アジア各国のファッションディレクターに、ローカルな人気スポットやその国のストリートファッション、HIP HOPの実情を、SIXTYPERCENTのブランドディレクター Nanaが探る連載企画。感度の高いデザイナー達が集うローカルカルチャーから、アップカミングなアイコン達を探ってみよう。
今回は、インドネシアで大人気のアーティスト「Dochi Sadega」によるストリートウェアブランド「sunday sunday」。有名アーティストとして多忙な日々を送りながら、インドネシアで権威のある話題のブランドのファウンダーとしても活躍し二足のわらじを履く彼の日常について独占インタビューを行った。

Nana : 初めまして!

Dochi : “初めまして!”宜しくお願いします。

Nana : 日本語で挨拶していただきありがとうございます!日本に来られたことは?

Dochi : 何回か日本には行ったことが有りますよ!2012年にサマーソニックでパフォーマンスをしていて、2013年にはお台場でもパフォーマンスをしたことがあるので。

Nana : 素敵ですね!その話も是非お伺いさせてください。まずはご自身の自己紹介をお願いします!

Dochi : 私のキャリアはミュージシャンからスタートしているのですが、自分が所属しているバンド(Pee Wee Gaskins = ピーウィーギャスキンズ) で日本で数回パフォーマンスをしています。新宿ACB(アシベ)やサマーソニックに出演していたり、フジテレビで行われていた「アジアVS」という番組で優勝したこともありますね。

Nana : 素晴らしい経歴ですね!加えてファッションブランドも立ち上げられていますよね。

Dochi : そうですね!Sundaysunday(サンデーサンデー)を2009年に立ち上げて2010年から販売を開始しました。今年になってSundaysundayの中でスニーカーのブランド “One Triple Nine (ワントリップルナイン)”を立ち上げました。この2ブランドのお話ができればと思っています。

Nana : ありがとうございます!両ブランドのコンセプトなどをお伺いしたいです!

Dochi : Sundaysundayは2009年から1年かけて生産やデザインを構想していて、1年がかりのプロジェクトとしてようやく2010年から販売をスタートしました。最初は自分の家族だったり周りの知人や自分のミュージックTVで着用していました。

コンセプトとしては当時クローゼットを片付けていた時に、自分のクローゼットがカリフォルニアの例えばStussyなどのブランドで溢れかえっていて、ローカルブランドが全くないことに気づいたんです。当時からUSのカルチャーが好きだったこともあったので。そこで一旦整理しようと服を並べていた時に、自分が食べていたアイスクリームが服に落ちてしまったんです!そこで「これにしよう!」という形でアイスクリームのロゴをメインにしたブランドにしました。アイスクリームは子供から大人まで食べられる JOY = 遊びのイメージもあると思ったのでピンときましたね。加えて、「Stressed」を逆から読むと「dessert = デザート」になるんですよ。

日曜日は一番リラックスする日ということもあり、Sundayを会社名に入れることにしました。ただ「Sunday」自体はすでに他社が使用していたので「sunday sunday」というダブルワーディングにしたんです(笑)

Nana : 面白いコンセプトですね!ちなみに「よしブランドを立ち上げよう」と考えたきっかけはあったのでしょうか?

Dochi : 多分自分の仕事は周りからしたらジャグリングをしているようにみられているかと思います。ファッションデザイナーをしながら音楽をするという。ただ私からしたらほとんど同じで、音楽をしている時にもファッションは大切ですし、1つの仕事と捉えているので、特に大きいきっかけがあってブランドを立ち上げたいうよりは、流れで始まった感じですね。

アーティストとして活動しているとNIKEやPUMAなどの衣装提供もあったりして、頭から足までどのように自分を表現するかということを考える時間が多かったのも理由になるかと思います。Sundaysundayを立ち上げた時はそれもあって、自分がどこに向かっているか、ブランドがどこに向かいたいのかをしっかり定めようと思いましたね。

Nana : 音楽とファッションは繋がっていることですね。

Dochi : そうです!

Nana : そこでスニーカーブランドも立ち上げようということになったんですね。

Dochi : はい。One Tripple Nineを立ち上げる2〜3年前から自分がコラボレーションとして複数のスニーカーブランドと働く機会があって、自分にとっては初めての知識でとても楽しかったんです。それでスニーカーブランドも自分で立ち上げたいなとなって、4〜5シルエット分を作りました。

Nana : 基本的に全て自分でディレクションをされているのでしょうか?

Dochi : そうですね!自分はかなりの心配症で学んでも学んでもどこか足りない気がしてしまって、スニーカーを制作する上でも自分でパターンやディレクションを学びましたね。

Nana : なるほど。またDochiさんは個人のSNSにも相当のフォロワー数がいますが、ファンもDochiさんを習ってブランドを立ち上げたりしているのではないでしょうか?

