POSTED ON 2018年2月24日 1 MINUTE READ BY SIXTYMAGAZINE TEAM
今回は、アーティスト、Iilgabaさんへ聞いた21の質問を紹介。現在、大阪を拠点に活躍する一人のアーティスト。彼女がひょんなことから作り出す作品には、どんなメッセージ性が込められているのだろうか。
Q1:お名前を教えてください。
Iilgaba。これは常にアーティスト名として使っています。
Q2:何歳ですか?
年齢は秘密ですが、90年代っ子です。
Q3:出身はどこですか?
アルゼンチンのブエノスアイレス出身です。
Q4:普段は何をしていますか?
何かを創っています。
Q5:幼い頃のIilgabaさんはどんな子でしたか?
今とあまり変わりませんが、もう少し無邪気でした。生まれた頃からずっと絵を描いていました。父がファイン・アーティストだったので、絵を描いたり作品を作っている間、彼の周りをうろちょろしていました。
自分が幼い頃の年齢が好きじゃなくて年上の友達と遊んでばかりいました。だから、私の大親友は私よりも5歳上でしたね。あと、一人で勝手に遊んで踊っている方が好きだったのもあります。
Q6:アーティストとしてのキャリアをスタートさせたのは、いつ頃からですか?
そうですね。幼い頃から常にたくさんの絵や筆でいっぱいの家で育ったので、私にとって「創る」と言った行為はごく普通のことでした。むしろ、創造への衝動は強くなる一方で決して止まることはないです。
自身のアトリエにて、お気に入りの本「裸のランチ」を片手に
Q7:どういったことを創っていますか?
相対的なことです。他の多くのアーティストもそうですが、私も夢幻的な事と社会批判を組み合わせています。こういったアートは少し強い印象を与えますが、とてもデリケートな内容です。ずっと絵を描いていましたが、素晴らしい写真の世界に出会い、偶然にもマスク作りにたどり着いたのです。今私はその「偶然にできたマスク」を創っている人物として知られています。
Q8:Iilgabaさんの描く世界にはどういったメッセージが込められていますか?
主なポイントとしては、人間のアイデンティティーです。道徳性、性別、現今の基準を疑問視する事です。
Q9:Iilgabaさんにとって「性別」とは人間のアイデンティティーのどういった事でしょうか?
私は性別というものは信じていません。むしろ、人類そのものを信じています。たくさんの人々に「女の子なのに、男っぽいよね」と言われたことがあって、彼らが言っていることの意味が分かりません。そう言った言動に対して私は逆に冗談で、「そうよ。私はプラント・コンプレックスを持ったゲイボーイよ。」って言い返しています。
2018年にもなって、まだ男女で世界を分けているなんて信じられません。私の中では既に「男と女」なんて廃れたコンセプトのようなものだと思います。好きな人とセックスすればいい、好きなように服を着ればいい、好きなように話せばいい、どんな形の身体を持っているかなんて関係ないです。
私たちは、人間です。私たちは異なった身体をしているし、ホルモンバランスも違うし、感情を不安定にさせる子宮だって持っています(これ以上の情報は医者に聞いてください)…。それだけのことです。そこで話は終わるはずなんです。身体の違いなんて、体内の15%以下の存在であるのに、世界中が性別の違いだけでそこだけに注意を払い続けていたりする意味が全く理解できないのです。
腟やペニスを持っているということだけで、決して人はより強くなんてなれないし、より知的にも繊細にもなれないのです。人々は一度立ち止まって5分間考える必要があると思います。それほど難しいことではないのです。
Q10:日々、どう言ったことから影響を受けますか?
人々、自然、音楽、自分自身など全てのことからです。その中でも、私にとって最大のインスピレーション源といえば、【Beat Generation(ビート・ジェネレーション)】、アメリカの小説家【William S. Burroughs(ウィリアム・S・バロウズ)】、アメリカ人の詩人【Irwin Allen Ginsberg(アーウィン・アレン・ギンズバーグ)】が残した言葉です。
Q11:大阪での初めての個展はどうでしたか?
そうですね。初めての個展だったので何もかもが私にとって初めてでした。2015年に大阪にある【excube】というギャラリーで、一連の絵画と10枚のマスクを展示しました。
とびきり素晴らしいという個展にはならなかったのですが、初めての個展にも関わらず大勢の人々が訪れてくれました。他のアーティストの人たちとも繋がることができましたし、自分自身を多くの人に知ってもらえる機会にもなりましたし、また色々な事を学べましたね。私が大学の生徒の中で最初に個展を開いたということにも、自尊心を高めることに繋がりました。
Q12:Iilgabaさんの最初のマスクは、どのように出来上がったのかお聞かせください。
最初は「絵画のみの個展」であるはずだったのですが、個展に向けての準備がスタートした時点からこのマスクの全てが始まったのだと思います。準備期間は、毎日毎日同じことを繰り返していることに非常にストレスを感じていて、休憩を取って何か違うことを作り始めました。その時、偶然にこのマスクの全く新しい世界が開きました。
まず、私は実際に人間の頭を作り始めました。その最中に退屈な頭の彫刻を作るよりマスクの方が全然面白いなと気づいたのです。そこからこのシリーズが始まり、その中にある意味も見つけ出したのです。
マスク作品の数々
Q13:マスクを通してのメッセージとは何でしょうか?
