【ASIAN FACE】大森靖子にインタビュー「私がやっていることは共感という生ぬるいものでは無いんです」1 min read

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先日、超歌手・大森靖子が自身で考案したオリジナルコンセプトのもと、韓国ブランドUNALLOYED(アナロイド)とのスペシャルコラボが発表された。

「冒険」という花言葉を持つチューベローズとハチドリをモチーフにした、ダークな雰囲気がありつつも繊細さを感じられるグラフィック、モーブピンクとブラックカラーを使用したオリジナル迷彩柄。ダークな力強さと繊細さを兼ね揃えた彼女の、内と外に相関する表現の根源を読み解いて欲しい。

コラボアイテム販売ページ:https://www.sixty-percent.com/collections/oomori-seiko-unalloyed

 

-まず最初に月並みな質問ですが、音楽自体に興味を持ったきっかけを教えてください。

2歳の頃から始めたピアノと、父親の影響がきっかけですね。父親が電化製品好きで、最新のコンポが家にあったりいつも有線のランキング流れていたり。身近に音楽がある環境ではありましたね。

-その中で、幼少期の夢はありましたか?

10歳くらいまで香川県に住んでたのですが、ピアノでは地元で最強だったので(笑)、どうにかピアノでやっていけるんだろうなって漠然と思っていました。

今治市に引っ越して、もっと上手い人に出会ったり、先生と相性が悪かったりで私はピアノの道じゃないんだなって。その中でも、自分の気持を表現することが当時から好きで、即興とか曲を作って先生の言うこと何も聞かずに弾きまくるっていうのをずっとやっていましたね。それが作曲の原体験だと思います。

-漠然と音楽の道が見えていたのですね。

ステージに立つ仕事みたいなのに、憧れはありました。でも、当時沖縄アクターズスクール全盛期だったので、愛媛県に生まれてる時点で終わったって思ってて(笑)。さらにその後、モーニング娘。から同い年の辻ちゃん加護ちゃんが出てきて、いよいよもう終わりじゃんって(笑)。なんとなくその道も諦めてましたね。

 

-そこからステージに立つ意志が芽生えた、切り替えられたのはいつ頃でしょうか?

ずっと後です。大学生になって東京に行ってから。当時関西ゼロ世代が凄く面白くって、そのシーンにハマってから、「あ、表現方法って何でもいいんだ」と楽になれたんです。私は輝ける人間なのに、生まれとか顔とかで、自分自身をずっと縛っていたんですよね。

※関西ゼロ世代:表現方法を選ばない、アンダーグラウンドで活動するバンド

-なるほど。田舎で見ているエンタメってマスなものが多くて、私も東京に来てこういうバンドシーンがあるんだってカルチャーチョックを受けました。幼少期に知っていたら、もうちょっと変わった選択肢があったかなと思います。

そうですよね。自分の世代はちょうどインターネット黎明期というか、一緒にインターネットと育った世代なので、自分の親の世代のような、音楽シーン自体を作ってきた世代でも、インターネットを活かして商売ができるオールラウンドプレイヤーが多いタイプの世代でも無かったんです。
だからこそ、突き抜けていたり、自分自身の人間力で生きる世代なのかなって思っていて。同じ世代だと渡辺直美さんとか、こうじゃないと突き抜けられないのかなって、凄く学ぶところが沢山ありますね。

 

-ZOCのプロデュースを始めて、自身の大森靖子というアーティストに何か循環したものはありますか?

自分が自分の一番カウンターカルチャーでありたいというのはずっと抱いているのですが、自分のスピード感が早すぎて、何をやってるのかもはや分からなくなっているのが問題点で、自覚はしているんですけど…(笑)。
ただカウンターだけじゃなくて、そこからカウンターのカウンターで、一周してきたものを定義できるようになったのは身に付いたと思います。一晩寝かせるというか、「こうだったら面白いのに。でも更に・・・?」ってところまで自分で噛み砕いて、いろんな人の視点で物事を描くことが出来るようになったかな。

-確かに、リリースのスピードがとてつもなく早いですよね。

そうなんです(笑)。私は作品数も多く作れる方だし、どんどん世に出していきたいので、そのために自分が曲を提供したいと思うプロジェクトをたくさん抱えて、実現出来るのは凄く良いことだし、恵まれているなって思います。その中で、「こんなのおかしいんじゃない?」って疑問も選択肢に含めた上で、新しいものを見ることが大事だと思うんです。でも、それを作りながら考えられる人が少ないというのも感じているので、もっと意識して行きたいですね。

-愚問かもしれないのですが、MVで歌詞を明記されているじゃないですか。その意図は、リスナーの共感や認識のズレを無くすためなのでしょうか?

