【10年後も聴くであろう個人的名曲】dooooが選ぶ、いつの時代も心掻き立てるタイムレスな7曲。

国内外で活躍するアーティストやクリエイターに、テーマに沿ったプレイリストを作成して頂く連載企画。今回は、DJ/ビートメーカーとして活躍するdooooが登場。「10年後も聴くであろう個人的名曲」をテーマに7曲を選んで頂いた。
人肉アイテムに代表されるような、おどろおどろしい独特の世界観を愛してやまないdoooo。そんなdooooが選ぶ名曲が一筋縄でいくわけがない。彼の選んだ7曲はきっと、あなたの新しい価値観の窓を叩いてくれるはず。

-今回「10年後も聞くであろう個人的名曲」というテーマで7曲お選び頂きました。選曲する上での基準は何かありましたか?

どの曲にも共通しているのがどの時代、どこの国の人が聴いても何かしらの部分で カッコよさを感じる曲を選んでいるということです。この事は自分で曲を作る時も意識しています(難しいですが)。中にはちょっと難解で聴いてすぐにカッコイイとは思わなそうな曲もあると思うのですが、1度聴いたら無関心ではいられないと思います。そんな感じで7曲選んでみました。

1.Say So feat. Nicki Minaj Doja Cat

例えば、山下達郎​氏​や松任谷由実​氏の曲​って、いつ誰が聴いても​スッと心地良く体に入ってくると思っていて。TVとかで流れてくると安心すると言うか。​「Say So (feat. Nicki Minaj)」は正にそれですね。​しかも好みど真ん中過ぎて、​初めて聴いた時からずっと頭の中でループしてて、​自分の曲を​作ってる時もループしてて邪魔になるくらいなんです(笑)。割と最近の曲ですが、これは10年後も聴いていると思います。本当に好みのど真ん中です。

2.豊年節 REMIXED BY Dorian Concept 元ちとせ

まずタイトルのクレジットから「これどういう事?」って感じでした。元ちとせ氏のリミックス作品が沢山が出てて、リミックスをした面々を見て凄く気になって、そういうのって聴きたくなるんですよね。​特にこのリミックスはどんな曲になって るのか全然想像つかなかったんですけど、凄くカッコ良かった。初めて聴いた時から頭の中に引っかかりっぱなしです。

-タイトルがすごいパワーワードですよね。聴いたきっかけはタイトルにもあったのでしょうか?

そうですね。それで聴いたら凄くカッコイイっていう。そういう曲に出会う回数は、​DJばかりでレコード掘りまくってた何年か前よりも​確実に減ってきていたので余計に興奮しました。

3.Paris Hilton MU 

これは自分がまだ岩手にいた頃、東京に遊びに来た時にDJのALTZさんが​出演している​パーティーで流れていた曲です。​4つ打ちのドラムにコミカルな電子音、そして変なボーカルが乗っている曲で、なんていうか…変態ディスコというか。​とにかくヤバい曲で、初めて聴いた時からカッコイイなって思いました。次の日にそのレコードを探しに渋谷に行ったほどです。結局その日は見つけられなかったんですけどね。結構後で買えることになるんですけど、そういうエピソードがある曲って、この先​ずっと​聴いてそうだなって思います。

4.High and Dry feat. Bilal Pete Kuzma

この曲は元々”​Radiohead​”の曲で、そのカバーです。​Bilalが参加しているんですけど、Bilalの歌声がパーティーの締めなんかにマッチして最高なんです。​このレコー ドは割とすぐに手に入れることが出来て、それからDJの時はずっとかけ続けています。全く飽きが来ないですね。さっきの「Paris Hilton」は​全て口ずさむのは不可能みたいな曲なのですが、この曲はどんなシチュエーションでも口ずさんじゃうような身近さもある。そういう曲好きです。

-元曲というより、カバーやリミックスの方がdooooさん的に面白くなる印象ですか?

