【対談】和泉琴華 × 齊藤みなみ ミレニアル世代が考える”クリエイターとして活躍するには?”

今回はイラストレーターとして女性誌やブランドとのコラボレーションで活躍する和泉琴華と、独特な曲線を用いて無機質でコンテンポラリーなアクセサリーを制作するデザイナーの齊藤みなみをご紹介。若くして多くの方々に支持される2人に、“クリエイターとして活躍するためには何が必要なのか”ミレニアル世代ならではの考えを伺った。

(左:齊藤みなみ 右:和泉琴華)

クリエイターとして活躍し始めるまで

―まず始めにお2人を知らない方のために、それぞれのお仕事について教えていただけますか?

和泉:2016年頃からフリーランスのイラストレーターとして活動しています。基本的には自分の描いた絵のグッズ販売と、雑誌等をメインにクライアントとお仕事をさせていただくことが多いです。

齊藤:私も3年前ぐらいからアクセサリーの製作を行っていて、1年前くらいから正式にアクセサリーデザイナーとしてお仕事をさせてもらうようになりました。自分用に趣味で制作したことから周りに広がって、今ではオンラインに加えて新宿伊勢丹さん等のお店にも置いてもらっています。

―和泉さんは現役大学生だとお伺いしていますし、齊藤さんもアクセサリー制作を始めた当初は大学生でしたよね。学生とお仕事を両立させることは苦労もあったのではないでしょうか?

和泉:正直、両立が一番大変でしたね。途中からは大学に行くモチベーションはほとんどなかったんですけど(笑) 朝まで作業していて午前中の授業に出られないとか、テスト前に必死になって勉強するときもありました。ここ2年はクライアントからお仕事を依頼されて追われて描いていることも多くって。好きな時間に好きな絵を気まぐれに描いていることは昔よりは減った気がします。

齊藤:私は逆に大学の方が忙しかったですね。舞踊学科に在籍していたので公演とかもあって。大学に行って空いている時間に趣味がてら制作していた感じに近いです。

―お2人とも学生のうちからクリエイターとして活躍されていて、芽が出るのが早かった印象がありますが、ご自身がクリエイターとして支持されるようになった背景にはどのようなことがあると思いますか?

和泉:私がインスタに絵を載せ始めた頃って、イラストレーターとして他に有名な方はいたんですけど、インスタに絵ばっかりを載せている方ってほとんど居なかったんですよ。だから、やった者勝ち的なところはありますよね(笑) 最初の方は知り合いとか好きなモデルさんとかを描いて載せていて、そうしたらみんな自分のインスタにも私の絵を載せてくれるんです。そこから広がったような気がします。

齊藤:私もインスタの影響は強いと思います。元々は完全に自分のプライベートアカウントとして使っていて、絡まったイヤホンとか螺旋階段とか、自分の目に入った景色や一部を載せていることが多かったんです。気が付いたら、そういうのが面白いってフォローしてくれる人が増えていって。でも一気に増えたのは琴華のおかげも大きいと思います。

和泉:みなみのインスタ、当時からめちゃめちゃお洒落だったんですよ。当時、私が働いていたKBFっていうブランドの先輩がみなみのアクセサリーを身に付けていたことで存在を知って、「可愛い!欲しい!」みたいな感じで私のインスタに投稿したんですよね。その時、私もちょうどフォロワーが増え始めたくらいの時期で。

齊藤:フォロワーの多くて可愛いイラスト描いている人が、私のアクセサリーを載せてくれて有難いなって思いましたね。それがきっかけで私のアクセサリーもバッと広がったのを覚えています。

―齊藤さんのアクセサリーがきっかけでお2人は知り合ったのですね。

和泉:お店にもみなみが来てくれて、先輩の紹介もあって。だから、みなみとはもう2年くらいの仲ですね。

良い意味で焦るし、高め合っていける関係

―お2人はもちろんのこと、写真家のヨシノハナさんやデザイナー・モデルのKURUMIさんなど若手クリエイターとして活躍する方々と交流があるのがSNSから伺えます。そのような周りの方々からクリエイターとして影響をもらうことはありますか?

