「夢は、YUKIさんと仕事をすること!」好きを仕事にするクリエイター・永瀬由衣のこだわりと夢

今回ご紹介するのは、アートディレクター千原徹也氏が代表を務める株式会社れもんらいふでデザイナーとして働く永瀬由衣さん。

彼女がクリエイターとして働くようになった原点や夢、れもんらいふで数々のクリエイションの現場をみてきた永瀬さんのクリエイターとしての今後について伺った。

 

お名前を教えてください。

永瀬由衣です。

 

— おいくつですか?

26歳。

 

ご出身はどちらですか?

東京です。

 

この世界に入るきっかけを教えてください。

小さいころは、ファッションデザイナーになりたいと思っていました。というのも、歌手のYUKIさんが好きで、YUKIさんの衣装をデザインするのが夢だったんです。 だから、ずっと服飾の道に進みたかった。

大学に入りアートディレクターという職業を知り、衣装デザインじゃなくてもCDジャケットを作るという方法で関わることもできると気付いたんです。正直、服のパターンをつくるのが苦手だったし、アートディレクションのほうが自分のやりたい表現と近いのかなと思い、「YUKIさんのCDを作ろう!」というのを新たな目標にしました。

 

YUKIさんとお仕事をしたいという夢は、ずっとぶれていないんですね。

そうですね。今もずっとその夢のためにがんばっています!

 

れもんらいふに入社されたきっかけは?

れもんらいふの代表の千原徹也が手がけた、ラフォーレ原宿のクリスマスのビジュアルや『装苑』のビジュアルを見て、おもしろそうな会社だなと思ったのがきっかけです。大学2年からインターンでグラフィックを勉強し、卒業後に入社しました。

 

 現在、どのようなお仕事をされていますか?

広告やCDジャケットなどのアートディレクションやデザインをしています。

 

(左)南波志帆「ドラマチックe.p.」CDジャケット(右)my panda 2018 A/W ビジュアル

 

アートディレクションのお仕事は、どういった内容なのでしょう。

広告やCDジャケットの場合、クライアントから「こうして欲しい」、「こういう風にしたい」というご要望をお聞きして、ビジュアルやグラフィックのデザインをご提案して制作する、というのが基本です。あとはこちらから、「こういうコンセプトで、こういう企画はどうですか?」と提案することも多いです。けっこう幅広くて、イベントの企画を提案することもありますね。

 

パルコのイベントも手がけてらっしゃいましたよね。かっこよかったです。

ありがとうございます! パルコ主催の『シブカル祭。in香港』は、若手女子クリエイターたちの祭典ですが、私は、そのロゴやメインビジュアル制作、そして、香港の会場構成を行いました。

 

会場をディレクションしてみて、いかがでしたか?

私自身、会場のディレクションは初めての経験だったので、どうなるかなと思っていたんですけど、理想通りの仕上がりに出来て嬉しかったです。

海外での仕事も初めてだったのですが、香港と渋谷を組み合わせたような場所にしたいという想いがあって、会場に渋谷のスクランブル交差点を表現したんです。建物の上から見下ろしたときにきれいな構図になるよう意識して創りました。完成した会場を上から見たとき、「スクランブル交差点、できてる~!」って感動しましたね。

その会場に、いろんな女性アーティストの作品が置かれるんですけど、どれもすごくマッチしていたと思います。来場者は10万人だったようで、それも嬉しかったですね。

 

・シブカル祭。in香港 ビジュアル

 

今後も海外でお仕事したいお気持ちがありますか?

したいですね。ロンドンやニューヨーク、いろんな国を見てみたいと思っています。

 

 れもんらいふでは、女の子とお仕事されることが多いですよね。

そうですね。ミュージシャンのCDジャケットとか、女優さんのカレンダーとか。私も女の子の世界観が好きです。

 

すごく、グラフィカルでかっこいいと思いました。ガーリーって感じじゃなくて、ポップでかわいいなと。

よかった! そこを目指しているので。ガーリーって言葉はすごく難しいですよね。私のルーツがガーリーでもあるし、たくさんのガーリーが世の中にはあふれている。たぶん、一般の方から見たガーリーっていう決まったフォーマットがある中で、同じことをやっても真似になってしまうと思うので、「自分らしく表現できるガーリーとは?」ということを、ずっと考えています。だから、そうおっしゃっていただけるのは、すごくうれしいです。

 

ルーツがガーリーというのは、どういったことでしょう?