そういう訳でもないのですが、言われてみればリミックスの方が変な曲は多いかもしれませんね。大変​恐縮ですが、​この曲こうしたら面白そうだな​って思った時、勝手にリミックスやブート​を​作っちゃいます。

5.Los Angeles EVP

これはアメリカ西海岸の​HIP HOPアーティストの​曲です。​兄の影響や高校生の時に友達とよく聴いてた影響もあり、西海岸のヒップホップはずっと聴いてます​。僕が東京に遊びに来た時に、​西海岸のヒップホップがかかるイベントでこの曲が流れて、その途端フロアがめっちゃ盛り上がったのを見たことがあって。その光景が頭にずっと残り、この曲もすぐレコード屋さんに探しに行きました。この曲の様に単純に聴いたというより、クラブの光景に食らったとかレコードを探したとかそういう体験が重要なのかもしれないですね。

-サブスクで曲を探すのは容易ですけど、レコードをピンポイントで探すのはかなり根気が要りますよね…。

当時(13,4年前)は、DJにレコードを見せてもらって、なんとなくジャケット覚えて掘りに行くみたいな感じでした。​MU​の「Paris Hilton」は、初めて聴いてから見つけたのがその5年後くらいだったと​思うのですが、当時見たジャケットの印象がずっと残っていて。他のレコードを探してたり、なんとなくレコードを掘ってるときに探していた作品を偶然見つける体験は、レコードを掘る魅力だと思います。

6.As 笠井紀美子 + Herbie Hancock

これは笠井紀美子​氏​とHerbie HancockがStevie Wonderの曲をカバーした作品です。​並んでる​名前で絶対カッコイイって思ってたんですけど、聴いたら予想以上に好きなやつで​。DJで使い易いのもあり、ずっと​聴いてる​曲ですね。70年代後半くら いのレコードだったと思うんですけど、日本も海外アーティストもこの年代の曲が 好きで昔よく​聴いていたので、このコラボは豪華過ぎるってなって何回も繰り返し聴いてました。もちろん今も聴いてます。

7.Atmosphere Funkadelic

Funkadelicはファンキーでロックな作品が多い印象なのですが、この曲はおどろお どろしい不気味な雰囲気がマックスで異質な印象でした。多くの人にかっこいいと言われているアーティストが作った万人受けしないような曲って、最初言ったように、”どの時代の人でも何かは思うだろうな”という曲が多いと思います。この曲はまさにそう。
初めて自分で作ったDJミックスにも入れてたくらい好きな曲で、何回かサンプリングしてビートを作った時もあります。でも形になりませんでした。作ったビートが元ネタと比べて何か良いものを感じないとそのビートはカッコよくできてもボツにするのですが、この曲は好き過ぎてある程度良い感じにまとまってもボツにしまくってました。そのパターンでサンプリングを諦めたビートは沢山あります。

-サンプリングしようと思う時は、カッコイイとかそういった単純な動機から入るのですか?

ラッパーと作るようになってからは、ラッパーに合いそうな曲を選ぶことも多くな りました。でも基本的には直感で、単純にこれで作りたいと思う時ですね。ただサンプリングはあくまでも曲を作る手段の一つで、僕の最初のアルバムなんかはそこ までサンプリングは使ってなかったりするのですが、サンプリングで作る曲の時は先ほど話した事が上手くいかないものはみんなボツにしてます。

-以上7曲を選んで頂きましたが、この7曲から漏れた作品との差は何ですか?

それこそ仲間の曲や僕が作らせてもらった曲ももちろん自信を持ってかっこいいと思ってます。それでも今回選んだ7曲がDJでかけたものが多かったのは、エピソードや体験が体に染み付いている時間が長いからですかね。振り返ってみて気づきましたがそう思います。今日あげたどのアーティストも他に名曲あると思うんですけど、より衝撃を受けたのが大きくてこのチョイスになったのかなと思います。

プレイリストはこちらから

Photographer:Cho Ongo
Interview&Text:Sora Imaizumi

【doooo プロフィール】

DJ、プロデューサー。岩手県出身。13歳の時、兄の部屋から流れてきたアイスキューブを聴きHip Hopと出会う。クリエイター集団CreativeDrugStoreに所属し、様々なアーティストにトラック提供を行う。
2016年に自身初となる12inchレコード「STREET VIEW / PURPLR FLOWER」をリリースし、シングル曲ながらも2,000円という高値で販売したために各方面から批判を浴びる。
2017年11月に1stアルバム『PANIC』をリリースし、ジャケットに人肉MPCを使用したためリスナーの皆様から引かれる。
2019年6月に「人肉小銭入れ」を公開し、さらに多くの皆様から引かれる。
2020年1月にはインスト・アルバム『耳破壊 -HYDRA-』を配信リリース。
その他に嫁の肩もみ、買い物の手伝いなど、精力的に活動を行っている。

Instagram:https://www.instagram.com/doooo_cds/?hl=ja
CreativeDrugStore サイト:https://creativedrugstore.jp/