もしあなたが女性なら、一度や二度は聞いた事があるだろうランジェリーブランド、Victoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)。

通称“ヴィクシー”で知られているファッションブランド。アメリカにおいて、下着ブランドといえばここだ。

前回の記事ではブランドのビジネス戦略に焦点をあてて紹介させていただいた。今回は、実際に人気の高いこのブランドが及ぼす影響力について考えたい。

ランジェリーをファッションにした

出典:http://www.inspiringwallpapers.net/tag/victorias-secret-model-wallpapers.html

従来、下着というものはデイリーなものがほとんどで、少しセクシーで過激なデザインのものは特別な時以外、着用する機会はあまりないものとされていた。しかも、透けたものやレースのものなど、セクシーな下着ほどデザインは凝っているため値段も高く、一種の高級品であった。

だが、ヴィクトリアズ・シークレットは基本的に低価格帯でこれらのランジェリーを販売。セクシーな下着をデイリー使いすることで、女性らしさをもっと高める、女性をより美しく輝かせるようにしたのだ。

一大イベント、Victoria’s Secret Fashion Show

 

出典:http://unwallpapers.com/victorias-secret-models-latest-hd-wallpaper/

このブランドがいかに影響力が強いか、という事を語るうえで欠かせないのが、ファッションショーの存在だ。1990年からスタートしたこのイベントは、年に1度執り行われ、毎年違う都市で開催される。そしてこの豪華なファッションショーは、非常に多額のお金が動かす、まさにスーパーボウルに匹敵するほどのものなのだ。

このショーは、ヴィクトリアズ・シークレットのエンジェルズにとっての、まさに晴れ舞台。

ショーの様子を撮影し、編集したスペシャル番組は毎年高視聴率を記録する。何故なら、ショーはセクシーなランジェリーを纏ってランウェイを闊歩するスーパーモデルだけでなく、大人気アーティストも登場するからである。

出典:http://www.billboard.com/photos/7596000/2016-victorias-secret-fashion-show-photos-lady-gaga-bruno-mars-weeknd

今年は歌手のLADY GAGA(レディ・ガガ)、The Weekend(ザ・ウィークエンド)、Bruno Mars(ブルーノ・マーズ)が出演し、エンジェルズのランウェイショーを一層盛り上げた。

そしてアーティストのライブと同じくらい目玉であるのが、ファンタジーブラ。有名な宝石ブランドとのコラボレーションとして作られるこのブラは、本物の宝石をふんだんに使用するため、総額1ミリオンドル以上の価格のものだという。

今年のファンタジーブラは、9000以上のダイヤモンドとエメラルドが使用され、制作時間およそ700時間、費用は約3億円相当のもの。

出典:http://www.ibtimes.co.uk/victorias-secret-fashion-show-most-expensive-fantasy-bras-million-dollar-miracle-sexy-splendor-1528260 

他にも、2500個のラインストーンを使用、制作時間300時間の衣装などが登場する。

また、ショーで消費されるものの数も膨大だ。今年出演したモデルは、エンジェルズを含めて51人。ランウェイを歩くモデルのために用意されるヒールは82足、彼女達がバックステージで消費したボディケア用品はボトル72本分、消費されたマニキュアの数は52本!

しかも、モデルが滞在するホテルは、五つ星のマンダリンオリエンタルホテル。このショーに、いかにコストがかかっているかは、もうおわかりいただけたはずだ。

しかし、もともとプロモーションに全力をかけることをモットーとするヴィクトリアズ・シークレット。これだけ派手なショーを行っても、売り上げで採算がつくというから、驚きである。

出典:http://www.forbes.com/sites/natalierobehmed/2015/11/10/the-victorias-secret-fashion-show-a-50-million-catwalk/

なにより、このショーはエンジェルズのファンにはたまらないイベント。ショーを見てから彼女達を好きになるという声も少なくない。そしてこのエンジェルズこそが、絶大な影響力を持っているのだ。

エンジェルズの影響力

出典:http://www.aufeminin.com/news-style/forme-les-conseils-des-anges-de-victoria-s-secret-pour-l-ete-s1265907.html

