過去にアレキサンダー・ワンも受賞し、デザイナーの登竜門と呼ばれるアメリカの若手デザイナーに与えられる賞、CFDAの今年の優勝者に輝いたPyer Moss(パイアー ・モス)。 
 
リーボックとのコラボや、ストリート色の強いインパクトのあるデザインは海外で既に話題に。 
 
今後確実にヒットすると噂される注目ブランド、パイアー モスについて知っておくべきこととは? 
 

パイアー モスというブランドが出来るまで 
 

パイアー モスは先日、CFDA / VOGUE Fashion Fundの受賞者として、見事グランプリに輝いた。 
 
同コンテストは2003年に創立され、今年で15周年を迎えるアメリカの新興デザイナーへ送られる賞で、優勝したグランプリへの賞金は40万ドルと、名誉ある大きな賞だ。 
 
過去の受賞者には、Proenza Schouler(プロエンザ スクーラー)や、Alexander Wang(アレキサンダー ワン)など、有名ファッションデザイナーも含まれている。 
 
文字通り、まさに登竜門とも言えるこの賞のグランプリに輝くことは、デザイナーとして成功する大きなチャンスが約束されているのだ。 
 
そんな期待のブランドのデザイナーを務めるのは、Kerby Jean-Raymond(カービー・ジーン・レイモンド)。 
 
ニューヨーク・ブルックリン生まれのジーン・レイモンドは、マンハッタンにあるThe High School of Fashion Industriesに通い、ファッションを学んだ。 
 
在学中、Kay Unger(ケイ・アンガー)の元で見習いを経て、後にはMarchesa(マルケッサ)の創立者であるジョージナとケレンと共に働き、また同様に、Theory(セオリー)とMarc Jacobs(マーク ジェイコブス)にてフリーランサーとして働いた経歴を持つ。 
 
順調にキャリアを積んだ後の2013年に、自身のブランドであるパイアー モスをローンチさせたのだ。 
 


 

ラグジュアリー・ストリートウエアの誕生 

 
パイアー モスのコレクションを一言で表現すると、ラグジュアリーなストリートウエアだ。 
 
今回のコレクションでは、デザイナーのジーン・レイモンドのルーツでもあるアメリカン・ブラックカルチャーに敬意を表したものに、確固としたラグジュアリーストリートが上手く組み合わさり、表現されている。 
 
カラーブロックとパリッとしたテーラリングが共通したテーマにあり、スローガンTシャツや、星条旗のロングスカートなど、目を引くようなインパクトのあるアイテムが多い。 
 
ステッチがアクセントとなったジャケットとパンツのセットアップや、レッドやイエローなどのカラーレザーのアイテムも、同ブランドのカラーが強く出ているアイテムである。 
 
全体的にストリートの雰囲気を残しながらも、仕立てのよい上品なデザインとシルエットは、まさにブランドの強みであり、バランス良くラグジュアリー・ストリートウエアを完成させている。 
 
また今シーズンFW18-19にて、Reebok(リーボック)とのコラボも果たしており、スローガンTシャツや、トレーナー、スエットパンツなどのアパレルの他、キャップやソックス、スニーカーなども展開。 
 
この話題のコラボは、発売直後から既に完売しているアイテムも続出しているほどの人気だ。 
 
また先日、モデルのジジ・ハディッドが東京へ来日した際、着用していたことでも話題となった。
 


 

ファッションを通じた人種差別へのメッセージ 

 
デザイナーのジーン・レイモンドはアメリカで生まれ育った黒人であり、アメリカ人でありながら母親のルーツにはハイチ共和国が含まれている。 
 
人種差別への活動を行っていることでも知られる同ブランドは、2016年 S/Sのキャットウォークショーにて、アメリカの人種差別的な警察の残虐行為に関するドキュメンタリーをスクリーンに写し、センセーショナルな話題を呼んだ。 
 
その後、2015年にサウスカロライナ州のチャールストンで白人至上主義の若者に殺害された9人のアフリカ系アメリカ人たちへの追悼の意味を込め、「They Have Names」のスローガンを表したTシャツを作成。 
 
また、先日発表された2019年 S/Sのキャットウォークショーでは、「Stop calling 911 on the culture」や「SEE US NOW? 」と書かれたスローガンの入ったアイテムを発表し、政治的な強いメッセージがあると話題になった。 
 
黒人の人種差別への反発と共に、現代のアメリカにおける人種の多様性と、その中での黒人の立ち位置や役割を改めて再定義する行動を取っているのだ。 
 
これにはファッションを超えた、強い普遍的なメッセージが込められていると、メディアだけでなく、多くの人の賞賛を得た。