POSTED ON 2018年12月4日 1 MINUTE READ BY
1冊のZINEとシールからスタートし、TOKYO ART BOOK FAIRにて一躍有名になった『チーム未完成』。アーティストのMV制作から、イベント司会まで活動を広げる彼女たちだが、未だその正体は謎に包まれたままである。そこで今回、チーム未完成誕生の秘密からパンが起用されるきっかけまで、赤裸々に語ってもらった。
―まず始めに、皆さんの自己紹介をお願いします。
しをりん:チーム未完成の名ばかりのリーダーを務めています、しをりんです。担当カラーは赤です。デザインとかやってます。
ゆりしー:チーム未完成の文章担当ということになっています。ゆりしーです。担当カラーは青です。
ぴっかぱいせん:ぴっかぱいせん(以下、ぱいせん)です。担当カラーは黄色です。写真を撮っています。
げっちゃん:げっちゃん(Get Chance)です。担当カラーは紫で、役割は応援、ガヤです。
―チーム未完成をよく知らない人のために、どんな集団でどんな活動を行っているのか教えてもらっても良いですか?
しをりん:それが自分たちでも説明するのが難しくて、逆にどういう集団だと思ってますか?
ゆりしー:私たちのことをどこで見つけてくれたんですか?
―最初に知ったのは2、3年前のTABF(THE TOKYO ART BOOK FAIR)でしたね。パンのステッカーが人気で、ブースも賑わっていたのを覚えています。
しをりん:現場で私たちのブースを見てもらったっていう感じですか?
ぴっかぱいせん:シール売っている人たちがいるなみたいな?
―そんな感じでしたね。
ぴっかぱいせん:今回はどうしてインタビューをお願いして下さったんですか?
―F-MAGAZINEはミレニアル世代に影響力のあるクリエイターを積極的に取材していて、普段はデザイナーさんやフォトグラファーさん、アーティストさんなど中心に取材しています。ただ、クリエイターの中でももっと幅を広げた方が面白いんじゃないかと思って、今回お声がけさせていただきました。チーム未完成って正直何をしている方々かよく分からないし、他のクリエイターとは違った魅力が見えてくるのではないかなと思いまして。
ぴっかぱいせん:ありがとうございます。特殊枠で。
しをりん:謎枠で。
ゆりしー:自分たちでも謎です。
しをりん:私たちは自分たちのことを、“クリエイターごっこ集団”とか“おままごと”みたいに言っているんですけど、本当にその通りで。ガチでアーティストをやられている方とは、スタンスもやっていることも随分違う気がします。
ゆりしー:自分達が面白いと思えることを、みんなで楽しくやるって感じです。
ぴっかぱいせん:目的があるわけではなく、基本は遊んでいるって感じです。
しをりん:人生をちょっと楽しくするためのものみたいな。
https://www.instagram.com/p/BZ_VGwbgzhP/?utm_source=ig_embed
チーム未完成の誕生
―最初から、こんなに逆に聞かれることは初めてです(笑) では、早速取材に入らせて下さい。最初に集まって、活動しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
ゆりしー:最初はしをりんと2人で始めました。
しをりん:元々友達なんですけど、当時お互い転職したばかりで、時間にちょっと余裕ができたけど創造力は発揮できない、みたいな仕事をしていて。
ゆりしー:そんな中、完全な思いつきだったんですけど、ある日面白そうなアプリのアイデアが思い浮かんで。
ぴっかぱいせん:初めて聞いたんだけど?
しをりん:アプリって何? 言われてない(笑)
ゆりしー:いや、言ったって(笑) どんなアプリかは自分でも忘れちゃったんですけど、そのアイデアをしをりんにLINEしたんですよね。そうしたら、「私も何かやりたいと思ってた」って返信が来て、表参道のスタバで打ち合わせして。
しをりん:アプリの?
