【レペゼンアジアな個人的偏愛曲 】くるり ファンファンが選ぶ ポップに煌めくアジアンオードブルな7曲

国内外で活躍するアーティストやクリエイターに、テーマに沿ったプレイリストを作成して頂く連載企画。
今回は、ロックバンド くるりからファンファンが登場。「アジアをレペゼンするなら…?」をテーマに7曲を選んで頂いた。古今東西さまざまな音楽と揺蕩うくるり・ファンファンがキャッチするアジア各国の偏愛的楽曲で、あなたの音楽的趣向も広げてみてほしい。

1. Drifting On The Water / Huong Thanh & Nguyen Le

アジア音楽を改めて好きになったきっかけの曲です。音楽評論家のサラーム海上さんに教えていただきました。ベトナム雑貨が好きで昔ホーチミンへ行ったことがあったので、「おすすめのベトナム音楽ありませんか」とお尋ねしたら、「Nguyen Le(グエン・レ)というギタリストが面白いよ」と勧めていただいて…それで聴いたのがこの曲。歌手であるHuong Thanh(フン・タン)との共作がいくつかあり、私はこの2人のコンビが大好きです。これがアジア音楽への入り口となりました。

-面白いですね、全く耳馴染みのない言語の音楽を聴く魅力はなんでしょうか?『坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)』の収録曲『china dress』は歌詞も全部中国語ですよね。その後で『my sunrise』を聴くと、日本語だけど違う国のように個人的に聞こえてくるんです。語感の響き方が面白いなと思いまして、その所以がアジア各国の言葉から来てるのかなと勝手に想像していました…。

『china dress』は北京語で、発音も教わりました。もちろん難しさはありますが、唇や舌の動かし方が普段と違って新鮮で、歌っていて楽しいです。アジア音楽を聴いていても話せるわけではないので、意味は分からないものが多いです。でもなんて言うのかな?「にゃ・にゅ・にょ」「ゆぇん・ゆょん」のような、日本語ではあまり馴染みのない音の使い方が可愛いですよね。そういう外国語ならではの語感にときめくんだと思います!

2. OH YEAH!!! / 盧廣仲(クラウド・ルー)

彼は台湾のシンガーソングライターで、毎年くるりが主催する「京都音楽博覧会」にも出演してくださいました。台湾ですさまじく人気のある方で、俳優としても活躍されています。ライブ録音の作品を聴くと、お客さんの歓声から彼の人気っぷりがビシビシと伝わってきます。
この曲は、彼の楽曲の中でもとりわけ好きな曲です。来日公演で共演させていただいたこともあり、この曲を一緒にジャズアレンジで演奏しました。思い出のある1曲ですね。

-ファンファンさんが日常で聴かれているアジアの楽曲達から、くるりの音楽に落とし込むことはありますか?

聴く際には特別そういったことを目的とはしておらず、ただただ好きだから聴いてますが、自然と落とし込まれている可能性は十分あります。ラジオ番組などで、メンバー各々が持ち寄った様々な曲を共有できる機会もあったりして。2人とも私が全然知らない各国の音楽を教えてくれます。そうするとやっぱりインプットされるものですよね。いったん自分に入ったものは、きっとどこかでアウトプットされています。後から気付くことも多いですが(笑)。「この曲いいよ!」と共有できるのもバンドの楽しいところですね!

3. มองได้แต่อย่าชอบ / LULA(ルラー)

LULAさんはタイの歌手。この曲がやけに好きで、昔からずっと聴いています。ポップソングですよね。トランペットらしき音も入っているので、身近に感じる曲です。タイの映画「ATMエラー」の挿入歌で、いつか観たいなと思っています。MVも可愛いです。

MV มองได้แต่อย่าชอบ (Official mv OST. ATM)

-タイやベトナムの曲は出会うきっかけがあまりないと思うのですが、ファンファンさんは普段どの様にアジア各国の音楽を掘られているのでしょうか?

