【連載:アジアンストリート】上海ストリートメディアのディレクターが切り込む、中国の実態「錯乱が淘汰された後、中国の正となるストリートカルチャーが生まれる」

アジア各国のファッションデザイナーに、ローカルな人気スポットやその国のストリートファッション、HIP HOPの実情を、SIXTYPERCENTのブランドディレクター Nanaが探る連載企画。感度の高いデザイナー達が集うローカルのカルチャーから、アップカミングなアイコン達を探ってみよう。
今回は、上海ストリートメディアのシニアディレクターのBenが登場。中国のリアルなシーンに切り込む彼が、その目で捉える中国ストリートカルチャーの実態とは?

Nana : 今回は、中国・上海のストリートメディア シニアディレクターのBenから、中国のストリートシーンに関してお伺いできればと思います。まずは、Benの紹介をお願い致します!

Ben : 私はBen Cheungといって、某ストリートメディアでシニアエディターとして活動しています。高校時代から、Milkという香港発祥のストリートウェアマガジンをずっと読んでいたのですが、そこから香港のPOPカルチャーや日本のストリートシーンに興味を持つようになりました。2012年に大学を卒業した後、興味のある業界に入ってからずっとストリートウェアマガジンの会社で働いています。
今は中国のストリートウェアを、WEIBOやWECHATなどを経由して中国中に紹介しています。シニアエディターとして上海を拠点に、ライフスタイルやストリートカルチャーコンテンツを紹介しています。

Nana: ありがとうございます!ちなみに中国のストリートウェアに関して、どのような見解をお持ちですか?

Ben:まだ中国は発展途上の分野ではあると思いますが、より日本のようなクリーンなストリートカルチャーの環境を作りたいと常に思っています。10年前から、中国の経済成長とインターネット環境の加速が伴って中国のストリートウェアは急速に成長を遂げています。

Nana:”10年後はこうなっているだろう”などの予測はありますか?

ストリート市場は資本主義に淘汰されているように錯覚することも多いですが、同時に中国はフェイク品だったり低品質の商品も同じ市場に散乱しています。この錯乱が淘汰された後に、中国の正となるストリートカルチャーが生まれるだろうと思っています。因みに中国では、ストリートブランドのことを「Guo Chao(グオチャオ)」と言います。

Nana : なるほど。中国ブランドが経済成長に沿ったストリートウェアブランドの勢いに、ガバナンスをしっかり効かせられるかが大切になってくるということですね。ちなみに、中国はNIKE LAB始め多くのストリートウェアスポットが誕生していますが、Benがよく行くお勧めのスポットはありますか?

Ben : 「Flystreetwear (フライストリートウェア)」というスケートショップです。そこはかれこれ20年くらい上海でショップを設けています。ファウンダーのJeff(ジェフ)は中国のスケートボードの歴史の重鎮的存在ですね。あとは上海DOEというTerry ZhuとHimm Wonnが立ち上げたセレクトストアも好きです。

Nana : Terryは60MAGAZINEでも取材させてもらっています!
記事はこちら→アジアの新進気鋭デザイナー7つの好みーDesigner’s 7 Favourites|DOE

Ben : DOEは中国のストリートコミュニティ作りにとても貢献しているんですよ。あとは、Soulgoods(ソウルグッズ)という北京発祥のブランドですね。彼らのブランドの商品は非常に高品質ですね。

Nana : 北京や上海などで、多くのストリートスポットが誕生しているんですね。ちなみに中国の音楽シーンはいかがですか?チャイナラップというように、HIP HOPもかなり盛り上がってきていると思いますが。

Ben : 自分自身はあまりHIP HOPは聞かないんですよ。私が若かった頃は香港や台湾などのポップミュージックを聞いていました。最近はシティポップやジャズを好みます!中国でいうと仰る通り、若手がHIPHOPとテクノで有名になってきていて、特にHIP HOPの勢いは止まる所を知らないですね。

Nana : ありがとうございます!最後の質問になりますが、ファッションメディアのエディターとして中国市場を見ている上で、今後のストリートウェアの動向など、気になる点があればお伺いしたいです!

Ben: 冒頭でお話した「Milk」が、今でも中国のストリートカルチャーシーンに影響を与えるきっかけになったと感じています。例えば日本のFUJIWARA HIROSHIやNIGO、JUN TAKAHASHIなどを中国市場で紹介したのもMilkでした。Milkによって他国のストリートウェア市場のカルチャーやクリエイティビティを見て、学ぶことができた人は多かったのではないかと思います。
今の世代は彼ら有名デザイナーの名前を知っていても、ルーツ自体は把握していないことが多いと思うんですよね。なので私個人的には、ストリートファッションを牽引してきた人々のルーツをきちんと中国の読者が把握して、学ぶきっかけになったらいいなと考えています。