ゆりしー:結局話し始めてすぐにアプリっていうのはどこかにいっちゃって、「でも何かやりたいよね」みたいな話に変わってた(笑) そこで、ケータリングをやろうって行きついて。
―チーム未完成の最初の活動は、ケータリングだったのですね。
しをりん:昔から音楽が好きで、ライブやイベントによく行くんですけど、そういうところで出るごはんってカレーとかが多いけど、ドリンクを手に持っていたら、本当はライブも見たいし踊りたいのにわざわざ座らないと食べられなかったり。そこで、パンなら片手で食べられるから良いよねってなって。あと最初は、お団子とかも考えたよね。串に刺さっているものが良いんじゃないかとか。
ゆりしー:紙コップに入っていたら良いかもとか、色々考えてました。 そんな中でパンに辿りついて。お腹にたまるし、写真で映えるものも作りやすいかなって。
ぴっかぱいせん:インスタの投稿も、最初の数枚は当時のパン写真が残っています。
げっちゃん:この時から食パンを使ってたんだよね?
しをりん:そうだね。当時から超熟一筋でやらせてもらってます。
https://www.instagram.com/p/qolvmEk8OY/
ZINE『パン』が出来るまで
―チーム未完成の『パン』誕生の秘密が明らかになりましたね。ですが、最初の“食べるためのパン”から、“写真を撮ったりグッズを作るためのパン”に変わったのは何故でしょうか?
しをりん:それで早速、2人で試作&試食会をやったんですよ。レシピを何種類も考えて、1枚1枚作って。
ゆりしー:試食してたら、どんどんお腹いっぱいになっちゃって(笑)
しをりん:超熟の6枚切りを使っていたんですけど、例えば6種類作ったとして、2人で半分に分けても全部で3枚分食べなきゃいけないって、なかなかじゃないですか。
ゆりしー:しかも、上に具とかが沢山乗ってるし。
しをりん:それでパンのケータリングは違うかもねって。
ぴっかぱいせん:それとは別に当時、私がTHE TOKYO ART BOOK FAIR(以下TABF)に出展することが決まっていて。しをりんとは元々友達だったんですけど、急にパンのレシピを『#チーム未完成』とかってタグ付けしてインスタに上げているのを見て、なんか面白そうなことやっているなと思って、「一緒にTABFに出さない?」って声をかけたんですよね。
しをりん:最初はぱいせんがメンバーっていう感じもなくて、私たちが作ったものを撮って下さいってお願いだけしてて。
ぴっかぱいせん:それで、3人で打ち合わせをしたんですよね。そうしたら、パンを食べることはどこかにいっちゃって、そこにお酒も入ったせいか「パンが回転寿司のお皿に乗って回ってきたら?」、「パンでプリクラ撮りたい」みたいなパン大喜利が始まって。
しをりん:そうそう。パンのもしもネタが止まらなくて。ぱいせんがちょうどカメラを持ってきてくれてたから、もう撮っちゃおう!って酔った勢いで街に繰り出して。コンビニで超熟を買って。
ゆりしー:原宿の街に連れて行ったんだよね。
―そんなことがきっかけで、ぴっかぱいせんさんと最初のZINEを作ったんですね。
ぴっかぱいせん:今思えば、人生が狂い始めた日だった(笑) パンを投げてみたら、見たことのない写真が撮れちゃって。みんなで「かっこいい!」って連呼しながら夢中で撮影してました。あとはパンに1万字インタビューしたりとか。
しをりん:そんな感じの勢いまかせのZINE『パン』が出来て、いざTABFに出してみたら意外と反応が良くて。
ゆりしー:完売しちゃったんです。この1冊とパンって書いたステッカーだけで。
ぴっかぱいせん:それで、取材とかも声が掛かるようになって、じゃあ各々のメンバー名を付けよう、とか色々決め始めて。
ゆりしー:最初に取材してもらった時、会社員だから顔出しできなくて。じゃあお面を作らなきゃって、その後イラストレーターのとんぼせんせいに顔を描いて下さいってお願いしたりとか。そうやって流れのままに、必要なことや思いついたことを片っ端から色々やり続けて、今に至った感じです。
ぴっかぱいせん:最初からこれをやるぞって決めて始めたわけではないから、面白そうなことは全部やるみたいな感じ。
しをりん:人生的な話になっちゃうんですけど、チーム未完成をやる前にいた会社は、仕事は楽しかったけど、忙しすぎてこういうことをやる時間がなかったので、転職してなかったらこうはなっていなかったかも。
ゆりしー:私もチーム未完成を始める前は、やたらと陶芸のワークショップとかに行ったりしていて。心が暇だったのかも。
しをりん:ちょうど色々タイミングが良くて、未完成の活動があるおかげで大変な仕事も頑張れたんですよね。息抜き。
謎のメンバーげっちゃん
―そこから、げっちゃんさんが一緒にチーム未完成に加わったのはどうして?
