【連載:イイオトナって一体何?】BLUE ENCOUNT 田邊駿一が出会った”今を自分なりに解釈する”オトナ達

イイオトナになりたいけど、いまいち目標が定まらずに彷徨っているミレニアル世代の若者のために、同じ世代で活躍するアーテイストやクリエイターの方々に、それぞれの「イイオトナ像」を聞き、ミレニアル世代の理想のイイオトナ像を提案する連載企画。
第3回目の今回は、新曲ポラリスのリリース&Zepp Tokyoでのワンマンも控えたロックバンドBLUE ENCOUNTのボーカル田邊氏が登場。どこかあどけなさが残るルックスと、観客を1つにさせる熱くエモーショナルなリリック。そのギャップに衝撃を受けたリスナーも多いはず。そんなロックキッズ達の憧れ、田邊氏が想い描く”イイオトナ"とは?

まず早速、田邊さんが思うイイオトナとは何だと思いますか?

僕が出会ってきた大人の人達でかっこいいと思えたのは、いつだってその時の状況を楽しんでいる人だと思いますね。
やっぱり成功してる人や大金を貰ってる人は、周りからすると羨ましいなぁとしか思わないですけど、でもその人はその人なりの大変な現状があるんですよね。でもイイオトナって、そういう状況でも「まぁ楽しいんだよね」って言ってる人なんですよ。愚痴を言いながらも「でも俺じゃないとそれできないでしょう」って。だからこそそういう中で成功されてるんだろうなと思います。

具体的に、イイオトナだと思った方はいますか?

鹿児島のおじちゃんですね。おじちゃんって俺に音楽教えててくれた人なんです。この前初めて2人でギターをセッションして、めちゃくちゃ古い戦後すぐのブルースとかジャズのマニアックなレコードや CD を聴かせて貰ったんです。
これほんと最近知ったんですけど、実はおじちゃんって元々デビューまでこぎつけてた人だったんです。若い頃にフォークデュオを3人組でやってて、でもまぁ色々あって志半ばでやめて。で、「でも俺は諦めて今ここにいるんだよね」って言ってる顔が超良かったんですよね。それで今は整備工場やって、めちゃくちゃいい顔で今を楽しんでる。ほんとちょうどこのお話が来るタイミングってのもあったのかもしれないですけど。そうゆう大人の話っていうのを目の当たりにしたんです。
「ちょっと恥ずかしいけど、俺また親父バンドでやってんだよ。ちょっとこれ見てけ。」っておじちゃんが作詞した紙みたいなのをもらったんですよ。「俺らは負けを知っている。だから俺らはこの先が見える。」って書いてあって、「めちゃくちゃ良い歌詞書くやん!今からデビューイケるやろ!」みたいな(笑)。

正に田邊さんが思うイイオトナ像を具人化した様なおじさんですね。

やっぱりイイオトナは、最前線で活躍してる人も、一回挫折して今という場所にいる人も、今を楽しんでるんだなぁと思えて。改めてオトナって言うのは、諦めを認めることでも勝ちを認めることでもなくて、今をどんだけその自分なりに解釈して楽しんでるかっていうことなのかなと思いましたね。

田邊さんにとって、そのおじさんが理想の大人の位置にいたということでしょうか?

そうですね。それこそ高校の時にバンドを組んだんですけど。そのきっかけはおじちゃんがくれた、チューニングも全然合わないようなアコースティックギターだったんですよ。それをくれたとこから始まって、バンドで飯食いたいと思って、そこから親だったり先生だったりいろんな人に反対されてたんですけど、唯一応援し続けてくれたのはおじちゃんだったんですよね。
負けを知ってるからこそ、それも悪くないんだよっていうのを教えたかったのかもしれないです。最悪俺がデビューもできずに志半ばでバンド終わったとしても、おじちゃんはずっと応援してくれるだろうし。

田邊さんはおじさんの様なオトナになれていると思いますか?

俺はまだまだガキだなって思います。趣味だったりなんだっだり、ちゃんと自分の目線で楽しんでる人になれてないですね。俺、芸能人で言うと所ジョージさんが好きなんですけど、所さんは本当に趣味が好きで、でも仕事もちゃんとめちゃくちゃこなす。俺は余裕がない時は、家帰っても寝るだけみたいな。好きなエアガンを眺める時間もないし、メンテナンスする時間もないし、その分寝る時間に費やしたいって思ってたんです。でも 所さんのドキュメンタリーで見たのが、どんなに忙しくても朝方まで好きなものいじってたり、バイク作ってたりする姿で、それを何とも思ってないんですよ。

自分が心の中から本能的に愛せるものが趣味だと思ってるので、それをまだ「じゃあ時間ねーから無理だな」と思ってる時点で違うなと。そういう意味では今回鹿児島に帰って久々におじちゃんとセッションして、趣味の部分でいう音楽の気持ちよさを久しぶりに体感しましたね。

仕事ではない音楽の楽しみ方というのは、意識する部分なのでしょうか?

