POSTED ON 2020年8月4日 1 MINUTE READ BY Ayaka Yoshimura
イラストレーターChocomooが国内外で活躍するクリエイターやアーティストに”場所・味・音・視覚”4つのLIKEを探る連載企画。4つのLIKEから、それぞれのシナスタジア的個性を見出していく。第2回目は福岡出身の起業家・吉田拓巳さんが登場。ハンドブックやSNSでは知り得ない、独自のリアルから生み出された4つのLIKEはコロナ渦が続く今、ドープなエナジーとなって我々に刺激を与えるだろう。若干15歳で会社を立ち上げ、次々とアイデアを生む彼の思考に迫る。
〜お品書き〜
-場所- アジアとの接点が多い福岡
-味- 視覚も満たされる人気店 “ウルトラバイオレット” @上海
-音- プレイリストから流れる音楽/ボーカルの無いゆるいビート
-視覚- 新しい概念を持ち込んだ作品
吉田:「Co-work & Share. H, FUKUOKA」というホテル・シェアオフィス・コワーキングスペースが一体化した施設のクリエイティブプロデュースを行った時に、広告クリエイティブとしてChocomooさんに参加していただいたことがきっかけで出会いました。
Chocomoo:初めて出会った時に拓巳くんがあまりにも冷静且つ、“静”なイメージで話していたら、年齢が若くてびっくりした印象があって(笑)。そのあとはSNSで繋がっていて、活躍を拝見していたんですけど、今回はもっと掘っていこうと思います!
~場所~ 福岡には本当にやりたいことを考えられる余白がある
Chocomoo:拓巳くんが福岡を拠点に活動しているのには何か理由があるの?
吉田:僕も一緒に働くメンバーも、環境が良いところに身をおく方がいいなと思っているんです。福岡は街がコンパクトだから無駄な動きが減るし、今はコロナの影響で行けないですけど、韓国には50分、上海には東京に行くのと同じくらいの時間で行ける。アジアとの接点が多いから、環境ごとグローバル志向になるのがいいなと思って。
Chocomoo:たしかに!福岡は道が広いから開放感もあるし、東京と同じくらい都会感もあるよね。
吉田:東京は情報量と人口が多いから、競争が激しいですよね。それはそれで良いところもあるんですけど、新しいアイデアって余白から生まれてくると思うんです。でも、東京にいると自分が本当は何をしたいかって考えているよりも、時間軸の流れに乗っからなきゃいけない。福岡だとその速度が遅く感じられるから、自分のやりたいことを考えるにはいいなと思って二拠点生活を送っています。
Chocomoo:私も京都出身で、ベースは東京に移したけど、考え事をする時は京都、打ち合わせとか何かを進める時は東京って感じ。だから月に一度は京都に帰るんだけど、そういう感覚に近いのかな?
吉田:そうですね。人って自分の気持ちを整理しているつもりでも環境に左右されるから、ある意味半強制的に考え事をするのに最適な環境に身を置くのが結論いいなと思って。
Chocomoo:そういう観点で拓巳くんが福岡で一番好きな場所ってある?
吉田:特定の場所よりも、気軽にアジア圏の人と関われる福岡全体の雰囲気が好きですかね。自分の生活圏に必ずアジアの人がいるし、僕も東京に行くのと同じ感覚で、韓国に出張したりするし。
Chocomoo:拓巳くんのフットワークの軽さは、福岡にいるからこそなのかもしれないね。
吉田:ヨーロッパやアメリカ圏って既に成熟しているから、そこで何か面白いことをしようとしても簡単にはできない気がするんですよ。でもアジアは今も成長しているから、まだまだ可能性がある。それに日本では上の世代が幅を利かせているけど、特にフィリピンとかでは、同世代の人たちが国を作っている感じがあるなって思いますね。
Chocomoo:私はアジアのファッションや音楽から影響を受けていて、タイのヒップホップとか、YouTubeや有線で音楽を聴いていても気になるものがアジア圏のものだったりする。日本にいる私の感覚よりもっと世界を見ているというか、色々なカルチャーがミックスされている感じ。だからネット通販でアジアのもの取り寄せたり、休みの日にパッと韓国や台湾に行ってみたり。そういうことで刺激をもらってる感じかな。
吉田:やっぱり向こうはグローバル志向が強いなって思います。特に韓国は人口も少ないから、成長するために自国だけじゃなくて海外のものを取り入れようとしている。最初は仕方なくグローバルになったのかもしれないけど、その考え方がすごく良い。日本にいると国内でもそれなりに成立しちゃうけど、福岡はアジアと近いから自ずとグローバル志向になれるというか。
Chocomoo:そういうことに気づくのがすごく早いよね。何歳の時に会社を立ち上げたんだっけ?
