【学生時代にタイムスリップしたら何を聴く?】「パンクは”自分でも出来る”って思わせてくれる」オカモトレイジが選ぶこれからも愛すべき6曲とは。

国内外で活躍するアーティストやクリエイターに、テーマに沿ったプレイリストを作成して頂く連載企画。第3回目の今回は、今年CDデビュー10周年を迎えたOKAMOTO’S からオカモトレイジが登場。「学生時代にタイムスリップしたら聴きたいもの」をテーマに6曲を選んで頂いた。
学生の頃も今も聴き続けている名盤はもちろん、成熟した今だからこそ分かるポップスの魅力も要チェック。机上の空論は無しにして、みんなもレコード屋やCDショップに足を運んでみよう。あなたが見ている音楽の世界、実はこの世界の一欠片でしか無いのかもしれない。

1.SITTING ON THE FENCE/ The Roosters

高校生とか、中学生の時に聴いていた音楽って、結構二極化してますね。「今は聴かねーな」ってやつと、「一生聴くな」みたいなやつと。例えばずっと聴いている曲は、The Roosters(ザ・ルースターズ)っていう80年代の日本のバンド。The Roostersはめちゃくちゃ今でも好きだし、高校生の時も大好きだったんで、一生聴くだろうな。

– The Roostersの中でも『SITTING ON THE FENCE』を選んで頂きましたが、聴き始めたきっかけは?

父親にオススメされたんだったっけなー。なんも覚えてないけど、とにかく日本のロックの名盤って感じ。レコード屋とかに行っていれば壁に飾られてあります。

2.Can’t Stop/ Red Hot Chili Peppers

あとはレッチリ。Red Hot Chili Peppersの『Can’t Stop』かな。

-これも1つの軸でいうと、これからも聴き続ける曲でもあると。

そうですね。

-ずっと聴く曲と聴かない曲の違いは何ですか?

今言われて気づいたけど、当時リアルタイムだったのか、当時も今も後追いで聴いたのかってのはデカイいかもしれないです。
当時リアルタイムで聴いていたのだとGreen Day(グリーンデイ)の『American Idiot』とか、Good Charlotte(グッドシャーロット)ってバンドとかかな。後追いでThe RoostersもRed Hot Chili Peppersも知ったんで。そういう後追いで知ったものは、ムーブメント関係なくセンスで残って自分に突き刺さったものがあるから、多分そういうものの方が一生聴く感じはありますね。

3.She Wants To Move/ N.E.R.D

でも高校生の時にリリースされた曲でも一生聴く部類もあるんですよね。N.E.R.D(エヌイーアールディー)の『Fly or Die』ってアルバムはめちゃめちゃ思い入れのあるアルバムなんで。

-どういう思い入れが?

『She Wants To Move』を人生で初めてドラムでコピーしたんですよ。それで「できんじゃん」と思ってドラムをちゃんと始めました。N.E.R.Dがなかったら、俺ドラムやってないと思うんです。これは当時リアルタイムで出たんすけど、ずっと聴いてる。

4. Be Like Me(feat. Lil Wayne)/ Lil Pump

-近年リリースされた曲で、これ当時聴いてたらやばかっただろうなっていうのはありますか?

トラップ全般そうかな。トラップの感じは絶対好きだったと思うんですよね。Lil Pump(リル・パンプ)のアルバムとかはマジでわかり易くて最高。すごいんですよね、この曲が世界でヒットする?みたいな、単純明快っていうか。

Ramonesも一生聴くと思うんです。音楽にしろファッションにしろひとつ、パンクの本質的な部分を言葉にするとすれば、パンクって髪の毛ツンツンにしたり革ジャン着たり、勢力に反抗するみたいな感じ。捉え方は人それぞれであると思うんですけど、受け取り手に「これなら俺もできる気がする」って思わせられるっていうのもかなり大事な条件だと思ってて。Ramonesって演奏とかマジ超簡単なんですよ。正に「俺でも出来るかも」って思わせてくれる。それって超パンクだなと思うし、トラップもね、「これなら俺も出来そう」って挑戦出来る要素が凄く多いので、当時の自分もそこで色々チャレンジ出来てたのかなと。

5.Look At Me!/ XXXTentacion

「自分でも出来る」って思わせてくれる音楽は、きっかけを与えてくれますよね。そういう煌めきや一瞬のトキメキみたいなのが完璧にコンパイルされている。「ノリでやっちゃえ、やっちゃった、できちゃった」みたいな。本当に今のトラップとか、アメリカのヒップホップとか、16歳の子とかが億万長者になってたりするんで。それでみんな「これなら俺も出来る」って思える。

XXXTentacion(エックスエックスエックステンタシオン)っていうすげー問題児で色々な犯罪とか暴行事件とか起こしてたラッパーがいるんです。その人が凄い安いマイクでレコーディングして、それがかっこいいってなっちゃって、めちゃくちゃ音が歪んだヒップホップが流行るんですよ。そういうパイオニア的な事が未だに起こるんだ、みたいな面白さがヒップホップにはある。
バンドとかロックとか、そういう編成の音楽ってもう大体のこと70年代にやり尽くされてるんで。あまり死ぬほど新しいってのがないっていうか。実験音楽になっちゃうのかな。やっぱ今ヒップホップだったりラップの音楽は「わー次こうなってくるんだ」っていうトレンドが分かりやすくて面白いです。

6.Psycho Therapy/ Ramones

Ramonesは洋楽のバンドだったら、1番好きかも。家でずっと流れてて、3歳くらいからずっと聴いてます。MVも込みで『Psycho Therapy』がめちゃめちゃ好きです。赤ちゃんでも歌えるみたいなポップさも良い。特種メイクで精神病の人が暴れるみたいな、ビジュアルもMVも凄いです。

成熟した今だからこそ楽しめる、ポップスやカルチャー達

-プレイリストから話が逸れてしまうのですが、今の学生の子達にとって、音楽の価値観や行動範囲が広がるような聴き方や曲はありますか?

