【21Questions】SUPER BEAVER 渋谷龍太に聞いた21の質問「“俺たちの会話がそのまま曲になってる”感覚が強い」

今年2020年にメジャー再契約を果たしたSUPER BEAVER。10年の時を経て、各々の確固たる決意が明確になった今、「突破口/自慢になりたい」が10/21にリリースされる。その注目度の高さはもちろん、ファンとの阿吽の呼吸、紆余曲折を共にしたファンとのコミュニケーションもSUPER BEAVERの魅力の1つだと思う。
今回は、渋谷龍太に21の質問を伺った。熱い眼差しとは裏腹な温もりと愛で溢れる丁寧なアウトプットに、それぞれが寄り添える場所を見つけて欲しい。

Q1:まず最初に、音楽に興味を持つ前の渋谷さんの夢は何でしたか?渋谷さんが執筆された小説『都会のラクダ』やオールナイトニッポンでは高校時代のお話が印象的だったので、それ以前の話が気になっていまして……。

1番最初に描いた夢は、ゴミ収集車の運転手さん。これは小学校上がる前でしたかね。正確には、収集車のバーにつかまってゴミを集める人がカッコ良くて、「あの人になりたい」って公言してました(笑)

Q2:SUPER BEAVERの制作過程の1つとして、渋谷さんの何気ない一言を柳沢さんがキャッチする旨をお伺いしたのですが、新曲『突破口/自慢になりたい』はどのようなコミュニケーションや過程を経て制作されたのしょうか?

コミュニケーションらしい事は、そんなに取ってないかもしれないですね。「突破口」は、TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クールのお話を頂いてから、自分たちと重なる部分を楽曲に落とし込む場面で話しました。

「自慢になりたい」に関しては、殆どコミュニケーションを取らずとも意思疎通が出来てたんだと思います。僕が書いた小説「都会のラクダ」の中に“自慢になってみたかった”って一文があるんですよ。柳沢は意識してなかったみたいだけど、結果リンクしたんですよね。僕が10代の時に思った事を5年前くらいに小説に書いて、それを柳沢が今持って来た。そういう想いが一貫してそれぞれの中にあったんだなと。

Q3:なるほど。15年間共に歩んできた中で、楽曲の意図がそれだけで把握できるというか。

そうですね。それに、MCから言葉を抜粋したり、そこからテーマを決めて曲を作り始めたり、というのが最近凄く増えてきました。出典が自分の曲も、柳沢が作った曲に関しても、“俺たちの会話がそのまま曲になってる”感覚が凄く強いんです。

Q4:普段直接は言えないけど……、今だからこそ言えるメンバーの皆さんに伝えたい事はありますか?

割と何でも言ってるから、面と向かって言えない事が無いんですよ。でもちょっと前なら、「酒の飲み方気をつけろ」はみんなに言いたかった事でした(笑)。みんな“あ〜、酔っ払ってるな〜”って、めちゃくちゃ分かりやすい酔っぱらい方をするんです。あれはめんどくさいですね(笑)。いつも言ってはいるんですけど……、再喝という意味で「お酒の飲み方気をつけて♡」くらいで書いて頂けると助かります(笑)。

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Q5: 渋谷さんといえば、ロングヘア、ライブでは柄シャツやマーチン、細身のパンツの印象が強いのですが、このスタイルを確立されたきっかけ等はあったのでしょうか?

本心で言うと、自分の中の超絶ニッチなところを突いたつもりなんです。歴史で見たらバンドマンがマーチン履いてること、細身のパンツを履いてること、派手なシャツ着てること、髪が長いこと、化粧してることって全然珍しいことじゃないんです。でも、今の時代の中でその殆どが珍しいものになっていますよね。それを1個ずつ探して集めたんです。

-どのようにニッチな箇所を集めたのか気になります。

なんとなく、今のバンドマンのフォーマットが自分の中にあって、それは自分の理想とは明らかにかけ離れていたんです。文章で読むと打算的に感じるかも知れないのですが、自分のなりたい像を描いて、それぞれの好きなポイントを集めて行ったんです。つまり、今のスタイルは自分の好きなものの集合体ですね。

Q6:前問に通づるのですが、なりたい大人の理想像はありましたか?