吉田:今の会社を立ち上げたのは、15歳の時ですね。
Chocomoo:私が15歳の頃なんて寝てたで(笑)。絵もずっとやってたけど、拓巳くんみたいな感覚ではなくて、普通の子供だった。だからすごく思考回路が気になる!周りから影響を受けたのか、それとも自分で気づいたのかな…とか。
吉田:元々趣味で映像を作り始めたのが12〜13歳くらいなんですけど、学生時代って自分の家と学校、周辺地域くらいで全ての世界が形成されているじゃないですか。でも映像を作り始めたのをきっかけにパソコンを触るようになって、インターネットの世界を見た時に「何やってもいいんだな」と思えたんですよね。ネットはどこからが国なのかも曖昧だから、視野や世界観が広がる気がします。
~味~ ウルトラバイオレット@上海
Chocomoo:拓巳くんは“味”のイメージも強いんだよね!初めて会った時に、福岡で何を食べたいか聞いてくれて、「鶏肉とか食べたいです」って言ったらささっと電話して水炊きのお店に連れていってくれたんだけど、そこがすごく美味しかったんですよ。SNSを見ていても、グルメだなあって思う。
吉田:それこそコロナ前は、上海にご飯を食べに行ったりしてたんですよ。
Chocomoo:ご飯を食べるためだけに?
吉田:そう(笑)。ウルトラバイオレットっていうお店が上海にあるんですけど、そこはプロジェクションマッピングを使って料理が演出されるんです。
Chocomoo:うわぁ〜見応えがすごそう。
吉田:1日10人しか行けないんですけど、味ももちろん美味しくて。上海料理ではなく創作料理で、一つの作品みたいな感じ。ここは全部計算されているんですけど、まず集合場所は夜景が綺麗なルーフトップ。そこで一杯飲むとバスが迎えに来てくれるんです。そこから観光客だったらちょっと怖いなって思うような場所に連れて行かれて、扉を開けると近代的なウェイティングルームが見えるんですよ。
Chocomoo:すごい!一つのアトラクションみたいだね。
吉田:今はすごく人気で世界中から人が集まっているみたいですよ。
Chocomoo:いいなあ。拓巳くんは気に入った場所があったら毎回同じところを選ぶタイプ?私は一個気に入った場所があったらそこばっかり行ったり、メニューでも美味しいなと思ったらそればっかり食べちゃうタイプなんだけど。
吉田:どうしても行っておきたい場所もあるけど、海外は特にぶっちゃけまずくてもいいからチャレンジしたいですね。そこから何に気づくか分からないですし。
Chocomoo:そこから仕事面でも影響を受けたりするのかもね。拓巳くんは味以外の付加価値やインスピレーションを大事にしている感じがする。
吉田:そもそも、食そのものよりも“情報”を食べていると思ってるんです。良い空間の中で、味や背景も含めた情報を食べている感覚。
Chocomoo:面白い!ここはすごいよって言われて行ってみると、必要以上に感動したりするよね。予約取れないところはより美味しく感じたりするし。それでいうと、食べる相手も結構大事な気がする。面白いなって思う人と食べると何でも美味しいし、嫌な空間だと美味しくなく感じたりするから、確かに視覚は大事かも。
~音~ ボーカルも無いゆるいビートを聴いてる
Chocomoo:拓巳くんは舞台やイベントのプロデュースもしてるみたいだけど、音楽とかは何を聴くの?
吉田:音楽の仕事もよくしているんですけど、プライベートだと決まったアーティストの曲を聞くというより、最近はストリーミング配信も多いからプレイリストばかり流していますね。それこそ今までは好きなアーティストの曲を聴いてる人が多かったと思うけど、ストリーミングサービスが増えて、幅広いジャンルの曲に触れる機会も増えた気がします。
Chocomoo:でもその方が本当に好きな音楽を見つけられる気がする!
吉田:そうですよね。でも、自宅やオフィスでも無音で作業していることはあまりなくて、常に何かは流している感じです。
Chocomoo:私も音楽には詳しくないけど、お仕事をきっかけに好きになることもあるよね。私が持ってる拓巳くんのイメージは、家でクラシック聴いてる感じなの(笑)。
吉田:クラシックは聴かないな〜(笑)。なんというか、ボーカルも無いゆるいビートを聴いてることが多いですかね。
Chocomoo:それも合う!私は最近、作業中はradikoで無限にラジオ番組を流して、意識できる情報をキャッチしている感じかな。やっぱり映像は時間が拘束されちゃうから。
吉田:今後、“耳の情報”を重視する時代がくるんじゃないかな。視覚の分野にあるコンテンツは過多状態だけど、耳はまだあまりない。映像に集中していると同時に何か他のことはできないじゃないですか。だから、耳はより可能性が広い感じがする。
Chocomoo:自粛期間中にもNetflixで映画を観ようと思ってたんだけど、私は一言一句セリフや場面を追うタイプだから全然進まなくて(笑)。だから敢えて映像ではなく、ラジオを聴いていることが多かったなあ。逆に拓巳くんが集中するためにしていることってある?