Dochi : そのようですね。自分が心配症という性格から色々学びそれを示していくことで、ファンも同じように学んでいるように感じます。

Nana : 日本でも多くのミュージックアーティストがブランドを立ち上げていますが、なかなかSundaysundayレベルのブランドには確立していない印象です。

Dochi : そう言ってもらえると光栄です!

Nana : ちなみにインドネシアの音楽の盛り上がりはジャンルごとにかなり違うのでしょうか?

Dochi : HIP HOPが今インドネシアで大きい領域になっていると思います。パンクやロックも盛り上がっていましたがヒップホップが大きいですね。日本の音楽からもかなり影響を得ていますよ。L’Arc~en~Ciel とかよく聞いていましたよ!フジTVのセッションに出たと話したじゃないですか、実はそこにGACKTがいて(笑)5分間くらい緊張してフリーズ状態でしたね(笑)

Nana : 同じ場所にいたからってことですね(笑)

Dochi : 彼がジャッジメンバーだったので、めちゃめちゃ緊張しましたね。

Nana : 日本のカルチャーにとても興味があると行っていた背景がだんだんわかってきた気がします。

Dochi : 2013年にはアコースティックセッションをアイドルグループと行ったりしました。ユニークな経験でしたね(笑)

Nana : 日本で今TVを見るとアイドル7割、韓国アーティスト2割、その他って感じですよ!

Dochi : 日本のTVは本当に面白いです。テレビに出てる人が右下のコマで出てくるじゃないですか。起きた現象に対してリアクションを移すあの画面は面白すぎます。

Nana : 確かに….!日本人は人のリアクションをとても気にするのでこのようなコマ画像が作られているんでしょうね(笑)インドネシアでも是非やってみてください!

Dochi : 本当に面白かったです(笑)

Nana : 少し話がずれてしまいましたが、DochiさんのSNSをみているとカルチャーを伝承する立場としてYouTubeチャンネルで話したり、取材を受けたり、楽曲制作からデザインまで多岐にわたる生活をしていると思いますが、どのように生活や時間のコントロールをしていますか?

Dochi : 今はコロナ禍ということもあるので特に忙しいとは感じていませんね。お互いの情報を共有するという意味でインタビューもよく受けています!

Nana : sundaysundayではビジネス側も担当しているんでしょうか?

Dochi  : 私はクリエイティブ側をメインに担当していて、ビジネス側は他にパートナーがいますよ!最初は全部自分で担当していましたが、流石にきつかったですね。会社ってピザを共有するのと同じ意味だと思っていて、一人でやると1枚のピザを全部食べることができますが、複数人で仕事を分けることでピザの味も変えれますからね。

Nana : 確かに、すでに歌詞のような発言ですね!

Dochi  : ありがとうございます(笑)

Nana : また、Dochiさんは本を執筆されていたりアート側にも知見が豊富ですが、インドネシアの今後のカルチャー的な展望は何か感じられていますか?

Dochi : アジアは偏見主義などの過去を超えてインターネットを経由して多くのカルチャーを拡散できていると思っていますね。アメリカのピクサーなどには実は多くのインドネシア人が働いているんですよ。

Nana : そうなんですね!私も多くの東南アジアのデザイナーさんやファウンダーの方々と話しますが、インドネシアは国際的な人々が多いなと感じていました。

Dochi : 日本は仕事に対する概念が違うのではないでしょうか?日本の人は「仕事のために」働くって感じじゃないですか。そしてお金を趣味に投じるという印象です。インドネシアはエンタメ業界のお金があまり良くないんですよ。チケットなどもかなり安いですし。

Nana : サマーソニックとかは日本で10,000円くらいチケット価格がありますからね。

Dochi : GDPの原因もありますが、インドネシアの音楽イベントだとチケット代が1000円くらいですね。仕事のために稼いでいないというのがあるので、逆にインドネシアでアーティストとして食べていくのは非常に難しいと思います。

Nana : なるほど。ちなみにsundaysundayは海外への販売も考えられていますか?

Dochi : もちろんです!WEBサイトでも購入はできるのですが、Totalfatとのコラボレーションでアイテムを展開したりしていました。Verdyともコネクションがありますね。コロナが落ち着いたら海外でもたくさん展開していきたいと考えていますよ!

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Dochi Sadega :  https://www.instagram.com/pwgdochi/?hl=ja

Sunday Sunday : https://www.instagram.com/sundaysundayco/

One Triple Nine :  https://www.instagram.com/1_________999/