ライセンスビジネスの手法によって、ブランドは新興市場を開拓し、高付加価値を維持し続けてきた。

だが、ラグジュアリーブランドビジネスにおいて、ライセンスビジネスの時代が現在では「もう終わった」と言われている。

ライセンスビジネスとは?

ライセンスとは許可や認可の意味であるが、特許、実用新案、意匠、商標などの工業所有権やノウハウの実用権利の供与契約をライセンス契約という。

ライセンスの提供者が『ライセンサー』、被提供者が『ライセンシー』。ライセンス契約はライセンスの実用権、使用権を許諾される引き換えにライセンサー側へロイヤリティ(ライセンス料)を払う。

日本は西洋服の歴史が浅く、かつてはライセンスを供与された日本企業は技術開発のコストが省け、ライセンサーは短期間で日本市場を開拓できた。

しかし一方で、ブランドが拡張しすぎてブランドのイメージを損なう結果や信頼性を低下をさせたライセンサーも少なくない。そのためライセンス契約を打ち切り、直轄したビジネスを行う動きも増えている。

(出典 frickr)

こうした契約解除のリスクは、ライセンスを受けている日本のメーカーには付き物だ。過去にも多くの事例がある。15年、英バーバリーの三陽商会とのライセンス打ち切りは世間を騒がせた。

1970年の契約締結から長年に渡り関係を築いてきた三陽商会にとって、売り上げの大半を占めていたと言われる「バーバリー」のブランドネームを失ったことは、大きな痛手となり、業績は悪化した。国内では後継ブランドが育たず、成長の原動力が乏しい。この出来事は日本のアパレル業界の抱える問題を浮き彫りにした。

(出典 frickr) 

変化する国内のアパレル市場

高度経済成長後もファッションブランドの市場拡大が続いた日本では商社や百貨店、アパレル卸しまで、特にパリのファッションデザイナーのライセンス契約と深く関わってきた。

歴史の深いブランド、オートクチュール系のアーティスト達が生み出したものは簡単には廃れない。安心できる契約内容、安全な企画、安定した収益を上げられるビジネスとして捉えられてきた。

しかし、市場は変化し、消費者たちのニーズも変わった。

日本のマーケットの中ではファッションの大衆化、ファストファッションの台頭などにより消費の2極化が目立つ。今では若者にとってファストファッションは「ブランド」だ。加えて高いロイヤリティを払っても、日本市場では知的財産権がある商品のコピーが後を絶たない。

偽物商品の横行は非常に複雑な問題であり、日本のファッション業界が知的財産権の問題を抱えつつ拡大してきたのは確かであった。

(出典 frickr)

このような現状と、グローバル化する世界市場ではブランド戦略と我が国の市場のズレは大きくなっている。ライセンスビジネスはブランドの国内での拡大とファッションの民主化を実現した。だが、拡大したブランドは契約を結ばなくてもマーケットで充分に存在できる。

今後もライセンス契約の終了によりブランド直轄の経営に変わっていくだろう。時代の移り変わりとともに、ライセンスビジネスは大きな曲がり角を迎え、新たなグローバル戦略が始まっている。