【佃煮マフィア インタビュー】WAKIO・EMMAが体現するリアルと幻想の狭間「時代を切り取って歌に残す」

深海魚と人間とのハーフWAKIWO・ナイジェリアと日本のハーフEMMAからなるHIPHOPユニット佃煮マフィア。先日1stアルバム「つくだにまふぃあ」をリリース。コロナ渦を唄った「異世界☆転生」や客演にAmaryllisBombを迎えた「鬼退治」が並ぶ待望のアルバムは、混沌が続く今世に一種のリアルと幻想を与えてくれる。今を生きる老若男女全てに混沌を照らす光を届けるべく、2人は多種多様な物語を創出し続ける。
未だ謎に包まれる”佃煮マフィア”という存在の真意を問うべく、60MAGAZINEはWAKIOとEMMAにインタビューを実施。どこか浮世離れした楽曲やキャラクターとは裏腹に、音楽への実直な意志が垣間見えた。

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– お2人が”音楽”に興味を持ったきっかけは何でしたか?

WAKIO:そもそも、僕の親は親全然HIPHOPを聴かない人なんです。80年代のパーティーミュージックとかをよく聴く家庭だったので、音楽に興味を持ったのはそこが始まりですね。

EMMA:僕は、昔からお父さんがバスタ・ライムスやクリス・ブラウンをずっと聴いていたので、物心ついたころからそれをずっと聴いていました。、音楽への入口はそこだと思います。

– 最初から2人ともがっつりHIPHOPというより、両親が聴いていた楽曲の影響が強かったんですね。では、お2人それぞれのHIPHOPの入り口は何でしたか?

EMMA::小学校6年の時に聴いた、ラッパーのKOHHさんが始まりですね。関連にKOHHさんの「aaight」って曲が出てきて、”日本にこんなものがあるんだ!”って興奮しました。それから日本のHIPHOPをたくさん聴くようになって、中3くらいからラップも始めました。KOHHさんがいなかったら今の僕は無いってくらい好きですし、影響を受けています。

– WAKIOさんはいかがですか?

WAKIO:多分、僕がHIPHOPに目覚めたのは、大学時代の元カノの影響だと思います。元カノがすごく詳しくて、そこから興味が出てライブに行き出したのが入り口です。アーティストを挙げるとしたら5lackさんやPUNPEEさんですね。

-お2人が出会った頃は、WAKIOさんはラップをされてなかったんですよね?

EMMA:そうなんです。出会いも、僕が中学3年生の頃に公園でサイファー(複数人が輪になって行う即興ラップ)をやっていた時、たまたまWAKIOくんとマホトさんが撮影をしていて話しかけてくれたんです。僕とWAKIOくんの出会いはそれですね。でもそこから全然会ってなかったです(笑)

– どのくらいの期間会ってなかったんですか?

EMMA:2年くらい会ってなかったです(笑)

WAKIO:マホトくんのライブとかでちょくちょく会いはしたんですけど…。

EMMA:それ以外の接点はほとんど無かったですね。でも去年の4、5月にWAKIOくんが音楽を作りたいと言うので、僕で良ければ全然手伝いますと。最初は“手伝う”っていうのは、リリックとかを教えるのかなぁって思ってたら、僕も一緒に参加するという…。

WAKIO:そもそもこの2人でやり始めたのも、僕が当時活動していたよさこいバンキッシュでのドッキリ企画で曲を作りたかったからなんです。それで”あ、EMMAいるやん”って(笑)。それが本当の最初ですね。

– 4月に発表されたAmaryllis Bombとのコラボ「鬼退治」は佃煮マフィアが半径5メートル以上の日常から外に出たというか。新型コロナウイルスや社会的な混沌を含め、リアルタイムな出来事が反映されていますよね。そこの切り替えだったり、楽曲への背景はあったのでしょうか。

EMMA:個人的には、「異世界☆転生」の方がコロナのこと考えていたと思います。その次に出した「鬼退治」は、ベストタイミングではありましたけど、その前から何か曲を出そうという話でリリックを書き始めていて、たまたま4人ともコロナのことを歌っていたという。

WAKIO:あれはビビりました。

EMMA:完成してからコロナウイルスの感染が拡大して、緊急事態宣言が出て…。図らずとも状況にマッチしたんです。

– 緊急事態宣言が出る前に作られていたんですね。

EMMA:そうですね。「鬼退治」は自分たちが首を傾げたくなるような世間の出来事について、それらを鬼として僕たちが退治していこうというコンセプトで始まりました。歌うときはあまりコロナのことは考えてなかったですね、多分みんなもそうかな。

WAKIO:うん、全然考えてなかった。

EMMA:どちらかというと、「異世界☆転生」の方がコロナできっと心が荒むだろうから、それを”癒す”じゃないですけど、僕たちの曲を聴いて”気分上げてこうぜ!”、”自分次第でなんでも変わるよ”っていう気持ちを込めて作ってます。是非あわせて聴いてほしいですね。

– 毎回楽曲ごとにテーマを作られるということですが、佃煮マフィアさんとしての大枠のコンセプトや軸はあるのでしょうか?

