【21Questions】「振り返ったら羊文学がこの時代にいた」羊文学 塩塚モエカに聞いた21の質問。

2/5にEP「ざわめき」をリリースした3ピースロックバンド、羊文学。私達の小さな発見や葛藤を歌にした楽曲と、自然と人々が揺蕩いながら創出されるアートワーク達。若手バンドが犇めくこのシーンで彼らが着実と支持を得ているのは、心にぽっかりと開いた具現化できない孤独をゆっくりと埋める、暖かいベールをともに纏うことが出来るから。
今回21問の質問に答えてくれたのは、ギターボーカルを務める塩塚モエカ氏。リスナーを包み込み解放する、温もりの世界観の根源となる彼女の日常とバンドの中心を担う鋭い真理。彼女と羊文学を形成する絶妙なバランスを、この21問であなたも感じて欲しい。

Q1:音楽に興味を持ったきっかけは何でしたか?

幼稚園の時にSPEEDが流行ってて、最初はああいう風に歌って踊るのに憧れて、歌手になりたいって思い始めました。ちゃんとのめり込んだのは、小学校の時ですね。YUIさんの音楽が大好きで、そこで自分で曲を作って歌うのに興味を持ちました。

Q2:どんな子供でしたか?

性格が悪かった。今もそんなに変わって無いけど…。自分が自分が!みたいな感じで、お喋りが止まんなくて。習い事でもずっと喋ってるから、終わった後に先生からお母さんが「今日もモエカちゃんうるさかったです」って怒られてました。後は、班長とか演劇も主役をやりたがってましたね。今はそういうの絶対やりたく無いんですけど…。

Q3:モエカさんご自身が思う、羊文学での役割や立ち位置は?

みんな私より結構年下だし、最初からいたメンバーが私しかいないから、中心で引っ張って行くみたいになっちゃってます…(笑)。本当は隅で見ていたい…(笑)。

Q4:歌詞でも日常の疑問や社会に対する想いを描かれていますが、そういった物事と音楽を結びつけられたきっかけはありましたか?

音楽は幼稚園の頃から生涯やって行くって思っていたので、ずっと自分の人生にありましたね。プラス、みんなが言えてない様な事とか違うって思った事を、全部言いたくなっちゃうタイプだから、そういう性格が出たというか…。
最初はそういう感じで愚痴っぽい曲を歌ってたりもしていました。学校に行きたくないって曲を高校1年生の時に作りました(笑)。ちょっと大人になってきて、もっと広いものが見えるようになってから、今回の「人間だった」みたいな曲が出来るようになってきましたね。

-当時作った曲は今でも聴かれますか?

聴きません。絶対に(笑)。

Q5:影響を受けた人物や出来事は?

いっぱいあるんですけど、1番大きいのは通ってたキリスト教の学校ですね。キリスト教の独特な教えがあったので、思考の面でそこの影響はあると思っています。音楽としては高校生の時に、YuckっていうイギリスのバンドのCDをたまたまタワレコで聴いて衝撃を受けました。後は、その時付き合ってる人に影響受けます。音楽とか、服とか、見る世界とかも影響を受けて、変わって行ったりする…。恥ずかしい(笑)。最近友達も増えてきたので、友達からも沢山影響受けてますね。

Q6:確かに音楽だけでなく、様々なジャンルの方と交流を持たれてるような…。

なんでだろう。バンドって、地下で暗いし…(笑)。年上の人が多いので、同世代とか同い年の子があんまりいなくて。仲良い子はすごく仲良いんですけど。歳が近い人たちを探していたらそうなったのかな…。

Q7:普段、インスピレーションはどういうところから受けますか?

毎日の出来事や辛かったこととか…。家から駅まで15分くらい歩くんですけど、その時聴いてる音楽と景色がぴったり合った時とか、そういう所から浮かんできます。後は、目の前に広がる景色を残しておきたいと思った時ですね。昨日も凄く天気良かったじゃないですか。空が超綺麗で、匂いも光もすごい良くて。多分、いつか曲になります…。

-天気が多い時に影響を受ける事が多い?

そうですね。雨は嫌いですね。そもそも匂いが好きなので、晴れた日の風とか布団の匂いが凄く好きなんです。

Q8:そういった日常の感触や背景をふまえて、印象深い曲はありますか?

