【ユメミグサ インタビュー】BLUE ENCOUNTが肯定する”青くて痛くて脆い”青春の瞬き

9月2日に約1年ぶりとなる新曲「ユメミグサ」をリリースする熊本発の4人組ロックバンド、BLUE ENCOUNT(通称:ブルエン)。同曲はブルエンファンである作家・住野よるたっての希望で、8月28日に全国で公開される映画『青くて痛くて脆い』の主題歌として起用された。青春時代の儚さや後悔を、切なく壮大なメロディに乗せて届ける「ユメミグサ」は吉沢亮演じる大切な人と居場所を奪われた主人公の心に寄り添う。今回は映画にも共通する「青春」をテーマに、ブルエンのインタビューを敢行。学生時代から音楽に情熱を注いできた彼らの青春時代とは?

――2018年に1stシングル「もっと光を」が『青くて痛くて脆い』原作のテーマソングに選ばれましたが、実写映画化に伴いどのように作品への想いをアップデートされたのでしょうか。

田邊駿一(Vo&Gt):「もっと光を」が原作のテーマソングに決定した時に江口と一緒に住野先生と対談を行ったんですが、その時光栄なことに「映画化される日が来たら、僕たちに主題歌を書いてほしい」言って下さったんです。それで、昨年の夏に映画化が決まってすぐにご連絡いただきました。僕らとしても、こんなに早く約束が果たされて嬉しかったですね。だからこそ「もっと光を」をなぞった楽曲ではなく、新たに「ユメミグサ」という楽曲を作りました。ブルエンとしても久々に、スローテンポな楽曲に仕上がっています。でも実は、7年前に今回の楽曲は一度完成していたんですよ。

――7年前ということは、メジャーデビューよりも前ですよね。

田邊:当時僕たちは東京スクールオブミュージック専門学校(TSM)渋谷に通っていたんですけど、夏になると体験入学があって、それが終わると自由にスタジオを使わせてもらえるんです。その時にみんなで曲を作って、出来上がったのが今回の曲だったんです。

――その時点でメロディと歌詞も完成していたんですか?

田邊:はい。その時は「sakura」という仮タイトルで、ラブソングでした。付き合っていた二人が別れた日の朝に、桜が舞っている情景を思い浮かべて作った曲です。良い曲に仕上がったので、世に出すタイミングを伺っていたんですけど、7年かけてようやく今その時が来ましたね。

――今回はその楽曲を映画『青くて痛くて脆い』に合わせて再解釈されたということしょうか?

田邊:そうですね。今回は“青春”というテーマを取り扱う物語なので、自分たちの学生時代と照らし合わせて全部書き直しました。順風満帆ではなくかなり苦労を重ねたバンドではあるので、大変だった時の自分に手紙を書くような気持ちで作った曲でもあります。住野先生もそんなブルエンの人となりや歴史を知っているからこそ、作品の主題歌を書かせてくださったのかなと。嬉しいですね。

――ちなみに、みなさんが”青春”と聞いて印象的な思い出はありますか?

田邊:BLUE ENCOUNTは最初、熊本で江口と高村と僕の3人で結成して、上京してからTSMで辻村と出会ったので、全員が揃ったTSM時代の思い出ですかね。TSMって、学園祭になると先生たちの怒号が飛び交うくらいスパルタでめちゃくちゃ厳しいんですよ。それなのに、学園祭の統括だった辻村が当日大遅刻しちゃって(笑)。

辻村勇太(Ba):そうそう(笑)。統括になると他キャンパスのリーダーともやり取りしなきゃいけないし準備も大変で……一週間くらいほとんど寝られなかったんですよ。

田邊:学園祭は2日間に渡って開催されるんですけど、1日目に頑張りすぎて近くの漫画喫茶に泊まったら深い眠りについちゃったんだよね。

辻村:初日で遅刻した人に「明日は最終日だからちゃんとやろうな」って言ってたのに、自分が遅刻するっていう(笑)。次の日起きたら昼の2時でした。やっぱり人ってテンパるとわけわかんなくなるんですよね〜。とりあえず起きてタバコ吸ったもん。