ありました!でも1個じゃなかったので、色々なところから引っ張ってきましたね。大体は昔のバンドマンばっかりで、日本のバンドも海外のジャンルも両方。自分が聞いてきた音楽、高校の時に通ってたライブハウスのお客さん、そのステージの上に乗ってた人とか全部ひっくるめて“理想像”が出来上がったんだと思います。

-細かい思い出の残像が残っているんですね。

そうですね。“かっこいい”と思う瞬間って、忘れないですよね。

Q7:渋谷さんが絶対に譲れない“こだわり”を教えてください。

こだわらないところの方が少ないですね。だからちょっとうるさいと思います(笑)。一言で言うなら“自分の好きなもの以外からは選ばない”ことがこだわりですかね。何かに合わせる事を強いられる場面でも、自分の中の「好き」の引き出し以外からは絶対出さないって決めています。

Q8:最近ハマっていることはありますか?

僕、一貫して好きなものは同じなんです。でもこのステイホーム期間で「絵を描けるようになりたい」ってちょっと思って。1日15分、消しゴムを一度も使わないというルールで、左手の模写をずっとやってました。フォームはバラバラで、その日思った形でいいんです。少しでも自分が前進していることを理解してないと毎日が苦しくて、何してるかわからない感じで。だから、目に見えて上達しているのが分かるものを続けていました。

Q9:落語や読書などを好まれる渋谷さんですが、そういった趣味趣向をどの様にインプットをされているのでしょうか?

最近、インプットには“仮のインプット”と“アウトプット”することの2段階がある事に気がつきました。例えば、映画を観るのは仮のインプットの状態、それが本当にインプットされる瞬間は、こういう風にお話を聞いていただいてる時とか、自分で言葉を選んで発信してる時。正直、人と話せない期間に沢山の映画や本、落語に触れたんですけど、ほとんど身になってないです。見たことを、会話の中で「あれ見たから今こういうこと言ったんだ」って気づく瞬間が本当のインプットなんですよね。

-因みに、おすすめの映画はありますか?

山田洋次監督が凄く好きで、『男はつらいよ』シリーズは全部おすすめです。『吹けば飛ぶよな男だが』も良いですね〜。多分男性と女性とでは見え方が全然違う映画だと思うので、是非観て話して、周りの人達とインプットして欲しいですね。

Q10:渋谷さんが発する言葉、例えばライブのMCやラジオ、小説、SNS……、めちゃくちゃ丁寧に言葉を選んでいらっしゃるのだなという印象が強いです。

そうなんです、めちゃくちゃ選んでいますね。ツイート1つするのに1時間ぐらいかかりますもん(笑)。10分置いて見直して、また変えて、みたいなことをずっとやってます。でも、その1つ1つが結果的に自分の身になっていることも分かっているし、言葉と向き合う時間が自分にとってどういう形で返ってくるのかも分かっています。あとは好きでやってるってのが1番デカイですね。書いてる時間、超絶楽しいです。

Q11:小説「都会のラクダ」での”オトナ”と”大人”の使い分けが面白いですよね。

ありがとうございます!立場と本質的なものとで、あえて漢字とカタカナとで分けてます。本当は一人称ぐらい多岐にわたって違いが存在していて、多面性があるものだと思っています。「オトナ」の中にも好きな「オトナ」と好きじゃない「オトナ」がいて。「大人」の中にも素敵だなって思う「大人」と、好きじゃない「大人」がいるんです。でも、わかりやすく大きく二極化して考えるなら、”僕”か”私”かみたいな表現2つになる。小説は視覚で情報を得るものなので、使い分けました。

Q12:因みに、渋谷さんが“大人になったな”と思う瞬間はありますか?

わぁ〜そんなに実感してないんだよな……(笑)。過去の自分との比較でしか感じないんだと思います。“あの時、あの選択を迫られた場面で、今の自分はどちらを選ぶか”とか。超細かいところだと、“食べたいアイスが2個あったら、両方買うようになった”とか(笑)。4、5年前だったらどっちか1種類だけか言ってたけど、今は2個ともレジに持っていっちゃう。あと、お会計中にレジ横のものも一緒に買ったりとか。あれやった瞬間は大人になったなと思います。

Q13:2020年6月10日「ハイライト/ひとりで生きていたならば」リリースを機にメジャー再契約となり、SUPER BEAVERの第3章がスタートしました。当時の楽曲をライブ等で歌う時、例えば当時の内面的なものや節目を振り返る事はありますか?

