もしあなたが女性なら、一度や二度は聞いた事があるだろうランジェリーブランド、Victoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)。

http://pe.fashionnetwork.com/news/L-Brands-anuncia-la-primera-full-store-de-Victoria-s-Secret-en-Mexico,593433.html

通称“ヴィクシー”で知られているランジェリーブランド。

アメリカにおいて、下着ブランドといえばここだ。ピンクをテーマカラーとし、ランジェリーを中心にルームウェア、香水、ボディクリームなどの美容用品等を扱っている。

1977年に、ロイ・レイモンドによって設立され、1982年から現在に至るまで、リミテッド・ブランズの傘下に入っている。

設立者のロイ・レイモンドは自身の経験から「男性が女性用下着を買いやすい下着屋」というコンセプトのもと、ヴィクトリアズ・シークレットを立ち上げた。

しかし、創業五年後にリミテッド・ブランズに売却。その後、多額の借金を抱えてしまい、自殺をしてしまう。セクシーで華やか、多くの女性に愛されている下着ブランドには、このような悲しい背景もあったのだ。

今やアメリカ国内だけで1000店舗以上あり、2013年時点で既にアメリカで長く支持されているブランド、GAPやOLD NAVYの年商を上回り、全米最大のファッションストア業態となっている。

世界的に高い人気と認知度を誇るこのブランドの徹底としたビジネス戦略とは?

テクノロジーを駆使したカタログ

https://www.buzzfeed.com/sapna/bye-victorias-secret-catalog

ヴィクトリアズ・シークレットは元々店舗ではなくカタログでの販売がメインだった。

しかし、店舗数が増えて行った今でも、ストア販売以外にウェブサイト、電話、アプリ、メールでのオーダーが可能となっていて、カタログ通信販売を主流としている。

そして、このカタログが非常に秀逸なのである。

何故なら、従来のペーパーカタログではありながらも、決してただページを捲って商品を眺めるだけのものでなく、実際にそこから商品を購入する事ができるからなのである。

ヴィクトリアズ・シークレットにはアプリがあり、そのアプリ内の「スキャン機能」を用いて、例えばカタログ内の写真を撮ると、それをスキャンし、商品の詳細が見られるだけでなく、ECサイトに移動する事ができる。

それだけではなく、あるページをスキャンすれば特別なムービーが再生されるなど、工夫をこらしている点が、未だにカタログ販売を主流とさせているのだ。

充実したECサイト

http://www.cnbc.com/2016/10/26/victorias-secret-reveals-its-3-million-fantasy-bra.html

カタログとも連動しているECサイト。商品をわかりやすく見せるだけでなく、モデルのポージングを含めビジュアルを非常に重視した写真が多く、オンラインストア感を感じさせないほどの美しさが人気だ。

サイズ一覧表はわかりやすく、商品をズームして質感を確認する事も可能。

また、全ての商品にはレビューがついていて、実際に購入した人の着心地に関する投稿を見る事ができること、一番オンラインで買いづらいはずのランジェリーがここまでECで売り上げを伸ばしている理由ともなっている。

“エンジェル”の存在

http://www.fashiongonerogue.com/victorias-secret-angels-sexy-vogue-spain-cover/

なんといっても、このブランドの目玉でもあるのがヴィクトリアズ・シークレットと専属契約をかわしている、“エンジェル”と呼ばれるモデルたちだ。

過去にはハイジ・クライム、タイラ・バンクス、ジゼル・ブンチェン、ミランダ・カー、カーリー・クロスなど、名前を挙げて行くとキリがない程のスーパーモデルたちがエンジェルとして活躍。

http://juliadiets.com/victorias-secret-models-diet/

現在は16年間エンジェルを務めるアドリアナ・リマを筆頭に、アレッサンドラ・アンブロジオ、キャンディス・スワンポール、そして新人ながらに高い人気を誇るテイラー・ヒルが主要メンバーとして活躍している。

このエンジェルは、世界一なるのが難しい職業といっても過言ではないほど、容易になれるものではない。

モデルがスーパーモデルになるうえでの登竜門的といっても過言ではない。

いくらセレブで著名な人間でも、モデルをする事ができない程厳しい基準をもって厳選されている。

まさに世界中の女性の理想像とでも言えるような完璧なまでに美しい容姿をもったモデル、エンジェルズをブランドカタログやキャンペーン、広告に起用する事で、ブランド価値を一層高めているのだ。

CHANEL(シャネル)やMIUMIU(ミュウミュウ)をはじめ、多くのラグジュアリーブランドも、プロモーションとして大物モデルを起用するが、恐らくヴィクトリアズ・シークレットはその点で、世界一とも言える程大成功をおさめたのである。

男性へのアプローチ

https://www.buzzfeed.com/summeranne/which-retail-chains-have-the-best-employee-discoun

このブランドは他のランジェリーブランドと比べて、男性へのアプローチが強いところも、勝因のひとつだろう。

先述の通り、元々設立者が「男性も入りやすい下着屋を作りたい」というコンセプトのもと誕生していて、そのブランドスピリットは現代まで引き継がれている。

実はヴィクトリアズ・シークレットは男性の方が女性より購入するとも言われている。

カタログから、自分の気に入ったデザインにチェックを入れて店員に渡して探してもらったり、ストアでの恥ずかしさを感じずに済む、充実したオンラインストアからの購入が多いようだ。

また、エンジェルの存在も男性に対するアプローチの大きな鍵を担っている。細すぎず、女性らしさを感じる美しい曲線美を誇る彼女らは、まさに男性にとっての理想の女性像。

故に、彼女達が掲載されているカタログやブックは女性ファンだけでなく男性ファンによる購入も多いのだとか。もはや下着すらつけていないような、少し過激な雰囲気は男女ともにくいついてしまう事間違いなし。

ティーンへのアプローチ

http://topsy.one/hashtag.php?q=pantyparty

ヴィクトリアズ・シークレットには、セカンドラインである「PINK」が存在する。

これは、将来ヴィクトリアズ・シークレットのリピーター顧客、ファンになり得る10代から20代前半をターゲット層においたものである。2004年に発足され、2010年には売り上げが十億ドルに到達している。

デザインも、シースルーや総レースなど大人の女性向きなメインラインと比べて、スウェットやパーカーなどが多く、下着も含めて全体的にカジュアルだ。

価格帯も低い事、そして何しろPINKというロゴマークが目立つプリントアイテムが多いため、ブランドを持っている事をアピールしたいティーン世代には大ブレイク。

アメリカの大学に行けば、上下PINKのスウェットで歩いている女子も少なくないのだそう。

これほどまでに老若男女に人気の高いヴィクトリアズ・シークレット。

後編では、全米ナンバーワンのランジェリーブランドが与える影響力の凄さとは一体何なのかを紐解いていく。

後編(明日公開):世界一のファッションショー「Victoria’s Secret Fashion Show』とヴィクシーの日本での影響力。