英国、米国、日本、イタリア版のVOGUE誌やコムデギャルソン、ヨージ・ヤマモトの広告キャンペーンでもおなじみになったイギリス人ファッション写真家のTim Walker(ティム・ウォーカー)。現在最も影響力のあるファッション写真家とも言われ、今年の秋からはロンドンのVictoria & Albert Museum での展示も予定されている。
1:出身はイギリスのサリー州
ティム・ウォーカー
1970年イギリスのサリー出身。幼い頃から写真への情熱を持ち、エクスターアートカレッジにてアートとフォトグラフィーを学んだ後、1994年ニューヨークに移っている。ティム・ウォーカーが出身のサリー州はロンドン近郊の古い町並みと広大な自然に恵まれたとても美しい区域である。彼のおとぎ話に出てくるようなファンタジーな作風は、彼の生まれ故郷サリー州の影響が強いと言っても過言ではない。
2:Richard Avedon(リチャード・アヴェドン)のアシスタント時代
ロンドンでフリーランスのフォトグラファーアシスタントを経験した後は、ニューヨークでファッションフォトグラファーとして世界で最も名高いRichard Avedon(リチャード・アヴェドン)のフルタイムのアシスタントに就いている。
3:イギリス版VOGUE誌でデビュー
まだ25歳という若さで、イギリス版VOGUE誌でファッションストーリーを担当。写真家として本格的活動を開始。2008年には英国のファッションアワードで最も偉大な「ブリティッシュ・ファッション・アワード」の「イザベラ・ブロウ・ファッションクリエイター・アワード部門」を2位で受賞、翌年2009年にはニューヨークの「インターナショナル・センター・オブ・フォトグラフィーアワード」で1位も獲得した。
4:広告業でも一躍話題に
ティム・ウォーカーは、ファッションフォトグラファーとして最も稼ぎ所の良い仕事として言われる広告業でも頻繁に活躍している。マルベリー、エルメス、ヴァレンティノ、日本のブランドではコムデギャルソン、ヨージ・ヤマモトなどの広告キャンペーンでもおなじみの顔になっている。
5:息を飲むほどの幻想的なスタイル
ティム・ウォーカーのハッと息を飲むかのような幻想的なイメージは、そのカラフルな色使いにある。甘いスウィートを連想させるようなパステルカラーを、エロティックでグロテスクなイメージと重ね合わせダークに表現する。またそうかと思えば赤やビビッドカラーを最新のファッションと一緒にまるで中世の絵画のように描写したりと、彼の作品はどれも手がかなり凝っている。
6:未来と過去のコントラスト
ティム・ウォーカーの写真の特徴の一つには未来と過去のコントラストがある。まるで中世の絵画に登場して来るような、古代的な顔したモデルの起用とコンテンポラリーな衣服の組み合わせ、イメージのギャップを上手に使いこなす。
7:セットデザインが重要な鍵
ティム・ウォーカーの写真の美しさは特に、その大掛かりなセットが魅力の一つである。シュールで幻想的なセットデザインを用いてモデルをさらに引き立たせる。
彼が仕切るチームワークは、スタイリスト、ヘアメイク、セットデザインそしてモデルに至るまで、彼が描きたいイメージとムードをしっかりと共有する必要がある。彼がコラボレートする他のアーティストはどのポジションもかなり優れた感性を持っている。
8:ヒエロニムス・ボスの絵画から多大な影響を
13から14世紀、ルネサンス時代のネーデルランドの画家、ヒエロニムス・ボス。その奇抜で幻想的なイメージが特徴の当時の異端的な画家であるが、ティム・ウォーカーは彼の作品から多大な影響を受けている。
卵と貝をエロティックに用いて表現するような、ヒエロニムス・ボスのあらゆる角度で自由な知覚から観た人生の断片をティム・ウォーカー自身、自らも再表現している。全てのディテールにはそれぞれのストーリーが隠されているというヒエロニムス・ボス特有のコンセプトもまた受け継いでいる。
全てが生き生きと輝いているボスのような本質的描写を僕も写真として写すように試みたいと思った。
ティム・ウォーカー(M2Mのインタビューより)
9:ショートフィルムにも活動を延ばす
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ティム・ウォーカーは写真だけでなく、ショートフィルムにもまた活動を延ばしている。彼の作品「The Lost Explorer」は、2010年スイスの国際映画祭「ロカルノ国際映画祭」に入賞、翌年2011年には「シカゴ・ユナイテッド映画祭」でベスト・ショートフィルムに選ばれている。
10:美術館での個展
ティム・ウォーカーはまた、ロンドンのデザイン・ミュージアム、サマーセットハウスで個展も開いている。今年の秋からはロンドンのVictoria & Albert Museum での大々的な展示も予定されていると言う。彼の写真集人気などの影響もあり、彼の作品は今後コンテンポラリー・アートとしての価値も見逃せない。
ファンタジーの世界に出てくるような幻想的で美しいスタイルが魅力のティム・ウォーカー。大胆なセットデザインと独特なモデルの起用の仕方が見逃せない。まだ40代の彼は今後さらにどう展開して行くのか。