思い出すことはあれど、振り返るという行為はしないかもしれないですね。それで言うなら、“大人”を感じるようになった事は、”無理しなくても少しずつ説得力が出てきた”ってことかもしれないです。絶対に年齢で比べちゃいけないことだけど、でも、今はそういう事を考えずとも生きた年月が、説得力を少し持つようになったなって思います。無理しなくても良くなってきたっていう点では、そこに大人を感じるかもしれないです。

Q14:バンドの歴史を見ても、SUPER BEAVERとファンの間に直接言葉で交わさずとも伝わる想いみたいなものが密接な印象です。ファンの皆さんもその歴史を理解して見ているというか。言葉が無くても伝わるものがある、そのコミュニケーションが見えるのが面白いなと。

そうですよね、いやぁ面白いです。やっぱり年月を重ねないと見えてこない部分があるんだなって思います。漠然と過ごしてきた年月じゃなく、お互いが気持ちを共有したり、お互いに意思を積み重ねてきたりしたからこそ、その年月に意味を感じるようになりましたね。

Q15:SUPER BEAVERとしてのマインドも確固たるものになったからこそ、メジャーでの挑戦が広がるという。新曲『突破口』では、選んだ道への迷いが断ち切られたというか。

そうですね。正直、メジャーには戻れないと考えてましたし、これぐらいで迷ったり信念曲げたりするくらいなら、多分もう音楽は続けられないでしょうって今は思ってます。力を貸してくれる人、友達や家族のように近しい人たちがいる。何よりも、音楽を聴いてくださる方ありきだと思います。そういう人たち全員が楽しいって思ってもらえる自我なら、ガンガン貫きたいですね。

Q16:そのタイミングで、コロナ禍に入りオフラインの活動が制限されたと。配信ライブにおいて聴いてくださる方々とのコミュニケーションが取りづらい中、SUPER BEAVERの想いを伝えるために意識されてることはありますか?

ラジオのおかげで変に意識しなかったかもしれないです。ラジオのお喋りは人の顔が見えないので、一番最初にラジオのレギュラーやらせて頂いた時は凄く戸惑ったんですよ。それまでは絶対に目の前に人がいるから、人と自分とで作る空気感の中で話をしてたんですけど。ラジオってあくまでも自分の中の空気感じゃないですか。配信ライブも似た様な状況ですし、ラジオをやっていたおかげであまり不自然じゃ無かったのかなと思います。「限られた中でも伝える術ってあるんだな」っていうのがあの時に学べたことの一つではあるので。

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Q17:因みに、オフラインでのライブができない今、渋谷さんが今思う”理想の音楽の形”はありますか?

ゆうたら、以前の形ですよね。配信ライブ観て、楽しいと思っても、それは純粋に楽しいと思っていないというか。もう15本くらい見ましたが、心のどこかで“これは配信だな”って思っちゃいます。「現場至上主義」というイベントを自分たちで開催しているのですが、やっぱり、ライブという現場でしか感じられないものにロマンを感じますね。そんなに多くを望んでないし、システムなんて発展しなくて良いと思ってます。うん、以前の形が理想形ですね。

-多分、配信を見てファンの皆様もよだれを垂らしてる状態だと思います。

ほんとそうですよね。満足してないんだもん。だからといって完全に満足する形を作りたいとは、正直今思えてないです。配信では、その中でできることを考えた上で”向き合う形”を取りました。4人が同じ方向を見て演奏してるのって、その向こう側に実際に観客がいるからこその形であって。お客さんを想定してなかったら同じ向きで絶対音楽やってないはずなんですよね。”横並び”は対話するための角度で。だから、僕らはそこに人がいないということを大前提にして、一番自然な形を考えた時、向き合う形(スタジオ練習の形)が一番近いっていう答えになりました。

Q18:ライブ前など、緊張をほぐすルーティーンは何かありますか?