げっちゃん:その冬くらいにしをりんが連れてきた人です(笑)
しをりん:たまたま道で会った人なんですけど、ここに居た方が良いって思ったんです。
ぴっかぱいせん:うちらには「面白い人居るんだよ!」って。
げっちゃん:声をかけられて、「あぁ、入る入る!」って言って。
ぴっかぱいせん:二つ返事で入ってきたんだよね。
―担当は応援とのことですが、具体的にはどんなことを?
げっちゃん:「本当に格好良い写真だね!」とか、「今日もゆりしーの文章、キレてる!」とか、そういうことです。
ゆりしー:褒めてくれる。
げっちゃん:応援ですから。
―げっちゃんさんについて謎に感じていることが、1つあります。名前が何度も変わりましたよね?
げっちゃん:毎年元旦に変わるんです。最初はスナックみつこで、MITSUKO LONDON、みっちゃんインポッシブル、ミツコッコーときて、今年がげっちゃんです。
ぴっかぱいせん:もう5年目なんだね。
しをりん:だから、げっちゃんの名前を考えるのが年末の恒例行事で。
げっちゃん:他のメンバーが勝手に名前をつけてくれるんですけど、来年の名前が不安で不安でしょうがない。
しをりん:問答無用で決めるんで。
げっちゃん:確か一昨年決めた時は、風邪で私が行けなかった忘年会で勝手に決まってて、後から電話で知らされました。
―途中まで、ずっとみつこさんっていう名前がどこかに残っていたのに、今年は何故げっちゃんさんに?
しをりん:去年、急に厚揚げが凄く好きっていうことをカミングアウトして。
げっちゃん:本当に好きなんです、厚揚げのことが。そうしたら、そんなに好きなら、厚揚げの“げ”を取って、げっちゃんで良いじゃんって。
ぴっかぱいせん:Get Chanceだし良いよねって。
しをりん:去年くらいから、縁起の良い名前にしようみたいなブームがあって。
げっちゃん:そうそう。みっちゃんインポッシブルの時に、たまたま嫌なことがいっぱいあったので。だから、縁起の良い名前っていうのはお願いしています(笑) 私たちの活動も、全てが万事こんな感じです。面白ければOK! みたいな。
美白と乾燥には気を付けて
―ここまでチーム未完成という集団がどのように出来てきたのかをお伺いしました。ここからは、活動の主軸になっている“パン”に対するこだわりを教えて下さい。
しをりん:凄いちゃんと聞いていただいて恐縮です(笑) こだわりはパスコの超熟6枚切り一筋。もう絶対です。
―他の食パンではなく、どうして超熟なのでしょう?
ゆりしー:パッケージが格好良い。
しをりん:そうそう。それに美味しい。
ぴっかぱいせん:私も元々超熟派だった。
しをりん:ほんと画になるよね。あとは、写真を撮るときに乾燥させないように気を遣ったりとか。
ゆりしー:乾いてくると霧吹きをかけたりして。
しをりん:あとは、色白なんで汚れが目立つんですよ。
ぴっかぱいせん:美白と乾燥には気をつけて。
―撮影している時は、どんな感じに? 投げたりするんですよね?
ぴっかぱいせん:しをりんが投げて、ゆりしーがキャッチして、私が撮る。げっちゃんは応援。
げっちゃん:私は袋持っていて、「人が通ります」って周りに声かける役割。
ゆりしー:伝統芸能みたいな感じでね。割と上手にキャッチできるから、1、2回で撮影できちゃう。
ぴっかぱいせん:すぐ撮れるよね! この前も、一本になっている超熟を通販で取り寄せて撮影したんですけど、綺麗に撮れました。いつもより重さがあるからキャッチが難しかったけど。
意味とかよりも面白いことの方が大事
―面白そうというのがきっかけで始めたもので、それが思いがけずに反響があったと伺いました。自分たちで思うチーム未完成の魅力って、どんなところでしょう?
