アジア各国のファッションディレクターに、ローカルな人気スポットやその国のストリートファッション、HIP HOPの実情を、SIXTYPERCENTのブランドディレクター Nanaが探る連載企画。感度の高いデザイナー達が集うローカルカルチャーから、アップカミングなアイコン達を探ってみよう。今回は、ジャカルタ発のブランドで世界10ヵ国以上で販売をしている今話題のストリートブランド「Paradise Youth Club」(パラダイスユースクラブ)のディレクター「Adit」(アディト) に注目。ブランドの顧客の8割以上がインドネシア以外での販売と言う国際的なストリートブランドのブランド力に迫る。

Nana : こんにちは!旧正月のおやすみに時間をとっていただきありがとうございます!

Adit : とんでもないです!

Nana : それでは Paradise Youth Club (パラダイスユースクラブ)について少し説明いただければと思います。

Adit : このブランドは2015年に設立して、その前はマスマーケットにむけたインハウスブランドを保有していました。マス市場に対してどのように展開できるかリサーチなどを展開した後、このブランドを立ち上げています。

Nana : このブランド名にした理由はありますか?

Adit : 市場というよりも、自分が好きなこと、自分が貫きたいことをやろうという気持ちが強くて、それを象徴する形として Paradise = 楽園 という意味をつけました。2015年はインドネシアのストリートウェアブランドとして非常に台頭しやすいというか、いい時代だったというのもあったので、いろいろな人にParadiseを感じて欲しいという意味もありました。

Nana : なるほど! Paradise Youth Clubのデザインやクリエイティブは全てAditさんが管理されているのでしょうか?

Adit : そうですね!数年前ちょうどチームを作ってデザイナーは3名います。マーケチームやセールスチームなど、会社は毎年成長をしていますね。

Nana : ブランドの店舗情報を見たのですが、全世界に卸している感じですよね。日本やアメリカやヨーロッパなど・・・

Adit : 実はこのブランドは80%が海外からの購入で、20%がインドネシアなんです。

Nana : 本当ですか!私は個人的に40〜50人くらいのアジアのデザイナーにあってますが、その比率のブランドは初めて会いましたね。

Adit : そうですね!数年前に子会社を立ち上げて、Public Cultureなども誘致して取り扱っているブランドなのですが、その会社は大多数がインドネシアに向けてアプローチをしています。

Nana : 3ブランドとオリジナルブランドだと忙しいですね!Aditさんの経歴はどのような感じなんですか?

Adit : 私は2008年に Bangdung (バンドン地区)に住んでいて、その頃は非常に急成長している地区でした。2010年にジャカルタのリテール会社に勤務を開始して、この会社がCarhattやY-3など有名ブランドを誘致している会社で、そこでの勤務が今の仕事に生かされていると思います。

NAna : 当時はバイヤーや、マーチャンダイジングを担当していたんでしょうか?

Adit : 実は今でもこの会社では勤務をしていて、週に2-3回は通っています。クリエイティブマネージャーとしてサポートをしていますね。

Nana : 3ブランドとリテール会社のクリエイティブですか!

Adit : ジャグリングしているイメージですね(笑)

Nana : そんなAditさんに、インドネシアのストリート市場についてお伺いしたいです。

Adit : インドネシア市場が急成長しているという価値観はおっしゃる通りですね。ただどのローカルブランドもインドネシア市場しか狙ってはいなくて、将来的には国際的に知名度を高めるブランドが増えることを望んでいますね。

Nana : それはインドネシアの人口がアジアの中でも多いからですからね?

Adit : その通りですね。人口が多いのでインドネシアだけでも商業が成り立ってしまいますから。

Nana : Paradise Youth Club を一番卸しているのはどの国ですか?

Adit : 年によって様々ですが、コロナ前は日本が一番卸している国でしたね。今はヨーロッパの取引が増えて、アメリカも潜在的に声がかかっているって感じですね。

Nana : 日本のストリートウェアブランドはEコマースの知識が少ないと世界的に言われているのが原因なのかなと思っています。個人的にですが。

Adit : そうかもしれないですね。

Nana : Paradise Youth Club は日本のファッションメディアでもかなり特集されていますが、SNSのコントロールやコンセプトなどはどのようにセットしているのでしょうか?

Adit : 2015年というのはかなりきっかけの年になっていて、実はブランドのコンセプトというのは特に考えず、ただただ「自分の趣味」という感覚でこのブランドを始めています(笑)友達が商品を買って、他の友達が他の友達に紹介して・・・という感じですね。自然に広がることを私自身でも望んでいます。Paradise Youth Clubを通じて人がつながっていくのが自分でも幸せです。

ビジネス面でいうと、Paradise Youth Clubは「盆栽」的なやり方をしていこうという話をしたんですよ。静かで、小さく、そして荘厳じゃないですか。

Nana : Aditさん、他のどの日本人よりも日本人的な考え方ですね(笑)

Adit : そうかもしれません(笑)

Nana : 盆栽的なやり方で展開している中、これだけ多くの店舗に卸してSNSにもファンが多いですが、何か大きい理由はありますか?

Adit : 長いステップでしたね。周りと繋がり、ブランドをしっかり世の中に伝えて、あとはスニーカーブランドとのコラボレーションなどを行ったりしましたね。それを経由してメディアからのアプローチもあったりしました。ただメディアは自分が狙っていない市場からの取材や特集などもあったので、そこは意識をしながら精査する必要があることを学びましたね。

Nana : 日本のメディアでの取材もSNSなどで声がかかったのでしょうか?

Adit : 基本的にそうですね!実際にインドネシアに来られたメディアもありましたし。

Nana : また、Aditさんのデザインインスピレーションについてお伺いしたいです。どんな時にデザインのアイデアを考えたりしますか?

Adit : 基本的には日常から得ていると思います。映画や本、音楽などですね。人生が直接デザインにつながっていると思います。音楽で言うと私は多岐に渡って聞くので、HIP HOPやテクノ、ディスコ、ソウルなど様々です。

Nana : インドネシアはバンド文化も最近根強いと聞きました!

Adit : パンクロックやハードコアシーンも非常に盛り上がっていますよ!

Nana : パンクがインドネシアで流行っているのは意外でした!最後に、Aditさんのブランドの海外展開予定をお伺いしたいです。

Adit : どの国に展開するというようなアイデアはないですが、門戸は広げていこうと思っていますよ!今後よりブランドの認知が広がっていくのが楽しみです。