田邊:いや、早くこいよ(笑)。その時先生が「何やっとんねんボケ、コラァ!」って、辻村にめちゃくちゃ怒ってさ。

江口雄也(Gt.):でも俺たちには「あいつも頑張ってるから、辻村が来たらみんな優しく迎えてあげてね」って、言ってたよ(笑)。

田邊:それで自分が一番怒るっていう(笑)。俺と高村と江口は20歳の頃に入学して学年的に辻村の一個下だったから、後輩として「あんな人がいるんだ〜」って印象的で。その時は辻村も今みたいにシュッとしてなかったから、怖かったよね。

辻村:当時は体重も100kgくらいあったからね。

高村佳秀(Dr):田舎から出てきた僕からすると辻村って本当に怖かったんですけど、ある時「お前のドラムいいね〜」って笑顔で話しかけてくれて、「こんなに良い人が東京にいるんだ!」ってギャップにやられました(笑)。

辻村:後からみんなが年上だと聞いて、「なんかすみません」って感じでしたね(笑)。

田邊:TSMにいた頃が一番学生っぽいことしたな…。大学には4人とも行ってないので、それこそ映画を観てやっぱり「キャンパスライフっていいな〜」と思いました。大学の学園祭でライブすることも多いんですけど、キャンパスライフを体験できているようで嬉しいですよね。

――作品としては「最後の青春」をテーマに描かれていますが、皆さんの青春は終わらなかったということですね。

高村:そうですね。それこそ20歳の頃って、居酒屋でお酒も飲めるじゃないですか。学生だけど大人にはなっていないというか。羽目も外しやすいし不安定な時期だから、ある意味一番青春している時かもね。

田邊:間違った青春もあるよね。俺の場合、なぜか東京の人に舐められたくないなと思って、葉巻を吸い出したんですよ。

辻村:吸ってたね。まじだせえと思ってた(笑)。

田邊:シガータイプのスタイリッシュな葉巻があったんですけど、それを一つの嗜好品として辻村に教えてもらって。学校からの帰り道に吸ったりして、自分でもだせえなと思ってました(笑)。

辻村:それを咥えながら喋ったりもしてたよね。

田邊:そうそう……だからやっぱり“青くて痛い”のよ…。この作品もそうだけど、盾に守られながら、言いたいことをひとしきり言った後に「俺何やってるんだろう」って気づくのが青春だと思うんですよね。俺自身も今振り返ると、高校を中退しないで、みんなを納得させてから上京するっていう手もあったと思う。結局どっちが正解かはわからないですけど、どうしても選んでいない道が正しいと思っちゃうんですよね。だからこそ今回は、過去の選択が正解でも不正解でも、青春時代を肯定できるような楽曲にしたいと思っていました。

――その思いは、もう一つの楽曲である「1%」にもリンクする気がします。失敗や悲しい出来事を肯定的に捉えるメッセージが、この社会にも救いになるのかなと。

田邊:「ユメミグサ」とはまたイメージの違う楽曲ですけど、ブルエンとしてメッセージ性は共通していますね。人間は間違うこともあるけど、それすらも認めて前に進んでほしいと思っていますし、間違った時の自分も大事にして欲しいです。

――因みに、メンバーのみなさんは「ユメミグサ」を初めて聴いた時いかがでしたか?

江口:7年前も全員一致で「良い曲だな」って思いながら聴いた記憶がありますね。

辻村:やっぱり良い曲ってバックグラウンドが見えるんですよね。初めて聴いた時もアコギ一本で録っている仮歌だったんですけど、後ろで桜が咲き乱れている情景が見えたんです。僕らは楽曲のパワーをCDやライブを通してみんなに届けたいと思っているので、最初に聴いてパワーを感じられない時は迷ってるんだろうなって思います。何曲も聴いていると、自信がある時とない時の曲の違いがわかってきますね。

――また来年4月に開催される横浜アリーナでの単独ライブで「ユメミグサ」が聴けるのも楽しみですね。

田邊:楽曲との季節感もバッチリですよね。いや〜本当に。何の因果かはわからないですけど、意味合いの強い作品になったので、ちゃんと歌える日が来ることを願うしかないですね。