WAKIO:それは今模索中です…。でも、根底には老若男女、幅広い世代に聴いてもらえる曲を作りたいです。さらにユーモアやメッセージ性も求めているので、難しいことをしてるっていうのは自分たちも分かっています(笑)。佃煮マフィアは今後も、”時代を切り取って歌に残す”というのをモットーに曲を残して行きたいですね。

EMMA:日本の中でも首を傾げる事って沢山出てくるし、それを切り取って歌にすることで、少しでも誰かの気持ちを消化できたら凄く嬉しいです。再生数も大事ですが、ジャンル問わず寄り添える曲をと思っています。例えば「異世界☆転生」も「鬼退治」も全然曲調は違いますけどね。僕らは誰かに寄り添える曲を作れたらいいなと考えています。

– 同じ題材でも、曲調が表裏一体で面白いですよね。佃煮マフィアさんの個性の1つとして、誰もが経験する日常をファンタジーに描いている。MVの世界観も含めて、そこが面白いなと思いました。

EMMA:ありがとうございます!毎回2人のコンセプトやテーマを決める時は、親しみやすさを大事にしています。「オフロガワキマシタ」も、みんなが歌わないから俺たちでやろうって感じで。テーマとして面白いし、老若男女が聴いてくれるテーマがいつも始まりです。

WAKIO:「オフロガワキマシタ」関連のコメントで、“おじいちゃんがこの曲流したよ”とか、めちゃくちゃ嬉しいですね。

EMMA:僕も友達からLINEがきて、介護士のお母さんが「オフロガワキマシタ」を朝流して、おばあちゃんたちとラジオ体操してるらしいんです。老若男女に届けたいという目標を体現できたのが1曲目の「オフロガワキマシタ」だったので、これを継続していきたいですね。

– 最後に聞こうと思っていたのですが、この流れで、佃煮マフィアが目標と掲げる”場所”はありますか?

WAKIO&EMMA:武道館。

WAKIO:そこが別にゴールではないですが、やっぱり立ちたい、マストで。

EMMA:HIPHOPが日本でもやっと浸透してきて、むしろこれから先、武道館に立つ人がどんどん増えると思います。その中の1人に絶対なりたいし、続けたら絶対立てると思うんです。KICK THE CAN CREW(キック・ザ・カン・クルー)さんはじめ、様々な方が実現させているからこそ、僕たちも出来ないことはないと思います。

– WAKIOさんはYouTubeを元々やられてて、そこから佃煮マフィアの活動も開始されましたよね。YouTuberと音楽活動のギャップや葛藤はありますか?

WAKIO:YouTuber・WAKIOがいきなり音楽をやってるって言っても、YouTuberのキャラがあるじゃないですか。僕は動画では完全にキャラで割り切っているんです。というのも僕はピエロが好きで、自分を犠牲にして笑いものになる精神が大事だなって思っているんです。でもそれと音楽は一緒にしてほしくない。そこはやっぱり別物として捉えてほしいけど、最初はそう上手くいかないと思います。そこは今見返せるチャンスだと思っています。

– 佃煮マフィアの由来が“語呂が良い”からというのをお伺いしたのですが、本当ですか?

WAKIO:実は、僕なりにYouTubeやアーティスト名とかを見て研究してたんです(笑)。研究した中で、漢字とカタカナってめちゃめちゃ相性良いって事に気付いて。「佃煮マフィア」なんて初見から面白いじゃないですか。そこから入ってくれる人もいたら嬉しいですね。。

EMMA:僕も”佃煮マフィア”って名前好きです。佃煮=俺らっていうイメージが付きやすいのは実感しますね。

WAKIO:日本の佃煮アゲてかない(笑)?

EMMA:アゲてきたいですね。でも僕、佃煮食べたことないんですよ。

WAKIO:お前それ言うなよ、だとしても絶対に言うなよ(笑)。

-お互いの思う相方のいいところ、羨ましいところはありますか?

