JIN KAWAGUCHIのNetflix マイリストを覗き見。ホリデーに観たい個人的名作

年末年始の巣篭もりは、Netflixと共に過ごしたい。普段覗けないあの人のNetflixとそのマイリストを参考に。今回、Netflixのマイリストを教えてくれたのは、今年自身初アルバム 「Cancer」をリリースしたJIN KAWAGUCHI。個人的名作の3本と共に、混沌の社会における余白と情報のインプット、自身の創作の原点までお話頂いた。普段相容れない作品と共に、2021年幕開けの未知を楽しんで欲しい。

-年間かなりの数の映像作品を観ているジンさんのマイリストに入る作品の基準を教えてください。

繰り返し観るかどうかが1番大きいかな……。観たい作品をマイリストに保存する人も多いと思うけど、それこそ“観たい作品”を見尽くしてしまって、これからも観るであろう大切な作品たちをリストに入れています。

-なるほど、それではマイリストにあるジンさんのとっておきの3作をお伺いしたいです。まず1作目は?

うーん、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」かな。この作品はめちゃくちゃ繰り返し観ていますね。そもそも、決してハッピーエンドで終わらない所謂胸糞映画が好きなんだと思います。この映画もめちゃくちゃ悲しいラストなんだけど、そっちの方がラストまで相手に問題の定義を助長させる。映画が終わっても、考えさせられる余韻がめちゃくちゃ残るんです。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」はその中でも特に、負の余韻がすごい映画だった。好き嫌い分かれると思うけど、特に自分は好きで大切にしたいですね。

-確かに、貧富の差は勿論、戦争や人種的問題を扱う映画でも、決してハッピーエンドで終わらないわだかまりがこの令和にも続いている訳で……。その視点で観ると、胸糞だと言い切れない余白を感じられるかもしれないですよね。それでは、2作目を教えてください。

「ANIMA」です。これは去年の作品で、トム・ヨーク(Radiohead)の短編15分の映像作品。ポール・トーマス・サンダーソン監督とタッグを組んで映像と音楽を使ったもの。ANIMAってラテン語で「命」を指す言葉で、作品にもそういうテーマがあって、すごいコンセプチュアルなんですよ。悪夢みたいなものを映像で表現してて、だから『ダンサー・イン・ザ・ダークに通じるものがある。それを長編じゃなくて、短編15分の中で想像させる余地を与えてくれるというか。しかも短いから何回も観れる。ぼーっと観ながら、自分の作品作りの上でコンセプトって大事だなって再確認させてくれる作品です。

-『ANIMA』も何回も観たことがあって、これからも観るであろう作品ですか?

何回も観たし、これからも観ると思う。これは名作だと思う。今のパンクは内に秘めるものだと思うんだけど、だから今はパンクのマインドがHIP-HOPに流れて行ってるのかなとか。でも俺はやっぱりロック小僧だし、Radiohead大好きだし。特にトム・ヨークはリスペクトしているから、個人的な背景も含めて『ANIMA』はフェイバリット作品です。だから自分がやりたいのは、そういう現代社会を見た上で、咀嚼して、抽象的にすること。というか、曲の伝えたいことを単一化にせずに、聴いた人に依存しない色んな解釈ができる様にすること。

-「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラストみたいな、相手に余白を与えるということですね。

そうそう。いろんな解釈の余地を作ることによって、俺はこういう価値観の提示をするけどそれを自由に解釈してもらうっていう楽しさですね。「こう受け取って欲しい」って強制しないでFeelしてもらう、で、想像してもらいたいんです。

グローバルとか多様性とかそういう言葉が飛び交う現代社会は、TikTokとかYouTuberによって人との境界線がどんどん曖昧になってきて。気軽に繋がることはできるけど、果たしてそれが豊かさや自由さをもたらすのかなって思うんです。全部言葉で1から10まで説明してあげるものが増えた感覚もありますね。別に違和感は無いけど、そういう時代に変わったんだなって。

