Adoの『うっせぇわ』が2021年ユーキャン新語・流行語大賞のトップテンに選ばれた。社会現象ともなった本楽曲を提供したのは、ボカロPのsyudou。彼のYouTube登録者数は50万、総再生数は1.4億回を超え、人々はその言葉、音、姿に思いを馳せる。それぞれの感情と思いに揺蕩い、社会に蔓延るグレーに鋭く突き刺すsyudouに聞いた21問。今年とこれまでの自身と向き合うきっかけになるはず。

Q1:音楽好きの家庭に育ったと拝見しました。そもそも、音楽自体に興味を持ったきっかけは何でしたか?

やっぱり家族ですかね。小さい頃から音楽は流れていたので。自分が主体的に聞くようになったのは、BUMP OF CHICKENさんやASIAN KUNG-FU GENERATIONさんがインターネットや姉のおすすめから流れるようになってから。そこから「これは面白いぞ」と音楽の楽しみを覚えていきました。

Q2:当時はどのような子供だったのでしょうか?

そうですね。幼稚園、小学校の頃はそこまで塞ぎ込むこともなく、アホだったと思います(笑)。

Q3:楽曲もそうですが、いわゆる世の中のアンチテーゼや疑問を表現する今に至るまで、幼少期からどのようなきっかけや変化が?

ずっとヘラヘラしてたのは、体裁を取りたかったからなんですよね。とにかく面倒臭いことが嫌いで。学校や会社含め、言いたいこと言うとめんどくさくなるじゃないですか。だから表面上はヘラヘラやってたんだと思います。そこでやりきれない想いが溜まっていって、曲に昇華されたという。

-なるほど。楽曲へ昇華出来る今もめんどくさことは避けますか?

そうですね…。極端な話、“音楽で飯を食いたかったか”と聞かれれば別にそうでは無いんですよ。働きながらやってましたし。やっぱ、2足の草鞋か音楽1本かだと、後者の方がめんどくさくないんですよね。そうやって、今もめんどくさい事を避けてますね。

Q4:音楽1本の道に進んでから、音楽の聴き方やディグリ方は変わりましたか?

意識的に最新の曲を聴くようになりました。既に良い曲は沢山あるけど、それだけじゃなく流行やギミックなど、曲に活かせるとこを知るのも大事だなと。サブスクのチャートなども見るようにしてます。

Q5:HIPHOPを日常的に聞かれると拝見したのですが、そもそも以前から聞かれていたのでしょうか?ボカロやBUMP OF CHICKENから、どういった経緯で辿り着いたか気になりまして。

大学に入ったあたりですかね。それまで、音楽はある程度聞いていたつもりだったのですが、結局バンドサウンドやPOPSがほとんどで。その当時自分でも曲を作り始めていたんですけど、“ドラムの輪郭がはっきりして、ギターの音が強い曲”が良いみたいな固定概念が自分の中であったんです。その中で、たまたま5lackさんの『Hot Cake』を聴いた時、自分の固定概念が崩されたんですよ。ドラムもビートもヨレヨレで、歌も走ったり遅れたりを繰り返してて。「あ、これで良いんだ」って、そこから興味を持ってHIPHOPを聞くようになりました。

Q6:なるほど。一見交わらない両者ですが、HIPHOP好きな方にボカロを進めるとしたら?

荒削りでも良いから曲を出すとか、世間に対して意見するレスポンスの早さみたいなのは似ているので、そういった面は楽しめるかなと。でも、やっぱり魅力は別ですよね。僕の場合、全く違うものに共通点を見つけるのが好きなので、聞いてるんですけど…。
ボカロって音楽ジャンルがあるわけでなく、“集まり”みたいなものだと思ってて。聞き手もやり手も凄く自由ですよね。プロでもバンドマンでもサラリーマンや学生が出しても、スタートが横並びなので、誰が跳ねるか分からない。それ故に作品が自由になるのかなと思います。

-インディペンデントであり続けるという。

“成り立たなくて良い”っていうのが良いですよね。お金儲けじゃなくても良いというか、夢がありますね。

Q7:始めた当時は、100曲以上を作ってレコード会社に送っていたそうですが、今聞き返したり再リリースしたりすることは考えていますか?