全部!でも、「人間だった」って曲は、凄く大切な曲ですね。今までの曲は自分の暮らしの中での話だったんですけど、今回は外の事を初めて歌った曲でもあるんです。そういう曲がこれから沢山出来るかっていったら、そうじゃないかもしれないんですけど。「人間だった」はMV含め、すごく意味のあるものにできたと思うから、すごく大切です。

今回のCDは色んな出会いが重なって出来たんです。MV撮ってくれたのも、同い年のスズケンくんっていう高校時代の友達の友達。ジャケット撮影も、ずっと羊文学のことが好きで、勝手に写真撮りに来てた(笑)男の子にお願いして。今彼は、ライブ写真とかもやってくれてるんだけど。「人間だった」のMVで走ってた女性も、最近通い始めたダンス教室の先生なんです。1つ1つが人の繋がりで出来たことが凄く嬉しいです。

Q9:アートワークも含めて、世界観を毎回しっかり創られていますよね。クリエイターの方々とどの様に制作を進められているのでしょうか?

CDを作るときは、何となくこういう色にしようっていうのがあるんです。後私たちは、基本的に写真で作るっていうのを決めていますね。その色に合う写真家の方やクリエイターの方に頼んで、その人が一緒にやってるデザインの人とかを呼んでもらって、色やイメージを伝えます。アートディレクターのような人はいなくて、クリエイターの人達にお願いしています。

Q10:ずっとそのスタイルで制作を?

アートディレクターというのを知らなかったんです(笑)。最初は自分たちで紙とかで包んで作ってたんですけど、羊文学を撮りたいってメールをくれた子がいて、その子が全部CDのデザインまでやってくれて。それが凄く良かったから、その流れが続いていますね。

Q11:同世代に対して思うことや、同世代と話すことで発見出来た事はありますか?

本当にいろんな同世代がいますよね。高校生の時は、なんか周りと違うなって思ってたんです。高校ってすごく狭いし、女子校で進学校だったし、幼かったし…、みんないい会社に入って家を建てる様な事が全てっていう価値観だったから。最近になって色んなことを考えて、色んな世界を見ている子達と触れ合って、考え方もすごく広がりました。みんなの力を借りて、どんどん大きいものを作っていけたらいいなって思います。

Q 12:モエカさんが、音楽を通して伝えたいことは何でしょうか?

いっぱいあるんですけど、1番伝えたい事は、”そのままでいいよ、大丈夫”というか…。うーん、そのままでいいよっていうのもちょっと違う…。全部が全部良い訳ではないけど、ライブでみんなが手上げなくてもいいし、それぞれその人がしたいようにして、自分を認めて、頑張りすぎないことも大切っていうのを伝えたい。自分を許して欲しい、そういうことを曲にしたいです。かっこよく言えないな…(笑)。

Q13 :普段は言えないけど…、メンバーの皆さんに伝えたいことはありますか?

全部言ってるなあ、何だろう。昔は結構ばちばちしてて(笑)、私がいなくてももっと良い曲を作る人がいるし、メンバーがどんどん変わってたから、それも仕方ないみたいに言っちゃってたんですけど(笑)。本当になんか、今音楽を作るためにみんな必要だし、大切だと思ってるって言いたいです(笑)。
最近は普段から”いいドラムだね、いいベースだね”って言うようにしてます(笑) 。バンドって難しいですよね。幼馴染ならまだしも、突然集まった十代の3人から6人くらいの子達が、ずっと本気の状態で小さい部屋の中で篭ったり、誰もいないライブハウスで演奏したりして、ギスギスしないわけが無いというか。でもメンバーは近い存在だし家族みたいな感じだからこそ、意味分かんないっていうのもあるけど、リスペクトも大切ですよね。私達のチームは変人が多いので、何考えてるか分かんなかったんです。こんな前髪長いやつとかいるし(笑)。そんな感じだったんですけど、時間が経って分かるようになって、みんなちょっとずつ大人になっていって、今は仲良いかな。

Q14:普段は皆さんと、どういう会話をされますか?

音楽の話もしますけど、普通にみんなが友達と話しているようなことを話してます。恋バナも、マネージャーがうざいとかも、そういうことばっかり(笑)。

Q15:モエカさんが曲に対して抱くイメージを、メンバーの皆さんにどのように伝えられていますか?

全部は伝わらなくていいって思ってます。曲に対してそれぞれのイメージがあったら面白いなって思ってるので、ざっくりと、青っぽいとかそういう色で伝えていますね。具体的にどうしても外せないポイントがあったら、例えば「人間だった」は、人間と自然について歌ったんだよとか、そういうのをざっくり伝えます。

Q16:因みに最新EP、「ざわめき」に抱いていた色は?

ジャケットにもあるんですけど。ブルーグレー、曇り空みたいな色と、あとは濃い青とか、そういう感じでしたね。「きらめき」が凄いカラフルで、ピンクとかポップな青空とか、明るいイメージだったので、今回は逆にストイックな感じの色にしたいなって。

Q17:ステージで意識していることはありますか?

