【ASIAN FACE】ぜったくんにインタビュー「ずっと、惰性で生きていたんですよ」1 min read

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町田市出身のラッパー/トラックメーカーぜったくん。今年の4月、多くの人が鼻を啜る花粉シーズンにリリースされた『Man Say Bien』も記憶に新しいが、先日発表された第58回ギャラクシー賞「CM部門」では、自身が楽曲を手がけた「ポカリNEO 合唱 2020(フル)」が大賞に輝き、ますますその活躍に目が離せなくなった。
何かと「ラブホバイト」や「新卒で入社した会社を1時間で辞めた話」がトピックにあがる彼だが、その背景に光る想いを解いていこうと思う。一見“普通”な青年が生む、煌めきの在り処とは?

 

–まず最初に。月並みな質問ですが、音楽に主体的に興味を持ったきっかけは何でしたか?

主体的になったのは、大学1年生の頃なんですけれども、新入生歓迎会があって。中学からの友達が軽音楽サークル探していたっていうのがきっかけですね。その時はまだ音楽に全然主体的じゃなかったんですよ。僕はテニスサークル探していましたし。

–なるほど。

でも、テニスサークルに入ったら絶対大学4年間何もしないなって思って、じゃあ何か新しいことしようと。そいつと一緒に軽音楽サークル入って、コピーバンドとかをしているうちに主体性が出てきたっていう感じですね。

–ちなみに、幼少期はどんなお子さんでしたか?

幼少期は静かだったと思います。あまり喋らなかったと思うし、結構すぐ泣いていました。嫌なことがあるとすぐ泣くタイプで、小学生になっても親離れが全然出来なかった記憶があります。親の帰宅も遅いし、兄弟がいないので1人で家で待っていて、ゲームとかして、外がだんだん暗くなっていくことに寂しさをおぼえて泣くみたいなことを繰り返す日々でした。結果、泣くのが自己防衛の手段になった節はあります。

 

–当時、将来の夢はありましたか?

地主になりたかったです。不労所得に凄く憧れてて…。

–めちゃくちゃリアリストですね(笑)

自分は普通の人生を歩むんだろうなっていうのがあって、普通っていうのは一概には言えないですけれども。いわゆるサラリーマンとして会社に入って、ずっと働くんだと思っていたんです。だったら不労所得を得ておけばのちのち楽なんじゃないかという…、安直な思いがありました(笑)。

–小学生の頃に…。

そうです。それがかっこいいと思っていたんですよ。周りとちょっと違うから(笑)。“地主”って言ってる自分に酔っていた時代ですね。今でもサブの夢ですが、地主にはなりたいです。

 

–愚問かもしれないのですが。リリック・フロー・メロディ、ご自身で思う強みはありますか?

やっぱりサビですね。一応ラッパーとしてラップをするんですけれども、自分は楽曲制作までをやっているので、コード進行に対して一番最適、一番気持ちよく聞こえるメロディを作るのが上手い自負があります。サビは絶対キャッチーにしようと思っているので、それが一番強みじゃないかと思っています。

–サビの言葉選びもメロディーに付随してキャッチーですよね。日常をニュアンスを変えて言葉を選びアウトプットする。その感覚がリスナーに近いと以前話されていましたが、音楽を聴くときの感覚ってプレイヤーになっても変わらないものなのかなと。

音楽を聴く上で、仕事として考えているとかは全く無いんです。ちゃんといろんな曲を聴いてすごい良いなって思うし、ちょっと粗探ししちゃう時はありますが…。基本的にリスナーとプレイヤーを二極化していないです。

–楽曲を聴いて純に思う気持ちが、ぜったくんさんのリスナーの共感を呼ぶと?

僕の曲を聴いている方々って、大学をそのまま出てサラリーマンだったりとか、まだ大学にいたりとか、僕が歩んできた人生の途中だったり、その延長だったりする人が多い気がしていて。その層の問題かなと思っています。共感が多いっていうのは、今の日本って大体そういう人が多いからなのかなと。

–今後もし10年後なり、その層の年齢が上がってきて、ぜったくんさんの経験もまた違うものになるわけじゃないですか。これから、その共感はどうなっていくのでしょう?

確かに、どうなっちゃうんですかね? それはまた新しい楽しみではありますよね。今後の10年がクリエイターとしての10年になるであろうとは思っているので、また違うものができるのかなって。

 

–個人的にぜったくんさんの楽曲は、夜のイメージがあって。そういった情景は夜に浮かぶことが多いのでしょうか?

