【21Questions】「100%真剣にやれている中でも、遊び心は大事」雨のパレード 福永浩平に聞いた21の質問

3人体制として第2章をスタートさせた雨のパレード。彼らの前衛的な創作を形にしたニューアルバム「BORDERLESS」が1/22にリリースされ、共同プロデューサーの蔦谷好位置氏やDos Monosとのfeat.楽曲など、彼らの遊び心と、音楽に対する真摯さ、そして今後への光が見える作品がリスナー達の心を掴んでいる。
今回21問に答えてくれたのは、雨のパレードでボーカルを務める福永浩平氏。彼のルーツから今後の野望、今を彩る音楽シーンまで、雨のパレードのさらなる躍進を実感する言葉達を、「BORDERESS」で感じたあなたの感性と共に紡いで欲しい。

Q1:音楽に興味を持ったきっかけは?

幼少の頃に母が運転している後ろの座席で、母が聴いている音楽を歌うのが好きでした。松任谷由実さんとか玉置浩二さん、小田和正さんが好きでよく歌っていましたね。
今思うと音楽好きだったのかなというのが、お年玉ですごい大人びたコンポ買っていたりとか。
で、高校の時にギターを手に取る機会があって、そこからギターを練習して弾き語りをするようになったりして、楽曲もつくるようになりました。

Q2:初めて買ったCDはなんでしたか?

初めて自分のお金で買ったのはQueenの『Queen Jewels』っていう、その時出た日本流通版ベストアルバムでしたね。小学校6年生の時に「プライド」っていうドラマがあって、その時Queenが主題歌だったんです。衝撃を受けましたね。

Q3:雨のパレードは、ジャンル問わず様々なアレンジを作品に落とし込んでいますよね。福永さんご自身が影響を受けた方はいらっしゃいますか?

基本的に僕は洋楽の新譜が大好きで、エレクトロやR&B、エレクトロ・ハウスといったジャンルに影響を受けることが多いですね。そういう中から新鮮なアプローチやアレンジを取り入れていくのが僕たちの制作スタイルなんです。
それでもずっと聴き続ける人達は、Bon IverっていうJustin Vernonさんのプロジェクトとか、今Nick Murphyという名前で活動してるオーストラリアにFuture Classicっていうレーベルがあってそこに所属してるChet Faker。あとアイスランドの無名のエレクトロの人達とかも好きな人が多いですね。

Q4:因みに、最近グッときた新譜はありますか?

最近で言うとMac Millerの新しいアルバムが本当に聴いていて「幸せだな」と思えたり…。あとJacob CollierとDaniel Caesarが作った、「Time Alone With You feat. Daniel Caesar」も凄く良かったですね。あとAlabama Shakesのボーカルをしていた、Brittany Howardのソロプロジェクトアルバムも凄く素敵でした。

Q5:メンバーの皆さんに今だから言える、伝えたいことはありますか?

無いですね(笑)。結構普段からコミュニケーションを取っていますし、僕は言いたいことあったら言っちゃうタイプなので(笑)。でも、言うべきと思ったことは言いますし、言うべきではないと思ったことは言いません。

Q6:鹿児島から上京されて時間もかなり経ったと思うのですが、福永さんから見て東京はどういう街ですか?

上京して8年くらいですかね…。僕は心から本当に上京してよかったなと思うんです。東京には、鹿児島では触れられないカルチャーが凄く沢山ありました。自分を形成していく時期にこっちに来れたっていうのが凄く良くて。あ、こんなバンドもいるんだ、っていうバンドの数で言っても圧倒的に多いし。海外から買い付けて、こんなの日本に持ってきました!みたいなのも東京の方が圧倒的に多い。情報量は多いかも知れないけど、やっぱり出会いがいっぱいある街だなとは思いますね。東京は、結構会いたいなと思う人に会えてしまう街なので。そういうところに夢も感じますね。

Q7:福永さんは会いたいと思っていた人に会えましたか?

お会い出来た方はいっぱいいるんですけど、松任谷由実さんは特に印象に残っていますね。本当に幼少期から聴いて歌ってた方なので…。初めてお会いした時に僕らのこと知ってくれていて、歌詞を褒めていただいたんです。松任谷由実さんのマネージャーさん含め、僕らを好きでいてくれて。”歌詞いいよね、誰が書いてるの?”って褒めて下さって、”僕なんです…”って。すごく幸せでした。

Q8:印象に残っているステージやライブはありますか?