それこそちょうど今、ポータブルCDプレーヤーをずっと探してるんですよ。というのも、おじちゃんからすんごい量のCDを貰ったんです。めちゃレアなやつもあって、家で聴こうと思って帰ったらCD再生できる機械が無かったんですよ、プレステ4も対応してなくて(笑)。俺ちょっとショックで、こんなに CD 作ってるバンドなのにって。俺何やってんだろうと思って、焦って今CDプレーヤー探してるんですけど(笑)。
改めて俺ってCDというものを、そう言う感覚でしばらく聴いて無かったんだなって思いましたね。

最近田邊さんが思う、イイオトナな行動はありましたか?

前よく行ってたコンビニで、万引きを見ちゃったんですよ。レインコート着た小学校低学年くらいの子の。ずっと周りを気にしながら商品選んでて、内ポケットにパって入れたんですよ。レインコートってすごい通気性良く作ってるじゃないですか、だから表から見たら全部丸見えで、結構入れてたんですよ(笑)。すごい迷ったんですけど、その子を注意しに行ったんですよね。「うぃ!」つって(笑)。「ポケットからあるもの出そうか」って、カゴをその子の横に置いたんです。
大人になったなって思ったのは、その時に「お店出たらこうゆーのってアウトだから、今ここに出して、ここに置いて帰りな。したら俺何も言わないから」って言えた事ですかね。駄目って強く言うんじゃなくて「これにも色んな人がお仕事してね、汗水働いて作ってんだよ」って言って、その子にどう納得させるか考れたんですよね。それをただ叱るっていうのはできるし、吊るし上げることもできるけど、その子が繰り返さないようにするためを考えたって言うのは、オトナな行動だったかなと。

僕らはレコード会社や事務所のスタッフさんのことを、よく大人って言ったりするんです。俺らってやっぱ色んな人から支えてもらって、大事にされて育ってきたけど、その出来事で初めて「大人だぞ俺」って自立して言えたかなと思いました。

今まで、大人にグッと近づけた瞬間はありましたか?

そうですね。大人に近づけた瞬間のジャブ程度だったら、ビールがうまいと思った瞬間ですね。それこそ20歳になっても、ビールって旨くないじゃないですか。なんか分かるでしょ?アルコールの味としては旨いかもしれないけど、やっぱり何かを終えた後のビールの美味しさを感じた瞬間は大人だなと思いました。
今年で言うとすげー良いアルバム作れた時の一杯とか、1日中キャンペーンやらせてもらった後に打ち上げで飲むビールとか、本当に色々ありますね。

因みに、今までで1番お酒が効いたステージは?

もうね、それはね、自分達の武道館ですね。ライブばっこーんやって、打ち上げ会場でお疲れさまでしたーってやって、うわーって飲んで飲み散らかして、樽全部ビール飲むくらいの感じを武道館の会場入る前にイメージしてたんですよ。でも、まず打ち上げ会場でウーロン茶しか飲めなくて(笑)。

それは何故でしょう?

なんだろうなぁ、有難いことに1万2千人くらいの方々を目の前にする事ができて、ずっと色んな所に思いを張り巡らして、想像以上に先の未来をちゃんと予測して歌ってた自分がいたんです。
なので、打ち上げの時はもう、本当放心状態で(笑)。で、家帰ってガチャンって家カギ閉めた瞬間に足がもう震えて、膝から崩れ落ちちゃったんですよ(笑)。なぜか分らないですけど、リュック背負ったまま、匍匐前進で冷蔵庫の方に進んだんです(笑)。で、冷蔵庫開けて、ビールのロング缶をもうカシャッて開けて、飲んで、「うめ~〜〜っ」のまま寝てしまって(笑)。朝起きたら、冷蔵庫の前で、冷蔵庫も開けっぱ(笑)。でも、そのビールの味は超うまかったですね。本当にちょっとしか飲んでないんですけど、何杯も飲む一杯よりも、喉を湿らせる一杯がね。凄いうまかったなっていうのはありますね。

メンバーの皆さんでも飲まれたりするんですか?

そうですね。今年になって結構飲んでますね。つい最近で言うと、9月に愛知県で、TREASURE05X 2019 & “HERE WE GO AGAIN”っていう大きいフェスがあったんですけど、それで僕ら大トリやらせていただいて。台風も来てたんで、物理的に帰る便がなかったんです。絶対に帰れないみたいな感じになった時に、その会場の近くの豊橋っていう駅で、まぁちょっとみんなで飲もうぜっつって。でもまあ台風が来るんで、美味しい居酒屋さんももう閉まってるんですね。なので、最終的に駅前で皆で地べたに座って、ずっと缶ビール開けてました(笑)。

ずっと外で!?