そもそも、基本の生活時間帯がほとんど夜なんですよ。やっぱり、ラブホテルの夜勤をしていたっていうのがめちゃくちゃ大きくて、その生活サイクルで生きていたから夜が昼みたいな扱いをしているという。

–夜の蓄積が多いんですね。

そうですそうです。単純に夜の使い方が上手いというか(笑)。

 

–どんなジャンルでも大丈夫です、ぜったくんさんのこだわりを教えてください

こだわりが無いんですよ。こだわらないっていうことが、こだわりかもしれないですね。

–あえてこだわりを作らない?

あえて作らないんじゃなくて、食べ物とかも何を絶対に食べたいとかもないし、行った店がやっていなかったら別にいいやって思うし、純粋にこだわりが無いんです。音楽くらいですね。曲のサビだったり、とっかかりを絶対に作りたいっていう、そのこだわりだけが存在していると思います。

–今までを通して、唯一こだわれたものが音楽だったと?

そうですね。結構ずっと、惰性で生きていたんですよ。レールに乗っているみたいなのが楽だったので…。まぁ、ひょんなことからレールがなくなったんですけれども。

–例の1時間のやつですね(笑)。(新卒で入社した会社を1時間で辞めた話)

そうですそうです(笑)。会社を辞めた後も、その前の生活を引きずっていたんです。こだわらない方が楽だし、そんなにがっつり熱中できるものが無かったので、それが出来るようになったのが音楽だったという。

でも、何も無い人って結構多いと思うんですよね。別に好きなものもないし、何を頑張ったらいいか分からないみたいな話もよく聞くので、それも曲の共感性を生んでいるのかもしれないですね。

–確かに何か好きなことだったり、専門性を持たないといけないっていう社会の正がありますよね。決して、好きなことで生きていかなくてもいいしっていう。

そうそう、そういう雰囲気が少なからず感じますよね。

 

–比較的フラットな日常/感情をお伺いして、ぜったくんさんの感情は、どこで熱が上がるんだろうって疑問に思いまして…。これまで、最も興奮したシーンはありますか?

興奮するシーンか…。意外と考えたことがなかったですね。すごくいい、考えさせられる質問です(笑)。1番っていうのが結構難しくて、基本的に熱が上がるシーンっていうのは「あ、これ凄く良い曲」っていう最初のプロットみたいなのができた瞬間なんですよ。

–バロメーター的感情になっているんですかね?

そうですね。いい曲が出来た時に振り幅がバッて上がるんですよ。でも1番っていうのがすごく難しくて、なんだろう。1番は決められないですね。みんななんだったりするんですかね。

–この質問、実際に聞いたのは初めてで(笑)。

ちなみに、何かありますか?

–私ですか?改めて1番って難しいですね、何だろう…。

言われると難しいですよね(笑)。でもちょっと見つけたい。なんだろうな、絶対あるはずなんですよ…。

あぁ、ラストラム主催のオーディション『ニューカマー発見伝2018』で優勝した時、その優勝の電話を受けた瞬間かもしれないです。それが結構自分の中では「あ、認められたんだ」って感じた一番大きいことでしたね。当時、夜勤上がりでずっと寝ていて、寝ぼけながら「優勝です」って電話が来て。テンション上がりすぎてリアクションも取れない感じでした。その喜びが後からじわじわ湧いてくるみたいな…。そうだ、今の所それですね。

–答えていただけて良かったです(笑)。

でも、後からこれだったなってやつが出てくるかもしれないです(笑)。ちょっと今度考えてきます。今言えなかったことを(笑)。

 

–ラブホテルのバイトの話や、新卒で1時間で辞めた話、めちゃくちゃ話されていると思うんですけれども、その中で消化されたものや当時の思い出に対する認識の変化はありましたか?この体験、凄く言語化されているので…。

認識の変化で言うと、マジで良かったな、あの経験あって。っていうのはありますね。こうやって話すときにとっかかりになるので。当時は凄くへこんでいたんですけど、今はどんどん使っていこうって思っています(笑)。

–そうですよね。更にそのおかげで日常を多面的に見る観察力が身についたという。因みに、コロナ禍ではありますが、ライブやステージに対して理想像はありますか?

自分が納得できるライブを、パフォーマンスの意味でしたことがまだ無いので、そこを乗り越えたいです。どの場所でどうやりたいというより、自分のパフォーマンスで納得のできるものをお届けしたいです。でもこれって多分、一生納得は出来ないと思っていて。一定水準までは達するかもしれませんが、「あれ出来たのにな」みたいなのは絶対に存在するような気がしています。あ、無限ループ入ったなっていう感じです。

–納得の話で行くと、最新曲『Man Say Bien』も、レコーディングの直前に全て書き直されたんですよね。

そうなんです。そもそも、レコーディングの3日前に体を壊して、満身創痍だったんですよ。1週間以上熱が出ていたので、新型コロナウィルスに感染したのか?って思ったら全然違って、じゃあ何だったんだっていう話なんですけれども(笑)。
それによってレコーディングが1週間遅れたんです。その期間に見直して、歌詞も直して、結果直せて良かったです。

–そもそも、活動を通して「これだけは譲りたくない」こと、1つの芯や軸はあるのでしょうか?

