https://www.instagram.com/commedesgarcons/?hl=ja

韓国の新進気鋭のデザイナーとサブカルチャーを発掘し、その価値をもっとも魅力的な方法でマーケットに発進することを目指した大人気セレクトショップであるALAND(エーランド)。

そんなALANDが2020年10月、渋谷・井の頭通りに日本初の路面店をオープンした。これを期にALAND JAPANのブランド責任者・事業部長である樋口和之氏に60MAGがインタビューを敢行した。その際、接客という面に関して貴重な意見を伺うことができた。

NANA:逆に、ALAND本国(韓国)と日本との差別化要因はどこにあるのでしょう?

店舗スタッフですね。韓国では接客をしない、みたいなところが良くも悪くも印象的だと思うのですが……。韓国に行ったとき、いろんな方々に現地のALANDの印象を聞いたのですが、ALAND設立時や人気絶頂時は、販売員がすごくオシャレで、その人がアイコン的存在になっていたらしいんです。それが今のALANDに無くなってきているというのを全員が言っていて。なので、日本ではその時の雰囲気を表現したいと思っていますね。そう言った面では韓国との差別化というか、日本ならではの取り組みと言えるのではないかと思います。

NANA:具体的に、ALAND JAPANが店舗スタッフに求めたものは何でしたか?

セレクトするアパレルのジャンルも多岐に渡るので、個性の幅があること、それぞれジャンルの服を違和感なく着こなせることを重要視しています。ALAND JAPANという母体だけでなく、それぞれスタッフからも個性や着こなしを提案して行きたいですね。

60MAG【連載:アジアンストリート】ALAND JAPANが日本で韓国ファッションを集約する訳「みんな口を揃えていうのは”日本には無い”」より—

https://mag.sixty-percent.com/archives/37619

“ファッション”と”店員”から連想されるものにカリスマ店員という存在がいた。しかしいつしかカリスマ店員はいなくなってしまった。アパレルショップの店員はいつだってクールで憧れの的。あんな風に着こなしたいと思うから同じ服を買っていたはずなのに。彼ら/彼女らはいったいどこに行ってしまったのだろうか。

カリスマ店員が消えた必然

カリスマ店員がいるかどうか以前に、我々はいつしか出かけなくなってしまった。好きな服やブランドはどこにオンラインで買えるのだから、わざわざ赴く必要もないのだ。そうなってしまってはカリスマ店員が仮にいたとしても、その存在をそもそも認識できない。クールでオシャレな人はオンラインショッピングに利用した端末越しにSNSにも溢れているし、わざわざ見に行く必要もない。服を買いに行きつけのショップを訪れて、顔なじみの店員さんと談笑しつつといったやりとりが限りなく少なくなってしまった。文字に起こしてみると寂しくも感じるが、それを選んだということは多くの人類がそれが便利で今の生活にあっていたということを裏付けている。

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韓国的な接客をしない接客は、正直今の日本では通用するはずもない。これはアパレルだけでなく、飲食店などにも言えることだがあまりに「お客さま」が偉すぎる。それは日本人すべてに言えることであり、「お客さま」になった途端対人間でなく「店員」という記号でしか接することができない一種の病気のような節がある。だからこそカリスマ店員は今の日本の社会が求めていないということもできる。

ただ、便利や無駄を省くことを求めてECサイトが発達したって、人である以上誰もが体温や血の通った関係を求めてはいないだろうか。

ファッションを通じた人々の関わり

ファッション業界にはCOMME des GARCONS(コムデギャルソン)をはじめとする対人間を意識し続けているブランドが今も存在する。COMME des GARCONS(コムデギャルソン)は、ブランドを贔屓にしているお客さんに対してダイレクトメールを送ってくれる。それも手の込んだ飛び出す絵本のような仕掛けが施された、数ページに及ぶ冊子を郵送してくれるのだ。中身はというとそのシーズンのテーマやインスピレーション源と思われる素材をコラージュした冊子。そして必ず「どうぞお出かけください」という文言が刻まれている。未だ一部のラインを覗いてオンラインでの販売を実施していないブランドだからこそ言える言葉だ。

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これは歴史と権威のある、日本が誇るハイブランドだからこそできることかもしれない。しかし、なかなか行けていないセレクトショップからのニュースレターや、初めてオンラインで利用したショップからの商品とともに直筆のお礼文が一言でも添えてあるだけで温かみが違うと感じるのは、私にまだ血が通っているからにちがいない。

手の込んだ正直面倒な作業一つ一つ、ブランドやショップが持つ心意気に動かされた人など少数しかいないかもしれないが、そんな関わりこそが最終的に人々を繋ぐ。ファッションを通じた人々との関わりかたにはいくつか種類があるが、こんな風にアパレル店員やブランドと関わることだってその一つと言えるだろう。

「服を買うっていうのは、1つの生活を選ぶこと」と言ってファストファッションで大量買いすることに意義を唱えたのは山本耀司だが、両手で抱えられるだけのお気に入りを、何年も何年も大切に抱いていることほど健康的なこともない。そしてその大切を手に入れる過程には、大好きなショップで仲のいい店員さんと選ぶという過程があったら尚いい。思い入れが違うはずだ。

人間が便利を取るのは必然だし、その過程で失ったものと生まれたものという繰り返しで歴史を繋いできた。ただし、究極”人間”である以上、捨て置けない大切にしたい気心というものがあることを、これからもファッション業界は大切にしていてほしい。ファッションはいつだって人々の心を動かすものなのだから。