“人に合わせたり、こうした方が受けるんじゃないかとか、時代に合わせすぎたり、まじめに考えすぎないで好きなことを描いてやろうっていう勢いを感じ取ってもらえたら嬉しいですね。” by SHOHEI
人々を一瞬で魅了させる才能を持つ画家、イラストレーターの『SHOHEI』こと大友昇平氏とギタリストの『Cutsigh』こと河西裕之氏のアーティストコラボのプロジェクト『LOOP』がパリでも公開された。
このプロジェクトでは『AUDIO ACTIVE』、『DRY&HEAVY』、『DOOOMBOYS』のギタリストとして活躍し、現在はソロ活動をするCutsighさんが手掛ける『88』のトラックをループ状に刻み、SHOHEIさんの絵をあしらった2枚のヴァイナルがリリースされた。
上の写真のヴァイナルは、2枚を同時にプレイすると針を置く場所によって新しい音が 『無限 ∞』に生まれる仕組みとなっており、作品を作る喜びが無限に続くアートを提案している。
そして、それは音が重なって初めて完成される。
会場では誰でも自由にプレイして音の発見が楽しめるようになっており、その音源からはどこかミステリアスで奇怪な世界観を感じさせられた。
そこに大友昇平氏の『8』枚の絵の合流。
大友昇平氏は世界の漫画界に偉大な影響を与えたといえる『童夢』や『アキラ』の漫画家、大友克洋氏の息子で、その才能はまさに天性を引き継いだとも言えるだろう。
ボールペン一つで描いたとは信じがたいほどの絶妙なコントラストと繊細なディテールは実写のようで、誰もがその明確さに見入ってしまう。
この2人のコラボは圧倒感ある空間をつくり出し、それを一目見ようと足を運ぶ人々の後が絶えなかった。
今回、画家、イラストレータのSHOHEIこと大友昇平氏に、このプロジェクトについてと、彼の絵の秘訣について話しを伺った。
大友昇平/SHOHEI
1980年東京生まれ。イラストレーター。
美術大学卒業後、フリーのイラストレーターとして活動を開始。主にボールペンを使用してイラストを制作。アパレルブランドcarhartt WIPの2012年の年間ビジュアル、マキシマム・ザ・ホルモンのアルバム『予襲復讐』のジャケットイラスト、NIKEとのコラボ、agnes b.青山店のファサードを飾る。仕事の合間に描いた絵は、サイトや展示会で公開している。
– 絵を始めたのはいつですか?
物心ついた頃には絵を描いていたので、いつからというのは覚えていないですね。
– 以前はどんな絵を描いていましたか?
小さい頃は動物の絵とか、ハッピーな絵を描いていたと思います。
小学校ぐらいからはドラゴンボールの影響で、鉛筆で漫画やゲームの絵を描くようになったかな。
高三の時に美術大学の存在を知って、油絵が一番入学しやすいと聞いたので (笑)
油絵を使った絵も描くようになって、入学してから3、4年ぐらいは鉛筆に加えて絵の具を使った人物画も多く描いていました。
その頃の絵は暗いものが多かった。赤白黒を使って描くことが多くて、3メートルぐらいの首つりの絵とか描いていました。
– 絵を描く上で、父親の大友克洋さんからのアドバイスはありましたか?
いや、何もなかったんです。
自分で色々な絵の発見をしながら、勝手に覚えていった感じなので、教えてもらって学んだことはあまりないですね。
– では、克洋さんの絵を見ながら学んだことはありますか?
いや、そんなに見てもいないんです。
親父の仕事部屋は入ってはいけない感じがあって、普通に生活している家の中には親父の絵はなかったので、そんなに見て学んだという感じではないですね。
ただ両親は絵を描くことに理解があって、個人主義というか好きなことをするなら他人に迷惑をかけないならいいよという感じで。
もちろん勉強しろとも言われましたけど (笑)
たまたま好きになったのが絵だったんだと思います。
そしたらたまたま親父も絵を描いていたっていう感じ。
“絵にした時の警察の制服はパリっとするし、描いていてぞくぞくっとする緊張感がでるのでとても好きなんです。” by SHOHEI
– 今回のポリスシリーズの背景は?