ぴっかぱいせん:くだらなさかな?
しをりん:周りから言われたことですけど、同じようなことを思いつく人は他にもいるけど、それを実際にやって、しかもこんなにやり続けてるっていうのは多分珍しい。
ぴっかぱいせん:パンがお金に変わった世界を写したZINEの『パン3』は海外の人にも好評だよね。
しをりん:説明もしやすいし画力がある(笑) シュールなんでしょうね。
ゆりしー:パンって日常的で誰もが知っているものだから、シチュエーション決めて何かをやらせたときに、きっと分かりやすいんじゃないかな。
ぴっかぱいせん:でもデザインも良いよね。
げっちゃん:確かに。ロゴもポップだし! 自画自賛ですけど(笑)
ぴっかぱいせん:あとは出展させてもらうイベントの時に、ブースの前を通りかかる人を私たちはいちいち足止めする癖があるから(笑) 「そこのお姉さん、見ていって!」みたいな。アートイベントで女4人でギャーギャー言っているブースなんて、なかなか無いよね。
しをりん:チーム未完成って書かれた同じ服着てね。
げっちゃん:なんか違和感があるんだろうね。割と大人なのに、この人たち何やっているんだろうみたいな(笑)
ぴっかぱいせん:普段お面もしているし、やっぱり不思議なんだろうね。
―ZINEやグッズ制作を中心に行われているチーム未完成ですが、最近活動の幅を広げられていますよね?
しをりん:最近は、のど自慢大会の司会を頼まれたり、合コンイベントを仕切ってくれって言われたり。今まで一度もやったことがないんですけどね(笑) 声をかけていただいています。
げっちゃん:宴会業だよね。
しをりん:なんでそういうオファーが来るんだろうって依頼してくれた人に聞くと、「なんか楽しそうだから」って。まあ、そもそもラップでLIVEしたり、アートイベントとかでモーニング娘。踊ったり、食パンを投げるDJをやったりもしているので、騒がしくて楽しそうみたいな感じで、皆さんは捉えてくれているのかもしれません。
ぴっかぱいせん:チーム未完成呼べば、何かしら料理してくれそうみたいなことが多い気がします。本物を求める人は興味持たないと思うけど、面白みを求めてたり、とりあえず何かやってみたい!みたいな時は声かけやすいのかも。
チーム未完成の目指す先は
―益々活動の幅を広げられているチーム未完成ですが、皆さんが今後目指すものを教えて下さい。
ゆりしー:このまま楽しく遊び続けられたら良いですね。何かやりたいことある?
げっちゃん:もっと海外に行きたい。
ぴっかぱいせん:これまで韓国とシンガポールのART BOOK FAIRで出展したことがあるんですけど、それは自分達で勝手に応募して、自分達のお金で行っているだけだったので、いつか呼ばれて行きたいですね。
ゆりしー:慰安旅行みたいな感覚で参加しています。
げっちゃん:優しいんだ、自分たちに。すぐ甘やかすからね。
しをりん:最近思ったのは、なんかの間違いで海外のオークションにかけられていたら面白いなって。うっかり高尚な美術館とかで私たちのものが飾られちゃったりとか。
ぴっかぱいせん:勘違いされて、凄い待遇も1回受けてみたいな。
げっちゃん:「ホテル広っ!」みたいなね。
ゆりしー:空港でパネルを持ったファンが待ってるとかね。
しをりん・ゆりしー・ぴっかぱいせん:よし。目標は「他人のお金で海外に行く!」で。
げっちゃん:聞こえが悪いな(笑) 是非お呼ばれしてみたいので、皆さんよろしくお願いします!
強い目的やこだわりを持って行なってきたわけではないけれど、ただひた向きに面白さを追いかけてきたチーム未完成。他のクリエイターにはないその魅力が、言葉や価値観の壁を越えて多くの人に支持されてきた。さらに活躍の場を広げる彼女たちは、次にどんなエンターテイメントを私たちに届けてくれるのであろうか。
チーム未完成(ちーむ・みかんせい)
しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、
Instagram:@mi_kan_sei