ほとんど無いですね。勿論残ってはいるので、アイデアとして引っ張ってくることはあるのですが、作った時こんなんだったなって思うくらいです。

Q8:ジャニーズのアーティストなどに楽曲提供をしたいとおっしゃっていましたが、今後制作したいジャンルやトーンは?

提供になるか、自分で歌うかは分かりませんが、しっとり聴かせられるバラードは作ってみたいです!

Q9:これまでの変化や軸をお伺いしましたが、逆に変わりたくない軸は?

少なくとも“syudou”という名前でやってる以上は、自分のことを歌っていたいですね。ボカロもそうだと思うんですけど、自分勝手で良いんですよね。『邪魔』を出すまでは、「こういう曲が伸びるだろう」って思ったものを出してて、それが伸びなかった。『邪魔』は「どうせ伸びないなら、自分が思ってることをさらけ出そう」で伸びたので、もう自分のことを言っていくスタンスが合っているし、その姿勢は今後も崩したく無いですね。

Q10:『取扱注意』でも「何となくの文字並び 誰も救わない」とありましたが、syudouさんの軸を改めて確認できるような一節に思えます。

そうですよね。何となくに見えても、みなさん考えて作ってらっしゃって、受け取り手の読解力が無い場合もありますけど…。あくまで自分のスタンスとしては、何となく歌詞を書かないようにしたいですね。

Q11:「ちゃんとしないこと もっとちゃんとしよう」のフレーズも印象的ですが、 syudouさんにとって“ちゃんとしないこと”とは?

もう、音楽で飯を食ってること自体がちゃんとしてないというか(笑)。でも自分で選んだ道なので、だったら“ちゃんとしてない”今の生活、その生き方をちゃんとやっていこうかなと。

-社会的なレールから見て“ちゃんとしてない”ってことですよね?

そうですそうです、そういう意味です。自分がちゃんとしてない事は分かっているので、自戒の念を込めて“ちゃんとしよう”と(笑)。

Q12:そもそも、音楽に関わらない時間というのはあるのでしょうか?

ほぼ毎日、ラジオを聴きながらランニングする時間が30〜40分あるんですけど、その時間くらいですかね?とはいえ芸人さんのYouTubeとかも見漁っているので、関わらない時間はちょくちょくあると思います。僕、曲を作るのが遅くて、ダラダラしちゃうんですよ。1時間集中して作ろうみたいなのが出来なくて。YouTube見て作ってを繰り返しているので、必然的に仕事の時間が長くなるんですよね。

Q13:どんなジャンルでも大丈夫です。絶対に譲れないこだわりとは?

曲作りに関しては、“自分のことを歌って、言ったことに責任を持つ”ですね。私生活は、楽しくいようと努力しています。あまりメンタルが強くはないので、程よく自分を甘やかそうかなと(笑)。

Q14:因みに、syudouさんなりのメンタルヘルス法があれば教えてください。

やっぱりランニングですかね。考え込んじゃう癖があるので、何も考えない時間が凄く楽なんですよ。あとはお酒を飲むこと。とにかく頭を使わないことに徹しますね。“ちゃんとお風呂に浸かって、自分の時間を作る”みたいな小さなことで良いのかなと思います。

Q15:最近ハマってることとはありますか?

飲むお酒が変わったかも…。手っ取り早く酔っ払いたいんで、今まではストロングゼロとか飲んでたんですけど、次の日後味が悪くて…。なので今はヘネシーをグラス1杯、1時間くらいかけて飲むのにハマってます。程よく酔っぱらえて、次の日にも残らないので。

Q16:エゴサや楽曲の反応はチェックされますか?