EMMA:僕はすぐストレートに伝えたい人なんですよ。一方で、WAKIOくんは比喩表現がすごく上手なんです。佃煮マフィアでWAKIO君のリリックをいつも見るから、僕も日本語の使い方が上手くなって、いい意味で影響を受けています。日本語で食らわせることが出来るWAKIO君が羨ましいです。

WAKIO:これめちゃ気持ちいいですね!ありがとう(笑)。EMMAは今まで見たことないくらいストレートですね。それもやっぱり歌に込められてると思うし、24歳の僕がやるのはすごい恥ずかしいというか…、そういうストレートな所、正直羨ましいなって思います。

EMMA:うれしいですね…。

– WAKIOさんの言葉の使い方が上手と伺いましたが、言葉のインスピレーション源みたいなものはあるのでしょうか?

WAKIO:これ、黒歴史なんですけど(笑)、中学生の頃に小説家を目指していたんです(笑)。親が誕生日プレゼントとかにも本を買ってくる家庭だったので、ずっと文学作品に囲まれていましたね。そのおかげで、考えをを言語化する能力はちょっと上がってるのかな。

– では、EMMAさんのストレートな言葉というのはどこから?

EMMA:小学生の頃からいじめられていたのもあって、ストレートに言わないと伝わらない環境にいたのが大きいと思います。家庭環境も複雑なので、遠回しに言って物事が進むことがなかったんです。そこがストレートなラップの原点ですね。

– お二人が思う佃煮マフィアの強みを漢字一文字で表すなら何でしょう?

WAKIO:僕は柔軟性の「柔」ですね。意味は、僕らは新たに難しいことをしている自覚があって。既存のHIPHOPもリスペクトしつつ、いい曲を目指すには柔軟性が問われてると思います。それに関しては、見て貰えばわかる通りピカイチなんで。

EMMA:僕は個性の「個」です。互いに個性が強いっていうのに加えて、名前も曲も個性が強いじゃないですか。個性を色々出しているけど、どれもハズレになっていない。佃煮マフィアのコンセプトにも反してないし、そこを突き詰められている点が良いかなと思います。佃煮マフィアなりに自由になんでも表現できるので、僕からすると自由帳みたいな存在です。

– ベトナムのストリートブランドDVRKとのコラボTシャツでナポリタンをデザインされていましたが、新アルバムとナポリタンに何か関係があったり…?

WAKIO:そうです。アルバムの新曲5つの中の1つで、他にも色々あります。

EMMA:マジで期待して欲しいですね。さっきも公園で、2人でラムネ飲みながらずっとアルバム聴いてました(笑)。

WAKIO:めちゃめちゃハードル上げといてください。

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-因みに、”ナポリタン”を選んだ理由は?

WAKIO:ナポリタンって小さい時から家庭にありましたよね。日本人は一度は通ってると思います。これもまた、トイレとお風呂同様、共感という意味でもマッチすると思って選びました。

EMMA:正直結構難しかったです。リリックは4、5回くらい書き直してます。

– 因みに、今後コラボしたい方はいらっしゃいますか?

EMMA:僕はマホトさんとコラボしたいですね。僕らの出会いの原点であるので、今の佃煮マフィアがあるのもマホトさんのおかげです。でも、ラッパーだったらSUSHI BOYSさんかな。僕たち2人ともSUSHI BOYSさんのことがすごく好きなんです。

– 共通のインスピレーション源なんですね。

EMMA:2017、2018年ぐらいにSUSHI BOYSさんがバンっと登場して、高校の友達はみんな彼らの曲を聴いてました。SUSHI BOYSを聴いていることが当たり前なくらい流行ってて、憧れの存在です。コラボ出来るように、まずは僕たちがもっと成長しないといけないですね。

– 最後に伝えたいことがあればどうぞ!

WAKIO:まずはアルバムですね。本当に楽しみにしておいて下さい!

EMMA:そうですね、僕たちの曲を聴いて心が安らいでくれたらなと思います。暇な時でいいんです。ふとした時、例えばお風呂入る時に「オフロガワキマシタ」とか、場面場面で聴けると思います。

WAKIO:どれもスルメ曲だよね。僕たちもリリースが本当に楽しみです。

Photographer:Korogi Maho
Interview&Text:Ayaka Yoshimura

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【佃煮マフィア】

深海魚と人間とのハーフ。WAKIWO。 ナイジェリアと日本のハーフ。EMMA。 今の日本のHIPHOPシーンに独特な感性でメスを入れるべく深夜ノリで結成した「佃煮マフィア」 名前の由来はただ語感がいいという理由で意味もない言葉を繋げたら強そうな名前になったのでという事で採用。

HP:https://www.tunecore.co.jp/artist/tukudani-mafia