河西さんが以前所属していたバンド、『Audio Active』のCDを高校生の時に初めて買ったんです。
『Audio Active』は昔から大麻の解禁をテーマにしていたバンドで、当時すごくかっこ良く見えたんです。
それで3年前ぐらいに河西さんにお会いした時に、昔のイメージと全然変わらなくて、その頃の好きだった思いが蘇ってきたんです。
だから今回コラボさせてもらうことになった時、絶対大麻の絵を描きたい、そしてそれを国家権力の象徴として分かり易い警察に吸わしてやろうと思ったんです。
日本は自由に厳しい国なので、自由に生きることに生き辛しさを感じることも多くてプレッシャーやストレスがずっとあって。
今世界で大麻の解禁で世の中が動き出している中、まだまだ厳しい日本の中でこういう対抗的な絵を描きたいと思ったんです。
– 河西裕之さん、今回の音づくりについて教えてください。
河西裕之:このプロジェクトの話をSHOHEIとした時に自分の中で直ぐにこれだって思う音があったので、直ぐに形になりました。音の方が作品よりも早く出来上がっていましたね。
SHOHEIは描きたいことがあって、誰がなんと言おうとそれを描くのを分かっていたから、細かく話し合うというよりは、お互いに感じたままを表現したって感じだよね。※サウンドはこちらからhttps://soundcloud.com/cutsigh/88loops-outtakes-1
https://soundcloud.com/phaseworks/88loopsmix_sample
河西裕之/Cutsigh
audio active のギタリスト。a.k.a.KASAI。
1995年にバンドに参加以降、世界30ヶ国以上をライブツアーで廻る。 2006年にはソロ名義 cutsigh として MIXCD『ReTRACKS chapter one』をリリース。 2008年には大麻堂 MIXCD『Memory of Journey』、<Phaseworks> のコンピレー ション『RGB』への参加、また Jemapur とのユニット DELMAK としてアルバ ム『DELMAK』を発表。2011年、ソロアルバム『Pipedreams』をカセットテープでリリースし、幅広いリスナーに支持され即ソールドアウト。リミックス、セッション・ワークも多数。近年はギター1本でのソロ・パフォーマンスをメインとする。

– 反抗的な絵が多い印象ですが、それはどういった視点からですか?
どこか反抗したいというか、皮肉っぽいというか、どこかにチクリとしたニュアンスを入れるのが性格的に好きなんです。
更にボールペンの白黒はコントラストが出るので、そういった殺伐とした世界観がすごく合うんですよね。
– 集中力がやっぱり大事だと思いますが、集中力を保つための秘訣はありますか?
集中力ねぇ。あまり気にしたことはないけど、テンションの高い時はちょっと抑えながら描いています。ボールペンは間違えたら消せないし、間違えたらやり直しになってしまうのでやっぱりかなり疲れます。
だから書き終わった瞬間はエンジンがかかっている状態なので、あ!終ってる!って気づくこともあります。(笑) でも出来上がった時の達成感は大きいですね。
– 絵を描く上で心がけていることは?
後は絵の中ではあまりきれいごとは言わないようにしています。
説明的な絵になりすぎたりとか、言葉で言えるようなことだったり、かっこつけたような感じなるのは好きではないので避けていますね。
– 今後、パルテルなカラーを使った絵や他のジャンルの絵にも挑戦したいですか?
実はもう描きだしています。絵の具を使ったり、パソコンを使ったり、やっとそういう気持ちになれたかなって思います。
– 絵を通して伝えたいことは?
そんなにメッセージは込めていないんだけど、お金や回りのしがらみに捕われず、好きな絵を描いてもいいんだということを絵の道を志している人たちに伝えたいのはあります。
人に合わせたり、こうした方が受けるんじゃないかとか、時代に合わせすぎたり、まじめに考えすぎないで好きなことを描いてやろうっていう勢いを感じ取ってもらえたら嬉しいですね。
オープニングの日からたくさんの人で賑わい、会場に訪れた誰もが目を輝かせてこの世界観に浸っていたほどの反響を受けたこのプロジェクト。
たくさんの人に新しい発見とインスピレーションを与えたのは言うまでもない。
そろそろ次のステップに切り出したいと話す2人からは、とてもポジティブなエネルギーを感じた。
今後もこの2人の活躍にはサプライズが待っていそうだ。
LOOP 特設Tumblr
http://88loop.tumblr.com/
開催日時:2017年1月26日~ 3月11日まで。15:00~22:00
会場:ARCHIVE 18-20
18-20 RUE DES ARCHIVES,75004 PARIS
電話:01 40 24 24 64
URL : www.archive1820.com/
プロジェクト企画:TOKYOÏTES ART / PHASEWORKS
URL:http://www.tokyoitesart.com/