【21Questions】「マッドとポップの間を行く」dooooに聞いた21の質問

約2年前”人肉MPC殺人事件”で逮捕された男が、偽札を使用した疑いでまたも世間を騒がせている。噂の小銭を入れると大金になるという”人間の口”をぶら下げて、渋谷のど真ん中に宍戸マザファカは現れた。シーンにおいて特異な存在感を放つDJ/ビートメーカーのdoooo(ドゥー)。クールな楽曲とは裏腹に、グロテスクだけどどこかコミカルな、一風変わったビジュアルを打ち出す彼のバックグラウンドや”人肉”への想いに迫る21問。そこには彼の純真な音楽やアートに対しての敬愛が垣間見えた。

Q1:出身とご年齢をお願いします。

僕は岩手県出身で、今年で33になりました。

Q2:「doooo」という名前の由来は?

名字が「宍戸」で、あだ名が”しっしー”だったんですけど高校ぐらいから”ししどぅー”になりまして。もう”しし”無くして”どぅー”でいいかなと思って。

Q3:ホラーやスプラッター映画、グロテスク路線の絵本の世界観に目覚めたきっかけは?

小学校の時に野球やって帰ってきたら、2個上の兄ちゃんがテレビで女の子がアキレス腱をハサミで切られている映画を見てて。えーっ何だこれ!って思ったんですけど結局最後まで見ちゃって。それからよく兄ちゃんが借りてくる怖いVHSを見るようになったのがきっかけですね。アキレス腱切るとかそういうのが特別好きというわけじゃなくて(笑)。そこからSFなんかも好きになったと思います。

Q4:小学校の時は周りにはそういうのが好きというのは伝わっていましたか?

周りには全然だと思いますね。普通に鬼ごっことかフットベースとか野球とかして遊んでるだけで、そういう話題は小学校の時は1回もしたことないないんじゃないですかね。中学ぐらいでみんなそういうの借り始めて、ビデオコーナーに R-15指定とかあるじゃないですか。人肉饅頭とか人肉焼売っていうのが流行ったり、人食い族っていうのが流行ってたり。あとグレムリンとかエイリアンとかメジャーな映画は中学ぐらいになるとみんな観てたので、そういう話を友達とできるようになりましたね。でもその大半はやっぱり人気があるエイリアンとかで、人肉焼売とかは僕ともう一人ぐらいしか見てなかったですね(笑)。ちなみに人肉◯◯という映画の話をしましたが、僕が作ってる人肉アイテムは直接この映画からインスピレーションを得た訳ではありません。

Q5:いつ頃音楽と出会ったのでしょうか?

それも中学の時で、DJ のターンテーブルが急に兄ちゃんの部屋に置いてあったんですよ。兄ちゃん新聞配達やってるなと思ってたんですけど、ターンテーブルを買うためにやっていたらしくて。それでめちゃめちゃヒップホップが兄ちゃんの部屋から流れてくるようになりました。その中でアイスキューブっていうラッパーの「You Can Do It」って曲ばっかりずっと流れてたんですね、兄ちゃんがはまってて。そこからヒップホップかっけーなって思うようになって、自分でもレンタルビデオ屋さんでビルボートのチャートに入ってるラッパーのCDを借りるようになってどんどん好きになっていきましたね。

Q6:DJやビートメーカーのような作り手になったのはいつですか?

高2の時に初めてレコードを買って集め始めるんですけど、ある程度枚数増えてくるとDJ やってみたいなって自然になって。高3の終わりにみんなでクラブでパーティーやろうぜってなって、それで本格的に DJ やろうってなりましたね。ビートは大学進んでからたまたまサンプラーを手に入れまして、そこから本当に遊びで「ワン、トゥー、スリー」とか声を入れて叩いて遊んでるだけだったんですけど、いつの間にか曲作るようになってました。曲を作ってる先輩が全然いなかったので、本当にこれは自然になりましたね。でも明確には思い出せないんですよね、いつ作り始めたって。曲としては残ってるんですよ。しかも今聞くと1曲目にしては割と手の込んだやつだったりして。当時は首都圏に比べて情報量が少なかったので、ずっと閉じこもって自分で試してやってたんですよね。

Q7:今のキャリアが始まったきっかけは?

