【21Questions 】「今の時代のパンクを作りたい」 Momに聞いた21の質問

先日、最新曲『ハッピーニュースペーパー』をリリースした22歳の現役大学生シンガーソングライター/トラックメイカー、Mom(マム)。”クラフトヒップホップ”と言う新ジャンルを確率し、トラックは勿論、アートワークやMVも自身で制作する彼は、世情に乗る”なんだかイケてるアーティスト”なんかでは形容し難い。
彼には太陽の裏に隠れた、鋭い芯を感じる。その芯を太陽の光から垣間見る事が出来た時、Momと言うアーティスト像を捉える事が出来るのであろうか。

我々は、彼があらゆる表現ではぐらかす真意を見抜ける事が出来るのか。世情に踊らされる人間から脱する事は可能なのか。この21問で、そのきっかけとなる糸口を掴んで欲しい。Momの歌や詩、ビジュアル、ステージを見るあなたの”真実の眼”が開花するはずだ。

Q1:音楽に興味を持ったきっかけを教えてください

きっかけはB’zですね。小学3年生の時に喰いタンっていうドラマでB’zの曲が流れてて。そこから色々な音楽を聴くようになりました。

Q2:高校生の時はバンドを組まれていたと。当時とトラックメインの曲を制作されてる今、音楽の聴き方やディグり方は変わりましたか?

今は完全にサブスク主体なので、聴き方はまるっきり変わりましたね。高校の時とかは雑誌読むのが好きで、CROSSBEATやsnoozerのバックナンバーを読んで、それを参考にCDを買ってました。
今は自分が完全に作る側でやってるので、歌っている内容とその人のパーソナリティがちゃんと結びついてるのかを勘繰るようになっちゃいました。自分で普段曲書く時に意識している点ではあるので。リスナーとして少し性格が悪くなりましたね(笑)。

Q3:Momさんは、トラックやビートといった無機質な側面があるものに人懐っこいメロディをのせて上手く昇華されていますよね。人懐っこさを出すために意識していることはありますか?

無機質さっていうのがそもそも、自分の中のヒップホップが内在化されている結果だと思うんです。あとは純粋にリスナーとしてグッドメロディに惹かれるっていう側面もあるので、自然に好きなものがクロスオーバーされてるんだと思いますね。

Q4:ステージ上のMomのライトは、そういう温もりを出すため?

人間味みたいなところが大事だと思ってるんです。自分っていう人間が人に伝わることは音楽以外の面でも重要な気がしてて。ライトに関しても、自分がそれをやるっていう必然性を感じたからだと思います。
なんだろうな、温もりみたいなのはあんまり自分はしっくり来てないんです。むしろ逆張りとして、人懐っこさや温もりを出しているみたいな部分もあって。普段は多少毒のあることを言ったりとか、ちょっとトゲトゲしてるリリックもあったりするので、あえて可愛らしい風に見せたりもしています。だからそんなに直球で、可愛いとか人懐っこい部分を見せたいわけではないんです。

Q5:自分のことを一言で表すとしたら?

うーん、頑固です。腑に落ちないことがあるとずっと不機嫌な感じ(笑)。なんだろう、完璧主義ではないんですけど、自分の考えをあんまり曲げたくなくて、意固地です。意思が固い。

Q6:まさにクラフトヒップホップ、自身で形を作り上げていくためには大切な武器ですよね。

頑固さは大事だと思いますね。結構深夜に作業することが多いんですけど、1回寝て起きて聴いて「まじでクソだ」とかこき下ろしたり、自分に対してもそういうある種の手厳しさはあります。もっと出来るでしょっていうラインが日に日に高くなってる感じがして。決してストイックとかでは無いんですけど、難しい(笑)。

Q7:今まで影響を受けた方はいらっしゃいますか?

価値観みたいなのが凄く変わったなって思うのは、Chance The Rapper。 今自分がラップしてるっていう意識はあまり無いですけど、単純にそういうラップみたいな乗せ方をし始めたり、ヒップホップにのめり込むきっかけとしてChance The Rapperの存在は非常に大きかったので。

ヒップホップのガサツな感じが大好きですね。昔の音源を引っ張ってきて、自分達のビートに乗せてその上でラップをするみたいな。リスペクトとか繋がりがあって引用しているパターンもあれば、「この音いいじゃん、じゃあ使っちゃおうぜ」みたいな感じで使っちゃうパターンもある。ダメなんですけどね(笑)。そう言うギリギリの表現をしている所も好きですね。それでいて自分の内から湧き出てくるものには正直というか。そこが凄く新鮮で、こんな音楽あるんだなって素直に思いました。

Q8:ちょうど1年前にMomさんを見た時は、トラック系の楽曲をメインでやられていて。最近はギターも用いられていますよね。元々ギターやられたっていうのもありますが、ちゃんとステージで用いるようになったきっかけはあったのでしょうか?

