POSTED ON 2017年3月13日 1 MINUTE READ BY SIXTYMAGAZINE TEAM
世界に飛び出し、自身のクリエイションに情熱を注ぐ日本人クリエイターを紹介する企画『世界で活躍する日本人』。
今回ご紹介するのは、パリに住みながら日本のセレクトショップブランド「k3(ケイスリー)」のバイヤーとして活躍する遠藤聖さんにお話を伺った。
遠藤 聖(えんどう ひじり)
1988年: 神奈川県生まれ
2008年: オーストラリアメルボルンのLa Trobe Universityに進学し、2012年春に卒業。
2012年: (株)住商フードに入社し、主にアフリカビジネスを担当。
2015年: 単身で渡欧し、世界最古のビジネススクールESCP EUROPEのMarketing & Creativityの修士コースに入学。同時期に友人数名とCarne Bollenteをローンチ。
現在: 東京とパリを行き来しながら、Carne Bollenteの共同経営者、そしてk3ではバイヤーとして活躍中。
Carne Bollente: www.carne bollente.com
k3: www.k3coltd.jp
Instagram: @hijiriendo / @carnebollente
ーー バイヤーをするようになったきっかけ、経緯は?
現在バイイングしているk3のメンバーとパリで何度かお仕事をさせていただき、たまたまバイイングのポジションを募集しているとのお話をいただいたのがきっかけです。
元々、いつかバイヤーの仕事をしてみたいと思っていたので、恵まれていると思っています!
ーー 日本でバイヤーをするのとパリでバイヤーをすることの違いは?
自分を含め、パリ、日本でバイヤーとして働いている人をたくさん知っていますが、正直大きな違いはないと思います。
もちろん、フランスで売れるブランド、日本でうけるアイテムは違いますが、基本はマーケット、そしてターゲットとなる客層を理解することが重要と思います。
ーー それぞれの国の売れるアイテムの具体的な例を教えてください。
日本のコンシューマーは他国と比較して、ヤングデザイナーに対して非常にオープンです。
他の国では、知名度の低いブランドは中々セールスをつくるのが、難しいと思います。ある意味日本人は新しいもの好きですね。あとは、フランス人は意外とコンサバで、奇抜な服を普段から着る人は少ないです。
ーー 買い付ける上で直面するパリ特有の難しさ、逆に良いところは?
パリでの買付は直接ブランドとやりとりすることになるので、日本の代理店を通すよりも手間がかかること、逆にブランドとダイレクトでコミュニケーションがとれることである意味スピーディーに進行できるという良し悪し両方あります。
あとは、そのブランドの魅力を直接伝えてもらえることです。
今でもパリはファッションにおける首都であり、世界中のブランドがファッションウィーク中に集結するので、出会いのチャンスは無限大です。
ーー そもそもなぜ他の場所ではなくパリを拠点に?
パリのビジネススクールESCP EUROPEにて修士学を取得したのがきっかけです。
パリは現在でもファッションの中心であり、トレンドが生まれる特別な都市です。
ヨーロッパに住むなら絶対パリだとずっと決めていました。
—今、特に日本では「売れない」時代と言われていますが、そんな日本の顧客向けに商品を買い付ける際に、どんなことに気をつけていますか。買い付けるブランドや商品の決め手は?
気をつけていることは、顧客様のテイストや店舗コンセプトもそうですが、売り手のことを考えて買い付けしています。
店舗の販売スタッフが素敵だと思えない洋服の良さはお客様にも伝わないと思いますし。
また、トレンドにあまり左右されず、強いコンセプトをもったブランドを買い付けるようにしています。
あとは、洋服からパッションを感じるブランドに惹かれますね。
ーー トレンドをどのようにキャッチしていますか?
頻繁にSNS、特にインスタグラムを活用しています。
あとは、日本でもパリでもユース・カルチャーの一部に入ること。
おしゃれなユースと遊んでいると、自然と何が流行っているのか、何が流行るか気付くんです!
ーー 遠藤さんが思う、新しいトレンドが生まれる場所は?(パリと東京それぞれ)
パリでは近年LGBTコミュニティーが中心となって、おしゃれでクールなアングラパーティーが沢山あります。
普段クラシックな洋服しか着ないフランス人の若者も、パーティーではそれぞれ最高におしゃれするので見ていて楽しいです。
こういったアングラパーティーからトレンドは生まれてきていると個人的に思います。
一方東京ですが、東京でもパリ同様に若者がおしゃれをして遊ぶにいく場所でトレンドは生まれていると思います。
東京は一時期に比べ、ユースがおしゃれをして遊びにいくイベントやパーティーが少なくなりましたね……。
ーー 次に流行りそうなトレンド、カルチャーがあったら教えてください。また、次に流行りそうなブランドも具体的にあれば。
今、Vetements(ヴェトモン)などの影響からオーバーサイズでストリート調のファッションが流行していますが、そろそろサイズ感も小さめにシフトし、ウィメンズに関しては、フェミニン要素が強いものが好まれると思います。
気になるブランドはPalomo Spain(パロモ・スペイン)、 VEJAS(ヴェジャス)とCHIN MENS(チン・メンズ)です。
ーー パリで買い付けると言っても様々な国出身のデザイナーブランドがあると思います。それぞれのブランドとはどのように関わっていますか?
