【連載:アジアンストリート】UN:COMMON (アン コモン)設立者が表現する戦後からの奮闘「カンボジアは今、カルチャーを”創造”している」

アジア各国のファッションデザイナーに、ローカルな人気スポットやその国のストリートファッション、HIP HOPの実情を、SIXTYPERCENTのブランドディレクター Nanaが探る新連載企画。感度の高いデザイナー達が集うローカルのカルチャーシーンから、アップカミングなアイコン達を探ってみよう。
今回は、カンボジア発ストリートブランドUN:COMMON (アン コモン)から、設立者のKietが登場。戦後の復興・歴史と密接に関連する現代カルチャーをより濃く表現するため、彼がストリートファッションで担うものとは。

Nana : こんにちは!お久しぶりです!カンボジアは、コロナなど諸々ありますがどんな感じでしょう?

Kiet : カンボジアはコロナの感染者が増えつつあります。私はカリフォルニアにいるので、自分の双子且つ仕事のパートナーがカンボジアで対処していますね。LAもマスクを必ず着用して外出していますね。日本はどうですか?

Nana : 日本もマスクは必須ですね。感染者数も増えつつあります。それでは…、本企画「アジアンストリート」は、アジアの有名デザイナーやディレクターに、その人からみたローカルな人気スポットやその国のストリートウェアマーケット、HIP HOPの実情を探る連載企画になっています。今回Kietをゲストとして迎えることができてとても嬉しく思います。早速、UN:COMMON (アン コモン)の説明をお願いします。

Kiet : UN:COMMON (アン コモン)はカンボジア初のストリートブランドです。自分と双子のパートナーが大学1年の夏にLAからカンボジアに戻った際、寝室で「ねぇ、ブランド立ち上げないか?」って寝ながら話していたんです。実はその1週間前に自分の知人が、「アパレルの工場とかに知り合いが多いから何かあったら教えてね。」って言われていたんですよ。アパレルのネットワークがなかったので、「もうやってみないか?」っていう話になって、デザインとブランド名をその日に確定しました。
ブランド名は「:」を真ん中においてクールに見せています。その時はブランドビジョンなどは特に決めてはいなくて、その後社会的な反発や、作られた道に従う必要はないというコンセプトを考えるようになりました。

https://www.instagram.com/p/CDnaYLwpKM5/

Nana : いつ発足したのでしょうか?

Kiet : 2018年の夏です。

Nana : まだ新しいですね!

Kiet : そうですね。今かなりのアイテム数を出しているのでコンテンツが多い感じではありますが…。

Nana : ストリートウェアシーンを選んだ理由はありますか?

Kiet : 実は我々はスニーカーシーンに元々いて、スニーカーのパイオニア的立ち位置で自分の家族がビジネスを展開しているんです。ストリートのコミュニティをカンボジアに紹介するという感じですね。なのでストリート市場は元々知見がありました。大学もLAに行っていたので、ストリートの界隈に身を置いていましたし、そこにもスニーカーコミュニティがあって私も入っていました。

Nana : SIXTYPERCENTは今、アジア10ヵ国から131ブランドが集まってるのですが、UN:COMMON (アン コモン)は初の”カンボジアブランド”だったので、未知の領域でした。まだ、カンボジアのストリートシーンを知ってる人はとても稀だと思います。

Kiet : そうですよね。まだ、カンボジアにとってストリートシーンはラグジュアリー市場と同化されているので、定義化させるのが難しいフェーズです。

https://www.instagram.com/p/Bq9MVguHhdl/

Nana: ちなみに、Kietのファッションキャリアはどのようなストーリーが?

Kiet : 私はスニーカーに関しては、元々経験があったのですが、我々2人ともエンジニア出身及びコンピューターサイエンス出身で(笑)、 アパレルの経験は全くでした。最初は「とりあえずやってみよう」という感じでしたね。

Nana : オンラインストアなども自分たちで設計できるってことですね!

Kiet : そうですよ!自分たちで作って、サプライヤーや工場とも全部自分たちで話していますね。

Nana : エンジニア出身のデザイナーは初めて出会いました!Appleみたいじゃないですか?

Kiet : たしかに(笑)。奇妙ですし、珍しいですよね…。

Nana :続いて、カンボジアのDOPEなスポットについて教えてください。

Kiet : アンコールワットのような有名な観光地もありますし、カンボジアは歴史的なエリアが多いです。でも、私が特におすすめしたいのは、Tuol Sleng Museum (トュール・スレン虐殺博物館)ですね。カンボジアは1970年は南北戦争のタイミングで4年間続いていて、この博物館はその戦争が行われたタイミングで刑務所として使われていた所なんです。なのでカンボジアの昔の歴史を象徴している有名な場所になっています。まだカンボジア人からしても歴史が浅い戦争なので、カルチャー作りの発端になっているのではないかと思っています。カンボジアは今、カルチャーを”創造”している時期なので、ここをおすすめします。

Nana : カンボジアのカルチャーを知る上で、歴史やバックボーンは欠かせないという事なのですね。因みに、カンボジアのストリートウェア市場についてはどう思いますか?

