【ASIAN FACE】OZworldにインタビュー「チョイスはできるけどコントロールはできない」

先日、沖縄を拠点に活動するラッパー・OZworldが「KAガMI(feat.KUJA)」のMVを公開した。神秘な自然に包まれる演者にサイケなフック、コメント上もその世界観を堪能し、紐解くリスナーで埋め尽くされていた。彼の楽曲は、多彩な解釈をも持つ。恐怖・信念・近未来・懐古……。

今回は、「KAガMI(feat.KUJA)」も収録され、重盛さと美やAwichの客演でも話題を集めたアルバム「零 – ZERO- OZKNEEZ FXXKED UP」に纏わるギミックからOZworld自身が抱く世界観とその脳内を伺った。巧妙な伏線やストーリーが散りばめられた創作に通づる伏線が、本インタビューから見つかるかもしれない。

ー音楽自体に興味を持ったきっかけを教えてください。

高校に上がるまでは、ジャンルに縛られずにみんなが知ってる曲を聴いていました。でも、高校上がって出会った友達がおしゃれで。その子達から洋服や音楽を教えてもらって、興味を持ち始めましたね。そっからレゲエちょっと聴いて、ヒップホップを見つけて……。

ーヒップホップに興味を持つ前、幼少期の夢はありましたか?

中2から中3までは彫り師になりたいと思っていました。高校に行くか行かないか迷ってたけど、みんなが高校に行くのを楽しみにしている様子を見て、高校って楽しそうだなと思い始めて、高校受験の3ヶ月前ぐらいから塾に通いだしました。

ー高校行くか行かないかで運命が変わっていたというか……。

マジでめっちゃそうですね。高校に行ってなかったら、「この同級生イケてるな」っていうのを受け入れる人間にすらなれて無かったかも。

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ー昨年からI’M HAPPY Entertainmentを発足され、沖縄を拠点に活動されていますが、その理由をお伺いしたいです。以前、沖縄には出る杭を打つ文化がなかったり、沖縄だからこそ歌えることがあるとおっしゃっていたと思うのですが。

アーティストも友達も沖縄に遊びに来る人が多くて、そこで改めて確信したけどやっぱり都会に住めば住むほど、沖縄に来たらめっちゃオープンマインドになるんですよ。ゴリゴリギャングスターの人達でも、「沖縄に来たら何か優しくなるんだよな」って自然と言葉が出てしまう。そういう余白が沖縄の魅力だし、自分も沖縄にいるとフラットになれるんです。

ー沖縄と大都市東京の時の流れにはどのような違いを感じますか?

大阪や東京へ行った時に感じるのは、人や街の動き、流れが早いこと。人間はそのサイクルの中に生きてるわけだから、連動して自然とその速度になっていく。 沖縄はウチナータイムって言葉があるくらい、時間軸がスローペースなんです。東京の人からしたら、走ってる車も遅いって感じると思います(笑)。

ーその東京のスピード感について行くのは、制作においても窮屈?

東京にいると新鮮なものを感るし、楽しいことも沢山あるんですけど、仕事で東京に3泊以上すると、帰りたいなって思います(笑)。新鮮さを楽しめる一方で、仕事としては色々進むのが早いから、そのスピード感にはあまり慣れませんね。海や自然だったりの、視覚に情報がめっちゃ少ない場所に住むことが余白を生み出すのかなと思います。普通に空を見ていて曲を思いつくことも多いです。自分の曲だけでなくて、人が作ったもののサンプリング元って実は全部自然に繋がってたりするんですよ。言ったら現代は錬金術で成り立ってきた世界じゃないですか。

ー何かパッと思いついたことから頭の中で錬金して、世界観を磨いていると。

そうかもしれないですね。ペットボトルだろうが、ティッシュ1枚だろうが、それから宇宙のことを考えたり。

ー「AKIRAメナイ」の MVの発端が、“いちごシロップのかき氷食べたい”というのをお伺いして、それも錬金に近い根源なのでしょうか?そもそもどういう意図があるのでしょう?

あのMV、自分でも怖いなって思います(笑)。あれは、内側のカルマを表現したんです。でも、小学生のファンがいたとしても、“内側のカルマとの戦い”って理解できないじゃないですか。だから、その撮影の始まる前にどう表現しようって迷って。そうなった時に友達が、“イチゴシロップのかき氷食べたいってことにすれば?”って言ってくれたんです。それを自分なりに考えて、錬金してあの世界観に仕上がりました(笑)。このことはあまり説明してなかったから、みんな不思議だったかもしれない……。

ー同MVに“沖縄に太古から浸透してるユタなどのシャーマニズムと現代的なカルチャーとを掛け合わせ、でも思想は仏教っぽくもある。”というコメントがあり、それにOZworldさんがいいねされていましたよね!

