資源の枯渇や環境汚染が深刻化する中、繊維業界やアパレル業界はそろそろ石油系繊維に代わる新たな素材を探す必要がある。
ファッションメディアのFashionUnited(ファッションユナイテッド)は、地球に優しい6つの新繊維を提案している。
1.麻

最も汎用性の高い天然繊維のひとつとして、弾力性、耐久性、抗菌性に優れ、暑い夏でもサラッとした着心地を維持してくれる麻素材が挙げられる。
麻は非常に育てやすい植物で、水をあまり必要としない。また、枯れにくいので除草剤や農薬、合成肥料をやる必要もない。
このように麻は優れた素材であるのにもかかわらず、ポピュラーな繊維としての地位を確立していない。
その理由は、麻からはドラッグの大麻が生み出されるからであり、特に西洋世界では昔から栽培が厳しく取り締まられてきた。
しかし、麻の工業的使用が禁止されていない中国では状況が異なる。現在、中国で生産される麻は世界の生産量の50%以上を占めている。
2.イラクサ

多年生植物の一種であるイラクサは、成長が早く栽培しやすい植物だ。
イラクサから繊維を製造するためには、夏に収穫して茎をよく乾燥させ、トゲを取り除く。乾燥後、繊維を分離し、葉の付着物を除去する。 その後、繊維を紡糸し乾燥させる。 糸をひねると強度が増す。
麻と同様、イラクサは綿よりはるかに少ない水と農薬で栽培できるが、麻とは異なり西洋でも合法的に栽培できる。
加工された生地は多目的に使用できる。イラクサ素材の衣服を着ると冬は暖かく、夏は涼しい。
最新の紡糸技術とハイブリッド品種を用いれば、丈夫で柔軟性があり、紡糸するのに十分な長さの繊維を製造できる。
3.コーヒーの豆かす

コーヒーをドリップした後、ほとんどの人が豆かすの入ったフィルターをゴミ箱に捨てるだろう。
しかし、コーヒーの豆かすもまた、繊維へと生まれ変わることができるエコ素材なのだ。
台湾の繊維会社Singtex’s technologyは、特許取得済みの製造法で加工したコーヒーの豆かすとポリマーを組み合わせて新素材のコーヒー繊維を作り出した。
この繊維から作られたコーヒー生地は、スポーツウェアから家庭用品まで様々な製品に使用することができる。
4.パイナップル

ロンドンに拠点を置くAnanas Anamは、パイナップルの葉からPñatex(ピニャテックス)と呼ばれる皮革によく似た天然の不織布を開発した。
製造プロセスで副産物として得られるバイオマスは、有機肥料やバイオガスへと加工され農業に使用される。
このパイナップルレザーは、フィリピン産パイナップルの葉の繊維から作られている。パイナップルレザーは丈夫で通気性があり、柔軟な素材である。生地にはプリントや縫い付けが容易にできるため、ファッション製品の製造にはもってこいの新素材だ。
5.バナナ

バナナの木の茎から作られるバナナ繊維は驚くべき耐久性を持ち、生分解性である。
採取する茎の部位に応じて異なる重さや厚さの繊維を作ることができるため、ロープやマット、紙の製造まで幅広く利用される。
バナナ繊維は天然の竹繊維に似ているが、バナナ繊維のほうがよりきめ細かく強度が強いと言われている。
コーヒー繊維やパイナップル繊維と同様、バナナ繊維も本来廃棄されるはずであった植物の一部を使用して作られるため、エコな新素材と言えよう。
6.蓮

蓮繊維はシルクとローリネンを混合したような高級感があり、柔らかく、通気性が良く、汚れにくい。
タイやミャンマーなどの国では、特別な服を作る際に昔から蓮繊維を使用してきた。
蓮繊維が優れた素材であるのにも関わらず市場にほとんど流通していない最大の理由は、蓮の茎の加工プロセスが複雑だからだ。
製造のためには、蓮を収穫してから3日以内に茎を切り開き、中から長くて薄い繊維を取り出さなければならない。その後繊維を洗浄し、干して乾燥させるという長い過程を経てやっと紡糸できるようになるのだ。
このように蓮繊維の製造には手間隙がかかるが、その優れた品質から多くの企業が新素材として注目している。
インドのジャイプルに拠点を置くHero’s Fashion Pvt社もそのひとつで、蓮から作られた白シャツにはファンが多い。
それぞれの可能性
これらの6つの繊維は、既存の繊維の代替品となるためにはまだまだ改良の余地があるが、どれも環境に優しく機能性にも優れている。
麻、イラクサ、コーヒーから製造された繊維は丈夫で大量生産に適しており、マスマーケットにおいて大きな可能性を秘めていると言えよう。
一方、高級感があり希少性の高い蓮繊維やパイナップル繊維は、高級市場において需要があるだろう。