Kiet : 2016年ごろからストリートウェア市場の成長は見られますが、まだ成長段階ですね。今はカンボジア発のブランドが増えるようになってきたタイミングですかね。まだブランド自体が多いわけでは無いので…。

Nana : オリジナルブランドを持つことは、カンボジアの人にとって普通になってきているのでしょうか?

Kiet : 似ている状態ではありますね!今は10代でもブランドを立ち上げるようにはなってきています。私も大学の1年ごろからブランドを立ち上げようとしていましたし。逆に、昔の世代の人は、若い世代やストリートウェアシーンにほとんど理解がないですね…。

Nana : 若い世代は、どこからストリートウェアの情報を得ているのでしょうか?

Kiet : InstagramやYouTubeなどのSNSがメインですかね。音楽なども、西欧のカルチャーを取り入れる傾向にあります。ただ、今だにカンボジアで限定のスニーカーやアイテムを入手するのは難しいですね。

Nana : カンボジアにもインフルエンサーやYouTuberが台頭しつつあるのでしょうか?

Kiet : もちろんです。100万人の登録者がいるYouTuberもいますし、どんどん活発になってきていますね。インフルエンサーマーケティングも拡大していますよ。

Nana : UN:COMMON (アン コモン)もブランドやインフルエンサーなどとコラボも検討していますか?

Kiet : カンボジアのブランドとのコラボは既に確定していて、アーティストとのコラボレー
ションはまだトライできていないですがやってみたいですね。まだカンボジアにはストリートのインフルエンサーは少なくて…。でもスタイルを洗練させているインフルエンサーも増えてきているので、インフルエンサーと共にストリートは成長していくと思います。

Nana : カンボジアには、ストリートヘッズが集まる場所などはありますか?

Kiet :まだ無いですね!NIKEやadidasはあるのですが、そこに他のストリートブランドが集まっている訳では無いので…。

Nana : UN:COMMON (アン コモン)も、ブランドのブティック立ち上げを検討されたりしているのでしょうか?

Kiet : 検討しています!先ほど話した家族のスニーカーストアはオンラインがメインなのですが、そこと自分たちのブランドを合わせてブティックを建てたいと思っています!

Nana : 楽しみです!カンボジアの音楽のトレンドやKietが好きな音楽を教えてください!

Kiet : 日本の音楽がとても好きなんです!ONE OK ROCKは、LAでのコンサートにも行きましたよ!ローファイやチルな音楽もとても好きです。UN:COMMON (アン コモン)のコレクションもそういった音楽からインスピレーションを得ています。

Nana : カンボジアでは、ローファイやチルな音楽が流行しているのですか?

Kiet : カンボジアはHIPHOPですね!ラッパー文化が一番大きく成長をしています。

Nana : HIPHOP文化の成長に合わせて、カンボジアのファッションシーンも盛り上がりつつあると?

Kiet : カンボジアのファッション市場は成長を続けていますが、”ストリートシーンにおいて何が良いとされているのか”みたいな情報を知る必要があると思います。今はTシャツに絵を入れてはい完成、みたいなスタイルが多すぎるので…。その知識がこの業界に欠けているポイントなのかなと思います。

Nana : なるほど。UN:COMMON (アン コモン)の最新コレクションの蝶々モチーフには、何か意味があるのでしょうか?

Kiet : 今回蝶々をモチーフに入れたのは「Re-birth」を表現するためです。蝶々も蛹から成長しますし、その成長をデザインで見せたかったんです。

Nana : これが最後の質問になります。Kietにとって、カンボジアの1番好きなところを教えてください!

Kiet : カルチャーですね。LAに行く前は、カンボジアのカルチャーに尊敬などが無かったんです…。アメリカで生活するにつれて、戦後から奮闘するカンボジアのカルチャー作りを尊敬するようになりました。
カンボジアの人にもよりカンボジアのカルチャーにフォーカスして欲しいと思っていますし、UN:COMMON (アン コモン)がそのカルチャーをコレクションに昇華させて行きたいですね。

Nana : なるほど。改めて、カンボジアのカルチャーに対して、私も無知な部分が多いと感じました。

Kiet : “カンボジアのローカルの成長が、これだけ歴史に結びついている”ことの認識を増やすために、国内外にもっと広まって欲しいですね。

Interview:Nanae Matsuoka
Edit&Text:Ayaka Yoshimura

【UN:COMMON (アン コモン)】

カンボジア発のストリートウェアブランド。社会のステートメントや反骨精神を取り入れたチャレンジングなセンテンスを取り入れたTシャツなどが人気アイテムとなっている。また東南アジアのユースカルチャーをアパレルラインに展開していくことで、10代〜20代まで幅広い年齢層から人気を集めている。

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