そう外で!しかも強風(笑)。何本もその風であおられて犠牲になり、その都度買いに行きみたいな感じでずーっとお酒飲んだのを覚えてますね。気づいたら夜9時から飲み始めて朝の4時ぐらいになってましたもんね。それぐらいずーっとです(笑)。

メンバーの皆さんで一番イイオトナだなと思う人は?

うちのベースの辻村ですかね。見た目がヤンキーなんですけど、元ヤンですし(笑)。でも彼が1番熱いし一番ピュアなんです。
僕って、元々理数系の学校を出てるのもあって、今ここでこれをやっておけば後が楽だとか物事を効率的に考えちゃうんですよ。ある時、辻村から「お前はもちろん頑張ってくれている。ただ今、音楽を楽しんでんのか?」って珍しく言われて。確かに最近そういえば、ライブとか見に行ってねーもんなーって思ったりもして。嘘みたいにそっから、じゃあどういう曲が今いいよとか、どういう洋楽アーティストとかいいよとかっていうのも、どういうバンドにもっとなんなきゃっていう熱い話も、本当インディーズぶりにしましたね。そう言う初心の気持ちを気付かせてくれるのが、うちのベースなんです。

4人だけの LINE グループがあるんですけど、業務連絡しかしなかったんですよ。今はYouTubeのURL貼って、「これめっちゃ良いよ」とか、「このインスタのアカウントのこのプレイヤーの動画がすげー良いから」とか送りあってますね(笑)。後は、この前ジェイコブ・コリアーのライブに普通にチケット取って、4人だけで行きました(笑)。その前に打ち合わせだったので、時間が間に合わないって4人でタクシー拾って、「運転手さん急いでください!恵比寿まで!」つって、走って「入り口どこだー!」みたいなの久々にやりました(笑)。ライブ終わりは恵比寿駅の改札の前でずっと「いやーあれよかったねー」みたいな感じで話して(笑)。ピュアさを教えてくれて、一番良い意味でガキな存在は辻村なんです。彼のそういう所に凄く感化されていますね。

年を重ねるからこそ忘れるピュアや楽しむ気持ちは、田邊さんが持ついいオトナ像と繋がりますよね。

やっぱり、ジュブナイルな気持ち、少年の気持ちを持ってんだけど、それをちゃんと大人に反映できてる人が一番かっこいいのかな。やっぱこう、年々大人になるって何かを知っていくことだと思ってるので。色んなできることも分かって、できないことも理解していく中で、その中で楽しめるのを全力でやってるのが今なんだなって思いますね。そうしたら自然と出来ることが増えていくんでしょうね。って思ったからこそ、僕も音楽理論をもう一回勉強し直したりとか、それこそいろんなものをルーツで聴き直したりとかしてる最中なので、今が1番面白いですね。

新曲ポラリスの「あの日守ると決めた」というフレーズが印象的ですが、年を重ねるにつれて、ここだけは大切にしたい、守りたいというものは出来ましたか?

やっぱり大切にしたいのは俺らの音楽をずっと聴き続けてくれてる人。今まで出会ってくれた人、今年出会ってくれた人もそうですし、俺たちの曲を大事にしようと思ってくれてる人、スタッフさん達もみんなずっと守っていきたいです。勿論、これから出会ってくれる人も守りたいです。
というのも、その人たちが辛い時に聞く音楽が俺らであればいいなと思うので、そこはピュアなアーティストとしての願いでもありますし、だからこそ勝ちたいのは自分と言うか。

僕、中学の時に出会ったイイオトナで言うと、社会科の先生がいたんです。その先生がよく「己に打ち勝て」って言ってて、今でもそれをよく覚えてるんですよ。中学の受験なんて多分一番多感な時期の言葉を未だに覚えてるって事は、やっぱなんか自分の中でマッチングしたものがあるんだなと思うくらい。

己に打ち勝てって今も思ってるってことは、伸びしろを期待してる自分もいるんですよね。歌が上手いっていうのは、キーが出ることだけじゃないですよね。ちゃんと自分がリズムを引っ張っていけるかとかそういうのも含めてなので。今やらなきゃいけないことってすごい山積みだなって思ってます。まさにその打ち勝つべきは自分の歌、自分の能力や努力に対して勝ちたいなっていう、自分がいますね。

田邊さんのMCだったり発言で、皆さんのことを、”あなた”とおっしゃるじゃないですか。そこは守りたい人達への思いを込めて選ばれているのでしょうか?

