「アートを買う」というと何だかレッテルが高いイメージが昔はあったが、実は最近そうでもなくなっている。世界的に若年層のアート購入が流行りだし、オンラインを通せば今やピカソのスケッチさえ10万円以下で手に入る時代になった。世界中の作品と簡単に出会え売買できる、オンラインギャラリーがアート市場の常識を変えはじめている。

「アートが商売にならない」なんてもう古い

確かに興味があるアーティストの作品があっても、その展示にタイミングが合う機会やそのためにわざわざ海外へ足を運ぶことを考えるとオンラインの方がより多くのアート作品に出会いやすいのが現実だ。また大規模のアートの展示会は関係者だけが招待されていたり入場料だけがやたら高かったりと、アートを購入すること自体過去の日本ではあまり一般的ではなかった。最近では日本でもTAGBOAT(タグボート)など、ITを活用するアートギャラリーが知名度を上げたおかげもあり、日本人の「アート所有」に関する固定観念がより一般化しつつある。

世界最大規模を誇るオンラインギャラリー「Artsy(アーツィ)」。アメリカ人創始者のCarter Cleveland(カーター・クレーヴランド)は、彼が大学生時代にこのサイトを立ち上げた。投資家の中にはロックフェラー家や、過去にはTwitter共同創業者Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏などの名も連なり、登録されているギャラリー全体でこのサイトを介し、月に約2,000万ドルをも売り上げを出している。「アートは売れない」なんて考えはこの「Artsy」の前ではもはや過ぎ去った過去なのかもしれない。

オンラインギャラリーとは?

オンラインギャラリーとは、アートギャラリーのオンラインバージョンで、主にコンテンポラリーアートをインターネット上で売買しているウェブサイトのこと。スマホのアプリケーションとして登場しているオンラインギャラリーも複数あり、現在アート売買、そしてただ単に閲覧するだけでも有効的である。

世界中のアートギャラリーが登録されている収集型オンラインギャラリー、陪審員を通してアーティストが作品を紹介できるコンペ形式のオンラインギャラリー、またはアーティスト個人のウェブサイトで直接売買できるものまでオンラインギャラリーの種類もいろいろと存在する。若いアーティスト、クリエイターが難題な登竜門を潜らなくても自分の作品を紹介できやすくなり、特にミレニアム世代の若者たちから高い支持を得ている。世界的規模で「アート所有」をトレンドにし、今後もその成長に期待が高まっている。

世界最大オンラインギャラリー「Artsy(アーツィ)」

「アート市場の拡大。世界中のより多くのアーティストとアート作品を支援する」ことを目的としたコンテンポラリーアートの巨大オンラインギャラリー。90カ国を越える世界各国2500以上のアートギャラリーが登録され、ニューヨークのMoMAやグッゲンハイム美術館もビジネスパートナーだ。

世界中60以上の大規模なアートフェアともパートナーシップを組んでいる。10万人以上のアーティストの100万点以上もの美術作品が掲載されている。ピカソやバスキア、アンディー・ウォーホルなどの有名作品も取り扱っている。

 

絵画、写真、彫刻、アートインスタレーションなど、世界中のアートギャラリー、美術館のコレクション作品が閲覧可能な他、その中の半分以上は直接ギャラリーに問い合わせて購入することができる。何十億円もする著名アーティストの作品から、1ドルで買える名の知れていないアーティストの作品までと収集されている作品の差はピンから切りまで。

実際のアートギャラリーを通した作品がメインなので、コンペや陪審員を通したアーティスト選抜式のオンラインギャラリーと比べると、作品のクオリティーが飛び抜けて高く、信頼性がある。日本の著名アーティストも多く紹介されていて、荒木経惟や米原康正などの作品も数点ここで出会える。「Artsy」のロゴとサイトのグラフィックもシンプルで。若者向けの印象が強いアート市場新しいプラットホームだ。

日本のオンラインアート販売に一躍するギャラリー「TAGBOAT(タグボート)」

「顧客にとってアートを身近で分かりやすいものにする」がキーワードの日本の現代アートを販売(通販)するギャラリー。日本のアートギャラリーとしてITをいち早く活用したことで注目されている。話題の絵画、版画、写真を1万点以上販売する。日本のアーティストとしては草間彌生、奈良美智、オノヨーコなどの作品、海外のアーティストもロイ・リキテンスタイン、ダミアン・ハーストなどの作品が集められている。価格の相場も1万円代から数百万円代と幅が広い。

「一人でも多く食べていけるアーティストの数を増やすこと」をミッションとした新しいギャラリースペースのプロジェクトや、毎年行われる、日本の若手新進アーティスト発掘を目的としたタグボートアワードなど、新人アーティストへのサポートにも力を入れている。海外のアートマーケットに比べると一足遅れを取る日本のアートシーンをこれからもぜひ盛り上げてほしい。

デジタルの進歩と共に変化して行くものの価値観、アートと私たちの距離をぐっと縮めたオンラインギャラリー。若者の「アート所有」がより一般化し、時代もより新しいシステムを求めている。インターネットを通したアート市場、オンラインギャラリーの今後の経済成長に目が離せない。