和泉:大きな仕事をやっていたりと活躍している姿を見るので、自分も頑張らなきゃなって刺激になりますね。良い意味で負けたくない、このままじゃ駄目だなって焦ります。

齊藤:展示とか見に行くと特に思うよね。やっていることって全く違うわけではないんだけど、それぞれジャンルが違うから面白い。

和泉:同じ職業じゃないから得られるところもあるよね。展示とか販売を見ていても、梱包が可愛いなとか、こんな展示方法があるんだとか。参考になるし、お互い高め合っていける関係だと思いますね。ふざけた話もするけど、真剣に仕事の話したりもして、日々刺激を貰っています。

―イラストレーター、アクセサリーデザイナーといっても現在多くの方々がいらっしゃると思います。自分と同じ業種のクリエイターをそれぞれどのように捉えていらっしゃいますか?

齊藤:最近ちょっとその話題になったりするよね。

和泉:やっぱりライバル意識はありますね。負けず嫌いなんですよね。イラストレーターの中にはやっぱり似た絵柄を描く人はいるし、だんだんテイストが寄ってくる人もいる。昔はそれで凄い嫌な気持ちになっていたんですけど、最近は自分が目を向けるべきところはそこじゃないなって気が付いて。考えてもしょうがないんですよ。それよりも、自分がどれだけパフォーマンスできるかっていうところが大切。

齊藤:そういうので、気持ち下がっちゃったら寧ろ勿体ないしね。今後どうしたら良いかを考えた方が、絶対自分のプラスになると思う。アクセサリーだとお客様が似たようなデザインを発見して報告して下さったりするんですよ。それで最初は「真似しないで下さい」って言った方が良いかなとか悩んでいたんですけど、今の時代完全には防げないじゃないですか。だから、逆に自分のアクセサリーに憧れて作ってみるっていう人が居たんだなって、良い方向に考えるようにしています。

 

好きだったことを仕事に

―お2人とも就職という道は選ばず、現在のお仕事に進んだと思います。最初はそれぞれ趣味として始められたと思いますが、いつ頃から職業として意識するようになりましたか?

齊藤:大学卒業してからですかね。他に仕事をして副業としてやることもできるとは思うんですけど、それだと趣味程度になってしまう。だから卒業してアクセサリーやるんだったら、これ1本って決めていたんですよ。

和泉:私の場合、仕事として意識し始めたのは2017年の初個展を行ったとき。2017年になった時に、“年内にイラストレーターを仕事として稼いでいけるな”って思えたら、これを職業にしようって決めて。その後、個展をやったことにより、とんとん拍子で色んなお仕事が決まって、表に出させていただく機会が増えました。だから、絶対この道で食べていこうって思って。

齊藤:私の場合、琴華とは逆なんですよね。状況的にちょっと厳しいかもしれなくても、先にやるって決めちゃって、必死に動いてどうにかするみたいな。最初にやりたいって決めて、それに合わせて行動する。伊勢丹さんに初めて置くときもそうだったんですよね。返事はしたものの、今のクオリティじゃチープだからって商品のクオリティや包装も上げていって。

和泉:仕事もらって描いてっていうのと、自分で動いて販売するっていうのに違いはあると思う。基本的には自分の絵を使ってくれるところがないとイラストレーターとしてのお仕事は成り立たないから、その違いはあるかもしれないです。

―もしも現在のお仕事に就いていなかったら、お2人ともどんなお仕事をされていたと思いますか?

和泉:途中でイラストとの両立が無理だなって思って諦めたんですけど、大学では家庭科の教員免許を取れる学科に居たんですよ。あと教育実習に行くだけの段階まで履修していたので、先生にもめちゃくちゃ止められたんですけど、そんな時間取れなくて。イラストやってなかったら先生になりたかったかなって思います。

齊藤:私は大学で舞踊専攻でコンテンポラリーダンスっていうちょっとアート寄りの踊りを専攻していて。だから、表現して伝えるっていうのは色んな形で授業で勉強することも多かったんですよ。大学で学ぶうちに、踊りじゃなくても自分の中での世界観が確立されていったので、それを何かの形で表現したいっていうのがありました。それがあるきっかけでアクセサリーにいっただけなので、アクセサリーじゃなかったら、また違った形で自分を表現する仕事に就いていたかなとは思います。

クリエイターとして活躍し続けるために

―イラストレーターもアクセサリーデザイナーもお2人の他にお仕事にされている方は多くいらっしゃると思いますが、その中で成功するために必要だと思うことはありますか?