そうですね。やっぱり、より大切な人にむける言葉が「あなた」だなって思っています。インディーズの20代前半の時、「あんた」って言ってたんですよ、もちろん好きだったんですけど、なんか限定されるなっていうのがあって。当時は「 あなた」って言うのが恥ずかしくて、現実と逸脱できる場所であるライブでも言えなかったんですよ。「あなた」って言えるようになったのはメジャーデビューした時期ですかね。本当にそういう意味でも1個1個皆さんの支えで夢が叶えられてる時に、自信がついたんだと思いますね。

「あなた」っていう言葉は俺だけの言葉じゃないので。皆が思って、メンバー全員が想ってることでもあり、周りのスタッフチームの皆さんが想っている言葉でもあるんだと考えたら喋りやすくなったんですよ。「あんた」って言ってた時は、ただ単純に真ん中に入る田邊駿一が言ってただけで。だから多分言えてたと思うし、恥ずかしげもなかったんです。今は本当の自分に立ち返った時に、恥ずかしさはなく「あなた」と言える様になったと言うか。なんかそっちの方が優しくなれたんですよね。自分にも相手にも。

「あなた」は田邊さんにとってオトナへのバロメーターでもあるんですね。

言葉って本当に何か色々力があって、もちろん「お前ら」って時もありますけど。言ってる時の自分をあんまり好きじゃなかったりとかするんですよ。「お前らもっとついて来いよ!」って言ってる自分、「あー嫌い」みたいな感じになっちゃってたりとか、「今日のタナベくん違うよー」みたいに自分でなったりとか(笑)。「あなた」って言えてる時って、100%もしくはそれ以上の数字のパーセンテージで相手のこと信頼できてるのかなと。
「お前」って言ってるときは、やっぱり普段弾いてる楽曲なのに、もう指とか血まみれになってるときがあるんですよ。余裕がないから何か壊そうとして自分の中で言霊になっているのはありますね。あーもうすごいなと思う時は、もう本当に優しーく喋ってるときがあるんですよ。本当その言葉全部が会場を引っ張ってるみたいな時は、一切叫ばなくてもいい時とかだったりするんで。
スタッフさんとかテックさん、色々やってくれてる人達が泣いてる時はちょっと嬉しいですもん。ずっと一緒にいるチームなのにまだそれが出来てるって事は、まだまだ探求出来る事があるんだなと思います。

【BLUE ENCOUNT】

熊本発、都内在住4人組。熱く激しくオーディエンスと一体になり、ダイレクトに感情をぶつける熱血なパフォーマンスが話題のエモーショナルロックバンド。2014年9月にEP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー。そしてメジャーデビュー5周年、バンド結成15周年となる2019年、6月に渾身のミニ・アルバム『SICK(S)』リリースし、バンド史上初のホールツアーを無事成功させた。9月には日本テレビ系土曜ドラマ「ボイス 110緊急指令室」の主題歌「バッドパラドックス」をリリース。11月21日には全国ライブハウスツアーファイナルを迎える。

【リリース情報】

11/20にリリースされた新曲「ポラリス」は、読売テレビ・日本テレビ系全国29局ネット(※一部地域を除く)『僕のヒーローアカデミア』第4期オープニングテーマとして起用が決定した。「バッドパラドックス」で見せた新たなアプローチを残しつつも、これぞブルエンと言える熱さと愚直さを持ち、聴く人の心を支えるような真っ直ぐな歌詞が印象的な楽曲になっている。
常に全力のパフォーマンスとシンプルで熱いメッセージを愚直なまでに伝え続ける彼らの姿勢に共感が止むことは無い。

■発売日:2019年11月20日
■タイトル:ポラリス
■タイアップ情報:読売テレビ・日本テレビ系全国29局ネット(※一部地域を除く)『僕のヒーローアカデミア』第4期オープニングテーマ

◆初回生産限定盤(CD+DVD)
価格:¥2,200(税抜)
<CD>
1. ポラリス
2. girl
<DVD>
Studio Live “to B.E. continued”2019.09.18
1. バッドパラドックス
2. DAY×DAY
3. FREEDOM
4. 幻聴
5.ポラリス
6. だいじょうぶ
7. はじまり
8. to B.E. continued 2014〜2019

◆通常盤(CD)
価格:¥1,100(税抜)
<CD>
1. ポラリス
2. girl

◆期間生産限定盤(CD+DVD)
価格:¥1,500(税抜)
<CD>
1. ポラリス
2. DAY×DAY
3. だいじょうぶ
5. ポラリス(TV size)
6. ポラリス(Instrumental / TV size)
<DVD>
「僕のヒーローアカデミア」ノンクレジットオープニングムービー