近年、「ファンタスティック・ビースト」シリーズや、DCコミックス映画のスーパーヒーロー「フラッシュ」役でその知名度を着実に伸ばしている、今、大注目の俳優エズラ・ミラー。
性的少数者を指す”クィア”と自身を表現する彼は、世界各地で行われたファンタスティック・ビーストのプレミアに個性的すぎるファッションで登場。
その性差をも超えた着こなしと、その衣装たちにこめられたメッセージ、彼のこれまでの経歴を紹介する。
今、話題の俳優エズラ・ミラーとは

1992年にアメリカ合衆国ニュージャージー州に生まれる。
6歳のときに、吃音症を治すためにオペラを習い始め、舞台に親しむようになる。
2011年、「少年は残酷な弓を射る」でその演技力を高く評価され、2012年の映画「ウォールフラワー」では、エマ・ワトソンと共演し、その知名度を上げた。
2016年には、映画「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」で、人間界の変わり者の青年クリーデンスを演じ強烈な印象を残すとともに、DCコミックスのスーパーヒーロー「フラッシュ」に抜擢され話題を呼んだ。
2012年、米Out誌のインタビューで自身を「クィア」と称するとともに、惹かれるのはほとんどが女性だが、男性との関係も持ったことがあることをほのめかした。
「クィア」という表現を使う理由についてABC Newsのインタビューでは、「現代の社会ではジェンダーや性別が過分に区別されすぎている」とした上で、自身はラベルを貼ることを避け、性的少数者全体を指す「クィア」と称していると語った。
「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」ニューヨークプレミア

2016年11月11日に催されたファンタスティック・ビースト第一作目のニューヨークプレミア。レッドカーペットに現れたエズラは、モノトーンのシンプルでシックな着こなしだった。白のシンプルなシャツの上に、旗袍風デザインの黒いジャケットを羽織っていた。
それだけでもなかなか個性的だったが、中でも話題を呼んだのは、彼のメイクだった。ブラウンのスモーキーなアイシャドウを施し、ピンク色のグロスをあしらったそのメイクは、彼の端正な顔を更に際立たせた。女性のものと思われがちなメイクを、見事自身のファッションに取り込んだエズラのスタイルはたちまちSNS上で話題をさらった。
「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」パリプレミア

続いて、2018年11月8日に行われたファンタスティック・ビースト第二作目のパリプレミア。映画の舞台がパリだったこともあり、今回のプレミアがワールドプレミアだった。そんな中、レットカーペットに現れたエズラに、世界は衝撃を隠せなかった。地面まで伸びる黒光りするそのダウンのドレスは、フード付きのケープが彼の頭をすっぽりと覆い、黒い手袋まで徹底した個性的なスタイル。極めつけは、彼の唇を彩るブルゴーニュ色の濃いリップだ。ドレスはピエールパオロ・ピッチョーリがデザインしたモンクレールの2018秋冬コレクションからだった。髪を完全に覆うことで、視線は自然とその美しい頬骨と黒く塗られた唇へと誘導される。女性でも着こなすことが難しいであろうそのドレスを、エズラは完璧に自分のものとし、会場の視線をかっさらった。
「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」ロンドンプレミア

2018年11月12日に行われた、同作品のロンドンプレミアでは、再び、世界に衝撃が走った。”青い”レッドカーペットに登場したエズラは、ニューヨークプレミアとは対照的な白の衣装に身を包んでいた。まるでハリーポッターシリーズに登場するフクロウのヘドウィグが80年代のロックスターと融合したようなスタイル。トップにはジバンシィ2018秋冬コレクションの白い羽毛を羽織り、ボトムスに真っ白なパンツ、左手の薬指にはターコイズブルーの印象的なサム・リング。髪は鋭い毛束がいくつも突き上げられ、その先端は白く染められている。目の下から頬にかけて、ラメの入った白とグレーのハイライトも印象的だ。
そして、手のひらに刻まれた呪文は「許されざる呪文」の1つとして知られる「アバダ・ケダブラ」。ハリーポッターの大ファンを自称する彼は、そのスタイルと「死の呪文」で見た者を確かに死へ追いやった。
エズラ・ミラーがファッションに込めた思い

2018年7月にサンディエゴで行われたコミックコン2018年に、任天堂のキャラクター「キノピコ」の仮装で登場したエズラは、インタビューにこう語っている。
“任天堂が公言しているように、きのこ族はジェンダーレスな生き物なんだ。”
この言葉に、彼がファッションに込める意味が集約されているように思う。
自身がクィアであるとカミングアウトした際に周囲の人々から俳優人生を懸念されたというエズラのファッションは、セクシャリティに対する偏見やバリアを取り払い、自分らしく生きることの大切さを説く、彼の信念の表れなのだ。