そうなんです。急にやり始めたんですよね、なんでだったかな(笑)
元々ギターが好きだったからっていうのもあるんですけど、ビート感の無いものやフォーキーな楽曲が増えてきたので、ライブでも取り入れる様になりましたね。

ライブ始めたての頃は特に宅録っぽさやオタクっぽさを全部無くそうって思ってたんです。日本にも宅録のアーティストさんいらっしゃって、そういう密室性の高い音楽も僕自身好きなんですよ。でも、ヒップホップを自然に聴いてきた世代の”宅録っぽさ”ってあんまり無いんじゃないかなと。それもあって当時は楽器を持たずに身軽な感じ、マイク1本でまずはやろうって意識していました。

Q9:今、ライブで意識していることは何ですか?

うーん、なるべくラッパーっぽくしていますかね。それこそChance The Rapperのパフォーマンスを見て、変に演じずに、ちゃんとお客さんと意思疎通ができているのが凄くいいなあと思って。ちょっと実験的な音楽とかだとどうしてもお客さんが置いてけぼりになっちゃいがちではあると思うんですよ。それも1つのライブの在り方として素敵だと思うんですけど、僕は1人でやっているスタイルで、お客さんを巻き込まないのはちょっと意味わかんないなって思って。お客さんも一緒に歌ってくれるような一体感を作ろうと思っています。

Q10:印象に残ったステージはありますか?

サンリオピューロランドでやったライブはすごく良かったです。内容はもちろん、お客さんとも意思疎通出来て、みんな馬鹿になれてた。空間的にも深夜の遊園地で、みんなテンションも上がって、ちょっと浮ついてる感じがなんか、クラブがあの場に拡大したみたいな感じで良かったですね。みんなで歌うのはやっぱり楽しいです。

Q11:11月6日に『マスク』、その後11月27日に『ハッピーニュースペーパー』と短期間に2曲リリースされた訳ですが、メロディー的には結構両極端な曲ですよね。この2曲のポイントは何でしょうか?

サウンド面の話をすると今までGarageBandっていう、Macに元々入ってる フリーのソフトを使ってたんですけど、そこからアップデートしてLogic Pro Xっていう、上位互換みたいな感じのソフトを使いました。音がよりくっきりしましたし、自分のやりたい音のニュアンスをたくさん盛り込めているかな。

-確かに、『マスク』のサビにかけてのトラック入る感じも、良い意味でわかりやすいというか。

結構大味ですよね、そこもいいなと思う。詩に関しては、『マスク』も『ハッピーニュースペーパー』も、決して遠くは無い。すごい大袈裟な感じなんだけど、ちゃんと今の俺たちのこと歌ってる。雰囲気は一見すると両極端なんですが、内容としては2曲がちゃんと同じ方向に向いてると思います。

Q12:『マスク』のミュージックビデオ、前半と後半でガラッと雰囲気が変わるじゃないですか。ジョーカーを意識されたとか?

実はジョーカーは全く関係ないんです(笑)。時期が偶然被っちゃって(笑)。でも結構そういった反響が多くて。このタイミングで出せたことはむしろ良かったなって思います。生活しててふと感じる危うさとかすごいあって、ジョーカーっていう映画も絶対に他人事ではないなと。あれを「やばかったね」で済ませちゃいけないと思うんですよ。

だからそういう意味では、同時代に自分が作ったものと、ジョーカーの内容が上手くリンクしたのかなって。MVもエクストリームに作ろうとは思ってたので、細かい所までこだわってやって良かったなって思います。

Q13:『ハッピーニュースペーパー』はどうでしょうか

詩に関しては、決して明るくはない。マスクと同じくちゃんと緊張感を持って歌ってますね。明るいメロディーだけど、攻撃的な面が顔出す瞬間がかなりあるかな。

Q14:歌詞の中にも「99年 大予言」や「襲う大怪獣ガメラ」など映画やアニメに出てくる様な情景をイメージしたのですが、インスピレーション源などはあったのでしょうか?

確かに固有名詞は特定の映画のこと歌ってたり、細かい引用が入ってたりしてるんですけど、イメージとしてはニュースペーパーをぱっとばらまいて、そこに群らがる無邪気な人達みたいな。それを俯瞰で見ているっていう印象。伝えたいことは、”踊らされるだけの馬鹿になっちゃだめだよ”っていう、本当にそこだけなんです。それを騙くらかす要素を沢山入れてます(笑)。

Q15:映画はよく観られるんですか?