歌詞はやっぱりちゃんと見てほしいので、明記するようにしています。ZOCの『family name』はどのシーンを切り取っても常に映えている言葉が出るよう、キャッチーに作っていたり。逆に、切り取ったら意味が分からないように作ってる作品もあったり。
やっぱり、言葉はこだわってますね。歌詞の表記も、「ここから次の行に改行します」「ここ替えてください」とか細部までこだわって作ってもらってます。

-個人的に大森さんの共感に対するディテールの意識が気になっていました。大森さんは何か作品や音楽、日常体験でも、共感されることはありますか?また、粗い共感に置き換わる何かを見出しているのでしょうか?

共感というより、共鳴の方がしっくりくるかな?そうですね、共鳴することはあります。共感は、病名みたいなものだなと思ってます。〇〇病って決めて安心したい人のためのものだと思ってて、でもそれで安心できる人が沢山いることも分かります。

今は多様性がよくトピックに上がりますが、多様性って言葉を使うことへの雑さが気になっていて。きっと色んなすべての種類の感情や存在を認めることなのに、色んなものの境界を無くす方が楽だから、「男とか女じゃないよね」って大きなところに行こうとしているように見えて。「私は女でいたい」「私は男でいたい」「私は男でも女でもない」とか、その細かい全ての感情と向き合うべきなのに、それを阻害している感じがするんです。
それが共感にも通じる気がして、共感はそういう細部を描ききれないんだと思います。その色んな細部を描けるのが芸術や音楽なはず。この仕事が色んな人の「生きていい価値」に繋がるから、私がやっていることは共感という生ぬるいものでは無いんです。

 

-なるほど。大森さんから見た“共感”と“共鳴”の違いを具体的に教えていただきたいです。

共感は、Me tooなんですよ。「私も」っていう、同じ事象だったという感情。同じ事象なんて無いのに、例えば「私は誰々に財布を盗られました。」「私も盗られたことある。」 でも、細かいディテールは全部違うじゃないですか。誰に盗られたか、どういう目的で盗られたか、何円盗られたか、全部違うはずで、それぞれの悲しみも違う。別に気にしてない人もいれば、お金は良いけどお財布は大事だったなって思う人もいれば、千円失ってマジで辛いって小学生もいる。全部違う。それが共感だと、全部が無視されてる感じ。「カードなくすとめんどくさいよね」が共鳴なんですよ。

-共感は感情より事実、共鳴は繊細な感情なんですね。

そうですそうです。なので私は、共鳴の方は、よく思うことがあります。

 

-ありがとうございます。前述を踏まえた上で、YouTubeのコメント欄やファンの方々の考察、感想はどのように解釈をされていますか?

ファンの皆さん自身の話をしてくれるのが一番好きですね。こういう解釈もあるんだとか、こんなこと考えてもみなかったとか、そういう感想が嬉しい。自分が考えて無かったことを考えて、教えてもらうのは結構好きな方です。

-考察に近い感じでしょうか?

そうですね、考察は好きですね。身の上話みたいなのも好きです。
でも感想って、1個コメント欄に出ると、その感想が自分の感想のように錯覚しちゃう。それは、アーティストとしてというより、個人的に苦手なんです。自分が映画を観に行ったとき、自分の感想を忘れちゃうから誰かの感想を見たくない、みたいな気持ちに近くて。自分の曲でも、他の感想に流されちゃうんじゃないかなと思ってしまう。多分自分の感情が歪んで、解像度がゆるくなっちゃうから、人の感想を取り入れるのはちょっと苦手かな。

 

-大森さんが以前インタビューで、「エンタメは手をあげろと言ったらみんなが手を挙げる、カルチャーはなんで手を挙げないといけないのと疑問を持つ」っておっしゃていて。根本的にカルチャーに近い思考を大切にしていくということに近いのでしょうか?

そうですね。エンタメはカルチャーを商業化したものなので、それはだめだよと言われたら無くなっちゃうものだけど、カルチャー自体は無くならないものだから。誰が制限しても残っていくので、それをやっていく人として、何を定義するべきかを考えるべきかなと思います。

-個人的にアイドルは、マジョリティに近いというか、大きなエンタメのイメージがずっとあったんです。それがカルチャー的要素を含むよう、意識されていることはありますか?

