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10月14日より、NetflixにてBLACKPINK(ブラックピンク)のオリジナル・ドキュメンタリー「BLACKPINK  〜ライトアップ・ザ・スカイ〜」が公開となっている。2016年に彗星のごとくK-POPシーンに現れ、一躍その名を世界中に轟かせたガールズグループの軌跡をたどるドキュメンタリー映画だ。

この作品はメンバー4人への独占インタビューを織り交ぜながら、練習生時代の過酷なトレーニングやレッスンを積み、デビューを勝ち取るまでの過程、着実にスターダムを駆け上がり、K-POPのガールズグループとして初めてコーチェラフェスティバルに出演、世界的なブレイクを果たすまでを描いている。10月2日にリリースされた初のフルアルバム『 THE ALBUM』に至るまでの過程を見る教材としても楽しめるドキュメンタリーとなっている。

『THE ALBUM』に輝くティアラ

現行のK-POPシーンにおいて、男性グループではBTS、女性グループではBLACKPINKが最も有名かつ成功を収めている存在であるということに異論はないかと思う。そんな流れから見ても、BTSのドキュメンタリー映画が上映され、BLACKPINKのドキュメンタリー作品がNetflixによって作られたのは自然なことだ。

BLACKPINKは、2016年にYGエンターテイメントが7年ぶりにプロデュースするアーティストとしてデビュー。YGエンターテイメントというと、BIGBANGや2NE1といったK-POPシーンを代表するスーパーグループを排出してきた事務所である。そして2016年という年は2NE1が解散した年でもある。つまり、BLACKPINKはデビューした瞬間から2NE1を超える存在としての期待を課せられてしまったのだ。

しかし、そんな重圧を物ともせず、2NE1が得意としていたEDMとK-POPサウンドのミックスという音楽性を武器に着実にヒットを飛ばしていく。そして「DDU-DU DDU-DU」のヒットが彼女たちがもうワンステージ上に行くきっかけとなる。

2018年末には、アメリカの大手レーベル・インタースコープと契約を果たし、アメリカ市場への進出を本格化していく。2019年2月にはアメリカの朝番組「グッド・モーニング・アメリカ」と深夜番組「レイトショー・ウィズ・スィーヴン・コルベア」に出演。こちらのパフォーマンスではまだまだ受け入れられることはなかったようだが、2019年4月、女性K-POPアーティストとして初めて出演したコーチェラのステージでは、アメリカ中の音楽ファンから大喝采を受けるという結果に。

2020年5月にリリースされたLady Gagaのアルバム『Chromatica』にはコラボ楽曲「Sour Candy」が収録されたり、『THE ALBUM』ではCardi B、Selena Gomezが参加するなど名実ともに世界的な成功を収めたのだ。その自負は何より1stアルバムとなった『THE ALBUM』のジャケットに映し出されている。K-POP界におけるティアラは今、BLACKPINKが手にしている。

韓国フェミニズム文学の追い風

「82年生まれ、キム・ジヨン」という韓国文学をご存知だろうか。日本の書店に於いてもたびたび”韓国フェミニズム文学”という触れ込みを見ることと思う。昨今韓国では女性作家らによる女性の地位向上や、男女間における齟齬に対して声を上げるという動きが文学を発端に大変盛んになっている。

音楽シーンにおいては、BLACKPINKを筆頭にMAMAMOO(ママム)や、ITZY(イッジ)といった、男性の客に媚びるでなく、女性が女性をカッコイイと思うようなスタイルを体現する、いわゆる”ガールクラッシュ”と形容されるような在り方が注目を集めている。

この文学と音楽シーンにおける”女性”の在り方を考える動きが同時代に盛んに起こっているのは決して偶然ではないと思う。ジャンルを超えた互いが遠いところから、影響を及ぼしあってムーヴメントを起こしている。それは音楽と文学という相互関係にとどまらず、韓国と世界という枠組みにも見ることができる流れなのだ。

第61回グラミー賞ではBTSが「最優秀レコーディング・パッケージ」部門にノミネートされた。この部門は純粋な音楽を評価するものではなく、CDやレコードのジャケットの芸術性を評価する部門であり、このノミネートがアメリカ市場における成功か否かについてはBTSファンの間で賛否が分かれた。

正直その是非などどうでも良い。これはアメリカの主要な音楽賞に名を連ねたという話題性にとどまる出来事ではない。K-POPというアメリカにとっては異端であったはずの音楽が、保守的と言われるアメリカの音楽界の重鎮たちにとっても無視できないものとなったことを示す重要な出来事なのだ。

“多様性”などという言葉が叫ばれて久しいが、エンターテイメントを通じて枠組みを壊していくことこそ絶大な注目を集める韓国のカルチャーが今担っている大きな命題なのかもしれない。(昨年のアカデミー賞において「パラサイト」が作品賞を受賞したことで、映画界においては既に実現されたことであると言ってもいいかもしれない。)

アフリカンアメリカン、いわゆる黒人による音楽がどうしてもアーバンミュージックなどという枠組みでくくられてしまうことも問題になったが、それと同義的にいつか韓国人による音楽という枠組みも超えて主要部門に食い込む未来も遠くないかもしれない。

これからの韓国カルチャー

韓国は国を挙げて、あらゆるカルチャーが大きく成長していくことを促していることで知られる。そんな国からは、新たな潮流やトレンドが次々と生まれて当然と言っても過言ではない。その陰で淘汰されたアーティストたちもまた数多いることと思うが、そんな彼ら/彼女らの存在の上に、我々が今日見ている韓国の著名な表現者たちがいることを忘れてはいけない。BLACKPINKの面々も先述のドキュメンタリー内で、毎日10時間以上のレッスンを何年も積み、日ごとに練習生たちが消えていったことを証言している。

同じアジア人である彼ら/彼女らを誇りに思うと同時に、我々も自国の文化を押し出すだけでなく、それぞれの社会的意識やアイデンティティーの確率&表現を磨いて行かなければならない。