そうですね、好きです。全然最近の映画じゃないんですけど、最近観た中では『あなたに触れさせて』っていう映画が印象的でした。映像がずっとパステルっぽい感じなんですけど、内容とのギャップが斬新でした。

Q16:同世代に対して思うことや感じることはありますか?

自分も普段生きててすごく感じるんですけど、情報が都合良く入りすぎてるなって感じます。それを鵜呑みにしないで、ワンテンポ置く感覚がみんなすっぽ抜けてる感じはしますね。感覚が馬鹿になってる。

Q17:Momさんがワンテンポ置くために意識してることは?

何にしても無関心は良くないなって思ってて。例えば誰か悪いことして、それに対してみんながこう槍投げてるみたいな状況でも、そこを多角的に見なきゃ駄目だと思う。冷静に物事の色んな面を知ろうとする姿勢は常に大事だなって思っています。

Q18:今後挑戦したいこと教えてください

聴いてる人によりダイレクトにくらわせたいです。今の時代のパンクを作りたいです。

Q19:ちなみに、今までのご自身の楽曲で、ここはダイレクトに伝わったフレーズや曲はありますか?

あんまり無いんじゃないですかね。伝わってるなっていう感触がまだ無いですね。

Q20:そういう感触はYouTubeのコメントやオーディエンスの反応などをチェックしたりも?

具体的に目を通すのが怖くてあんまりしてないんですよ。結構打たれ弱いので(笑)。なんだろうな、まだ自分の作る歌に対して、”なんかお洒落”だとか”なんか可愛い”とか、そういう漠然としたイメージばかりが目立つのかなって思ってて。もっとディープな側面もちゃんと伝えて、がっちり心を掴みたいですね。どうしたらいいですかね、ずっと悩んでます同じようなことを(笑) 。時間をかけて伝えていくべきことだと思うので、そこは頑固にやっていきたいです。

そう言う意味では、ビジュアルイメージって本当にドラックだなって思います。
結局、「みんなこういうビジュアルとかレイアウト好きでしょ」みたいな感じで、流行りに乗っかってるだけのものって世の中に沢山存在するじゃないですか。良くも悪くもデザイン性きっかけで聴き始める事も、今はめちゃくちゃ増えたと思いますね。

-確かに、サブスクによってビジュアルで選ぶ事がもっとフラットになりましたね。

そうですよね、CDなんてもう敷居高いじゃないですか。今の時代っぽいですけどね。だからちゃんと中身のあることをしたいなっていうのは常に思っています。伝わらなくても、それは意固地にやっていきます(笑)。

Q21:最後に、リスナーの皆様にメッセージをお願いします。

いつも応援ありがとうございます。そこだけですね本当に。結構好き勝手やってる方だと思うので、本当に感謝しかないです。

Photographer:Kazumi Watanabe
Interview&Text:Ayaka Yoshimura

【RELEASE情報】

■digital single 『ハッピーニュースペーパー』

2019.11.27 release
https://linkco.re/5hnB80nE

■digital single 『マスク』
2019.11.6 release
https://linkco.re/UYCr1Tc8

■2nd album 『Detox』
NOW ON SALE
Life Is Craft / LIC-002 / ¥2,300+税

<収録曲>
1. Spike Jonze
2. 6
3. 卒業
4. プライベートビーチソング
5. Boys and Girls
6. talkaboutmyteacher
7. スーパースター
8. ブルー
9. Good Thinking
10. シングストリート
11. Anonymous
12. ひみつのふたり

13. Mr.Lonely
14. フリークストーキョー
15. 冷たく燃える星の下で

Mom

シンガーソングライター/トラックメイカー。現役大学生の22歳。
「カッコイイ」を内包した「カワイイ」クリエイティブを表現するため、音源だけではなくジャケットやMusic Videoなどのアートワークもすべて自身でこなし、隅々にまで感度の高さを覗かせる様は、言い例えるなら、次世代に向けた”CRAFT HIP HOP”。
すべてのトラックをMac Book一台で制作しているにもかかわらず、一度聴くと頭の中を支配する楽曲たちには、サウンド構築の緻密さや、あくまでポップスフィールドからはみ出ないキャッチーなメロディセンスが光る。
日本のHIP HOP/J-POP界にふわりと舞い込んだ、ハイセンスな新星として大きな期待が寄せられている。