各国でコミュニケーション方法が異なるので、なるべく向こうの文化に合わせるようにしています。
ーー 流行に敏感であること以外に、海外でバイヤーをするのに求められる能力は?
コミュニケーション力と数字に強いこと。
ーー カルネ・ボレンテを立ち上げたきっかけは?
親友であるメインのデザイナーを含む友達4人で始めました。
ただローンチするのではなく、これまでに見たことのないものを作ろうということで、一般的にタブーとされている「セックス」をテーマに、エロチックなイラストをTシャツに刺繍しました。
コンセプトは時間をかけて練りました。
ーー 「セックス」はやはりパリでもタブー的な雰囲気を感じますか?
この数年で変わったとは思いますが、未だにパブリックでオープンにするサブジェクトではないと思います。
日本においては特にこのテーマに関しては閉鎖的で、比較的にソフトなデザインが人気です。
ーー 海外でブランドを立上げる難しさと発見は?世界中で展開するまでにどのようなアプローチをしたのですか?
海外で立ち上げることに特別な難しさは感じませんでしたが、海外の人と日本人では仕事に対する意識やスピード感が異なることに少し困惑しました。
また、アプローチ方法ですが、2015年のブランド立ち上げ当初、丁度セルフィーをSNSにあげるのが流行っていたので、まずはTシャツを友人界隈に配り、セルフィー写真をインスタグラムにあげてもらいました。
そしたら、SNS及び口コミでブランドが広がり、現在はOpening ceremony(オープニングセレモニー)、Voo Store(ヴー・ストア)、Tom Greyhound(トム・グレイハウンド)など約15ヶ国50店舗にて販売していただいています。
ーー 目標にしている人や憧れの人はいますか?
常に新しいアイデアが浮かぶクリエイティブ人たちに魅力を感じます。
ーー バイヤーの仕事をしている中でいちばん達成感を感じたことは?
やっぱり自分が仕入れた商品が売れること、お客様に喜んでもらえることが一番嬉しいです。
— 日本の顧客と海外の顧客の違いは?今後日本の顧客だけではなく、海外の顧客に向けても買い付けをしたいと思いますか?
そうですね。いつかは海外をターゲットにしたバイイングもしてみたいです。
しかし、もう既にe-コマースの普及から海外発送サービスは当たり前になっているので、自然と世界を相手に販売していかなくてはならなくなると思います。
ーー 今後の目標は?
k3では、これからも若いブランドを見つけ出し、日本に紹介することです。
若いブランドとともに成長できればと思います。カルネ・ボレンテとしては、飽きられない商品を出し続けることです。
SNSの普及から良い意味でも、悪い意味でもすぐにビジュアルが拡散され、トレンドの変化もスピーディーになりました。
なので、どれだけロングタームで好まれる商品が出せるかが鍵だと思います。
パリにいながら日本人の顧客を持つ遠藤さん。世界中からファッションで成功しようという野望を持った若者が集まるパリは、日本人特有の新しいもの好きというマーケットを生かして、若いブランドを発掘し続ける彼にとっては格好の場所だ。とはいえ、デザイナーはそれぞれ異なる国の出身であり、異なる文化を背景に持っているという難しさもある。それぞれの国に合わせたアプローチの仕方を考えて、文化の壁を超える必要があるのだ。また、パリでナイトライフも精力的に楽しんでいる。そんな彼にはそこから生まれる次のトレンドが確かに見えている。今後はeコマースの普及もあり、自然と海外の顧客も視野に入れているというが、すでにカルネ・ボレンテのファウンダーとして活躍している経験は間違いなく活かせるだろう。「セックス」をシンボルとし、わかりやすいイラストの刺繍が施されたカルネ・ボレンテのアイテムがSNSを通してキャッチーで受け入れやすいのは間違いない。こうしてSNSの良い面を利用してきた反面、これからは悪い面に備えて、より深く訴求でき、長く愛されるブランドにできるかどうかはこれからが勝負といったところだろう。