岩手から川崎の溝の口ってとこに出てきたんですけど、最初は全然知り合いがいなかったんですよね。 SNS にDJミックスあげてたんですけど、それをBIMに「こういうミックス見つけたよ」って言ってくれた共通の友達がいて。それからBIMとメールでやり取りするようになりました。メールしてるうちに当時住んでいた家が300メートルくらいしか離れてないというのがわかって、会おうって。彼が家来た日に、作ってる途中のビートがあって、それ聞かせたらめっちゃテンション上がってくれました。「このビートでラップしたいのでください」みたいな事言ってくれて嬉しかったですね。

Q8:その時すでに音楽で食べていこうと決めてたのですか?

その時は全然そういうのなくて、単純に東京楽しそうだなと思って出て来ただけなんです。そもそもラッパーと作るっていうのもそれまでなかったので、BIMやin-dが初めてですね。ビートを作ってても全部インストで完結するような、Hip Hop要素が強めの曲でもラップが乗る余地なし、みたいなビートばっかだったのでラップを乗せるビートを作るのは新鮮でした。日本人のラッパーも当時はあんまり知らなくて。BIMがCDをどっさり貸してくれて、それ聴いたらすげーカッコイイってなりました。90~2000年代前半に出たアーティストの方の作品は聴いてたんですけど、同世代とか少し上の世代の方の曲を聴いてなくて。もっと聴いておけばよかったと思いました。

Q9:最近ハマってる、感銘を受けた作品はありますか?

ホラーじゃないんですけど、僕結構シュールな漫画が好きで「ネコノヒー」ってキャラクター描いてるキューライスという方の作品が好きです。あとほんと先日見つけた藤岡拓太郎という方もすごいシュールで毒のある漫画を書く人なんですけど、そういう人達の作品が凄く好きです。

Q10:そういった作品のディグリ方は?

中高時代からそういう漫画は元々掘ってて、その頃からずっとジャケ買いですね。僕が好きなタイプの絵があるんですけど、みんな共通してシュールなやつで。「ネコノヒー」はネットで回ってきたんですけど、めっちゃ面白いなと思って。最初は単純に可愛いネコだなと思ったんですけど、作品ちゃんと見てたら絵にも話にもこれ作ってる人やばそうっていうのが出てて。どんどん掘ってたらYouTubeにあげてる作品は凄くドープな映像だったりしたので、僕そういうの好きだし「ネコノヒー」みたいな可愛いキャラクターも好きなのでめちゃめちゃ好きになりました。僕って怖いものが好きな人だと思われがちなのですが、別にディズニーみたいな世界観とかのどかな絵本も大好きなので(笑)。そしてやっぱりGhetto Hollywoodさん、TABOO1さん、井上三太さん、小山ゆうじろうさんなどHip Hopの事をとり上げている漫画は大好きで読んでしまいます。

https://www.instagram.com/p/B5Wm0jjj_OT/?igshid=1o3p02u0eqw60

Q11:最近都内でハマってるスポットはありますか?

ちょっとヤバさがまた違うんですけど、溝の口に住んでてすぐ近所の二子玉川に「玉川大師」ってとこがあるんです。四国で神社回るお遍路ってのがあるんですけど、玉川大師に行けばまとめてお遍路出来るって超ヤバいスポットらしいんですよ。いいの?、ズルいと思って(笑)。洞窟みたいなところに八十八ヶ所の仏様がいるんですけど、修行とかを全部無視してまとめちゃったみたいな。まだ行けてないんですけど、めっちゃ気になる場所ですね。どんな経緯で作ったかわからないですけど昔も変なこと考える人いたんだなって(笑)。

Q12:人肉MPCについてですが、DJ やビートメーカーの方でこんなにビジュアルに凝ってる人ってあんまりいないと思うんです。見せ方のこだわりや信念などはあるんですか?