和泉:良いもの手掛けるっていうのが大前提でいうと、多分今の時代ってそのものだけじゃなくて、作り手とかのパーソナルな部分も大事なイメージ。どんな服を着ているとか、どんなライフスタイルを送っているとか。誰かの真似をしているとかじゃなくて、自分の好きなものがブレていなくて芯がある人が周りでも活躍していると思う。

齊藤:自己表現が上手な人かなと思います。何かに影響されるっていうよりかは、自分が思うままに好きなものを着るし、好きなもの撮るし、好きなもの作るみたいな。

和泉:あとは最初に誰かが出ると、その後からやっても全部誰々っぽいよねとしかならないから、他の人より早くに出るっていうのも必要かなって思いますね。

―自分自身の中では、沢山のクリエイターの中でも支持されるために意識していることはありますか?

和泉:私の場合、新しく知ってもらうためにっていうよりかは、知ってくれている人、好きでいてくれている人達にどう返せるかって意識することが多いかもしれないです。クライアントとの信頼関係のために納期の厳守とか、礼儀や態度とか。あとは、お客さんにも感謝の気持ちを忘れないで、個展に来てくれた子の顔は覚えるように心がけたり。

齊藤:人に対しての部分は、琴華に共感できる部分も多いです。けど私の場合、自分で制作して販売するので、商品に対して自分の作りたいものをブラさないように意識しながらトレンドを意識することも片隅に入れています。SNSをこまめにチェックしたり、お店にどんな商品が並んでいるのか足を運んだり。

―SNSがこれだけ発達している現在、誰にでも自分から発信して支持されていくチャンスはありますし、新しいクリエイターが世に出ていくサイクルも早いですよね。クリエイターとして今後も生き残るために心掛けていることがあれば教えて下さい。

和泉:不安な点でもあって、難しい点でもありますね。だけど、早いサイクルに乗ろうとして自分を変えすぎたり、大切にしていたものを捨ててしまうのは違うと思うんですよ。実際に、どうしたらサイクルに置いていかれることを回避できるか考えたりもするんですけどね。でも、結局はそうなってみないと分からないことだと思います。どんなに自分が努力しても、みんなから支持されなくなることもあるだろうし。だから今は、きっと変わっていかなきゃいけない部分もあると思うんですけど変えすぎないように注意しながら、目の前の仕事をとりあえずちゃんと取り組むように心掛けています。

齊藤:同感です(笑) それにイラストは、このテイストが好きっていうファンもいると思うから特にだと思う。でもファッションは自分の中でも変わり続けるものだから、自分の成長に合わせて変化させながら、自分の軸はブラさずに作り続けていけばいいのかなって私は思っています。

 

好きなことを仕事にしているから、長く続けられたら

―最後にクリエイターとしてのお2人の目標を教えて下さい。

和泉:自分の人生の目標として、ずっと続けていたいなっていうのは思いますね。5年後、10年後もずっとイラストレーターとして仕事を続けていたいなって。

齊藤:お互い好きなこと仕事にしているんで、長く続けられるならやり続けたい。

和泉:あとは、自分の名前とかサインが入ってなくても、街でイラストを見かけてもらった時に、私のイラストって分かるくらいの知名度にはなりたいなって思いますね。

齊藤:そんな感じだよね(笑) 私は手に取って貰える商品があるから、いつか自分のブランドの実店舗を持てるようになれたら嬉しいなって思います。

和泉琴華

2016年よりフリーランスイラストレーターとして活動開始。友人や好きなモデルのイラストをInstagramに投稿したことをきっかけにファンを増やし、現在では雑誌『sweet』の掲載や『GODIVA』とコラボレーションなど活躍の場を広げている。自身のオンラインストアでは、イラストが描かれたiPhoneケースや洋服を展開中。

Instagram:@kotoka_izumi

齊藤みなみ

大学在学中よりアクセサリー制作を始め、卒業後の2018年よりハンドメイドブランド『minami』を本格始動。自身のオンラインストアや新宿伊勢丹本館2階 TOKYOクローゼットにてアクセサリーを取り扱う傍ら、全国でのポップアップも開催している。

Instagram:@iii.iiiiiii.iii