ファッションモデルで女優、アーティストのTENKO(点子)。

異様なものの価値感と感度をモデル、女優、アーティストとしての才能に活かし、ファッションモデルとしてはフェラガモのキャンペーンビデオ、東京コレクションのデビューも果たした経験がある。

ドイツ生まれ。ロンドンで3歳まで、ベルリンで13歳まで育ち、その後東京生活へ移行した。現在は、ジャーナリズムを学ぶために再びロンドンへ前戻り大学生活を送っている。

本名はTenko Nakajima(中島点子)。

ドイツ人の父を持ち、母は音楽家、写真家、アーティストのHanayoNakajima(中島花代)。TENKO(点子)の名前の由来は寺山修司の戯曲「星の王子様」からつけたと母HANAYOは自身のインタビューで答えている。

ヨーロッパから東京生活へ

ヨーロッパ生活が長い彼女にとって、特に東京の生活は衝撃的だったようだ。スペイン、バルセロナ発信のインテリア、ライフスタイル雑誌apartamento #11で彼女は、東京に来たばかりのカルチャーショックを「私のお家はワッフル。」と一風変わった表現で語っている。

TENKO:私は母と東京の渋谷にある畳ばりのアパートで暮らしています(2013年当時)。大きくて安かったベルリンのアパートに慣れていたため、初めは小さくてプライバシーのない東京のアパート生活に合わせるのが大変でした。学校の制服を着て登校するのも難しかった。特にドイツではナチス政権が崩壊した後、学生の制服通学は禁止されていましたから。

(2013年発行 apartamento #11より)

母は多才なパンクミュージシャン

TENKOの母で、多才なアーティストとして有名なHANAYO。音楽家、写真家、アーティストとしてロンドン、ベルリン、ニューヨーク、ヴェネツィア、東京等、世界中で活動している。彼女が10代のころ、過去には東京の芸者としての経験がある。パンクミュージシャンとしてTENKOを産む前にロンドンへ移住。写真家としても有能だ。グローバルなスケールで世界各国の展示会に呼ばれ個展を開いている。同じく写真家の森山大道は彼女の作品に対し「初めて人の写真に嫉妬した」と賞賛している。

娘TENKOにとって、強烈な個性を持つ母HANAYOの影響はやはり多大だ。彼女から見た母親の像とは、いったいどう写るのだろう。

TENKO:私の母には魔法のような力があって、住む場所どこでも快適で家庭的な空間を作ってくれる。私たち共通の友人が制作したアートを部屋中に飾って、親戚からもらった古い家具を使っています。母は物を捨てる概念が無いみたいですね。だからいつも私の私物は極力最小限にする必要があります(笑)。彼女が作るスペースは美術館みたいで大好き。また、母は植物を育てるのがとても上手で、日本のメダカという魚も飼っています。私たちが住んでいる東京のアパートは、彼女が抽選で当たった公共住宅。そうでもしないと、私たちにとって東京の家賃は本当に値段が高すぎます。

(2013年発行 apartamento #11より)

公共住宅生活へのカルチャーショック

母親HANAYOは東京へ移動した経由を、TENKOの意志だと語る。日本人として東京に住んでみたいと言う彼女の思いがHANAYOとTENKO親子を東京に連れてきたようだ。しかし現実はTENKOにとってそう簡単ではなかった。

TENKO:初めてここに引っ越して来た時は、日本のホラー映画に出てきそうな雰囲気の高層ビルアパートメントがとても怖かったです。しかも、私たちの住んでいる公共住宅は実際にも、アメリカ版「ザ・リング」と同じ監督の映画「ダーク・ウォーター」の撮影ロケ地になったビルで、四角い窓が何百個もついている14階建ての灰色の建物。渋谷の道から見たらとても異物に見えて仕方がなかった。でもある日、公共住宅オタクって人たちが、私たちの住んでいるようなビルのことをお菓子の「ワッフル」と呼んでいて、そこからもう怖くなくなりました(笑)。確かに均等に四角く区切られている形がそう連想させるのについつい納得。逆に今では、自分の家の窓がどれだか遠くから指を指して遊ぶのが毎日の楽しみになりました。それぞれの窓で別々の生活があるのを想像するのも面白いですよね。

(2013年発行 apartamento #11より)

現在は、ロンドンでの大学生活

2015年からはロンドンでジャーナリズムを勉強するために大学生活を送っているTENKO。成長するに連れ母親との生活を旅立った。母親HANAYOの影響で、ファッションやアートなど、マルチなカルチャーを日常生活に深く取り入れる彼女。現在はアート所有に熱中だという。

TENKO:私が家に飾りたいなと思うのはいつも、友達だったり、知っている人の作ったもの。その方が作品のことをもっと好きになれるし、思い出や親しみを感じられる気がして。美術館にも行くし、好きな作家もたくさんいるんですけどね。

(GINZA2018年11月号より)

母親HANAYOと同じく、マルチな才能を伸ばすTENKO。多くのカルチャーを子供のころから目にして育った。今後もグローバルな文化人の一人として彼女の成長が楽しみだ。