そうですそうです!「分かってんじゃん!70点!」の気持ちでいいね押しました(笑)。

ーどの様にファンの方々の反応と向き合っていらっしゃるのでしょう?

コメントや反応を見ると、「うわ!この世界おもしれー」って気づけることが沢山あって。それによって自分の生活とかやりたいことを実現させて、ステップアップしていく上での応用になっているんだと思います。不自然の流れを利用して人間は火を起こしたりしてる訳だから、どんな反応も自分に取り入れて行きたいですね。

ー普段楽曲や作品に影響するインプットは何かありますか?歌詞にもマトリックスやライトセーバーがでてきたり……。

昔から映画やアニメ、ゲーム、小説が好きで、全部インプットになっているのかな。好きなことが全部インプットに繋がってますね。

ー好きなものから、歌詞や世界観にどんどん派生して行くのでしょうか?

そうかもしれないです。作者の視点で考える見方にめっちゃハマって。例えば映画に出てくる部屋とか、監督が意味のない物を置くはずがないんですよ。背景のポスターとか、置物とか……。

ー何らかの伏線になると言うか……。

そうそう。そういうのを拾って、監督がどういう意図で、どういう経験をしたから、こういう映画をこういう置き方で作ったんだというのを探るのがめっちゃ楽しくて。なんだろう、多分自分って、根っこから喋りたくて伝えたい人間なんですよ。 もともとそうだからっていうより、それに気づいてそうなれるようになった、受け入れるようになったという感じ。ずっと人と会話できない人だと思ってて、 そうじゃないや自分でそう決めてるだけだって気付いた瞬間に、本当はめっちゃ喋りたい人なんだなって。

ーそれに気付いたのはいつ頃なのでしょうか?

ラップ始めてからですね、高校生ラップ選手権の少し後かな。 今でも人の話を聞けなかったりするし、聞いてるけどそれなりの解釈の仕方を考えてるんです 。俺の中ではもっと考えてるけど 、相手には何も考えていないように思われてるなって、また考えて気にして空回りしてしまう自分もたまにいて、会話が苦手だなって思う時もあります。でも、新しい学びをインプットしている時に 、同時に俺だったらどう伝えるかっていうのも考えてしまうんですよ。 この思考回路が出来上がったのは完全にMCバトルのおかげですね、それぞれのアンサーの接続的な言葉を考える事を瞬発的にやりながら、発言する。自分の思考のインプットやアウトプットもそういうプロセスと一緒だなって。MCバトルが意味勝手に修行になっていたんです。

ーなるほど、OZworldさんの対外的かつ内的なアウトプットやインプットが複雑に絡みあった上での世界観なのですね。例えば、アルバム「零 – ZERO- OZKNEEZ FXXKED UP」のジャケットは2本の柱?の様なものが描かれていますよね。何かの伏線にも見えますし……、見た人も考えさせられるというか。

そうなんです。そして、このジャケットの伏線は1、2年後に回収できるという……。お楽しみにです(笑)。

ー先ほどシャーマニズムや仏教の見解といったコメントのお話をしましたが、OZworldさんの中で独自の見解はありますか?

そもそも、おばあはユタ(民間霊媒師/シャーマン)では無いけど、結構そこに近いタイプなんですよ。今はシャーマニズムをあまり信じない世代もいるけど、自分は当たり前にその信仰の中で生活していて。沖縄は先祖崇拝だから、それを神様として捉えたり強く信じるのとは違うというか。

ー特別なことというよりは当たり前のこと?