「アイデンティティーのパラドックス」です。一般的に言えば、マスクという存在を何かまたは誰かに偽装するために使いますが、私はそれとは全く逆に新しい「仮面」の概念を取り込みたいのです。世の中は私たちの持つ形、問題、私たち自体を腐らせます。私たちは道徳に囚われすぎて、真実の自分たちを表現することを恐れています。
現に私たちはみんな同じように見える生物の一種になってきています。きっと私たちは偽りの姿でいることに疲れて過ぎているのに、真実と向き合うのも怖いだと思います。
もし、「偽りの自分」を切り捨てることができるとしたら、あなたならどうしますか?そこで私が提案したいことが、実際にマスクを着用して私たちの本当の姿とは何か、元の形に戻り恐怖を捨てて私たちの修正されていない本来の姿を表すのです。
去年、私のアート・パートナーであり写真家のLionel Lalandeと一緒に個展【IDENTITÉ(仏:アイデンティティー)】を開きました。そこでは、夢のような雰囲気の中に写された澄み切った身体にマスクを着用しているシリーズがズラリと並んでいました。
個展「IDENTITÉ」にて(Photographer:Lionel Lalande)
Q14:作業中の空間作りはどのようにしていますか?
時にはクラシックまたはニュー・メタルを聴いたり、時には沈黙の中またはぐちゃぐちゃの中で作成したり、また時には部屋の中全てを清潔に保って、全てが明確な雰囲気がほしかったり、どのように自分が感じているか、どのように感じたいか、日によって変わりますね。
Q15:日本の生活はどうですか?
私は日本に2014年に来ました。大学に通っていた時は、放課後毎日アルバイトに行っていた日々でした。時々、すごく疲れた時には何キロも何キロも自転車に乗って新鮮な空気を吸いに行ったり、友人の元を訪れて何時間も話したり、飲み過ぎてトイレで吐いたり。あとは、自分自身を拘束して翌日まで作品を作り続けたりもしていました。大阪での私の暮らしは少し乱雑していますが楽しいですよ。
Q16:日本を拠点にしようと思ったのはなぜですか?
日本にはいつも訪れたいと思っていましたし、とても興味がありました。でもその時は日本で勉強したり、暮らすなんて思ってもいませんでしたね。当時、自分がやっていることが全て間違っているような気がしていて精神的にも疲れていて、アルゼンチンを離れたいなと思っていたのです。その時、たまたま文部科学省という奨学金のことを思い出して、思い切って応募して受験してみたのです。試験に見事に合格して、私の日本での冒険が始まりました。
Q17:実際に日本に来てみて、最初の印象はどうでしたか?
みんなに「最初の印象」について聞かれるのですが、正直言って分からないんですよ。その頃は自分自身に必死でしたし、自分が生きる意味について考え始めていた時だったので。
Q18:日本で好きなものはありますか?
おそらく「何も恐怖を持たない」という事が私にとってのお気に入りの事です。そうでなければ、私の国のように道端でまたに予想しないこと(危険なことなど)が起こるので、そういた国から来た私のような人物は自分自身を「見えなくする」ことが必要です。しかし、日本では「恐怖を感じない」という気持ちを持てるのでそう言ったことを感じれるのはとても貴重なことだと思っています。
もちろん、「好きなこと」以外では、「私の友達」ですね。大阪では素晴らしい人たちに、たくさん会いました。大阪に住むことがどれだけ素晴らしいことか分かりましたね。
Q19:お忙しい日々をお過ごしだと思いますが、オフの日もあるのですか?
オフの日ですか?私には、「自由」な時間などありません。
最近の作品の2点
Q20:今後の目標について教えてください。
あっちで展示会を開いたりもっと強くなるためにも、近い将来ヨーロッパに行きたいですね。また色々な人々に私自身や私がやっていることを知ってもらいたいです。
Q21:最後に、Iilgabaさんのライフスタイルを通してメッセージをお願いします。
ステップ1:自分自身を惨めに追い込む。ステップ2:その中で壁を見つける。ステップ3:それを壊す。その繰り返しです。私は誰にもアドバイスできる立場ではないですし、これらは私の「ライフスタイル」のために使っていることです。私たちはみんな異なっているし、自分の脳や魂がどのように働くのは見い出す必要があると思います。
本来の自己とは何だろうか?人間という生体は何だろうか?そんなことを考えて過ごしている人がどれだけ世の中にいるのだろう。Iilgabaさんが抱く世の中に対しての強く深い疑問を芸術運動を通して形にして伝えて続けるのだ。
IilgabaさんのInstagram @iilgaba