NYで経験を積んだグラフィックデザイナー、Juri Okitaが変えたい日本の働き方とデザインに懸ける情熱とは

グラフィックデザイナーやイラストレーターなど様々なクリエイターがフリーランスとして働きやすくなった現在。それでも残業など多くの課題が残されている日本企業の働き方を変えようと、自らアクションを起こしているJuri Okitaさんの想いとこれからのビジョンに迫った。

Juriさんを創り上げたもの

-簡単に自己紹介とこれまでの経歴を教えてください。

 高校生まで大阪で過ごして、高校卒業後は留学資金調達と英語の勉強をするために1年半ほどギャップイヤーをとっていました。その期間にLINEスタンプの発売を初めて、それから2年間ニューヨークにあるFIT(Fashion Institute Technology)という美大に入学し、グラフィックの勉強を始めましました。その後、アメリカのOPT(オプショナル・プロティカルトレーニング)という制度を使って、2社でデザイナーとして働き、日本に帰る前の2ヶ月間を使ってフリーランス活動を経験してから2018年8月に帰国しました。

-現在は日本でグラフィックデザイナーとして活躍されていますが、Juriさんがインターネットを通して初めて何かをシェアするきっかけとなったプラットフォームはアメーバブログだったのですか?

そうですね。ブログは7年間くらい続けています。小さい時から両親の仕事関係でアメリカに行くことが多かったので現地の情報をよくネットで調べていました。ネットを通じて自分と同じように海外文化に興味がある人がいると言うことを知って、多くの人にシェアできる何かを始めたいと思ったのがブログを始めたきっかけでした。でも更新していくうちに、書くことは好きだけど、文章にするのが苦手ということに気づいて…。なので文字より、作品や写真を載せる数が増えて写真を編集したりし始めました。それがグラフィックデザインにも繋がっていた感じですね。

 

-なるほど。LINEスタンプはかなり評判が良かったようですよね。

すごくよかった!高校3年生くらいで始めたときには、まだクリエイターズスタンプの存在自体を知らない人が多かったから、みんなが珍しがってくれました(笑)今でも使ってくれている人が結構いて、思っていたより評判が良かったです。

 

-スタンプ以外にもパッケージやポスターなど、いろんなジャンルのデザインに挑戦されていると思うのですが、デザインを製作する上で意識していることを教えてください。

どうすれば他と違うように見えるかとか、クライアントが表現したいことを聞いた上で、どこを工夫したらいかに自分らしさを表現できるかを考えるようにしているので、簡単にパッと出せるものというよりは「ちょっと違う道に行ってみよう」みたいな感じで+αを含めて考えるように意識しています。

アメリカを拠点に

-なぜ数多くある大学の中からFITを選んだのですか?

1番お金がかからない方法を探っているときに、コレという学校が無くて迷っていました。でも、FITの存在は前から知っていて「クリエイティブな人たちとも関われるかも」と思いながら学校のHP見たら、他の大学と比べてもあまり費用が変わらなかったので「もうニューヨークしかない、FITしかない」と思い入学しました。

 

-入学前と入学後の英語のスキルはどう変化しましたか?

入学前は独学だったので、FITに入ると決めてからテキストを買って本気でTOEFLの勉強を始めました。まだ英語が完璧じゃないのに、最初から読み物ばかりの心理学と美術史を専攻してしまって、本当に最悪の成績だった。でもそこで鍛え上げられたおかげで、なんとか生き延びたかな。

 

-言語や環境が日本とは全く異なるアメリカでの大学生活は、かなり過酷であったのでは?

ルームメートがニューヨーク育ちで、ゆっくり話すことを知らない子だったから日常の会話ですら難しかったです。プレゼンに関しても、日本の学校で経験したことがなかったから現地の子の真似をしていて、そういうことの積み重ねで英語力が身につきました。それから大学の課題の他に、ESL(English as a Secound Language)という留学生向けの英語コースも並行していたから他の人と比べると1人で課題の量がすごく多かった(笑)だから自然とタイムマネージ力もついて、考え方も楽観的になったかも。

環境のギャップ

-日本とアメリカの会社で働いた経験から、個人的にどちらの働き方がご自身に合っていたと感じていますか?

完全にアメリカ(笑)8月に帰国して初めてデザイン関係の会社に入ってみたら、本当に環境が違いすぎてびっくりしました。アメリカの会社では「誰が何を担当していて全員で○時までに終わらせよう!」みたいな感じだったから、17時半くらいには仕事を終えて帰宅していました。でも日本の会社では社内でいろんな方から幅広い仕事が来て、クライアント、営業、クリエイティブの上下環境のせいで無理なスケジュールの仕事も多い印象です。

あと、アメリカの会社ではブランドコンセプトやデザインの下段階を念入りにしていたけど、今はブランドやプロジェクトの目的などの細かい説明なしに依頼されることもあり、「それはなんか違うかも」と思ってしまうこともあります。

 

-日本では勤務時間が長く時間に厳しいことが問題視されているけれど、もっとクリエイターが過ごしやすくなる仕事環境を築くには何を改善していく必要があると考えていますか?

これは私も本当に模索中。とりあえず自分が正しいと思う方向に動いてみて、ダメだったら他の方法を探そうと思っています。入社して3ヶ月くらいはすごく遅くまで働いていたけど「これじゃダメだな」と思い、クビ覚悟で「契約時にお話しした時間通りに働きたい」と上司に伝えたら私の意見を尊重してくれたので、今は会社で一人だけ時間通りに退社しています。

会社という組織全体的に改善するためには、しっかりとチームリーダーや個人が仕事量やスケジュールを把握すること。また、クライアント、営業、クリエイティブの関係が上下でなくフラットな関係になれば、みんなが働きやすい環境になると思います。

 

-クライアントとやりとりする上で、相手が要求するものとデザイナーがかけられる時間の割合がとても大切になってくると思うのですが、どのように工夫をしていますか?

まず何パターンか提案をします。でもあまり見せすぎてしまうと広がりすぎるから数には気をつけていて、修正回数もフリーランスでやる時は契約時に「修正は2回まででお願いします」と伝えています。

-最後にこれからのビジョンと目標を教えてください。

これからはブランドアイデンティティを大切にしたいです。たくさんの商品やサービスが溢れている世の中で、それぞれが独自の世界観を持つことが必要になってくると思います。なので、クライアントが抱いているイメージを正しく理解してからロゴやウェブサイト、その他資料などのデザインを施して一緒に世界観を創りあげることが大切だと思っています。そういったブランディングを行なっているデザイナー自体が日本ではまだ数少ないと思っているので、もう一度海外で学んで日本に持ってきたいと思っています。

Juri Okita

大阪府出身。高校生のときに始めたブログをきっかけに才能を開花させ、高校卒業後は1年半のギャップイヤーを取りニューヨークの美術大学FIT(Fashion Institute Technology)に留学。その後OPT制度を利用してアメリカの2社でデザイナーとして経験を積み、現在は日本の企業とフリーランスの仕事を両立している。

HP:https://juriokita.wixsite.com/juriokita

INSTAGRAM:https://www.instagram.com/juriokita/

BLOG:http://juriokita.blogspot.com

 

credit : UNUNU