なのかなーって思うこともありますね。そもそも日本って、宗教を話すのがタブーみたいな空気になるようになることもある。だから、そういう地域とか先祖が受け継いだものを大切にしたいなと思いますね。

ー宗教や信仰がアイデンティティと離れてると言うか……。

それこそ、本来はアイデンティティを形成するものかなと思いますね。自分の中では色んな宗教に興味があって、見て調べたりしてるけど、結局は根本が一緒だったりする。指差してる方向は一緒だけど、場所と肌の色だけが違うってことがめっちゃあって。めっちゃ助けになる言葉を昔の人達が残してくれてて、本当に行き詰まって物理的な障壁がきたとしても、解決策を見いだせる。自分はこういう宗教ですって決めてる訳ではなくて、シャーマニズムっていう概念に対して興味を持っている。 宗教って主観的になりすぎずに見ると、ヒントも沢山あるんだと思います。

ー 昔の人が何十年、何百年かけて導き出したものを、今は簡単に吸収できる。贅沢でもありますよね。R’kuma(レオクマ)として活動していた頃からOZworldに至るまで、グラデーションのように世界観がどんどん強調されている印象があるんです。内面的な面で、何か変化や意識の違いはありましたか?

1番自分が納得している説明は、OZworldは好きな世界観が固まって出来ているもの。でも、 OZworldとして自分を生き続けると、おかしくなってくるんですよ。有名な方もそういう感覚があるのかもしれないけど、どっかで評価されてきた生き方が自分に合って無いって気付くんです。自分もそのタイプ。自分の音楽は、そういう葛藤から生まれてるものが多いと思います。
R’kuma(レオクマ)は、単純に音楽やラップが上手くなるために必要だったステージかな。本当に自分がアーティストとして伝えたいこと、やりたいこと、自分の使命と思えるものを見つけたのがOZworldなんです。

ーアートや印象と付随する世界観を更新されていくのですね。因みに、ファッションのこだわりは何かありますか?

洋服買うこと少なくなったのですが、好きな人が作ってるか、“これだ”って思うものしか買わない。色は自分の中でシーズンがありますね。そのタイミングってマジである色が自分に近寄ってくるんですよ。最近はもっぱらターコイズブルーですね。

 

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ーーOZworldさんの世界観が確固たるものとなった、最新アルバム「零 – ZERO- OZKNEEZ FXXKED UP」。 OZworldさんの伝えたいこと、歌詞、リリック、音楽、アートワーク。今後の作品にも通じるものがあるということですね。

自分がその聞き方を何回もやっているから、“そんなこと神に言うなよ”って言われるようなことでも、自分の中に溜めてるのが嫌すぎて全部リリックにして来たんですよ。そんくらい何でも自分は音楽に素直になれる。自分が死んでも、楽曲は自分の中の聖書として残る。自分の中でひっそりやろうと思ったけど、結果的にステージに立っているんです。結局コントロールは誰にもできないんだなって気づいたし、運命なのかもしれないし。チョイスはできるけどコントロールはできない。今でも俯瞰して、映画を観ている感覚の自分がいるんです。そうすることで、ちゃんと後ろで手綱を持ってコントロールできるというか。

ー選択はできるけどコントロールできないって面白いですね。それが進む環境であり出会う人であると。そこを踏まえた上で、freedomを唱えるOZworldさんの“自由”とはどのようなものでしょう?

今までの曲でも今回の曲でも“I wanna be freedom”を伝えて来たのですが、結果的に自分が自由と思ったら自由だなって。何か不自由な環境って思ってる自分がいるから、不自由なわけで。環境に惑わされす、フリーダムはいつも心の中なんだと思います。常にどんな状況でも、自分の気持ち次第で自由になれるんです。

ー最後に、今後の展望や目標を教えてください。

音楽というジャンルに限らず、違ったアプローチからの面白い遊びを考えているので、色んな楽しみを作っていければと思います。それによって一層音楽が楽しくなるのかなって。いろんな表現できる方が、本質を多面的に見ることが出来ると思うんです。

Interview:Ayaka Yoshimura
Edit:Sana Tajika

【OZworld】

沖縄県出身HIPHOPラッパー。第9回・第10回高校生ラップ選手権出場。TV番組「フリースタイルダンジョン」や数々のイベントに出演。独得のニュアンスで繰り出すフロウやスキルフルなラップで表現する。
2018年『R’kuma(レオクマ)』から『OZworld』に改名。YouTubeチャンネル「まがりかどスクワッド」を運営し、Len Kinjyo,Wil-Make it,MakeSumと共に「MR FREEDOM」としても活動、2020年からは自主レーベル『I’M HAPPY Entertainment』を立ち上げるなど、沖縄を中心に日々精力的に音楽活動を行っている。

公式サイト:https://www.ozworld-rkuma.com/
Instagram:https://www.instagram.com/ozworld_official/
Twitter:https://twitter.com/OZkneezfxxkedup