【インタビュー】ぶんけいがコンプレックスと向き合い、創り続ける理由「かつての自分にどういうアプローチができるか」

YouTube・映像制作・企画屋・アパレルブランド…。ここまでの幅を丁寧に真摯に向き合える人はいるのだろうか。今回は、自身が運営するファッションブランドmeeme(ミーム)の2ndシーズンを発表したぶんけいにインタビューを実施。それぞれのアウトプットに通ずる“想い”の根元をお伺いした。自身のコンプレックスとその背景を紐解き、全ての人々に手を差し伸べる。時に揺蕩い、柔軟に表現を続ける彼の、その先に想いを馳せて。

 

–meeme(ミーム)の第2シーズンは「Filter」がテーマですよね。“ファッションってフィルターみたい”の一言が由来だとお伺いしたのですが、具体的にその構想に繋がるきっかけは何でしたか?

インスタグラムでフィルターを選んでいる時に思ったのがきっかけです。丁度、第2弾のコンセプトを考えていて、インスタのフィルターを選んでいる時に、着せ替え人形と重なったんです。インスタでもフィルターやエフェクトを選んで自分の顔を選んだり、変えたりする。その行為自体が、ファッションみたいだなって。選んで自分のなりたい自分になる、フィルターってすごい手軽なファッションなんですよね。

–meeme(ミーム)自体を象徴する“デジタルを通して発信していく”意味とも少し重なるというか。

それもありますよね。まず大前提としてそこに紐づいた言葉であるっていうのも、自分の中にもありました。その中で出会ったものがフィルターで、ファッションにも重なるピッタリの言葉なんじゃないかなって。

 

–そもそも、ファッションを多面的に表現される中で、ファッションに対する不便さやネガティブさをずっと感じていらっしゃったのでしょうか?

ネガティブというより、コンプレックスに近かったですね。ファッションや流行に自分が辿り着けていないという意味でコンプレックスがありました。

出身が兵庫県の淡路島っていう、凄く田舎の町なんですけど、やっぱり豊富な選択肢が無いんですよ。だから大学進学を機に地元を離れた時や社会人になって上京した時に、あ、ファッションってこんなに簡単に選べるし、同じ価格帯でもこんなに選択肢があるんだとか、そういう幅に衝撃を受けたんです。

–私も田舎の出身でして、その気持ちめちゃくちゃ分かります。

ですよね…!環境が与えるファッション経験値って、大きいじゃないですか。自分はあまり触れられなかったから、遅咲きというか…。周りの東京出身の子はもう明らかに最初からかっこよくて、更にコンプレックスを感じる。もし自分が服を作るとしたら、かつての自分にどういうアプローチができるだろうって思っていました。

それはあくまで価格を安くするとかではなく、自分の思いを込めたものを届けて、それを着ることでファッションのハードルを乗り越えられるような“体験”を作れるブランドにしたかったんです。

 

–なるほど。たしかに、環境が違えばファッション、カルチャー、職、様々な選択肢が広がりますよね。逆に淡路島にいらっしゃった頃は、どのようにファッションやカルチャーに触れていましたか?

今思うと触れてないも同然なんですけど、特にファッションに関してはファッションという概念すら無かったと思います。服を着るっていう最低限の感覚でした。

だからどんどんインターネットにのめり込んで行ったんですよね。世の中には色んなものがあるんだって知れたのが中学生くらいかな。リアルで満たされてない場所だったから、当時インターネットに飛び込んで、今の自分に繋がっている。そういう意味では、もし満たされた環境にいたらこうなってなかっただろうなと思います。

 

–コロナ禍も相まってデジタルを通したファッションの魅せ方が進展していますが、今回のシーズンにおいて、デジタルの観点から最もこだわったポイントはどこでしょうか?

ブランドサイトですかね。例えばお店に入ったり、手に取って持って帰る瞬間だったりって、ワクワクするじゃないですか。やっぱりデジタルだと1つの情報になってしまうので、作品やコンテンツというより、いかに体験として残るかを意識しました。

服を買ってもらうためというより、服を買わない人にも自分がやっていることを面白いねって言ってもらえたらいいなって。

–YouTubeやインスタライブでの配信も積極的にされていますよね。

そうですね。生配信で僕がmeeme(ミーム)の服を着ていたり、Twitterでこの服の好きな所を言ったり、服の外の情報みたいなのを積極的に伝えることで、オンラインから体験を生み出せるようにしています。

–ニーズをキャッチして見せ方の展開していくことも?