(人肉MPCの)きっかけが僕の1枚目のアルバムのジャケットに使おうということでやったんです。この MPC が一番長く使ってた機材だし、SFとかホラー好きだからその両方を一発で分かるようにしようという意味でやったんです。曲作りもそうなんですが、インストの曲は特に自分を炸裂させるという感じのものが多いです。僕の作品だなというのが一発で分かるものの方が面白いかなと思って。

Q13:最近人肉iPhoneケースのパクリが出たとTwitterが少しザワついてましたね。

最初は海外の友達から「お前のアイデア盗まれてるぞ、BBC(イギリスのニュース専門局)で流れてるぞ」とメールが来たんです。インスタでも海外のフォロワーの方達から同じような内容のDMが届いていました。その時は人肉の発想は同じだけど見た目や機能は全然違うしなとスルーしてたんです。でもこのiPhoneの事が日本のメディアで取り上げられてから、僕の事をよく知ってくれてる皆さんがdooooの作品の真似じゃないかと言ってくれて。めっちゃ嬉しかったし、やっぱり真似されてるのかな?と思いました。もうこのメディアに取り上げられてる本人に聞いてみようと思って、「人肌iPhoneのアイデアどうやって思いついたの?」と一言だけメールしてみたんです。そしたら3日位経って、「君の作品は昔から見ていてとてもクールだと思っていたよ!でも僕のiPhoneはおそらく君のiPhoneと同じ位の時期に作ったものだから(真似じゃないよ)」みたいな感じで、聞いてない事までめちゃめちゃ長文で返信が来たのでこれは怪しいなと思いました(笑)。メールの最後には「コラボしよう!」とまで書かれてたのですがコラボはしません。この人フランスのとある機関の研究者の方なのですが、そこまで届いてる事は嬉しいです(笑)。

Q14:この研究者の方のiPhoneケースを作った理由が「人がiPhoneに人間の肌がコーティングされてたらどういう反応するか見たかった」と某メディアで見たのですが、dooooさんの人肉は見られてどう反応が来るとかじゃないですもんね。

最初は反応気にして無かったんですけど、ここ最近は気にするようになりました。それこそ今回のように似てるモノとかが出始めて、色んな反応があるなって。ちょっとは考えないと、変な感じになったら怖いなと思い始めました。絶対そんなことはないんですけど、人肉アイテムが原因で事故とか起きたらどうしようみたいな(笑)。これも100%ないと思いますけど、呪いがどうこうとかそこまで考えちゃって、そうなったらまずいぞって(笑)。最初は単純に楽しんでもらいたいなと考えてたんですけど、ここに来て変な心配が出てきましたね。

Q15:作品のインスピレーション源は絵本とか映画が大きいですか?

そうですね。さっき言った漫画とかでもインスピレーションを受けますし、毒づき方面白いなと思ったり何かを感じると、全然違う形ですけどアウトプットできると思います。視覚からインスピレーションを受ける事が多いのですが、エイリアンをデザインしたギーガーという人やベクシンスキーという画家の作品などは色々感じる事ができます。その人たちは共通してちょっと怖い感じの、この世にはなさそうなものを書く人なんです。重厚感がある作風も好きですし、エイリアンなんか特にそうだと思うんですけどめちゃくちゃ強そうだなっていう。ああいうのはすごい好きなので、質感とかはその辺に影響を受けてますね。人肉アイテムもそんな重厚感というか、しょぼくならないようにする事を心がけています。

Q16:エイリアンのような質感から人肉アイテムのようなビジュアル的に作品に昇華するというのは分かるんですけど、それを音に昇華するっていうのはどういう思考の過程があるんですか?

