リアルな世界観とブラックユーモアのセンスが光る、イギリスのTVドラマシリーズたち。
現在ロンドンの若者たちの心を掴んでいるのは、イーストロンドンのカルチャーシーンを切り取ったような世界観が垣間見れる内容のシリーズや、リアルなアラサーの心情を描いたダークコメディドラマシリーズなど。
今回は、見るだけでロンドンの若者の日常を覗き込んでいるように感じられる、イギリスの最新人気ドラマシリーズ3作品をピックアップし、その魅力を紹介していきたい。
ドレイクも大ファン、Top Boyが描くイーストロンドンのストリートカルチャーシーン
Top Boy(トップ ボーイ)は、2011年にイギリスの人気テレビ局チャンネル4で放映が始まった犯罪テレビドラマシリーズで、日本では現在Net Flix(ネット フリックス)での視聴が可能だ。 ロンドンのストリートカルチャーシーンを切り取った、麻薬取引や貧困から来る格差社会などセンセーショナルな内容で、ダークでリアルな若者像を描き出している。
舞台はイーストロンドン・ハックニー、カウンシルフラットと呼ばれる集合団地だ。 ハックニーは今でこそヒップなイメージで人気があるが、過去にはギャングが集まる場所として危険で粗悪なイメージが強く、今もそのダークな名残があるエリアだ。 そこで生まれ育った主人公ダシェンとサリーの友人や仲間たち、隣人の中学生のラネルを中心に、徐々に物語は、意外で思わぬ悪い方向へとどんどん進んでいく。 同作品のよくある犯罪ドラマと違う点は、貧困から来る家庭環境や経済状況の悪化により、犯罪に手を染めてしまう若年層が今も後を立たないという、イギリスが抱える問題をリアルな描写で、センセーショナルに映し出しているということだ。
また興味深いことに、2シーズンまでリリースした後、制作費の問題から継続の中止が危ぶまれていた同作品の権利を買取ったのは、世界的ラッパーでアーティストのDrake(ドレイク)。 元々番組のファンであったドレイクは、制作費の出資を申し出ただけでなく、最新シリーズで俳優として参加しているという。
そんな話題が尽きない最新シーズンは今年配信予定で、先日ロンドンで開催されたドレイクのツアーにて、そのトレーラーが発表されたばかり。 ドレイクが参加し、ドラマの内容同様に思わぬ方向へと進んでいく新シーズンでは、誰がトップボーイ(主役)となっていくのかも見所だ。
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泣ける新感覚ダークコメディFleabagから学ぶ、等身大な生き方
Fleabag(フリーバッグ)は、BBCとアマゾンが共同制作を行い2016年に放映が始まったダークコメディドラマで、日本では現在Amazon prime(アマゾン プライム)での視聴が可能だ。
タイトルにもなっているフリーバックとは、イギリス英語で「不快で卑しい」といった意味を持つ俗語で、奇妙なことに、主人公のあだ名として、終始物語は進行していく。
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主演と共に、作品の脚本と制作総指揮を務めるのは、 Phoebe Mary Waller-Bridge(フィービー・ウォーラーブリッジ)で、今イギリスでは、かなり売れっ子の女優作家だ。 気になるストーリーは、ロンドンでカフェを営む皮肉屋でアウトローなアラサー女性が、自殺した親友、無神経な家族、セックス依存といった、普遍的だがシリアスなテーマに、体当たりでぶつかり、生きる姿を生々しく描いたもの。
イギリスらしいひねりの効いたブラックユーモアで、際どい内容にもくすっと笑ってしまう瞬間が多い。 陽気で感情的かつ、破壊的に描いた同作品は、まさに泣ける新感覚のダークコメディとして話題を呼んでいる。
先日ファイナルエピソードがいイギリス国内で放映されたばかりであり、視聴者からはシリーズの存続を望む声が多数上がっているという。
見るほどクセになる、 Chewing Gumが描くロンドンの若者の日常
Chewing Gum(チューインガム)は、チャンネル4で2014年に放映が始まったクリンジコメディドラマで、日本ではネットフリックスでの視聴が可能だ。 主役と共に制作総指揮を務めるのは、女優で作家、シンガーソングライターの Michaela Coel(ミカエラ・コーエル)で、一度見たら忘れないインパクトのある見た目で、ファッション誌でも活躍する、一躍セレブの仲間入りを果たした売れっ子だ。 舞台になっているのは、トップボーイと同じくイーストロンドンの公営団地で、そこに住む若者たちの普通の日常を、ユーモラスかつ自虐的に描いており、実はミカエラの半自伝的な作品になっているという。
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若者が使うスラングや、独特なファッションセンスにも注目が集まり、見るだけでもイーストロンドンの世界観を堪能できるのも面白い。 ストーリーは、どうしても処女を失って自分を変えたい主人公トレーシーと、宗教的に異常な厳しさを持つ母、性に奔放な親友、奇妙な隣人など、とにかく全員キャラが強烈だ。 歌ありダンスありで、飽きが来ないテンポがクセになる作品だが、時にはどう受け取っていいか分からなくて恥ずかしくなるコメディセンスが視聴者を戸惑わせる。 こういった類のドラマを、イギリスではCringe Comedy(クリンジ コメディ)と呼んでおり、視聴者も笑いのポイントを自身で探していくような作業感が得られるのも、また魅力となって人気を呼んでいる。
尚、シリーズは2シーズンで完結しており、ミカエラは別の新ドラマを制作中で、ファンからは、期待の声が寄せられている。
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今回紹介した、実際にイギリスの若者の間で人気がある、イギリス発の最新個性派ドラマの3作品たち。 見るだけで、ロケ地からキャストまで、日本ではあまり知られていない、リアルなロンドンの世界観にどっぷりと浸れるような魅力に溢れている。
この機会に、ドラマシリーズを通して、新たなイギリスの魅力を発掘してみるのも面白いかもしれない。