験が背景にあるんですね。

僕自身も否定されるのは嫌いなんで。でも否定してくる人はしてくる人なりの理由があるじゃないですか。一概に誰かが悪いとは言えない。だからこそ嫌いなものでも好きなものでも優しくすべきだなと思います。ただ優しさの形が行動として、どう現れるかは自分次第。例えば嫌いな人には関わらない、触れない、“嫌い”っていう言葉を言わないことも優しさだと思うんですよ。反対に、好きなものや人にはどこが好きかを伝える。それができていない人が多いから、もったいないなと思う気持ちを楽曲に込めています。僕が自分に対して甘いのもあるかもしれないです(笑)。

Q15:少し被ってしまうかもしれないんですが、活動を通して変えたくないことや、伝えたいメッセージはありますか?

僕の音楽を聴く人たちにも、口で吐く言葉だけではなく、指先にも愛を込めてほしいと伝えていきたいですね。自分がインターネットに触れている上でそれは意識していますし、間違えることもあると思うんですけど、その間違いに気づくことが大切。自分が一番大切にしたいことは何か、立ち止まって考えてる事のきっかけを伝えていきたいです。

Q16:これまで出演してきた中で、一番印象的だったステージを教えてください!

やっぱり自分のリリースイベントですかね。福岡のKieth Flackでやらせていただいたんですが、「すごいな俺!」って感動しました(笑)。普段は「あ〜楽しかった」でライブも終わるんですけど、その時は「音楽してなかったらどうなってたんだろう」とか、「何がこれからできるんだろう」とか色々考えちゃいました。実は1stEP「film drip」をリリースした時点で音楽をやめようと思っていたので…。

――そうだったんですか!?

もともと、大学の思い出に一作品発表して終わろうと思っていたんですけど、意外と好評で。その後に、ずっと夢だったRhymeTubeさんのトラックで曲を作れるようになって、それが「snow jam」でした。でも大学3年生の頃だったんで、就職なのかどうするか進路に悩む時期でもありましたね。結果やって良かったです。

Q17:音楽以外の選択肢があった時には、何か他にやりたいことがあったんですか?

特にやりたいことがあったわけじゃないんですよ。でも、ちょっとラッパーをやっているだけの大学生だったので。ずっと音楽をやっていきたい気持ちはあったんですけど、大学に行かせてもらっている反面、そんなことしていいのかなっていう気持ちも。でも、就活をする気にはなれなくて、まあ周りの友達もやっていなかったんですけど(笑)。

Q18:それで「snow jam」が伸びて、音楽活動が進んで行ったと。タイミングが凄いですよね。今はスマホを開いたら、自分の曲が流れている状況じゃないですか…。

それこそ、この間ある古着屋さんに行ったら自分の曲が流れてて、秒でお店を出ました(笑)。「服なんか、落ち着いて見れん見れん」と思って(笑)!

――ある種のネットドリームですよね。

そうですね。最初の頃YouTubeで出していた曲なんてスマホで録音していましたし。だから、音楽をやりたい人はスマホでも何でもやってみれば良いと思います。上手くいけば誰かの目に止まるし、たとえ上手くいかなくても自分の思い出に残る。僕も最初は思い出づくりがきっかけだったから、音楽も人生もどうなるかわからないですよね。

Q19:今後の目標や、展望があれば教えてください!

つい最近大阪城ホールで開催された「THE BONDS 2020」っていうイベントで歌ったんですけど、めちゃくちゃ気持ちよかったんですよ。だからいつかあの場所を自分で埋めれるようになりたいです。それと福岡のライブハウス DRUM LOGOSも自分一人でも埋められるようになりたいですね。

Q20:今後の楽曲も楽しみですね。挑戦したい楽曲やジャンルはありますか?

同じ曲ばかりだと自分が飽きちゃうので、模索して色々なジャンルの曲をつくりたいですね。

Summer Film’s feat. クボタカイ, 空音

Q21:1stEPでは同年代の空音さんやクボタカイさんとfeat.されていましたが、今後コラボしたいアーティストはいますか?

もちろん憧れの5lackさんや、ずっと聴いている電波少女さんとも一緒にできたらいいなと思います。ただ、僕自身も磨かないといけないところも多くて、まだハードルが高いですかね(笑)。

――でもRin音さんは感性が豊かで、柔軟に他のアーティストに対応できるのが強みですよね。空音さんやクボタカイさんとfeat.した楽曲を聴かせていただいた時に、それぞれのパーツが効いているなと思いました。

ありがとうございます。みんなそれぞれ個性があって、同じ方向性に向かっていても違う色が出るのは人間味があって良いですよね。それが上手い具合にまとまったので、良い曲になりました。今後も多くの方とコラボしていきたいです!

Photographer:Maho Korogi
Interview:Ayaka Yoshimura
Edit&Text:苫とり子(tomatorico)

【Rin音(リンネ)】

福岡県宗像市出身、1998年生まれのラッパー。18歳からラッパーとしてのキャリアをスタートさせ、数々のMCバトルを総ナメする実力派。2018天神U20MC battle Round1 優勝、KMB vol.7 準優勝、チュリトリスワールド優勝などMC バトルで頭角を現す。クボタカイ、空音、kojikoji などが歌うCHILL OUT 系メロウラップが若者を中心に盛り上がりを見せている中、2019 年7 月に待望の1stEP「film drip」を配信限定でリリースしHIPHOP シーンで新世代のラッパーとして注目を浴びる。YouTube のチャンネル登録者数は10万人を超え総再生回数は1800 万回を達成、2 月にリリースした「snow jam」ではSpotify 国内バイラルランキング1 位、Apple Music総合 ランキング の9 位にまで上昇するなど、各ランキングでも軒並みランクイン。6月10日には1stアルバム「swipe sheep」をリリース。多種多様な日本語を操りリリックが醸し出すエモーショナルな雰囲気は若者を中心に絶大な人気を誇っている。その活躍は福岡に留まらず、全国的に注目を浴びており、県外でのLIVE イベントでもその才能を開花させた。なぜかスマホの充電が下手で、常にモバイルバッテリーを持ち歩いている。

Twitter:@Rinne09010
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