それが最近変わってきていて。それまでは自分が0から作ったものを、全部自分でやりたいと思っていたんです。最近は、他の人が作ったトラックとかに、自分の歌を乗せてみたいなと思っています。
自分が出来る事って限られているから、制作の根幹が違うと全く違うものができる。これまでの自分のこだわりが、そんなに意味のないことだったなと最近思えてきたんですよ。なので最近の軸は、「サビがキャッチーなメロディラインとフレーズ」それを絶対に作るっていうことだけになりました。

–なぜ0→1じゃなくても良いと思われるようになったのでしょう?

そもそも、自分が作っているものが0→1じゃないような気がしてきたんですよ。コード進行や音の選び方って、既に誰かがやったものであることが多くて。何かのパズルのように、あるものを組み合わせて1にしているというか。1をかき集めて、10にしているのかなって。それこそ自分だけしか出来ることなんてないんだって、より振り切れたというか。

–『Bad Feeling』でも、「おれしかできないことがこの世になにもない」と書かれていましよね。ニート東京のリアルなバースにも選ばれていましたが…。

そうですね。今楽曲を聴いてくれる人も、僕がいなかったら違う人を好きになっていたと思うんです。
でも、いち人間としてだったら、代わりのないことって結構あると思います。親からみて、俺は俺だけだし、存在意義としてなら、俺にしかできないことはあります。けれどもアーティストとしては俺にしかできないことなんて何もないんですよね、きっと。

–なるほど。0→1の話に戻ると、自分にしかできないことがないからこそ、様々な人のエッセンスを取り入れていこうという。

そうですね。取り入れた上で、自分の味を出すことの方が面白いのかな。今までも、それをやってこなかったわけではないのですが、より主体的に取り入れて行きたいですね。

–他ジャンルとの融合も楽しみですね。

今ハイパーポップを結構聴いてて、最初はあれ聞いたときに「俺でも全然できるじゃん」って思ったんです。実際全然出来なくて(笑)。急激なジャンル変更になっちゃうんですけれども…、今はハイパーポップにも挑戦してみたいですね。

 

–楽しみにしております!最後に、伝えたいことがありましたらお願いします。

うーん…。伝えたいことか、何だろう。今、言いたいことは何個かあって、曲にするか悩んでいる状態なんです。1つ挙げると、僕は「地球を守ろう」っていう言葉がすごく嫌いで。きっと彼らが言っているのは、人類を守りたいだけであって、地球のことは全く考えていないと思うんです。地球の意思みたいなのを全く配慮していないで、自分が助かろうとするためだけに地球を守るふりをして「地球を守ろう」って言っているのがなんとも…。

–なるほど…。確かに、自分たちが長く生きるための「地球を守ろう」というニュアンスなのかも。

「人類を守ろう」って言っているのならば喜んで賛同出来ますが、地球を盾にしている気がして。そういうのが最近は凄く嫌なんですよ。

–環境活動そのものに意義というより、その伝え方の問題?

そうですね。活動に関しては素晴らしい事だし、嫌悪も何もないですね。環境問題がより良くなるよう仕向けての表現であるのならば、すごい、あっぱれですよね。正味、僕の意見なんて別に大したことではないので(笑)。最近こういうことを思っているだけの話です(笑)。

 

Photographer:Noguchi Karin
Interview:Yoshimura Ayaka

【ぜったくんLIVE情報】

恵比寿LIQUIDROOM 「SEVEN’S UTOPIA」

2021.07.02(fri)
Open/Start. 18:25/19:00
Adv. ¥3,500-

Act:ぜったくん、ラブリーサマーちゃん、カメレオン・ライム・ウーピーパイ

チケット:イープラス
https://eplus.jp/sf/detail/3408030002?P6=980&P1=0402&P10=10

【ぜったくん】

東京町田産まれ。
ごく普通にSMAP を聞き、ゲームをしながら幼少期を過ごす。大学にてギターを始める。
大学卒業後、一度は就職した会社を入社わずか2時間という早さで電撃退職。作曲とDTMを勉強しながら、作詞作曲を手がけるバンド「201 号室」での活動(Vo,Gt)を始める。そのかたわら、ソロの「ぜったくん」としての楽曲を制作開始。
2018 年ラストラム主催の新人オーディション『ニューカマー発見伝』にて、グランプリを受賞。
2019 年7 月にデビューデジタルシングル『Catch me, Flag!!?』をリリース後、2020 年3 月に6 曲入り1st EP『Bed TriP ep』をリリース。
そして2020 年10月、メジャー1st Digital Single「Midnight Call feat. kojikoji」をリリースする。

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