人の過ちや行動に目を向けがちだけれど、まず1番大切なのはあなた。仕事を頑張る人も、自宅で家族を守る人も、みんなが音楽やアートの場所で交わえるように、それぞれのベストな環境を学び作っていこう。それぞれの”ベスト”を、国内外で活躍するクリエイターやアーティストから学んで行く特集企画。
第2回目は羊文学の塩塚モエカが登場。ZOOMにて、人との”繋がり”を感じる彼女の自宅から取材に答えてくれた。頑張りすぎず”自分の周りをちょっとずつ助けてみる” わたしたちの輝かしい未来がクリアになってくるはずだ。

-家でのインプットはどのような所から?

本屋で「OBSCURE SOUND REVISED EDITION」というディスクガイドを買ったので、まだ全部聴けてないんですけど、その音楽を聴いてますね。あとは、ずっと買って読んでいなかった本を読んでます。積み本?って言うんですかね。それを読み進めています。

-最近読んだ本は何ですか?

まだ途中なんですけど、辻信一さんの「スロー・イズ・ビューティフル」を読んでいます。
あとは、阿部広太郎さんの「コピーライターじゃなくても知っておきたい心をつかむ超言葉術」ですね。言葉に対する姿勢がとても真摯で、タイトルの通りコピーライターじゃない人でも凄く勉強になります。

-以前インタビューで太陽の光や日常の些細な風景からインスピレーションを受けると仰っていましたが、家で過ごすことでインスピレーション源などは変わりましたか?

今は家の周りをたまに散歩して、”綺麗だな”ということはあるんですけど、そもそもバンドで曲を作るとか出来ないので、家にあった宅録用の機材を試行錯誤していますね。今ある物でどういう風に機材を繋いだら良いのか研究する中で、今まで出てこなかった音の出し方もあって面白いですね。景色からインプットというより機材をどう使うかというところから、新しい取り組み方や入り口が見えてきました。

こちらのインタビューもチェック:
【21Questions】「振り返ったら羊文学がこの時代にいた」羊文学 塩塚モエカに聞いた21の質問。

-メンバーの皆さんとどの様にコミュニケーションを取られていますか?

ZOOMやLINEのビデオ電話で1週間に1回くらいは顔を見て、最近考えていることや私が最近宅録で作った曲を発表したり、みんなでちょっとずつ宅録にチャレンジしたりしています。

-Instagramのストーリーを見ていても、凄く楽しそうですよね!

もともとみんな引きこもりなので、この状況を楽しめているのかな。そろそろ人に会いたい気持ちもありますけど、自分の部屋ってこんなに面白かったんだなって再確認出来ましたね。大きいおもちゃ箱を持ってるみたいな感覚です。

-お部屋でお気に入りのポイントありますか?

壁に貼っている作品はお気に入りですね。これは、羊文学の最初のデモCDのジャケットを撮ってくれた人が、私たちの初めての自主企画ライブでライブハウスの壁に写真を展示してくれて、そのときの写真です。外に出れないから、海が見える窓みたいでお気に入りです。

これはコンテンポラリーダンスのスタジオKARAS APPARATUSからの年賀状です。最近はダンス自体はやってないんですけど、GAGAというストレッチを意識してやっています。オンラインで500円からドネーション出来るんですけど、ZOOMでイスラエルやアメリカにいる人たちが踊ってくれるので、それに合わせて体を動かしています。

-世界の人と繋がっていると?

配信している人はニューヨークとイスラエルの方なんですけど、参加してる人たちも自分の姿を出さなきゃいけないから、終わった後もチャットとかで「センキュー!」って(笑)。ワークショップが終わっても音楽に合わせてみんなそれぞれ踊ってますね。全世界の人たちがカメラ越しに見えて、あったかい気持ちになります。

-そういう形でイベントとかもできそうですよね。

ですよね。他にも、美容室の嶋津さんのご夫婦が、毎朝8:30からラジオ体操やられててそれも参加しています。スタンプカードもあって凄く良いなって思いますね。

-モエカさんご自身が思う、家での最高の音楽の楽しみ方はありますか?

普段はイヤホンで音楽を聴くことが多いじゃないですか。音が圧縮されたりとか、左右のステレオの広がりとかがあまりはっきりしなかったりとか、そういう曲を改めてCDやコンポで聴くのはオススメです。
高木正勝さんの「かがやき」っていう素晴らしいCDがあるんですけど、CDプレーヤーで聴いた時の立体感がすごくて。普段サブスクとかで聴いてる曲もCDで改めて聴いてみると、全然違う風に聴こえますよね。最近は古いCDを引っ張ってきて聴いたりしてます。

-確かに空気を通して聴くと変わる音楽ってありますよね。

全然違いますよね。なんか旅してるみたい。「かがやき」も空間を感じる楽曲が多いんです。近所のおばあちゃんの歌とか、小学校の体育館で録った小学生の合唱みたいなのが入っていて、外に中々出れないけど、旅に行った気持ちになれるアルバムですね。こういう曲を聴いて、外の情景を想像しています。

-羊文学の楽曲で、モエカさんイチオシの自宅で聴きたい楽曲は何でしょうか?

