【21Questions】「その場でフィールしたものを表現している」Spikey Johnに聞いた21の質問

自分の中に沸き起こった感情をそのままストレートに伝えるのは難しい。外に発露する過程でいくつも削ぎ落とされてしまうのが常だ。言いたいことはなかなか伝わらなかったりする。達者な表現者とは、限りなく”感情そのまま”に近い状態で(受け手によってはそれ以上に解釈する者もいる程に)届けることができるからこそ、人々に共感や感動をもたらす。

Spikey Johnは映像という表現を通すことで、そこにある紛れもないリアルをまざまざと、見る者の眼前に映し出すことに異常に長けているのではないかと思う。原点はホームレスを撮ることにあり、舐達磨に魅せられ、Instagramをやめたことがその裏付けだ。本物を本物たらしめる才。その真価は、ラッパーを撮ることで若くしてシーンに見つかることとなった。Spikey Johnの本質に迫る全21問。

Q1:本名と生年月日をお願いします。

早矢仕貴之(はやしたかゆき)。1996年6月23日生まれです。

Q2:Instagramを辞められたのは何故でしょうか?

インスタで出来ることが終わったと思ったからです。ちょっと嫌なことも重なって、このタイミングかなと。

-Twitterはまだ続けられてますよね?

はい。Twitterにはまだメリットがあると思っています。

Q3:初めてカメラを手に取られた時から、動画を撮ろうと思われたのでしょうか?

最初は写真でしたね。ビデオもやりたかったんですけど、ビデオはそこまで簡単に始められなかったんです。最初は比較的簡単にできる写真から入りました。

Q4:写真でホームレスの方を撮られていたのは?

テクスチャーや質感、そのビジュアルに惹かれました。ファッション関係の知り合いも当時はいなかったので、自分の目の前に広がるものを撮ろうと思い始めました。

Q5:ご自身の界隈の方々と一緒になって、カメラにのめり込まれて行かれたのでしょうか?

大学に通ってたんですけど、18歳くらいだとクルーを作りたくなるじゃないですか。僕もそうで、何人かの同級生と最初は一緒にやっていましたね。

Q6:監督として名前が売れたいという想いはありますか?

特に意識しているわけではないですね。ただ、作品が完成した時、その作品の届け方についてはしっかり考えます。やっぱり作品の出来を自分が気に入ると、より多くの人に届けたくなりますね。

Q7:若さによって、仕事をする際に障壁や利点はありましたか?

基本(現場では)最年少なんですけど、逆にそれだから許されることも多かったです。特に最初にメジャーな仕事をした時は、「企画書出してくれ」って言われて。そういうことをやったことが無かったし、周りに大人もいなかったので、”白ホリのスタジオで撮る”だけ書いて出したんです。案の定笑われました(笑)。今はそういうことも教わって分かってきたんですけど、最初の方は若いから許されてたことも多かったと思います。学びながら実行するにはいい環境でしたね。

Q8:ヒップホップが元々好きだったとお聞きしました。アーティストを撮る時に、憧れの対象を意識されますか?

ラッパーの方々に対して、(憧れという意味合いにおいては)だんだん無くなって行きましたね。始めたばかりの時はもちろん憧れはあったんですけど…。作品を一緒に作っていく中で、自分の中では憧れより親近感に近い感覚になっています。ただ、今も昔も変わらずリスペクトはあります。

-今の方がやり易いですか?

やり易いかどうかはなんとも言えませんが、今は良い画を撮ることに集中できている感覚はあります。

Q9:ミュージックビデオになると、100%自分がやりたいことを投影するわけにもいかないと思います。自分の表現を落とし込むために、意識はされていますか?

映像クリエイターの方は、そこを意識してる人が多いと思います。僕もそこに関して悩んだ時期もあったんですけど、今は意識しすぎなくなりました。自分の表現を出来ていないとも思わないし、もはやそういう次元で無いところでやっている感覚ですね。

-意識しなくても込められていくと?

そうですね。作りたい映像が特別しっかりあるというわけではなく、その場その場でフィールしたものを表現している感覚です。

Q10:アイデアのインスピレーション源は主にどこにありますか?

基本的にあまり映画や他の人のミュージックビデオを見ないんです。想像力を働かせて、頭の中で映像を考えることが多いです。僕はストーリー性やクオリティより、グルーヴや曲とマッチするかに一番重きを置いているので、そこを意識して曲聴きながら構成を想像しています。

他人の作品で学ぶという点で言うと、ある程度自分で映像が作れるようになると、必要なくなってくるのかな。最初の方は確かに見よう見まねで作っていましたね。やって行く内に”型”があることにも気づけました。例えばUSのミュージックビデオとか同じ曲調は、何となく似たような撮り方をしていることが分かったり。たまにそれを裏切ってくるのが海外のビデオなんですけど。

Q11:そういった既成概念的な作品を裏切りたいという欲はありますか?

それはありますね。裏切った作品をやりたいなって欲はあるんですけど、普段はなるべくクライアントさんの要望に沿って制作します。いつでも挑戦できるわけでは無いので、欲の部分は仲が良いラッパーとの撮影の時に提案したりしますね。

Q12:沢山の作品を撮られていて、苦しさなどを感じる時はありますか?