あまり何も考えないようにしています。昔は曲に気持ちを込めて、伝えようって前のめりだったんです。でも、自分の気持ちを前に出し過ぎるより、降ってきたものをそのまま通した方がより届く気がしたので、今は前のめりにならないことに気をつけてます。

Q18:観客の皆さんを見たりも?

前はすっごい見てたんですけど、今は見ないようにしてます。イメージは会場全体でライブしているというより、会場で何か大きなことが起こってて、その中に全員がいて、それを目撃しているみたいな。もっと、羊文学と皆さんの空間を広げて行きたいですね。

Q19:印象に残っているライブはありますか?

ワンマンは毎回凄く大切で、こないだも緊張しすぎちゃって覚えてないんですけど(笑)。前回のワンマンは渋谷のクワトロで、ライブの装飾とか照明さんとかもいろんな出会いであった人たちにやってもらって。大阪と名古屋と東京と三箇所でやったんですけど、東京は特に装飾もあって家みたいな、すごく不思議な空間で面白かったです。

Q20:最近ハマってることはありますか?

コンテンポラリーダンスです。4年前くらいに山口小夜子展に行って、山口さんが健康のためにコンテンポラリーダンスをやられてたんです。勅使河原三郎さんっていう世界で活躍している方がいらっしゃるんですけど、その人が今まで見たことない動きやってて、更に惹かれて…。去年の年末に、照明の人が”俺はコンテンポラリーダンスの照明をやってる。やりたいならここに行きなさい”って教えてくれて、そこに通うようになりました。
まだ3ヶ月なんですけど。頑張って練習してます。踊りと、ヨガみたいに自分の体と向き合うストレッチをやってます。自分の体がどういう風に動いてるとか、どこに力が入ってるとか、意識があるかとか。それをやることで、声がどう通ってるのか分かったり、体疲れて声出ない時もその動きをしたら凄いポジティブになれたり。あと先生が凄いポジティブだから、元気貰えます。心はかなり健康になりましたね。

Q21:今後の目標や挑戦したいことを教えてください!

1つの時代というか、振り返ったら羊文学がこの時代にいたってことを、残せるようにしたいです。そういうちょっとの時代を変えるようなものを作りたいですね。

【LIVE 情報】

「Flying Flags Vol.7」
3/20(金・祝)
OPEN 16:30 / START 17:00
会場:宮城・仙台darwin
出演:Ghost like girlfriend、羊文学、ものんくる、odol
https://www.newspromotion.jp/search/detail/133/

「はばたき 番外・沖縄編 -Day1 output-」
3/26(金)
会場:沖縄・那覇output
OPEN 19:00 / START 19:30
出演:羊文学 / 紅茶フーフー / アメトコトノハ

「はばたき 番外・沖縄編 -Day2 G-shelter-」
3/27(土)
会場:沖縄・那覇G-shelter
OPEN 19:00 / START 19:30
出演:羊文学 / AKKANBABYS / Owlgall

「SYNCHRONICITY ’20」
4/4(土)、4/5(日)
会場:東京・渋谷周遊
OPEN/START 未定

「SLOW DAYS」
4/11(土)
会場:大阪・服部緑地野外音楽堂
OPEN 11:00 / START 11:30

「Craftrock Cercuit」
4/19(日)東京・吉祥寺周遊
OPEN/START 未定

「リゾームライブラリー IX」
5/2(土)
会場:愛知・岡崎市図書館交流プラザ Libra
OPEN/CLOSE 13:30/20:30

「hoshioto’20」
5/30(土)
OPEN/START/CLOSE :9:30/10:00/21:30(予定)
会場:岡山・井原市 葡萄浪漫館
https://hoshioto.net/

【プロフィール】

羊文学(Hitsujibungaku)

VoとGtの塩塚モエカ、Baのゆりか、Drのフクダヒロアからなる、柔らかくも鋭い感性で心に寄り添い突き刺さる歌を繊細で重厚なサウンドにのせ、美しさを纏った音楽を奏でる3人組。2012年結成。2017年に現在の編成となり、EP3枚、フルアルバム1枚、配信シングル1曲、そして昨年12月にクリスマスシングル「1999 / 人間だった」をリリース。生産限定盤ながら全国的なヒットを記録。
2/5に最新EP「ざわめき」のリリース、そのリリースより先行してのワンマンツアー(1/18大阪・梅田シャングリラ、1/31東京・恵比寿リキッドルーム)はSOLD OUTに。2020年、しなやかに旋風を巻き起こし躍進中。

公式サイト:https://hitsujibungaku.jimdo.com/