どの曲も私のこの部屋で全部作ってるから、出所は全部お家なんです。逆にノリノリな曲を聴いて騒いでも良いかも。1番は「ソーダ水」かな。部屋の空間を拡張してくれそうなギターの奥行きがある楽曲ですね。サウンド面でも曲の面でも広がりを感じる事が出来ると思うので、夕方くらいに聴いて、良い雰囲気になって欲しいです。
たまにインスタライブでも歌っているので、そこでも聴いてほしいです。普段は羊文学の曲をやらないんですけど、今だけやってるので、覗いてみて下さい!

-因みに、リフレッシュ方法はありますか?

体を動かすことですかね。発声練習も家でするので、そのついでに普段は忙しくて飛ばしてる柔軟とかをやってみたり。あと丁寧に頭を洗っています。毎日洗ってますけど(笑)…、頭皮に良い洗い方がちゃんとあるんです。

-健康的にもなれますよね。

そうですね、生活リズムを作れるのもいいですよね。バンドは夜遅いし、大きい荷物を持って遠くまで行かなきゃいけないし、朝練習あると疲れちゃったりして、1日の時間を有効に使うのが難しかったりするんです。なので今は、ずっとやりたいと思って出来なかったことをやっています。お風呂で読む用の本もあって、お風呂時間も大切にしていますね。お風呂では村上春樹さんの「辺境・近境」を読んでいます。

-こういうときだからこそ、新しい音楽の形が生まれるタイミングでもあるのかなと。モエカさんが理想とする新しい音楽の形や楽しみ方はありますか?

新しくないかもしれないんですけど、今1人で色々試してて、宅録で曲作る人って沢山いらっしゃるじゃないですか。でもライブハウスのノルマとか、機材をどうやって繋ぐか分からないとか、色んなハードルがあって、SoundCloudとかで音源発表して終わっている人も多いと思うんです。そういう人達がネット上で活躍するようになったら面白いんじゃないかなって思います。ネット上でのライブのハードルも今は下がっていると思うし、5Gが出てきたら離れた場所にいても演奏できる。実際にライブするだけでなく、練習や作曲、同時演奏も出来ますよね。ライブする場所が自由になって、一歩踏み出せない人たちの活躍の場が増えて行くともっと面白くなると思います。でも、やっぱりライブハウスでライブをしたいです。

-やはり、ライブハウスが恋しくなる瞬間はありますか?

いくらデジタルで出来るとは言っても、その場の熱気や温度は生じゃないと伝わらないですよね。みんなで空間を作れることがライブにはあるので、それが出来ないのは寂しいです。最初は静かに観ていたお客さんが、ちょっとずつ心を開いていく姿とか、早く見たいです。

-最後に何か伝えたいことがあれば、お願いします。

国が何をしてくれるのかも凄く大切だし、辛い人たちがちゃんと声を上げていくことも必要だと思うし、私たちみたいに表現する人が出来ることは、そういう人たちをサポートする事だと思っています。それだけじゃなくて、日々の暮らしやビジネスの在り方など、自分で考えて自分のベストを選ぶことを今だからこそしっかりやって行きたいですね。
あとは、本当に余裕の無い人も沢山いると思うんですけど、ちょっとでも余裕がある人は、困っている飲食店やライブハウス、映画館、レコードショップが沢山あるので、普段我慢していた本とかを買うこともサポートに繋がるから、そういう自分の周りをちょっとずつ助けて欲しいです。その積み重ねが凄く大きな力になると思うので。ずっとお世話になっている下高井戸シネマもクラウドファンディングをやっているので、是非覗いてみて下さい。

下高井戸シネマクラウドファンディングはこちら:https://camp-fire.jp/projects/view/241825

【プロフィール】

塩塚モエカ (羊文学)

1996 年、東京生まれ。羊文学のギターボーカル。全楽曲の作詞・作曲を務める。
2017 年『トンネルを抜けたら』でデビューし、今年 2 月 5 日には新作 EP『ざわめき』を発表。恵比寿リキッドルームでファイナルを迎えたワンマンツアーは全てソールドアウトに。今年8月開催予定のFUJI ROCK FESTIVAL‘20への出演も決定した。2020年、しなやかに旋風を巻き起こしている。
ソロ活動では、羊文学とは異なる楽曲を、時にボーカルエフェクトも使いギター弾き語りで演奏。浮遊感のあるパフォーマンスが特徴的。
そのアイコニックでフォトジェニックなキャラクターから、ファッションブランドや広告でのモデルを務めたりと活動の枠を拡げている。

塩塚モエカ:https://twitter.com/moekashiotsuka
公式サイト(羊文学):https://hitsujibungaku.jimdo.com/