吉田:最近はお茶ですね。温度と抽出時間と水の量で変わる味の深さもそうだけど、やっぱりその行為自体が落ち着くんですよね。ある程度情報過多な状態は好きだし、何かをやり続けたいけど、そうやって常に余白をどう作るかは考えてます。
Chocomo:100%夢中になるよりも、80%くらいで余白を持たせる感じなんだね。
吉田:冬は毎週末札幌に行って、スノーボードをするんです。なんでかっていうと、スノーボードをしている時は集中しているから。普段は色々考えながら生活していて、誰かが喋っていてもどこかで仕事のことを考えてたりもするんだけど、スノーボード中は命がけなんでそのことしか考えないから、その時間を敢えて作ってる感じですね。
Chocomo:脳トレや瞑想に近いのかな。私はそういう時、面白くなっちゃうんだよね(笑)。常に第3者の自分が見てるというか。私が恥ずかしがり屋なのは、客観的に自分を見ちゃうからっていうのもあるかもしれない。
吉田:僕もその感覚に近くて、あらゆる部分で俯瞰して見ちゃうというか。仕事でも常に俯瞰してみることに意味があるって思ってますね。
~視覚~ 過去に無かった新しいものに興味がある
吉田:どうしてChocomoさんはモノクロ画を描こうと思ったんですか?
Chocomo:幼少期に書道を習ってて、墨汁で水墨画を描いたり、昔のディズニーアニメーションの白黒でガタガタしたり、物足りない未完成なものが好きだったからかな。静かで未完成な黒の美しさを、作品に落とし込んでいるの。
吉田:なるほど…。現代では、全く新しい概念を持ち込んだ人が評価されると思うんですよ。昔は人物を写真レベルで描ける人が評価されてたかもしれないけど、写真が誕生すると今度はゴッホみたいなアーティストが評価される。今までのアートは色をつけていないと物足りなかったかもしれないけど、Chocomoさんも同じように白黒でもかっこいいという概念を持ち込んでいますよね。僕も今年ドローンを使った花火ショーを企画したんですけど、やっぱり過去にはなかった新しいものに興味があるんですよね。
Chocomo:すごいな〜。今迷っている人は拓巳くんみたいな感覚を意識すると良いと思う。私は京都の田舎で育って思考も狭かったから、海外に行った時にやっと世界が広がったんだよね。今はネットで調べたら何でも知れる社会だし、拓巳くんみたいな人がもっと世界を広げてくれるから、若い人たちはこの記事を見てぜひ色々考えてほしい!
吉田:ありがとうございます!俯瞰して見るのも実はそういうことで、引いて見た時に良いと思っていたものも微妙だなと思ったりするじゃないですか。だから俯瞰して、世界の一つになった時に心から良いなと思えることをやっていきたいですね。どうしても過去成功した人の流れに乗りがちだし、自分の新しい概念を持ち込む方が少し時間はかかるけど、そこに価値があると思います。
Chocomoo 後記
Chocomoo:拓巳くんは、私の中で透明で無機質なイメージだったんです。イメージはそのままなんだけど、すごくあったかい感じもするし、遠いところにいるような気もする。それは常に新しいことを探していて、前を走っているからかもしれない。でも、「ちょっと待って」って言ったらちゃんと待ってくれるような暖かさもある。今回話してより不思議になりました(笑)。
Photographer:Maho Korogi
Interview:Ayaka Yoshimura
Edit:苫とり子(tomatorico)
【プロフィール】
吉田拓巳
2007年“VJ”の世界に遭遇し、11歳(小学5年生)でグラフィック映像を手掛ける。 Apple Storeでのレギュラーイベントで高い評価を受け、全国各地のイベントに出演。2011年6月(15歳)、株式会社セブンセンスを日本最年少社長として創業。2012年1月Webサービス「お年玉.me」、同年12月に「10代のネット擬似投 票サイトTees Opinion」をリリースし、話題沸騰。2013年4月~2015年3月、エフエム福岡にてレギュラー生番組「VJ TKMi Digital Native Meeting」オンエア。SNSとラジオの新しい可能性を示唆。2013年8月に はアーティストMINMI主催フェス「FREEDOM」、10月からはMINMI全国ライブツアーで映像演出を手掛ける。現在では、飲食店や店舗の空間プロデュース、ファッションブランド・フレグランスブランドなど企業のブランディングなども展開中。講演活動も全国各地で精力的に行っている。
HP:https://7senseinc.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/tkmivj/?hl=ja
Chocomoo
京都出身イラストレーター。POPで独創的な作品全てモノトーンで描くのが特徴。日本をはじめ海外のアパレルブランドや企業とのコラボレーションや、様々なアーティストへのART提供をしている。また国内外でのART Showにも参加する等、幅広いシーンで活動中。
HP:https://chocomoo-exhibition-webstore.com/
Instagram:https://www.instagram.com/yukachocomoo/?hl=ja