日本でも、俳優や女優、人気モデルの影響力が強い事と同じように、エンジェルズの影響力も世界規模で強い。何より売れるのが、ダイエットに関連したものだ。彼女たちのように細く、しなやかなボディになりたいとジムに通う女性は増え、彼女達はこぞってヴィクトリアズ・シークレットのジムウェアを買う。

これらはヴィクトリアズ・シークレットによる、エンジェルの美貌とボディを駆使し、羨望の想いを抱かせ、関連商品の購入に繋げるプロモーション戦略が上手く言っている証拠となっている。

だが、その恐るべき影響力はブランド外にも及んでいるのだ。

出典;http://www.seventeen.com/fashion/celeb-fashion/news/a35598/heres-everything-kendall-jenner-wore-in-the-victorias-secret-fashion-show/

例えば、ヴィクトリアズ・シークレットのショーに今年も出演した人気モデルのケンダル・ジェンナー。彼女は自身の体型保持に関して、「まず朝起きたら、Kusumiのデトックス・ティーを飲むの。レモングラス入りのグリーンティーで一日12杯くらい飲んじゃうわ」と発言した。ブランドや商品の詳細まで話したこの発言によって、この商品は即完売となった。

また、最近エンジェルを卒業したモデルのカーリー・クロス。彼女は自身でヴィーガン用のヘルシーなクッキーを主商品としたブランドを立ち上げ、見事に大成功。それだけでなく、若い女性にもっとコーディングというものを浸透させたいと、「Kode With Klossy」というコーディングキャンプ等を開催。

こちらも、ファンがつめかけ、彼女のプロデュースするキットが飛ぶように売れた。

出典:http://www.nydailynews.com/entertainment/gossip/karlie-kloss-models-codin-skills-girls-article-1.2582766

Victoria’s Secretがコストも惜しまず、豪華なショーをする事によって、ファンが増やし、大きな経済効果をもたらしていると言っても過言ではないのかもしれない。

Victoria’s Secretは日本にも影響を及ぼすのか

出典:https://jp.pinterest.com/00hs1028/victorias-secret/

日本人にとって、ヴィクトリアズ・シークレットは良いお土産の印象が強い。

2014年に日本に初上陸を果たし、一号店は羽田空港国際線出国エリア、二号店は関西国際空港国際線出国エリアに出店している。

日本で買うには未だにショップ数が少ないし、店舗が空港にあるというわけで気軽に買いに行く事もできない。なにより、本国ではお手軽価格なのに対し、日本では輸入しているせいで少し価格帯が高いランジェリーとなってしまう。

また、本国と日本の大きな差は、男性をメイン顧客にするのが難しいことだ。日本人男性は海外の男性と違い、下着をプレゼントする習慣があまりない。

下着屋に彼女と入ることすら拒んでしまう。海外の男性と同じように、カタログを見て、ネットで注文をするとも考え辛いだろう。

そしてなにより問題なのが、日本人の体型にあまり合わないという事実だ。ブランドイメージとして君臨するエンジェルの体型を見れば一目瞭然なのだが、ヴィクトリアズ・シークレットはバストやヒップがしっかりでている、グラマーな体型に似合ってしまうのだ。

しかも、まだ日本には海外ほどセクシーというものがメインストリームではない。

出典:http://orzzzz.com/how-much-for-a-victorias-secret-fashion-show-ticket.html

しかし一方で、関連商品であるボディケアグッズやコスメ、フレグランスは非常に人気が高い。

もしフラッグシップが今後都内に立つのであれば、主に売り上げはそれらからたつ事になりそうだ。更に日本は特にブランド志向が高いと言われているため、ヴィクトリアズ・シークレットロゴ欲しさに女性が殺到するかもしれない。

だが、人気は一時のニュース性によるものだけとなり、早々に撤退してしまう可能性も非常に高いと言えるだろう。

今後もさらに世界に影響力を与えるブランドとして躍進していくであろうヴィクトリアズ・シークレット。

成功の秘訣は、プロモーション、そして何より下着を売るだけでなく、「女性を美しくする」事を売るという概念だ。

日本進出をより活発にした際に、日本人に影響を与えるためにどのような戦略を練ってくるのか、期待したいところだ。