「ここのターゲットに向けてアプローチをする」というより、ある意味ターゲットを定めないような感覚に近いです。出来るだけ救いの手を差し伸べるブランドでいたいですね。愛情のあるというか、全ての人々を受け入れられるブランドでありたい。そういう想いが強いです。

–こちらから着る人を選ばないという。

そうですね。二極化せず、全ての人に楽しんでもらいたいです。

 

–様々な方がアパレルをリリースされる中、ぶんけいさんは、ロゴなどの視覚的なインパクトよりアイテムやデザインの背景に重きをおいていらっしゃる印象です。meeme(ミーム)らしさを見せるデザインの特徴や意識されていること、何か具体的にあれば教えて頂きたいです。

もともとインフルエンサーとしてグッズを出していたのですが、それとは区別したかったんです。ファンの方々に向けた商品を作る訳では無いので、僕の作った服だと主張せずとも魅力的なものであるべきという命題が自分の中にありました。

基本的には着る人を限定しない。この人しか着られないというデザインのアイテムは今後も作らないと思います。全ての人に対して優しいブランドでありたいです。

–ちなみにmeeme(ミーム)を展開していく上で、ファッションやオシャレに対する価値観に変化はありましたか?

まだ変わっていく途中ではありますね。全部が変わったとは思っていないのですが、作る人の意図を感じながら服を見られるようになったのは個人的に嬉しいです。
あと、今までは自分の意思を伝える手段が映像や文字、カタチがあるようで無いものだったんですよね。それをモノっていうカタチで届けたのは初めてだったので、モノ作りという意味で、新しい刺激になりました、カタチある責任もありますが、カタチあるゆえの感動をデジタル化が進む今こそ知れてよかったなと思います。

 

–なるほど。そもそも動画、文章、ファッション…、それぞれのアウトプットの棲み分けはありますか?

棲み分けているものもあれば、そうでない部分もあって。根本的には“はてな”が永遠のテーマです。YouTube、ファッション、小説、それぞれに“はてな”があると思うんです。それぞれの背景や歴史に新しいアンサーを出しても良いんじゃないかっていうのが、どのクリエイティブにも共通してある事なんです。そこから、その時にベストな手段を選んで表現しています。

–以前他のインタビューで、「1つの軸を学んだら次の軸に展開していく」とおっしゃっていたので、このあとの次の開拓の地が凄く楽しみです。ちなみに、普段インスピレーション源として何か意識をされていますか?

無意識なインプットが好きです。例えば“この映画を観よう”って意識的なインプットじゃないですか。興味のない映画を観に行くとか、偶然との出会いの方が狙わない良いインプットになることもあると思うんです。なので自分がミステリーを勉強したいなって思って名作ミステリーを見ると、それは教科書を読んでいる気持ちになっちゃうんですよ。でも、漠然とインプットしたい気持ちだけを持って吸収すると、ひらめきが生まれるんですよね。

 

–インプットする箱だけ準備しておくというか。

そうですそうです!僕は影響されやすいので、無意識のインプットから分析する方が活きると思っているんです。

–ありがとうございます。最後に、今後の展開や理想像をお願いします!

広い話になりますが、meeme(ミーム)のアイテムが街に溢れるようにしていきたいです。かっこいいけど手が届く、そういう位置にいたい。これが良い例えか分からないのですが、YouTuberって憧れるけど近い存在ですよね。きっとmeeme(ミーム)の理想像は、ファッションにおけるそういう存在なのかな。ニュートラルに服を楽しめないと困る幼少期の僕たちみたいな人にも、フラットに楽しんでもらえるきっかけを提案したいです。

 
Photographer:Sorami Yanagi
Interview&Text:Ayaka Yoshimura

【meeme(ミーム) ブランドコンセプト】

ミームとは、インターネット上で⾔語も価値観をも超えて、⼈から⼈へと伝わり広がるイメー ジのこと。時代の変化に⾝を委ねて。だけど、今⽇の気分にも⾝を委ねて。 これからの時代の、これからの君と僕のファッションを⼀緒に探しにいこう。 ぶんけいが⼿がける、ファッションブランド「meeme(ミーム)」。

公式 ブランドサイト:https://meeme.jp
公式オンラインストア:https://shop.meeme.jp
公式 Instagram:https://www.instagram.com/meeme_tokyo/

【ぶんけい】

1994年⽣まれ。2017年、株式会社ハクシを設⽴。映像技法を⽤いた、コンテンツづくりを得 意とする。インフルエンサーとしての⼀⾯も持っており、SNSでのフォロワー総合計数は230 万⼈を突破している。CHOCOLATE Inc.にてプランナーとしても活動中。

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