探す時は、単純ですが普通の検索サイトで、例えば「ベトナム 音楽 人気 最近」とかで調べます(笑)。簡単ですが、それをわりと徹底的に調べ上げます。あとは、渋谷の「El Sur Records(エル・スール・レコーズ)」というお店には世界各国のCDやレコードが置いてあるので、そこで気になったものを買ったりしてますね。近頃はなかなか外出できないので、もっぱらインターネットです。新たな方法を見つけていきたいところですね。

4. 快樂又逍遙 / 黄暁君 (ホアン・シャオチュン)

マレーシア生まれ、活動はシンガポールの華人女性歌手です。1979年の作品です。日本でいう昭和歌謡のような曲だと思います。ジャケットの写真も素敵ですよね!やはり「にゃ・にゅ・にょ」「りゃ・りゅ・りょ」のような、日本の言葉では馴染みの薄い発音が何とも可愛らしい。そもそも擬音語・擬態語が好きだからかもしれません。この曲もそういった語感の面白さがあります。男性コーラスも、とてもいいアクセントになってます。

黄暁君 (ホアン・シャオチュン)
by https://merurido.jp/item.php?ky=SML0681

 

-”この国の語感が好き”みたいな趣向はありますか?

それぞれに好きなポイントはありますが、共通点も多い気がしますね。語感ももちろんですが、それがどうメロディとの絡むのか、ということに意識が向いているかもしれません。インドやベトナムなんかもそうですが、全音の4分の1の音である四分音・微分音みたいなものが多い気がして。そんなメロディと語感の交わりが絶妙なものに出会うと嬉しくなります。

-黄暁君 (ホアン・シャオチュン)さん然り、国は違えどメロディは日本の懐かしさを感じますよね。

この曲に関してはそうですね。それぞれ同じ時代あたりに共通した文化があったのかなと思いますよね。黄暁君 (ホアン・シャオチュン)さん、ほんと可愛らしくて好きなんですよね。いい人そう(笑)。

5. Chuyện / Thùy Chi(トゥイ・チー)

ベトナムの女性歌手です。この方の曲もキャッチーで好きなものが多いですね。歌上手いです。ベトナムのオンラインコミュニティで注目されたことがきっかけらしいです。彼女もとても活躍されていますね。いい曲がたくさんあります。

-こうやって各国の曲を並べてみると、曲やアーティストの背景にも色々と興味が湧いてきますね。

そうですよね。(それぞれの言語の)意味がわかったり、話せたらもっと深めていけるだろうと思います。勉強します(笑)。
こうやって色々な国の曲を聴いて、自分はやっぱりポップソングが好きだと改めて思いました。まだまだ知らないミュージシャンがたくさんいるんだろうなぁと思うと、もっと色々聴きたくなっちゃいますね。

6.Dynamic Love / Park Boram(パク・ボラム)

パク・ボラムさんの声が好きです。とにかく歌が上手い。韓国の歌い手さんって、みなさん抜群に上手ですよね。これ、いい曲です。キュンとなる。
くるりもアルバムのレコーディングで1ヶ月ほどソウルに滞在しました。現地の音楽をはじめ、文化に触れられる貴重な経験でした。通訳の女の子と仲良くなり、カラオケに行ったら彼女がIUさんを歌っていて、とても人気だと教わったりして。ちなみにその子もめちゃくちゃ歌が上手です。

-韓国でアルバムのレコーディングをされたんですね!レコーディングする場所で音感や雰囲気に影響を与えるというのはよく耳にするのですが、くるりのみなさんもそういった目的で韓国に行かれたのでしょうか?

韓国の電圧が日本よりも高いので、いい音で録れるんじゃないか?というのと、当時くるりに自分たちが加入して新体制になってから初めて行った海外が、韓国でのライブだったことも理由でした。メンバー全員にとっての新しい場所で作ってみよう、という。
韓国では全部録りきれなかったので、東京に戻ってからは主に新大久保のスタジオで録音していました。ソウルでも新大久保でも、サムゲタンはたくさんいただきました(笑)。

-韓国の他にレコーディングしてみたい国や場所はありますか?