――今年の春はコロナの影響で空白期間がありましたけど、個人的に今改めて桜をモチーフにした「ユメミグサ」がその期間を埋めてくれるような気がしました。

田邊:去年の今頃から作り始めたので、その時はまさか1年後にライブができないような状況になっているとは思わなかったんですけどね……。そう思うとブルエンの楽曲はその時の情勢と怖いくらいにハマることが多いんですよ。それこそ2016年の熊本地震の時にも、一週間後に「だいじょうぶ」っていう曲をリリースする予定だったり。そうやって不思議とタイミングが合うと、これは自分たちに与えられた宿命なんだなと思います。

――今ライブができない状況だったり、ファンの方に会えない状況が続いていますが、みなさんの中で新しい音楽の発信やコミュニケーションの形は見つかりましたか?

田邊:インディーズの頃からCDを売ることにこだわってきましたけど、ダウンロード系もポジティブに受け入れられました。それこそ図らずともドラマの主題歌も書かせていただいてサブスクでの再生回数が伸びたり、アニメソングを通じて海外的な広がりも感じていて…。
とにかく大事なのは音楽を聴いてもらうことだと思うんです。逆に今の時代で良かったなと思いますね。もしずっとCDだけを売っている社会で、ダウンロードや配信のインフラが整ってなかったとしたら、今誰も音楽を聴けない状況になっていたわけじゃないですか。だとしたら今の世の中って捨てたもんじゃないし、こうなってしまった以上意固地にならず、ちゃんと乗りこなしていけたらと思います。

――高村さんは「あつまれ!どうぶつの森」をされたり、江口さんはアパレル活動や日記を書いたりと、個人でもこの環境を工夫して様々な活動をされていますよね。

江口:ブログ、書いてますね。もはやブロガーと化しています(笑)。

辻村:江口はアパレルもいつの間にか初めてて驚いた(笑)。

田邊:結局今空いてる時間を何に使うかってことですよね。4人それぞれがやりたいことをやっていて、キャラクター性もあるからこそ、ブルエンとしても安心して色々なことができるところもあって。でも、配信ライブをやると、お客さんがいたらどんなに幸せかって想像しちゃうから切ないよね…。

――今回のパッケージには、2019年にZepp Tokyoで開催された「B.E. with YOU」の映像も収録されていますが、Zepp Tokyoの熱量、すごかったですよね….。

田邊:Zepp Tokyo時は過去のツアーの中でも、一番想いが届いていたと思いますね。全会場でセットリストを変えるっていう、なかなか大変なことをやったからこそファイナル公演のZepp Tokyoではスキルアップしたものをお見せできました。その時の映像を見たら余計ライブ行きたくなると思います。でもそれでいいと思うんですよね。ファンの皆さんにヨダレを垂らさせるために、僕らは力を投資しなきゃいけないので。ブルエンの映像を見たらライブ行きたくなるんだよねっていう感覚自体が尊いし嬉しい。

辻村:それこそ配信を見たお客さんから「早く横アリに行きたい」って言ってもらえた時に、俺らが今できることはまだまだあるじゃんって思いました。横アリまでにハードルを上げてくれてもいいし、今はそこで答えを出すまでの道のりだと思って、やるべきことをやるしかないなと。

田邊:ある意味、今は純粋にアーティストとしての使命を全うできていると思います。ライブに来てもらうため、良い音楽を作らなきゃいけない今があって。それはインディーズの頃から変わらないことだし、大切にしてきたバンドの精神性が失われていないからこそ、配信に特化したとしてもちゃんとしたものをお見せできる自信がある。ライブができる機会は減ったけど、リアルだろうが配信だろうが、肉薄したライブや音楽を作れたらなと思っています。

辻村:住野先生にもまたライブに来てほしいよね。

――「ユメミグサ」に対する先生の反応はいかがでしたか?