ターニングポイントの1つとして、「列伝ツアー」というものがあったんです。4バンドで全国9箇所回ったんですけど、今まで絡んできてこなかった畑のバンドもいて。みんなこのツアーに何かがあると信じて集まって、実際にその何かがあったんです。1個1個のステージで本当に擦り切れるような日々を2週間くらいやって。成長もすごく出来たし、青春も詰まっていたし、大切な思い出になりましたね。そのツアー全てのステージが印象に残っています。

Q9:ステージで意識している事はありますか?

去年までは何でこんなノれる曲でノらないんだろうみたいな違和感がありました。というのも蔦谷(好位置)さんが”アーティストは2種類いて、お客さんを圧倒するようなパフォーマンスをするミュージシャンと、お客さんと一緒に楽しむようなミュージシャン。どちらも正しい”とおっしゃっていて、僕らは圧倒的に前者だったんです。僕らなりにノれる曲だったけど、圧倒しちゃってるから(お客さんが)ノれなかったりみたいな。でも去年「Ahead Ahead」という曲を蔦谷さんと作って、リリースパーティで披露させて頂いた時に、僕らのお客さんが滅茶苦茶盛り上がってくれて。”何だこの感覚”ってカルチャーショックを受けたんです。その時にこういう楽しみ方もあるんだなっていうのも理解出来たんですよね。その後「Summer Time Magic」という曲を出して、みんなと盛り上がれるようになったりとか、今はどちらの面も昔より強く出せるようになっているので、ステージではそれをすごく楽しんでますね。

Q10:今のバンドシーンに同世代の方々結構いらっしゃいますよね。他バンドとの交流に重きをおいてらっしゃる部分はありますか?

本当に同い年のミュージシャンが滅茶苦茶いて、YONCEもそうだしLUCKY TAPESもそうだし、向井太一、MONJOE、GLYM SPANKYのボーカルのレミちゃんも…。何でしょうね、世代感はすごく感じてますね。交流がある人もちろんいるし、仲良くはしてたりしますけど…。

Q11:コミュニティというよりかは、同世代がそれぞれシーンを盛り上げているという感じですか?

そうですね。みんなで何か時代を作り上げている感覚は持っているけど、ひとつひとつのバンドはまるで違うカラーなので、何か嬉しいですよね。そういう世代だったのかなって僕は思っていて。個人的な解釈なんですけど、YouTubeを自由に見られるようになったのが、高校でドンピシャなんですよ。自分たちの好きなものも、日本には流通していないアーティストのライブの音源も、気軽にネットで見れたのはこの世代に影響しているのかなと。

Q12:音楽の聴き方として以前から意識していることはありますか?

新しいもの好きだったんだとは思いますね。今でもそこをちょっと求めていることはあります。さっき挙げた新譜のBrittany Howardだったら、曲としては割とオーセンティックなことをやっていたとしても、録り方の趣向が面白かったりして。”マジ?新しい!”みたいなところを音楽に求めているのかもしれないですね。Kanye Westのゴスペルシーンの新譜も、多分マイクの本数を少なくして録って、ミックスもちょっと雑にやっていて。音楽的には素晴らしいものだけど、録り方としては面白い趣向で録って、差別化して、面白みが出るところもあるんで、自分たちも次はやりたいなと思っています。

Q13 :今回の『BORDERLESS』ではどんな新しい試みがなされていますか?

今までは4人でスタジオ入ってセッションで曲を構築していくという手法を取っていたので、僕らがやりたかったジャンルとはちぐはぐな作り方をしていました。手の本数しか音を重ねられなかったので…。今回はメンバーの脱退のタイミングでもあったので、これを機にパソコンのDAW上に向かって色々組み上げて、やりたかった手法だったり重ねたかった音を出せるようになりましたね。制作もライブもより楽しめてますし、いろんな手法を試せてます。音源的にも格段にクオリティが上がっている感覚がありますね。

Q14 :因みに、今回のアルバムで印象深い楽曲や特に気に入っている曲はありますか?

印象深さで言うと、「Gullfoss」ですかね。Sigur Ros(シガー・ロス)というアイスランドのバンドのJónsi&Alex(ヨンシー&アレックス)というボーカルが、恋人とつくった1枚のアルバムがすごく大好きなんです。それをパソコン上でオマージュして、カセットテープに録音して、MTRでぐちゃぐちゃにして、またパソコンに取り込んで、歌をちょっと乗せてみたいなのをやった曲なので思い出深いです。アナログな手法を試してみているみたいな。作り方はデジタルの割合が増えたんですけど、よりアナログな要素も出ているので、結構印象は深いかなと思います。

-やりたかったこともどんどん形にできたと。

今回はより正攻法でクオリティの高いものをつくれましたね。100%真剣にやれている中でも、遊び心はすごく大事なものだと思うから、「Gullfoss」に関してはもうほぼ完全に100%遊び心でしかないというか。お気に入りの曲っていうとまたちょっと変わってくるのかも知れないですけど。

Q15:曲の題名をみても、記号を使うなど複雑な題名が多いじゃないですか。どの様な意図があるのでしょうか…?

