「着物が好きすぎて勝手に興奮してしまうんです。」着物で通学する青学生なみぽちゅ

「着物が好きすぎて、勝手に興奮してしまうんです。」

そう語ってくれたのは、着物を着て毎日、青山学院大学に通っているという「なみぽちゅ」さんだ。日本の民族衣装でありながら、近年その姿を見ることの少なくなった着物。彼女はそんな着物をもっと身近に感じてもらおうと今日も奮闘する。

インタビューでは彼女の素顔と、彼女を虜にした現代の着物の魅力を伺った。

着物を着ての大学通学

―お名前を教えてください。

なみぽちゅです。

―ご職業は?

大学3年生です。

―着物に関する活動を行っているようですが、具体的にどんなことをされているのでしょうか?

まず、毎日着物を着て大学に通っています。それから、着物の着付けの仕方を紹介するライブ配信や、着物や浴衣に関するイベントの企画もしています。

―着物に興味を持つようになったきっかけは何だったのでしょうか?

もともと、母が着付師だったのもあって、その影響が大きいです。実家にも10着くらい着物があって、小さい頃から初詣には毎年、母に着物を着付けてもらっていました。他人よりも着物が身近にあったのかもしれません。

―では着物に関する活動を積極的に行うようになったのは何がきっかけだったんですか?

今年の初詣が大きな転機でした。今年も同じように母に着物を着付けてもらったのですが、なぜか今年は20年間で一度も感じたことのない興奮を味わいまして。運命を感じたんです。特別高級な着物というわけでもなかったのに、成人式用に振り袖を着て前撮りをしたときよりも興奮してしまって。その感覚は4月になるまでずっと続きました。それから、この興奮を周りの人にも感じてもらいたい、共有したい、と考えるようになって、ツイッターで発信を始めたり、着物を着ての通学を決めました。

着物が気づかせてくれた”日常”

―初めて着物を着て大学へ行った日のことを教えてください。

朝、着付けをするのにも、慣れてなかったので90分くらいかかってしまいました。やっぱり、着物を着ていると色んな人に見られて。着物の魅力を広めるために注目を集めることは本望なのですが、すごく緊張しましたね。授業で近くに座った人に、「素敵ですね。」って褒められたり、教授にも声をかけてもらえたりして、嬉し恥ずかしかったのを覚えています。

―着物を日々着る中で、日常生活が洋服のときとは違ってくるのでしょうか?

変わりますね。朝、洋服なら10秒で着られるところを、慣れた今でも着物は着るのに15分くらいかかるので。朝、少し早く起きないといけないのはデメリットと捉えることもできるんですけど、私はその時間がむしろ好きです。日々の生活にもっと誠実に向き合っている感じがするというか、それが自分自身に向き合う時間になっていますね。

あとは、着物を着ていると、たくさん歩いても疲れたり、腰が痛くなったりしないようになりました。帯がコルセットのような働きをしてくれて、歩いていても前に押し出されるような感覚があって、歩きやすいんです。

―なるほど。他にも着物の魅力といいますと、どんなものがありますか?

着物の魅力って聞かれると困ってしまいます。私は着物が好きすぎて、勝手に興奮しちゃうので(笑)

そうですね。なにか挙げるとすれば、コーデとしてまとまりやすいところでしょうか。着物って帯、帯締め、帯揚げ、えりなど色々な付属品があるんですけど、トンマナを考えなくても自分の直感の”好き”の寄せ集めで、不思議とコーデがまとまるんです。まるで自分を受け入れてくれているように感じられて、そんな着物の寛容さが好きですね。

他にも、着物を着たときの独特の所作が好きです。袖が長かったり、洋服に比べて動きにくかったりするので、それによって生まれる所作、例えば、片手でもう片方の袖を押さえたり、階段を登るときに腿の付け根の部分を少しつまんだり、そういうのが雅に感じられて好きですね。

―着物を学んでいく中で、お母様以外にも影響を受けた方はいますか?

何名かいらっしゃいます。

まずは、志村ふくみさん。人間国宝の着物染織家の方なんですけど、たまたまテレビで、志村さんの着物を観る機会があって。初めて観たときはその美しさに度肝を抜かれました。もっと着物の染織についても学びたいと思ったきっかけですね。

それから、外国人の方なんですけど、Anji Salzさん。日本人では思いつきにくい、独創的な着物のアレンジをされている方で、そのアレンジの幅の広さに驚かされました。

着物リメイクデザイナーの山田百里恵さんにも感銘を受けています。現在日本には8億点の着物がタンスの中に眠っているといわれていて、山田さんは、そんな着物をもう一度蘇らせようと着物をリメイクされているんです。そんな着物へのアプローチの仕方もあるんだなって気付かされました。

彼女が着物と目指す道

―着物に興味を持ち始めた初心者にはどんなアドバイスをされますか?

着物って小道具が多いぶん、やっぱり毎日着るのはなかなか大変なんです。ただ、だからといって、その世界に入っていくのに敷居が高いかと言われると、そうでもないんです。

入り口としてはまず、着物のレンタルが良いと思います。着付けてもらって、街中を歩いてみて、それからもっと知りたい、自分の着物が欲しいって思ったら、安く着物が買える着物の古着屋さんに行ってみるとか。セール中は500円で買えちゃうところなんかもあるんですよ。そういう情報も私がもっと発信していけたら、と思ってますね。

―卒業後のプラン、最終的な目標などはありますか?

卒業後も、大好きな着物をお仕事にしたいと考えています。

もっと現代のライフスタイルに寄り添った、着物とワンピースの中間のような服をデザインして形にしたいです。

それから、より効率的に着物の情報を若い人向けに届けていける方法を探っていきたいですね。

皆さんが考えるような、着物への敷居の高さ、イメージをもっともっと払拭していきたいと思うので、楽しみにしていてください。

なみぽちゅ

1997年生まれ。2018年4月から、自身が籍を置く青山学院大学に着物を着て通っている。SNSにおける着物・浴衣に関する積極的な情報発信に加え、それらに関するイベントを企画、運営。同年8月には、渋谷にて浴衣を若者にもっと親しんでもらおうと、着物ブランドに直々に掛け合い「渋谷×浴衣」を開催した。

Twitter: @namipochu718

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