田邊:昨年の12月に関係者だけの試写会があって、そこで住野先生に初めて楽曲を聴いていただきました。僕らの後ろの席に先生が座っていたんですけど、後頭部に神経が集中しちゃって(笑)。でもエンドロールが終わって、緊張しながら後ろを見たら満面の笑みで「ユメミグサ最高です」って言っていただけたので、それでやっと長かった制作の疲れが取れたというか、肩の荷が下りたなっていう感じでしたね。

辻村:本当に先生の顔が仏のようだったよね。

――映画館で自分の曲が流れるって、シンプルにすごい状況ですよね。

辻村:アニメのタイアップした時もそうですけど、やっぱり慣れないですね。作品中に自分たちの曲が流れると毎回鳥肌がたちます。

田邊:予告編で流れる自分たちの楽曲も好きなんですよ。予告編って良い場面を凝縮しているじゃないですか。『青くて痛くて脆い』の予告編は前半ラブストーリーのように見せて、そこからサスペンス仕立てになっていくんですけど、それがすごく面白くて。作品自体も素晴らしいんですけど、また良いところで楽曲が入るのよね〜〜(笑)。

高村:試写会で観た時はどこで曲が入るのかも知らなかったから、ワクワク感があったよね。エンドロールで楽曲が流れたら流れたで、今度は自分たちの名前がどこで出るのかが気になるし(笑)。とにかく終始ドキドキしていました。

田邊:主題歌を担当するってこんなに緊張するんだなって。映画の見ごたえはさることながら、エンドロールまでのワクワク感が最高だよね。この映画を機に、世の中との繋がりをさらに深めていきたいですね。

Photographer:Maho Korogi
Interview:Ayaka Yoshimura
Edit&Text:Riku Shimizu

【リリース情報】

New Single「ユメミグサ」

2020/9/2 RELEASE

-初回生産限定盤(CD+DVD)
KSCL-3255~3256 1,773円(tax out.)

-通常盤(CD)
KSCL-3257 1,136円(tax out.)

【BLUE ENCOUNT】

熊本発、都内在住4人組。熱く激しくオーディエンスと一体になり、ダイレクトに感情をぶつける熱血なパフォーマンスが話題のエモーショナルロックバンド。

2014年9月にEP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー。2015年1月にリリースしたファーストシングル「もっと光を」は、新人ながら全国35局でのパワープレイを獲得。同年5月には人気のテレビ東京系アニメ『銀魂(第3期)』のオープニングテーマとなるシングル「DAY×DAY」をリリース。7月にファースト・フルアルバム『≒』(読み:ニアリーイコール)をリリース。2016年には1月に第94回全国高 校サッカー選手権大会の応援歌にもなった「はじまり」、そして『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のオープ ニングテーマ「Survivor」、全ブルエンリスナーに向けた「だいじょうぶ」、ドラマ『THE LAST COP/ラストコップ』の 主題歌「LAST HERO」と4枚のシングルをリリースし、そして2016年10月には日本武道館ワンマン公演、< LIVER’S 武道館>も大成功に収める。2017年1月にはセカンド・アルバム『THE END』をリリースし、バンド 史上最大規模であり幕張メッセ公演を含む全国ツアーも大盛況のう ちに終了させた。2018年3月には待望のサード・アルバム『VECTOR』(読み:ベクトル)を発表。より多彩 で進化した音楽性を併せ持つこのアルバムはオリコン・ウィークリー・チャートには6位にランクイン。全国ツアー< BLUE ENCOUNT TOUR 2018 Choice Your 「→」>でも大成功を収めた。

同年11月にはTVアニメ 「BANANA FISH」第2クール オープニング・テーマとしても起用されたシングル「FREEDOM」を発表し、彼らの 持つソリッドな魅力を改めて提示してみせた。そしてメジャーデビュー5周年、バンド結成15周年となる2019年、 6月に渾身のミニ・アルバム『SICK(S)』リリースし、バンド史上初のホールツアーを成功させた。9月11日には日本テレビ系土曜ドラマ「ボイス 110緊急 指令室」の主題歌「バッドパラドックス」をリリース。さらに11月20日にはアニメ「僕のヒーローアカデミア」の主題 歌となった「ポラリス」をリリース。常に全力のパフォーマンスとシンプルで熱いメッセージを愚直なまでに伝え続ける 彼らの姿勢に共感が止むことは無い。

HP:https://blueencount.jp/