中学生のときに、中川翔子さんと蜷川実花さんがタッグを組んだ『しょこれみかんぬ』という写真集を見て、「ビジュアルで表現するっておもしろそう!」って思ってから、ファッションとかに興味を持ち始めました。この写真集は本当にガーリーで、目が痛いくらいの原色の世界で。当時、中学生だった私でも「これは男性は読めないだろう」とわかるくらい、すごい世界観でしたね。

たぶんガーリーって、男ウケは絶対しないと思うんです。女の子が見て、「うわっ、かわいい」みたいなのがガーリーなのかな、と。

 

たしかに、バキバキのガーリーって、男ウケの逆をいってますよね。そこを振り切るって、かっこいいと思うんですが。

そうですよね。あれもガーリーだと思うんですけど、ちょっと淡くて少女性のあるものもいわゆるガーリーでもあると思うし、なかなか答えは出ない。このことに関しては、ずっと考えているんです。

 

そういう点においても、永瀬さんのグラフィックってすごく実験的だと感じます。

そうですね。私も「どういうところが自分の表現として落ち着く場所なんだろう?」というのを、まだ探っている段階なので、そういった意味でも実験的かもしれないです。

 

ほかにも、何か影響を受けたものはありますか?

『しょこれみかんぬ』をきっかけに、原宿の古着カルチャーも好きになって、どんどんファッションに傾倒していきましたね。YUKIさんの世界観もそうですし。

あとは、海の生物や水も好きなんです。大学進学のとき、デザイン系に行くか、海洋生物学を学ぶかで迷っていたくらい。生態を調べるのは好きだけど、専門的な勉強はすごい難しいと思ってあきらめたのですが。

でも今、私が好きな生物や水の「みずみずしさ」は、ある意味、私の表現方法になっているところもあります。以前、ある方に「かわいいの中に透明感があるビジュアルを創るのが得意ですよね」って言われたのがすごくうれしくて。「ああそれかも! 水や海の動物から、ビジュアルの発想や表現が出たのかな」って思いました。

 

アートディレクションをしていると、いろんな方との関わりがあって、刺激が多いですよね。

そうですね、刺激は多いです。周りに好きなカメラマンさんやスタイリストさんが大勢いるから、常にいろいろな方から影響を受けていると感じます。

 

(左)SHE IS SUMMER「LOVELY FRUSTRATION E.P.」「Swimming in the Love e.p.」、「WATER」、「hair salon」CDジャケット(右)杏沙子「花火の魔法」CDジャケット

 

お仕事以外、お休みの日は何をされていますか?

休みの日は美容院に行ったり、一人で映画を観に行って夜は友達と飲んだり。だいたい休みの日も仕事しちゃいますけど。

 

 映画から影響を受けることもありますか?

ありますね。アイデアを出すときにふと思い出して「あの映画の、あのシーンが使えるかも!」とか。「すごく印象に残ったシーンがあったから、それをちょっとブラッシュアップしてみようかな」って発想することはあります。

 

本当にいろんなものを吸収している感じですね。最近観た映画でよかった作品は?

『シェイプ・オブ・ウォーター』や『ゆれる人魚』かな。『シェイプ・オブ・ウォーター』は半魚人と女性のお話で、本当に、それこそ「水」の映画。『ゆれる人魚』は、姉妹の人魚の話なのですが、これも映画の世界観がすごく好きでした。

あとは、70年代の映画がリバイバル上映されていたのを観に行ったのですが、『早春』という作品がおもしろかったですね。もうひとつ、『パーティーで女の子に話しかけるには』も好きでした。主演しているエル・ファニングが私、死ぬほど好きで。いつかエル・ファニングとも仕事がしたいと思っています!

 

これからやってみたいお仕事はありますか?

『装苑』の表紙ですね。れもんらいふでは、これまで何度も千原のディレクションで手がけているのですが、私自身のディレクションで表紙を作ってみたいです。

あとは、洋服もずっと好きなので、いつかプロデュースしてみたいです。今も、スタイリングのイメージ画を描いてスタイリストさんに発注するようなことはやっていますが、いずれは、自分がプロデュースするブランドとかを作れたらと思っています。

 

・ZINE作品「BELUGA MAGAZINE」(海の生物図鑑)

 

最後に、永瀬さんがこれからやりたいことや、最終的な目標がを教えてください。

アートディレクターとしては、やっぱり昔からの夢である、YUKIさんと仕事をすること。これは変わらないです。それから、海の生物がすごく好きなので、自分ができるアプローチの仕方で、海の動物にかかわれないだろうかと考えています。それがデザインなのか何なのかは、今はわかりませんが自分ができることで。たとえば、野生の海に生きる動物の暮らしの美しさを、いろんな人に知ってもらいたいと思っています。

ヨシダナギさんっていう、アフリカの民族の写真を撮られているフォトグラファーの方の話なのですが、小さなころからずっとアフリカ人になりたいと思ってらしたそうなんです。大人になって、実際アフリカに会いに行かれて。着飾っているわけじゃないけれど本当に美しいアフリカ人の民族衣装の姿を写真におさめて伝えているんですね。そういった活動にすごく惹かれるものがあって、私も自分ならではの表現で、海の生物の良さを伝えていきたいと思っています。

 

永瀬由衣(ながせゆい)

1991年生まれ、東京都出身。女子美術大学在学中に、創業期のデザイン事務所「株式会社れもんらいふ」にインターンとして入社。その後、2014年には新卒で入社し、現在では、アートディレクター、デザイナーとして広告、雑誌、CDジャケットなど様々なプロジェクトに携わる。

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