だいぶ見なくなりましたが、やっぱりチェックしますね。なるべく見たくないんですけど…。ネットに限らず、世の中には「自分にとってこの人と話しても無駄だな」って人もいると思うんです。その人が悪いとか間違ってるとかじゃなくて、価値観がそもそも違うというか、関わりがないというか。もちろん一意見だから、否定は絶対にしてはいけないと思うんですけど、そこに足を引っ張られて集中すべきことに集中できなくなるのは良くないなと。ネットは誰がどういう状態か分からないので、愛があるかないかも分からない。でも、ネットの意見は気にしなくていいっていうのは、違うと思って。やっぱり人が書いてるので、意識はしますね。

-なるほど。

そうですね、でもこれって僕みたいな立場だけじゃなくて、会社員の方とかも影口など少なからずあると思うので、たまたま可視化されやすい立場なんだなと思ってはいます。まあ、そんなの見てないでランニングしたりお酒飲んだりすることが人生は幸せだと思いますね。突き詰めると“人の意見をどう捉えるか”になると思うので、正解は無いでしょうし…。

Q17:差し支えなければ教えていただきたいのですが、今後も顔や表情は出さずに活動を続けて行かれるのでしょうか?

きっと、戦略的に考えてビジュアル出してない方もいると思うんですけど、僕は出す必然性が無かっただけなので、今のスタンスを貫くつもりは無いですね。ライブやイベントなど、お客さんと直接会える場面があったら、しれっと出すのかなと思っています(笑)。

Q18:コロナ禍で音楽のあり方も変化しつつありますが、syudouさんにとって理想の音楽体験はありますか?

みんなで盛り上がるのも楽しいけど、作る側、聴く側にとっても音楽は個人的なものだと思うので、“夜中1人で聴いて感動できるもの”を作りたいですね。僕にとって音楽は、1人でいる時の支えだったので。

Q19:これまで、syudouさん自身の経過をお話しいただきましたが、大人への理想像などはあったのでしょうか?

そうですね…。ちゃんとしてる人が好きですね。課せられたことをちゃんとこなして、愚痴とかもあまり言わず…。今の自分と真逆ですよね(笑)。感情的になることを上手くコントロールして、関係を築いて、人に求められることをする。そうなりたかったです(笑)。

Q20:そんな…、お話ししていてもとてもクレバーな方なんだと感じます。ご自身では理想像と対にいると仰っていますが、その中でも大人になった瞬間などありましたか?

逆に、会社辞めてからどんどん幼児化してますね(笑)。曲を作れば作るほどわがままになってる気がします。でも、個人事業主がすべき税金や申請に対しては愚痴を言わなくなりましたね。そこは大人になったかなと思います。

Q21:ありがとうございます。最後に月並みですが、今後の展望を教えてください

楽しくやっていきたいですね。というのは自分個人としてですが。活動としては、今年ありがたいことに大きい仕事にも関わることが出来たので、この流れは保ちたいです。自分で歌うことも始めたので、曲はもちろんライブなども増やして、自分を好きでいてくれる人にもっと濃度の高い、より我を出したものをお届けしたいです。もっと自分を出して、恥を晒していきたいですね。そうなるとどんどん大人から遠ざかってしまいますね(笑)。

【syudou】

2012年からインターネット上での活動をはじめ、「邪魔」、「ビターチョコデコレーション」、「コールボーイ」、「キュートなカノジョ」など多くのヒット作を発表。歌い手や、Vtuberなど様々なアーティストに楽曲提供を手掛け、2020年10月にAdoに提供した「うっせぇわ」はさまざまなチャートで1位を獲得し、YouTube再生回数は1億回を超える。Billboard Chartの作曲家・作詞家ランキングでも上位に入り、最高位6位となる。
2021年3月に初となる自身歌唱楽曲「へべれけジャンキー」を発表し、シンガーソングライターとしての活動もスタート。7月に発表した「ギャンブル」では、TVアニメ『月が導く異世界道中』のオープニング主題歌を担当。
自身歌唱楽曲「爆笑」でも1,000万再生を超えるなど、YouTube登録者数は50万超え、YouTube総再生数は1.4億回を超える。
独自のダークな世界観を武器にファンを拡大中。

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