最近いろんなインタビューで答えて思うことがあって。今は検索したらすぐに音楽を聴けるじゃないですか。俺らの時代は、1枚2~3000円でCDを買って、当たりかハズレかもわかんない。一喜一憂して友達と交換して、「俺はこっちの方が好きだった」とか知識を自分のフィジカルで蓄えてたんです。
サブスクが用意されましたってなった時に、俺はその頃の知識があるから、検索のバーに打てる文字を知っているんですよ。ただ、サブスクで育った子達は、検索する文字を知らなくて、結局サブスクが作ったプレイリストやアルゴリズムで算出された音楽にしか辿り着けなくなってる。可能性がすごい広がったようで、実はめちゃくちゃ狭めてるというか。

いつの時代も結局そうなんですよね。実はいろんな音楽に出会えそうだけど、プレイリスト聴いていたら、結局出会えてないんですよね。レコード屋さんとかに買わないにせよ行ってみて、気になるジャケとか、聴いてみたいなって思ったやつを買って帰って聴くっての一番楽しい。学生はお金が無いのも分かるし、キリないし、そこまで音楽が好きなやつも多分一握りしかいないと思うんで。そういうのを覚えたりメモしたりとかして、家に帰ってから検索して聴くみたいな。そういうワンプロセス経て辿り着くみたいなのは結構楽しい気がしますね。それがフィジカルで覚える知識になってくると思います。

-確かに情報が溢れすぎて、脳内に貯蓄されていない感覚があります。

正直、「もう音楽増えなくて良いんじゃね」ってすげー思います(笑)。ちょっと前に『NO MORE MUSIC』ってタイトルのアルバム出したんですけど。サブスクとかでも新譜が出まくるから、全部聴きたいけど聴ききれないし、「一旦もう1年間ぐらいリリース止めてくんね」って思ったんです(笑)。それでこのタイトルになったんですけど。

聴いて超良かったって気持ちの高ぶりが、高校生の時と全然違うというか。当時はレッチリとか1万回ぐらい聴いてましたもん。でも今超良いって思っても1、2回通して聴いて超良かったで終わっちゃう自分がいて、それが悔しいですよね。DJやってると、アルバム通して聴くわけでも流すわけでもないけど、この曲超良いと思った曲は毎回かけて客とその良さを共有してますね。

-DJで毎回かけている曲は?

髭男(Official髭男dism)は毎回かけてますね。髭男はやっぱすごい。でも高校生のときはハマらなかったかもなー。
髭男は、当時の学生もみんな好きだろうし、だからこそ、俺が高校時代に聴いたら多分「だせー」とか言ってたと思うんで(笑)。そういうド直球のポップスの良さが分かるのは、超普通の人か成熟したひねくれ者みたいなイメージがあるんですよね。まだ学生時代の俺は成熟してなかったんで(笑)、髭男は今回のテーマには当てはまってないかもしれないです。

-K-POPはどうですか?

K-POPはカルチャーとして好きなんですよね。アジア人が世界進出する前提で、そもそも最初から組み込まれてるプログラムっていうのが、俺はすげーなって思う。音楽としては、当時の自分にオススメするつもりはないですね。
だって俺でも出来るっていうものの対極だから。完璧人間しかいちゃいけない世界じゃないですか。パンクやロックの真逆ですよね。

学生時代の自分に聴かせて、どういう反応が返ってくるか分かります。K-POPも成熟さが無いと分かんない部分があって。違う国の曲をこういう解釈でポップスにするんだみたいな。違うジャンルの人がそれを完コピして、なおかつそこに自分のカルチャーやカラーを入れていると凄い良い消化してるなと思います。

BLACKPINKの『WHISTLE』は、Juelz Santanaの『There It Go(The Whistle Song)』が元ネタなんですけど。このエッセンスをめちゃめちゃ可愛い女の子に、完璧な歌とダンスとラップでやらせてるセンス、やばっと思って。

そういうのも知識があってこその楽しみ方だと思うんで、高校生の俺に聴かせても、あんまりピンとこないかなぁっていう。だからその文脈を分かった上で、「うわ2ステップをこんなに上手にメロディアスにやるんだ」とか「ニュージャックスイングこんな上手に作るんだ」っていうのを完璧な美男美女が歌とダンスで見せてくれるカルチャーなんで。今だからこそ分かると良さだと思いますね。

プレイリストはこちらから

Photographer:Kazumi Watanabe
Interview&Text:Ayaka Yoshimura
Text:Sora Imaizumi

【オカモトレイジ】

4名で結成されたロックバンド、OKAMOTO’Sのドラマー。2010年、アメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演後、全米6都市でライブツアーを開催。同年19歳でメジャーデビューを果たす。2019年1月には10周年イヤーの幕開けを飾るフルアルバム「BOY」をリリース。また、4月6日(土)横浜BAYHALLを皮切りに、全国20か所21公演を回る全国ツアー「OKAMOTO’S10thANNIVERSARYLIVETOUR2019″BOY”」を敢行し、6月27日(木)にはOKAMOTO’S史上“最初で最後”の日本武道館ワンマンを開催。10周年イヤー、ますます加速を続け、現在はDJ活動など多岐にわたって精力的に活動を続けている。

SonyMusicLabels HP : http://www.okamotos.net/