9月に行われたパリのファションウィークで大きな話題を呼んだのが『Louis Vuitton (ルイ・ヴィトン) 』が発表したiphone7ケースだ。
ランウェイを歩くモデルが手にしていたのはバッグではなく、正に今っぽく携帯を片手に歩きまわる人々の生活スタイルが、ショーの中で繰り広げられた。
iphoneケースは多くのブランドが既に取り入れているが、ここまでラグジュアリー感のインパクトがあり、優越感に浸れるアイテムは今だかつてなかったのではないだろうか。
ラグジュアリーブランド部門で10年間ナンバー1利益を上げ続ける王道ブランド『LOUIS VUITTON (ルイ・ヴィトン)』。トランク専門店から成り上がったヴィトン社の戦略に注目した。

最強ブランド帝国『LVMH』の存在
『Louis Vuitton (ルイ・ヴィトン)』と『Moet Hennesy (モエ・ヘネシー)』の合併により誕生した『LVMH』。2015年の業績は前年から16%増しの過去最高356億6400万ユーロ (約4兆6363億円) を記録している。
最強ブランド帝国と呼ばれる『LVMH』は、ヴィトン社の他『Christian Dior (クリスチャン・ディオール)』、『Céline (セリーヌ)』、『Givenchy (ジバンシィ)』、『Kenzo (ケンゾー)』など 多数のハイブランドを傘下においたファッション&レザー部門の他に、
リテール部門、コスメ部門、ワイン部門、ジュエリー&時計部門とそれぞれに得意分野を持つブランドを買収するコングロマリットであり、規模拡大により相乗効果を図り、安定化を保つ戦略を取っている。
『LVMH』が導く「売れる」をつくる8つの戦略
“It is not enough to have a talented designer; the management must be inspired too. The creative process is very disorganised; the production process has to be very rational.”
(才能あるデザイナーがいるだけでは足りない。 経営もインスパイアされなくてはならない。クリエイティブプロセスはとてもまとまりがないものだ。 生産プロセスはとても道理的でなければならない。)
LVMH創業者『ベルナール・アルノー』はこう語っている。
実際にLVMHが採用している8つの戦略を紹介しよう。
1、セカンドラインを持たない
ブランドの価値を一定に守るため、値段を下げてまで普及しようと考えていない。
2、ラインセンス生産方式をとらない
他社にライセンスを出すことで、簡単に大きな利益が生まれ一度始めたら麻薬のようにやめられなくなる。ライセンスを繰り返すと、いずれ普及し過ぎてしまい、長い目で見るとブランド価値は落ちてしまう。
3、アウトレット品を出さない
通常、不良品の発生を見込んで必要数より多めに生産し、不良分はアウトレットに回す。ヴィトン社は職人育成と生産管理が徹底しているためアウトレット品は出ない。
4、セールをしない
消費者がずっと保有していても値が下がらないという安心感を持てる。
5、ニーズ調査をしない
ニーズをくみ取るのでは遅い。ニーズ以前の流れを先読みし、最先端の提案をしている。
6、工程にかかっただけの価格設定
職人の手で一つ一つ造られているため、かかる費用が高いだけであり、利幅を取るために高価格に設定している訳ではない。
7、テレビCMをしない
どんなCMが前後に流れても文句を言えないからである。それよりもマスコミや愛好家を招待した豪華パーティーを開催し、マスコミからの注目を集めることで、高い宣伝効果を得ている。
8、販売員の直営化
自慢の品質を顧客に理解してもらうため、デパートから派遣された販売員は一切雇わず、全て自社で研修を受けた販売員のみを雇う
参考分献:中沢伸也 ルイ・ヴィトンの法則―最強のブランド戦略

「オリジナル」を戦略に
通常、市場の流れからニーズに見合った商品開発をし、各社の魅力を発揮しようとする。例えばコンビニエンスストアのように同業他社に負けない提案をし、どう売上に繋げるかの勝負の世界だ。
一方、ラグジュアリーブランドは独自の魅力の主張が重要であり、他社との比較ではない。ルイ・ヴィトンの魅力は長年使える高品質。そして使い易さの技術面の良さが愛用者やリピーターを増やし続ける。
その秘訣にはリペアサービスの充実、またオーダーメイドで、顧客のイニシャルも入れてくれるサービスもある。ここには「長く使ってほしい」という一品一品に込められた気持ちが伝わる。
またモノグラムやダミエのブラウン色は、木や大地、またホーム色でもあり「落ち着き」「安心感」「堅実さ」を象徴する色。そのため、長く持ち続けやすい感覚を所有者に与えているのも戦略のひとつと言われている。

ありとあらゆる目線から考案された戦略に漏れはなく、それが結果となっているのだ。衰えをしらないLVMH社の成長にもはや「限界」はない。
『ルイ・ヴィトン』の成功の歴史はこちら↓
https://fuk-roo.com/articles/4044
ASA MAIKO LEGAY