重厚感のある絵が好きなのと同じように、低音がめちゃくちゃ強い音とか重厚感のある音も好きなんです。あとはキックドラムの”ドン”とか”ドゴーン”みたいな音とかが好きなので、聴いてる皆さんが感じやすいのはそこだと思いますね。こういう好みもインストの曲に出やすいです。音数も多いしベースもすごい効いてるみたいな。皆さんが感じづらいところだと、僕は風景を思い浮かべた時にこういう音が合いそうだなっていうので作っていることが多いですね。1stアルバムに「Sith」っていうインストの曲があるんですけど、”シス”ってスターウォーズの”シス”なんです。シスの暗黒卿。この人がよくいる部屋って暗くていかにもラスボスがいそうで悪そうなんです。その上窓の外が宇宙だからすごい壮大だし、暗黒な雰囲気が漂っているみたいな。それをイメージした時に、僕が好きな曲調と合体させたら多分こういう音が流れてるだろうなっていう作り方ですね。

Q17:先日リリースされたdodoさんとのコラボ曲「I Got Nightday(feat. dodo)」についてお聞きします。これはどちらからアプローチしたんですか?

僕からですね。音でも人柄でもそうなんですけど、マッドさとポップさの両方ある感じが好きなんです。dodoくんはそのイメージにドンピシャで、単純にアーティストとしてカッコイイし実際に会った感じも凄くいいなと思って。一緒にご飯食べてる時でもラップしてる時でも、なんとなくダークさも滲み出てる気がして。僕が勝手にそう思っているだけで本当にdodoくん良い人なんですけどね(笑)。僕は根っこの部分では明るい曲よりは暗い曲の方が好きなんですが、dodo君の曲は明るい曲調のものでも単純にみんなを惹きつけるカッコ良さだけじゃないヤバさも感じました。

Q18:PVは「Utage feat. MonyHorse」の続編ですよね。今後”宍戸マザファカ”のストーリーは続いていくんですか?

内緒です。

Q19:今後コラボしたいアーティストはいらっしゃいますか?

実は今、次のアルバムを作っているのでもう声かけたりこれからかけるという感じです。こちらも内緒でお願いします。

Q20:そのアルバムはいつ頃完成しますか?

春までには出したいですね。でもその前にまとまった作品を何個か出します。来年は多分今年の倍ぐらいは人肉も音楽も出していくと思うので応援してくれたら、見守ってくれたらと思います。

Q21:今後シーンでどういう存在でいたいというのはありますか?

Hip Hopシーン好きな人にもそうでない人にも、色々な人に面白いって思ってもらえる存在でいたいですね。例えば人肉とかってHip Hopのシーンにあまり興味ない人も面白いと思ってくれる気がするので、そういう人たちがこれきっかけで僕含め色んなアーティストの曲を聞いて面白いと思ってくれたら嬉しいなと思います。こういう奴いるんだ、こういう音楽があるんだみたいな。それでシーン全体が面白いんだなって思ってくれる人が増えたら最高ですね。同じ曲でも人肉見た後に聴いたり、PV見た後に聴いたりで聴こえ方が変わってくると思うんです。それこそdodoくんとの曲もPV見たことない人が聴くのと、見てから聴くのでは劇的に変わると思うんです。色々な作品の楽しみ方を作り続けられる存在でいれたらいいなって思いますね。

Photographer:Kazumi Watanabe
Interview&Text:Sora Imaizumi

doooo

DJ、プロデューサー。岩手県出身。13歳の時、兄の部屋から流れてきたアイスキューブを聴きHip Hopと出会う。クリエイター集団CreativeDrugStoreに所属し、様々なアーティストにトラック提供を行う。

2016年に自身初となる12inchレコード「STREET VIEW / PURPLR FLOWER」をリリースし、シングル曲ながらも2,000円という高値で販売したために各方面から批判を浴びる。

2017年11月に1stアルバム「PANIC」をリリースし、ジャケットに人肉MPCを使用したためリスナーの皆様から引かれる。

2019年6月に「人肉小銭入れ」を公開し、さらに多くの皆様から引かれる。

その他に嫁の肩もみ、買い物の手伝いなど、精力的に活動を行っている。

【doooo 最新リリース情報】

配信限定シングル:doooo – I Got Nightday(feat. dodo)

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