僕は、並べた時のインパクトみたいなものもすごく大事にしていているんです。デザインが大好きなので、ジャケットの裏に落とし込んだ時の見栄えを考えた時に、記号があったり数字があるとかっこいいなって。今回のアルバムはいつもより普通ですかね、前は結構ひどかったんで(笑)。カラーコード(色を表現するために用いられる#から始まる文字列)とかも使ってましたからね。

Q16:曲作りに欠かせないアイテムはありますか?

最初はギターでメロディを作るので、ギターかな。作曲は小さめのギターで大体作ってますね。今回のアルバムは今までと作り方を変えてるんですけど、やりたい根幹は全く変わって無いんです。なので僕がギターじゃなく、ピアノを手にとったとしても、出力されるものの根幹自体は変わらないと思っているので、そういう意味で欠かせないのは自分ですかね。ちょっと傲慢に聞こえてしまうかも知れないんですけど…。

Q17:インスピレーション源となるものはありますか?

僕はファッションも映画も漫画も大好きですし、小説も読みます。本当にいろんなカルチャーが大好きなので、そこから影響を受ける部分はありますね。
後は、圧倒されるくらいの景色を見た時にハッとさせられます。鹿児島でいうと吹上浜っていう凄い大きい浜に夜中男だけで行って、火炊いて、全裸で海飛び込んで走って…、みたいなのをやってると制作意欲が湧いてくるんです。言葉に出来ない感情や感覚を曲にしたいなって。

Q18:今回のアルバムでそういった背景はありますか?

そうですね。時々僕らの曲には海が出てくるんですけど、大体そういう背景を歌に落とし込みたいと思ってる時が多いです。ただ今回のアルバムに関しては景色はそれほど無いかな…。でも「Hallelujah!!」は自分の育った環境や、幼少の頃に刻まれた自分の記憶みたいなものを反映させた曲ですね。だから印象深い曲は「Gullfoss」だったけど、自分なりに思い入れが一番強いのは「Hallelujah!!」かな。

Q19:ファッションもお好きということですが、洋服を選ばれる時のポイントはなんですか?

基本は黒が大好きなんで、黒が多いですね。頭で何となく描く理想に近い服と出会った時は即買いです。
あとやっぱり音でも言えるんですけど、”次これが新鮮に感じるな”みたいなものを取り入れたい派なので、洋服とかに関しても、”何かこれが今好きだな”っていうのは凄くアンテナを張っていて、そういうものを探して買っていますね。

Q20:今日のファッションポイントを教えて下さい!

最近このデニムジャケットが好きで、こればっかり着てるんですけど(笑)。こういう面白味があってアイコニックなものを選びがちですね。ここ面白いブランドなんです。

Q21:最後に今後の目標や挑戦したいことを教えて下さい。

これからは「Hallelujah!!」で歌った様な、僕のパーソナルな部分を、リード曲やシングルでもちゃんと出して行けたらいいなと思っています。誰が歌っても成立する曲じゃなくて、自分が歌ったからこそより良さが伝わるような楽曲、それでいてみんなに伝わる曲を書くっていうのが次からのテーマだと僕は思っています。

【プロフィール】

雨のパレード

2013年に結成、2016年メジャーデビュー。
80’sPOP、インディR&B、エレクトロハウス、アンビエントなど様々なジャンルと洋邦の枠を超えた音楽性と、アナログシンセやサンプラー、ドラムマシーンなどを取り入れた、バンドという形態に拘らないサウンドメイクを武器に新世代のポップスを提唱する。

2019年に入り現在の3人編成となり、シングル「Ahead Ahead」を携えて雨のパレード第二章の幕を開けた。続けて「Summer Time Magic」「Story」を配信シングルとしてリリース。その枠にとらわれない音楽性に、アジアを中心に海外からの注目度も高まっている。
2020年1月22日には4枚目のオリジナルアルバム『BORDERLESS』をリリースした。
2/2より全国ツアー「ame_no_parade TOUR 2020 “BORDERLESS”」(全10箇所)を開催。

公式サイト:http://amenoparade.com/