僕の場合は“ルーティーンを作らない”ってことが1つのルーティーンですかね。ジンクスとかルーティーンは敢えて持たないようにしてます。でもライブ前に時間がある時は、1枚の紙に、セットリストの1曲を抜粋して歌詞をただ書きます。完成形を見るとその日の精神状態がわかるんです。

-字の上手さなどで精神状態を判断するのでしょうか?

そうです!“字が汚い、行間のバランス、思い出せない漢字があった”とかでその日の精神状態や集中力を確かめて、オンステージまでの過ごし方を決めます。興奮しすぎてるから落ち着かなきゃとか、落ち着きすぎてるからもっと興奮しなきゃとか……。

Q19:SUPER BEAVERの皆さんは「FROM ライブハウス」のマインドをかなり強く持たれていると思うのですが、印象に残るステージはありますか?

10代対象のTEENS’ MUSIC FESTIVALという大会で優勝した時のステージはすごく覚えてます。色んなもののきっかけになりましたね。1年目は全国大会まで行ったけど優勝できなくて、その1年越しに優勝出来たんです。あん時の、自分で初めて何かをやってみたいと思った時の“挫折”と“喜び”、緊張感、全てが新鮮でした。最初の衝撃はやはり、印象に残りますよね。

Q20:以前、渋谷さんは「未来が不透明な限り無敵だ」とおっしゃっていましたよね。TEENS’ MUSIC FESTIVALでの印象も、未来が不透明だからこそ感じる新鮮さがあったのでしょうか?

そうですね。未来が不透明な限り無敵っていうのは本当に思ってることです。でも、何かが明確になったり知識が増えても、それでもドキドキ・ワクワク出来ているから音楽を続けてるんですよ。それが出来なくなる瞬間が、もしかしたらこの先来るかもしれない。来た瞬間、音楽を止めるんでしょうね。

Q21:日常やSNSでもつい正解や明確な未来を求めてしまいますが、そこを取っ払えるのは救いになると思います。不安定な時期だからこそ、正だけでないメッセージも更に活きてくると。最後に、ファンの皆様に何か一言ありましたらお願いします。

早く会いたいですね。もうそれ以上が無くなって来ました。頑張りすぎることがプレッシャーになるなら頑張らない方がいいとも思いましたし、他にも色んなことを考えましたけど、もう「早く会いたい」に尽きます。それ以外見えないかもしれないですね。

Photographer:Maho Korogi
Interview&Text:Ayaka Yoshimura
Edit:Risa Sato

【リリース情報】

「突破口/自慢になりたい」 2020/10/21 RELEASE

配信はこちら

–初回⽣産限定盤(2CD)–

●Disc1/CD
01. 突破⼝ (TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール オープニングテーマ)
02. ⾃慢になりたい

●Disc2/特典CD
01.証明 (17.04.30 ⽇⽐⾕野外⼤⾳楽堂 単独公演)
02.うるさい (18.04.30 ⽇本武道館 単独公演)
03.⼈として (18.04.30 ⽇本武道館 単独公演)
04.閃光 (19.12.30 COUNTDOWN JAPAN 19/20 EARTH STAGE)
05.27 (20.01.12 国⽴代々⽊競技場 第⼀体育館 単独公演)
06.美しい⽇ (20.01.12 国⽴代々⽊競技場 第⼀体育館 単独公演)

–期間生産限定盤(CD+DVD)–

※TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール描き下ろしイラストジャケット デジパック仕様(C)古舘春一/集英社・「ハイキュー!!」製作委員会・MBS

●Disc1/CD
01.突破口 (TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール オープニングテーマ)
02.自慢になりたい

●Disc2/特典DVD TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール ノンクレジットオープニング映像
●封入特典 TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール 描き下ろしイラストジャケット絵柄ステッカー2枚封入

【配信ライヴ情報】

SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP〜特大のラクダ、イッポーニーホーサンポー〜@横浜アリーナ

12月8日(火)横浜アリーナ
※限定ライヴのため詳細は該当者にのみ通達

“SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP〜全席空席、生配信渾身〜 @横浜アリーナ”

12月9日(水)横浜アリーナ
OPEN 19:00 / START 20:00
配信サイト:SUPER BEAVER Official YouTube Channel
価格:無料
URL:https://youtu.be/j0CF6aqlUPk