-情報を与える時代なんですね。

ですよね。さっき、違和感は無いとは言ったけど、俺がやりたいこととは違うかなと。俺は想像力を掻き立てるものを作りたいんです。……あれ、なんの話だっけ。だから、まあなんだろうな、Netflixにはないけどアンドレイ・タルコフスキーっていうロシアの映画監督がいるんだけど……(笑)。

-(笑)。アンドレイ・タルコフスキー監督は『僕の村は戦場だった』などを制作されているんですね。彼もトム・ヨークに通ずるものがあるのでしょうか?

タルコフスキーは映像と音楽が教科書みたいにとにかく美しくて。今の監督の中には彼に影響を受けてる人も多いんじゃないかな。僕は映像は初心者で詳しくは分からないけど、リスナーの1人としてタルコフスキーの映像と音楽はフェイバリットですね。

-続いてラストの3作目をお願いします。因みに、重めの映画を観続けると息抜きしたくなりませんか?

そうですね、『ジャッカス・ザ・ムービー』にしましょう。

-その理由や魅力は……?

個人的に、アーティストとしても考え込むことや落ち込むことも多いんですよ。俺は根がネガティブだから、笑いたい時、気分を変えたい時はおバカなものが観たいかな。実はYouTubeやってた時のルーツは『ジャッカス・ザ・ムービー』。超過激だけど、ジャッカスっぽいことやりたいよねって。

-確かにこの作品R18ですね。これは、笑いたい時に高確率で観る息抜き作品なのでしょうか?

そうです!でも、あれもあれでパンクというか、アナーキーというか。アメリカのおバカもので、普通にルール無用なんですよ。レンタカー借りて保険入るんだけど、だから車壊してもいいでしょ?みたいな感じで(笑)。ちゃんと防具つけて、車ぶつけまくってガッタガタの状態にして、ダッチワイフを2人乗せて返すの。「すいません事故っちゃって、でも保険入ってるんで」「これは保険おりないよ」「でも保険入ってるじゃないですか」ってやりとりして最後に走って逃げるの(笑)。

-分かり易く明快な悪さというか(笑)。

マジで面白いです(笑)。でもすごい幅ですよね、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』、『ANIMA』、『ジャッカス・ザ・ムービー』。

-バランスが良いのでは……?「がっつり入り込める、尺が短い、息抜きができる」という。ちなみに最近観たおすすめの映画は?『テネット』が巷では話題ですが。

俺、まだテネってないんですよ。皆んなテネットテネットって、だからなんか意地張っちゃって……(笑)。まあそのうち必ず観ますね(笑)。最近の良かった映画は『mid90s ミッドナインティーズ』ですかね。シンプルに良かった。ただのスケートおしゃれ映画と思ったら大間違いで、ちゃんと映画館で観れて良かったです。

-因みに、映画から制作に与える影響はありますか?

もちろん。映画って総合芸術だから、わざわざ言わないけどコンセプトがしっかりあるわけで。その汲み取り方や表現の仕方、凄く勉強になります。『天気の子』や『私はロランス』とか、ストーリー含めて綺麗だったなぁ。本当に映像がめっちゃ綺麗、ストーリーも最高!

-最後に、映画史上最高傑作は…?

『映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!』です。

-もしかして、プリキュアに影響されて髪色ピンクにしました?

いや……それは、アミアヤです!

Photographer:Maho Korogi
Interview:Ayaka Yoshimura
Edit:Risa Sato

【JIN KAWAGUCHI】

昨年2019年12月14日に自身初となる音源/アルバム 「Cancer」をリリース 。スローなファルセットボイスに焦燥感を覚えるサウンドで、その実力を確実なものに。88risingにフューチャーされるなど、日本に止まらず海外での評価も得ている。

Instagram:https://www.instagram.com/kurtcojain/?hl=ja
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