日本に限って言えば、アイドルカルチャーはずっと、カウンターで有り続けたと思っていて。90年代の凄くかっこいいものしか受け入れられなかった時代に、「音楽がかっこ良ければ人はそのままで魅力的でしょ」をやってのけた人たちは、現状へのカウンターじゃないですか。「かっこいいはこうでしょ」に対して、「このくらいふざけていいでしょ」とか、そういうカウンターで成長して来たと思うんです。モーニング娘。、ももいろクローバーZ、乃木坂が出てきた後の欅坂の出方、こういうのがアイドルでも良いよねというカウンターとして生まれてくる感じがカルチャー要素満載なんです。

-なるほど…。

女の子が歌っていればそれはもはやアイドルとして見なされるくらいにはなっているので、今はもう音楽に垣根がないですよね。この前出た曲はハードロックだったのに今度出た曲はすごいピコピコした曲になってても、全然聴くじゃないですか。そんなことってアイドル以外きっとありえないと思う。自分のスピード感とか表現したいことによって音変わっていいじゃんっていうコンセプトが凄く好きなんです。

-勿論ルッキズム的なものじゃなく、ビジュアルや個性、コンセプト、キャラクターが尚更大切になってくるという面も?

そうですね。やっぱり、曲が出来たときにその曲を一番伝えるにはどうしたら良いかを考えますね。自分が一番こだわっているのは、どこを見せたくてどこを見せたくないかを、アイドルたち自身で選ばせること。今はここが痩せてるからここを見せたいとか、私はここに傷があるからここは出したくないとか。その時のその人の流れみたいのを見極めて、助言することもあります。

 

-大森さんといえば、ピンクや花のイメージがあるのですが、この大森さん像を確立されたきっかけはありましたか?

そもそもピンクは、反骨精神が無いと着れないんですよ。ピンクって人間の内臓の色じゃないですか。自分が一番内側に持っているもので、花が土の養分を吸い取って、死ぬ間際に咲かせる程の凄い労力が無いと生まれない色だから、自分にとっては凄く特別な色なんです。

-その特別な気持ちを覚えたのはいつ頃でしょう?

上京したては目立ちたく無かったから、ずっと黒ばかり着てましたね。縷縷夢兎(るるむう)のデザイナーである東佳苗ちゃんが、“内蔵が溢れ出た”みたいなピンクのニットを作ってくれたのがきっかけです。それが私にめちゃくちゃしっくりくるもので、ピンクって着飾るイメージだったけど、ピンクは私の内臓の色で、私の内部を放出してくれる色なんだっていうのに気がつきました。

-今回、韓国ブランドUNALLOYEDさんとコラボをされましたが、ボトムスにもピンクを取り入れられていますよね。

ピンクの迷彩のパンツは絶対に作りたかったアイテムなんです。内面を放出してくれた色、ピンクを、迷彩で隠すって本末転倒じゃないですか(笑)。それが「私を隠すことができるのは私だけ」みたいな表現になっています。自分がピンクの迷彩を着ることで、「上手く自分をコントロールしながら一番エグくて一番魅力的な部分を出す」そういう願望も込めているんです。

-自分を守る術でもあるし、自分を出す術でもある。先程ピンクやお花のお話をしていただきましたが、大森さんが普段ときめくポイントは具体的には何かありますか?

「自分のために作ったのかな?」と思うようなものに出会った時。自分が服を選ぶんじゃなくて、服に選ばれた感覚があると、ときめきます。自分より似合う人がいる服、いらなくないですか(笑)?

-ありがとうございます!最後に、ファンの方に向けてメッセージをお願いします。

「今日はうんこがいっぱい出たからお腹出そう」とか、服って1日を作るものだと思っていて。そのくらい毎日着るものが変えられるし、着る色で行く街も変わるものだと思うから、毎日を手作りする感覚で「今日はこの服を着よう」って選べたら凄く創造的だなって思います。そんな感じで毎朝ファッションを楽しんだり、怠惰な日でも「あ〜何も出来なかったなぁ」って思ったり、そういう素直な感情を楽しんでもらえると、かわいいなって思います!

 

Photographer:Korogi Maho
Interview:Yoshimura Ayaka
Edit:Takami Kai

【大森靖子×UNALLOYED コラボ情報】

2021年7月26日(月)20:00 〜 2021年8月4日(水)23:59

※期間限定の予約販売となります。
※ご購入いただいたお客様の中から抽選で30名様に大森靖子直筆サイン入りの未公開カットポストカードをプレゼントいたします。

販売ページ:https://www.sixty-percent.com/collections/oomori-seiko-unalloyed

【大森靖子】

超歌手。愛媛県出身。美大在学中に音楽活動を開始し、2014年avex traxからメジャーデビュー。 自身の音楽活動は元より、執筆・楽曲提供、プロデュースと活動は多岐にわたる。 又、メンバーと共にステージに上がりながらプロデュースするグループ「ZOC」も2021年1月にavex trax からメジャーデビューし、全プロダクトにおいて精力的な活動を展開中。

Instagram:https://www.instagram.com/omorimori/
Twitter:https://twitter.com/oomoriseiko