世界的なヒップホップブームの中で、メインストリームではないが大きな影響力のある所謂「サウンドクラウドラッパー」と呼ばれるラッパーたちがいる。

その特徴的な音楽性や外見、過激な思想などを紹介していきたい。

若くして散った才能、LIL PEEP(リル•ピープ)

サウンドクラウドラップを語るときに外せないのがLIL PEEP(リル•ピープ、享年21歳)である。

ハーバード大学卒で教師である両親の元に育つも、高校を中退。10代にしてYouTubeやSound Cloudに自身の作品の投稿を行い、その特徴的なメロディーやドラッグ、憂鬱、自殺願望を歌ったダークな歌詞が『ポスト•エモ•リバイバルのパイオニア』『ヒップホップ界のカート•コバーン』であるとしてアンダーグラウンドシーンで一躍有名となる。

またティーンエイジャーの頃からファッションへの関心が高く、その端麗な容姿とセンスからモデルとしての活動も行っており、バルマンやモンクレールのファッションショーにも参加。トレンドメイカーとしての地位も確立しつつあった。

ヒップホップとロックが融合され、トラップ、パンク、ドリームポップなどの要素もみられる彼のメロディアスな音楽は斬新であり、2017年に薬物のオーバードーズにより逝去した今もなお彼の死を惜しむ声はとどまるところを知らない。

カルト的人気、$UICIDE BOY$(スーサイド•ボーイズ)

$UICIDE BOY$は、いとこ同士の$crim(スクリム)とRuby da Cherry(ルビー•ダ•チェリー)からなるニューオルレアン出身のデュオラッパー。音楽の道に進み、成功しなかったら自殺するという強い決意の元に活動名が決められた。

Ruby da Cherry(左)、$crim(右)

メランコリックなトラップメタルに、ドラッグや暴力や自殺、彼らのニューオルレアンでの生活など過激な歌詞。しかし$crimはインタビューで『僕らの音楽はエモだとか憂鬱だとかネガティブな音楽だといわれることが多いけど、これは音楽を通したセラピーなんだ。』と答えている。

メインストリームで多くの人に愛される音楽性ではないにしろ、コンサートはすぐに完売するほどの人気を博し、アンダーグラウンドシーンでカルト的人気を誇る。

ハードコアパンクからラップの世界へ、Ghostemane(ゴーストメーン)

GhostemaneもSoundCloudで人気を得たラッパーであるが、元々はハードコアパンクのグループでギターを担当していたり、メタルのバンドでドラムを叩いていたというロック畑出身。

その経歴は面白く、なんと大学で天文学の学位を取り、65000ドル(約700万円)の年収を得る仕事に就いていたという。

容姿端麗ではあるが、LIL PEEPとは違いファッショナブルというよりはロックの匂いがするルックスから繰り出されるシャウトや高音での高速ラップが特徴的である。

ティーンエイジャーの頃はメタルを聴きその影響を受けたという通り、オカルティズム、ニヒリズム、憂鬱や死など一般のヒップホップとは異なる悪魔的な歌詞が乗る。

2018年にリリースされた最新アルバム”N/o/i/s/e”では、インダストリアルメタルやMetallica(メタリカ)、更にはMarilyn Manson(マリリン•マンソン)、Nine Inch Nails(ナイン•インチ•ネイルズ)などの影響が感じられるため、メタル/ハードロックファンにも入りやすい音楽性かもしれない。

その音楽性から、上記の$UICIDE BOY$とのコラボレーション曲もある。

刑務所から出られる日は来るのか、6ix9ine(シックスナイン)

最後に、その派手すぎる容姿と数々の警察沙汰によって音楽性よりも事件性の方が話題になりつつある6ix9ineで締めたい。

最新アルバム”DUMMY BOY(ダミーボーイ)”ではKanye West(カニエ•ウエスト)やNicky Minaj(ニッキー•ミナージュ)ら大御所が参加し、事件発覚後にも関わらずApple Music上で一位を獲得。

全身に彫られた69のタトゥーと虹色の髪や歯、そして攻撃的なサウンドは印象深く、彼のカリスマ性には目を見張るものがある。

未成年淫行事件など数々の悪名をものともせず、アンダーグラウンドからメインストリームへ着々と進出してきた矢先での逮捕事件(最低でも25年、最悪終身刑と言われているほどの事件性)は、世間を多いに騒がせている。

SoundCloudから出発して成功していくミュージシャンがいる中、話題性や知名度の普及のために犯罪行為や過激な言動に走る若者が現れるのはネット社会の闇なのかもしれない。昨年銃撃され逝去したことが記憶に新しいXXXtentation然り、若い才能がこれ以上散ってしまわないよう祈るばかりである。