インドネシアですかね。インドネシアのシンガーソングライターで、くるりの京都音博にも出演してくれたディラ・ボンちゃんが、インドネシアのバンドンという場所のご出身で。彼女の楽曲の中でバンドンのことを歌った曲があるのですが、彼女の故郷の雰囲気や情景が不思議と思い浮かぶという。もちろん行ったことはないのに、とても懐かしい。SNSで彼女の写真を見ていても、もう懐かしい(笑)。一度行ってみたいですね。

7. Lucky Static / I Am Robot And Proud(アイ・アム・ロボット・アンド・プラウド)

中国系カナダ人のショウハン・リームさんのソロプロジェクトです。音楽と映像がリンクしたパフォーマンスをされていて、とても心地よい作品を作られている方です。2019年に来日された時のライブも観に行きました。もともと7e.p.という国内レーベルから出ている音楽が好きでよく聴いていたのですが、そこから知りました。聴覚・視覚ともに楽しめるところが魅力です。実験音楽ですよね。今まで紹介した曲とは趣向が違いますが、ふとした時に聴きたくなります。

-これまで「レペゼンアジア」をテーマに7曲選んで頂きましたが、この楽曲達に共通するポイントは何でしょうか?

友達に「いい音楽ある?」って尋ねられたらまず教えたい7曲です。ここで挙げた7曲はラジオでかけたものも多くて、リスナーの反応がよかったものを選びました。

-因みに、7曲を通してPOPSや楽器の音色が明るい曲が好きだと仰っていましたが、ファンファンさんのルーツとなる曲はありますか?

大学時代にカルチャーショックを受けたのはフォークソングです。高田渡さんや友部正人さん。子どもの頃はT.M.RevolutionやSPEEDが大好きで、高校生では部活で吹奏楽曲ばかり。そんな中、京都で大学生になり出会ったフォークや昭和歌謡の影響は大きいかもしれません。

大学で所属した軽音サークルが、ザ・ピーナッツとかピンクレディなど、いわゆる昭和歌謡をよくカバーする集まりだったんです。サックスなど管楽器がポイントとなる楽曲が多かったので、唯一トランペットを演奏できた私は重宝してもらいました。よくバンドに誘っていただいてました。だから、バンドの中でホーンセクションではなく、“管楽器が1人”っていうのはその頃から慣れていたのかな。当時トランペットを続ける気はあまりなくて。ボーカルや、ピアノを習っていたのでキーボードをやってみたいと思って軽音サークルに入ったはずが…またトランペットをやることになったという(笑)。

-軽音サークルに入ったことが、バンドとしてのファンファンさんの始まりなんですね。

そうですね。バンドにいる管楽器奏者って、そもそも人数が少ないので。京都や大阪のライブハウスで演奏するようになると、いろんなバンドに誘っていただくようになりました。ライブを観てくれたバンドマンが、自分のことを知って、声をかけてくれて。演奏できる機会がどんどん増えていきました。そんな感じで今の活動にも繋がっていきましたね。

-どれも新鮮な7曲を選んで頂き、ありがとうございました!最後に、伝えたいことがあればお願いいたします!

9月20日(日)にくるりが主催するイベント「京都音楽博覧会2020」をオンラインで配信します。楽しんでいただけたら嬉しいです。オンラインでも楽しんでもらえるよう、手探りですが心を込めております。ぜひご覧ください!

プレイリストはこちら

Photographer:Kotetsu Nakazato
Interview&Text:Ayaka Yoshimura
Edit:Risa Sato

【京都音楽博覧会2020 オンライン】

配信日時:2020年9月20日(日)開場19:00 / 開演19:30
見逃し配信期間:配信終了(※1)~2020年9月27日(日)23:59
チケット代(視聴券):前売り¥3,500(税込)/ 当日¥4,000(税込)/見逃し配信¥4,000(税込)
出演:くるり、岸田繁楽団
(※1) 配信終了後に再配信処理を行いますので、ご覧いただけない時間がございます。

京都音楽博覧会2020オンライン:https://kyotoonpaku.net/2020/
視聴受付URL:https://eplus.jp/kyotoonpaku2020/
クラウドファンディング:https://readyfor.jp/projects/onpaku2020

【ファンファン(くるり)】

京都府舞鶴市出身。トランペット、コーラスを担当する唯一の女性メンバー。2011年加入。数々のアーティストのライブやレコーディングに参加するなど、多方面にて活躍中。9月20日には、第14回目となる京都音楽博覧会をオンラインにて開催。

Twitter:https://twitter.com/fanfanchan
Instagram:https://www.instagram.com/fafafafafanfan/