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ジェリーはある日、サンという友達と一緒に〈PLATEAU STUDIO〉を作った。

二人はまず台北の東門(ドンメン)の近くにスタジオを借りた。東門はジェリーの好きな街の一つで、僕もジェリーとよく散歩をしたり、コーヒーを飲んだりした場所だ。駅前には有名な小龍包屋〈鼎泰豐(ディンタイフォン)〉の本店があるので平日も休日も関係なしに観光客で賑わっている。店の前にはいつも整理番号を持った人たちが並んでいて、それを店員が器用に捌いている。店の中でも、よいしょよいしょと小籠包を包むのに大急ぎである。ゆったりしたイメージがある台湾だけれど、ご飯屋さんで働く人たちは日本以上に早口で早足だ。

日本では抜群の知名度を誇る〈鼎泰豐〉は、台湾人の友人たちに訊けば、良くも悪くも普通という。もちろん美味しいしバランスが良い、絶対に失敗はしないけれど、僕は、私は、どこどこの方が好きかな、なんてことをよく言われる。例えば、〈京鼎樓(ジンディンロウ)〉。ここはカメラマンの友達の家族がやっているからよく行った。烏龍小籠包が有名で、空芯菜炒めや炒飯もすごく美味しい。日本にも恵比寿にお店がある。〈杭州小籠湯包(ハンゾウシャオロンタンバオ)〉は5分ぐらい並べば入れる穴場で、僕はかなり好きな味。テラスハウスに出演する直前、スタッフがオープニング用の映像を撮りに弾丸スケジュールで台湾ロケに来たときに、みんなでここに行ったらとても喜んでいた。ここは蟹味噌入りの小籠包が美味しい。それと上海料理専門店の〈高記(カオチー)〉はちょっと高級なチェーン店。料理も上品で、店の中も比較的静かで落ち着いている。

かなり話が逸れてしまったけれど、台湾の人たちは本当に小籠包にうるさい。ちなみにジェリーは大安(ダーアン)にある〈永和豆漿大王(ヨンフートウジャンダーワン)〉という24時間営業の朝ご飯屋で買える90元の格安小籠包が好きだ。クラブ帰りにみんなでよく食べた思い出の味でもある。

いつもちょっと騒がしい東門も、ちょっと奥に行くと洒落たカフェがいくつも並ぶ静かな街になる。近くに師範大学という大きな学校があるので、学生が授業終わりに小説を読みながらうとうとしていたりする。〈小自由〉、〈黒潮〉、〈515〉。僕らがよく通っていたカフェだ。なかでも〈515〉が僕とジェリーのお気に入りで、テラス席でタバコも吸えて、店内では猫が3匹歩いている。

最近忙しいジェリーは、電話をするたび、ああ、ずっとコーヒー飲んで、お金もないけどなにもしなくてもよかったあのときが一番よかったかも……なんてしきりに言うから、ちょっと心配だ。しかし確かに、生来、あのころに戻りたいということをあまり思わないたちの僕も、また東門でぐうたらしたいなと思うことがあるくらい、涼しげで良い街だ。いや、いまも充分ぐうたらしているのだが。

次回に続く