やる気がない時に追い込まれるのは苦しいですね。やる気ない時にはやらないようにしていて、やる気あるタイミングで集中して取り組んでいます。編集期間が1,2週間あってもやってるのは集中的なほんの数日ですね。たまにそもそものスケジュールが無い時は、気持ち的にやってても楽しくないというか…。なので、自分の気持ちも合った良い感覚でできる時と、仕事感覚でやる時、分かれていますね。

-制作時の感覚は、作品に影響されますか?

楽しいとやりすぎる時があって、カット割りが増えたりとか。それで結局「これなんか違くない?」みたいな時もあるのでなんとも言えないですね(笑)。調子悪い時の方が意外と良かったりとかもあります。

 Q13:制作のペースが尋常じゃなく早いと思うのですが…。

あまり深く考えすぎないからこそ出来るのかなって。

企画書も本当は作りたくなくて…、理想的な一番楽しい作り方は、ロケ地や衣装を決めて、着いてその日の天気見て、ライティングや撮り方考えるのが一番楽しいのかなって。その場の思いつきが一番好きだし、特に最初の方はそういったスタイルでやっていましたね。

Q14:撮影終えた時点で、”これ絶対良いものできる”という感覚があるのでしょうか?

基本的には撮影の時ですね。撮った時点で出来上がりが大体見えているつもりです。撮ってる段階でこの素材今回足りないなとか、あの要素撮れなかったなとか、ある程度見えた状態でやっています。

Q15:ミュージックビデオ以外に撮りたいものはありますか?

ショートフィルムとかCMですかね。

-それはご自身で脚本を書きたいとか?

企画は考えたいのですが、脚本とかは誰かに任せたいですね。1人でやるより、沢山の人を巻き込んだ方がクオリティが上がることに気付いたんです。だから全部1人でやる必要は無いのかなって。

Q16:これまで印象的だった作品や撮影現場はありますか?

舐達磨さんを撮った時です。”リアル”を感じましたね。最近、ヒップホップがファッション音楽になりつつあるイメージが自分の中ではあって、映像ありきな音楽だと感じてたんです。舐達磨さん達は、そこを全く感じなかった。でもビジュアルもありのままでカッコよかったんです。最初は色々と構成を考えてたんですけど、(撮影現場に)着いて、彼らを見た時に違う感じにしようって思いました。ロケ地も決まってたんですけど、プロデューサーさんに頼んで別の場所を探し直しましたね。そこで全員立ったのを見たら”ここだ!”って。フッドのかっこよさみたいなものが舐達磨さんにはあって、めちゃくちゃヒップホップだなって思いました。

https://youtu.be/Xh2QPjYAfaM

Q17:イケてるなとか、参考にしてるビデオグラファーの方はいますか?

誰かの作品を参考にするというよりは、自分の映像を見直して、改善点を探していくことをしています。未だに舐達磨さんのビデオを毎日見てて、もっとこうしたらよかったかな、この画が足りなかったかなって日々見直してます。

Q18:今まで撮ってきたもので、完全に満足のいく作品はありますか?

舐達磨さんの作品は結構納得いってます。日々見直して見つける改善点は、満足したさらに上の領域ですね。その時の自分には出来なかったことが、そのあといつか出来るようになる。次撮るときはもっと良いものを撮る自信があります。

Q19:どういう方たちと一緒に仕事をしたいですか?

理想は友だちですかね、身の回りの仲いいやつ。地元の友達も映像に興味持ってくれていて、一緒にやれたらいいなって思います。居心地が良い人の方がやっぱりストレスフリーというか…、楽しくできるかなって。自主制作で映像やるなら、友達とかに手伝ってもらいたいですね。

-今でも友達と作られることはありますか?

そうですね。青森にAwichさんの作品を撮りに行った時は、いつも一緒にやってる運転手の1人が体調悪くなっちゃって。どうしようってなった時に地元の友達に「青森行かない?」って電話したら、「面白そうだから仕事休むわ」って来てくれて、運転してもらいました(笑)。俺がやってるのを見て「俺もやろう」って、Seiyaっていうカメラマンの手伝いとかを率先してやってくれました。そういう感じが良いですよね。

Q20:今後のビジョンはありますか?

理想としては、たくさん予算を使って映像作りたいですね。ずっとお金を使わなくてもカッコよく撮る努力をしてきたので、もっと予算があればもっとカッコいいもの作れるなって思います。俺とカメラマンのSeiyaは、機材やアイディア勝負で作っているので。

Q21:最後に、今のご自身の立場から若いフォト・ビデオグラファーにアドバイスをお願いします。

アドバイスかぁ…(笑)。SNSに囚われないようにして欲しいです。例えば、映像ができなくなった瞬間に、周りから人が消えるのは違いますよね。インスタで自分を作るのを頑張ってる人が多すぎるなって。

俺は舐達磨さんとかに会った時に、この人たちは”人”としてカッコいいから、何やってもカッコいいんだなっていうことに気づいたんです。だからそういう部分を磨いていけば、映像にも、何にでも活きると思います。映像だけにこだわって、大切なものを見失うのは違うなって思いますね。

Photographer:Kazumi Watanabe
Interview&Text:Sora Imaizumi

【プロフィール】

Spikey John

1996年生まれの映像作家でSKY-HI、WILYWNKA、Awichなどラッパーを中心に、Original Loveや斉藤和義、加藤ミリヤ、藤井風など数多くのアーティストのMusic Videoを手がける。JP THE WAVYの「超WAVYでごめんね」のバイラルヒットで、その名を一気に広めたことで知られる。

Twitter:https://twitter.com/spikey__john