アジア各国のファッションディレクターに、ローカルな人気スポットやその国のストリートファッション、HIP HOPの実情を、SIXTYPERCENTのブランドディレクター Nanaが探る連載企画。感度の高いデザイナー達が集うローカルカルチャーから、アップカミングなアイコン達を探ってみよう。
今回は、タイ・バンコクで長年ストリートとサステイナブルスタイルを展開し、世界10ヵ国以上で商品を販売する有名ブランドの「DRY CLEAN ONLY」のマーケティングディレクター TANCHA・TANJASIRI (タンシャ・タンヤシリ)にインタビュー。伝説のセレクトストア・Colette (コレット)でも商品を展開していたアジア発ブランドの魅力・ブランドの逸話に迫る。

Nana : 初めまして!タイの現状はどうでしょう?

TANCHA : 初めまして!いろいろなことが起きていますねタイは(笑)ロックダウンも1年くらい立ちましたし、デモも同時に起きているので。これまでは海外戦略が多かったのですが、今はタイマーケットに集中していますね。

Nana  : なるほど。それでは早速ブランドとタンシャさんについて紹介をお願いします!

TANCHA : もちろんです。私はTANCHA (タンシャ)と言いまして、DRY CLEAN ONLYのマーケティングディレクターを努めています。DRY CLEAN ONLYは父がデザイナーでして、自分はマーケティングや海外戦略を考えています。今回は父の変わりに私の方でブランドの紹介をすることになりました。

Nana : 素敵ですね!家族経営なんですね。

TANCHA : そうなんです。タイの最も大きいマーケットであるチャトゥチャック地区で父がブランドをスタートして、もう13年になりますね。元々彼はスタイリストでして、それもあって生地をミックスしたりスタイルをミックスしたりするのが好きなんです。それで自分独自のアイテムを作り出したい、となってからブランドを立ち上げました。

元々ビンテージアイテムが好きで、かぎりある予算の中で何をMIXして一つのアイテムを作るのかという時代がありました。最初はデコレーションアイテムというような形に近かったのですが、このクラフトマンシップがタイのカルチャーにはとてもマッチしているんですよ。

ビンテージをより現代的なスタイルで魅せる。という事に集中して展開していますね。

Nana : ビンテージをコンテンポラリーに魅せるというのはDRY CLEAN ONLYのSNSを見ててもとても感じました。

TANCHA : そうなんです。あとラッキーな事にサスティナビリティのトレンドもファッション業界に入ってきたので、尚自分たちのブランドにマッチしてきたイメージがありますね。それからファッションショーやプレスなどが私たちのアイテムを特集することになったり、日本のショールームの会社が海外のリテーラーに商品を販売するようになりましたね。2012年くらいの頃になります。

Nana : だいたい9年くらい経っているんですね。

TANCHA : そうですね。なのでエージェンシーとかと仕事をしながら、私はパリに行って商品をリテーラーに直接見せたりするのがメインの仕事ですね。今DRY CLEAN ONLYのメイン市場は韓国と香港ですね、日本は元々結構取引があったのですが今はコロナで減ってしまいました・・・。あとはアメリカと中東ですね!あとフランスのColetteでも取引をしていました。

Nana : Coletteも取引していたんですね!もう閉じてしまいましたもんね。

TANCHA : そうなんです、とても悲しいですが。Urban Outfittersなどでも取引がありましたね。メインは今だとアジア市場になっています。海外に展開してからバイヤーがシーズンごとにどのようにアイテムを魅せていきたいのかがわかってきたので、ジャケットやボトムスカートなどの商品も多く展開していくようにしました。ここは戦略的に制作をしましたね。

Nana : アウター商品が主力になっているんですね。

TANCHA : そうですね。ビンテージというスタンスは変えずにアウターが強いのでアウターを強化していますね。

Nana : TANCHAさんはマーケティングディレクターですが主にどのような仕事をされているんですか?

TANCHA : 私はこれまで殆ど海外展開や、バイヤーとのPRなどがメインの仕事でした。かなり海外出張しましたね!今は残念ながらできないですが・・・。リテーラーを見に行って、ショールームの関係者と関係性を築いたりするのが仕事ですね。

2019年頃からオンラインでのセールが非常に伸びてきて、 ウェブサイトやSNSのブランディングやコンテンツマーケティングがメインになってきましたね。

Nana : なるほど。Instagramの投稿等も基本的にはTANCHAさんがコントロールを?

TANCHA : そうですね。アーティスティックチームがあるので、そこが投稿するコンテンツを作りますが、どんなコンテンツにして欲しいのかというのは私の方で戦略を練ります。

Nana : TANCHAさんは元々マーケターの経歴をお持ちだったのですか?

TANCHA : 大学の選考自体はデザインだったのですが、そのあとニューヨークのFITでファッションビジネス全般を学びましたね。FITで学べたのはとてもラッキーだったと思っています。

Nana : NYに行こうと思ったのはお父さんからの影響で?

TANCHA : おっしゃる通りですね!

Nana : 海外でも結構店舗の卸展開をされていますよね。

TANCHA : そうですね。今15ヵ国くらいで取引をしていますが、同じ都市に多く取り扱い店舗を持つというよりは、1都市に1つ取引店舗があればいいな、と。マス化された売れ方がされないようにはコントロールをしていますね。

Nana : 少しお話がズレますが、カルチャーのお話を聞かせてください。TANCHAさんの中でインスピレーションを受けるバンコクのローカルスポットはありますか?

TANCHA :この質問は父のかわりに回答をさせてください!特定のスポットというよりは、今のバンコクの市内は本当に歩いているだけで面白いスポットがたくさん溢れています。

高級なブティックやバーに行ったりというよりは、Chillなスタイルを皆が求めてきていると思いますし、父自身もシンプルなスタイルを好むようになっていますね。 バンコクに行ったことがありますか?

Nana : ありますよ!3度ほどお伺いしましたね。

TANCHA : 多分ローカルも外国人もバンコクのローカル・先進が融合しているスタイルは同じポイントに注目をしていると思います!

Nana : なるほど。バンコクの町自体も発展してきていると思いますが、同時にタイのファッション市場についてはどう思いますか?

TANCHA : タイの人々はトレンドに従うというよりは、自分たちの好きなスタイルを求めるようになってきていると感じています。ストリートが流行っているのも、あのスタイルがというよりは、FREE(自由)を求めたストリートスタイルが流行っていると感じています。

DRY CLEAN ONLYはストリートスタイルとはいっていますが、コンテンポラリー・カジュアルなど全てのジャンルを混ぜたアイテムを展開しています。どのターゲットにむけたアイテムというよりは、ドレスアップして自信を持ちたいという人が購入していると思います。

Nana : 「自信」というのがキーになっているんですね。

TANCHA : そうですね。あとはやはりタイのファッション市場も他の国と同じで COME AND GO (きては出ていく)というようなスピーディーな動きが顕著な時代になっているので、リテーラーであったりショールームなどとの関係性も大事だと思っていますね。パートナーというのが本当にこの時代大切になっていると思っています。