Daoko

2月のメインビジュアルはラッパー/シンガーのDaokoが登場。

今回は韓国のコンテンポラリーブランドdydoshop とカメオ。「WIRED-WEIRD」をテーマに神秘性と繋がりの二面を解いていく。音楽、アート、ファッション様々な分野で創作を続けるDaokoが感じる神秘的な物事への魅力、人とのつながりにフューチャー。

今月のテーマに沿って、Daokoさんが“神秘的”だと感じるものは?

目に見えないけれど感じられるもの(感じていると錯覚させられるようなもの)に神秘性を感じます。そういった意味では音楽自体も神秘性を帯びているのかもしれません。

たとえば曲を聴いているときも、予想外なメロディラインや聴いたことのない音、その人にしか書けないような唯一無二のリリックがあると、リスペクトを抱く傾向にありますね。きっと、予測不可能な表現をしてくれるものであったり、自分では到底行き着くことのできない境地にたどり着いているものに神秘を感じるんだと思います。

同じアーティストとして神秘性を感じるんですね。その中で、個人的にときめきを感じる瞬間はどのような時でしょう?

そうですね、個人的な「ときめき」を言葉で定義するのは難しいですが……。ノスタルジックだったり、寂しいという感情が垣間見える作品に惹かれることが多いです。その人がどんな人かわかるような作品を見るとときめきます。

仕事にも活かされていて、個人事務所を設立してからは、自分の好きなものや心が惹かれるものをベースに活動ができていますね。アルバムのアートワークにしても、インターネットを通して惹かれた気になるアーティストの方に自分から声をかけたりすることが多いです。
普段だと、予想外で、センスあるエンタメな瞬間を見せてくれる人に男女問わずときめきます。

では、今度は「繋がり」について。人とのつながりを感じるのはどんな時でしょうか?

一番は共通の好きなものがある時ですね。私にとっては音楽が一番分かりやすくて、共通の音楽ジャンルを好きな人と、クラブやライブハウスで出会って仲良くなる場合もありますね。

カルチャーが集まる場所はそういった点と点がつながるきっかけになっています。仲良くなるきっかけとしては他にも友達が紹介してくれたりすることもありますが、それもやっぱり何かしらの接点があるからですね。ファンの方たちとのつながりも大切にしています。

なるほど。

私は、旅の途中にとても綺麗な夕焼けと出会ったときの感覚や、小説を読んでその作品の世界に連れ込まれるような体験が好きなんですけれど、私の作品もそういった体験の一つになってほしいなと思っています。

たとえば、音やメロディや言葉が起爆剤となって、過去の美しい思い出を思い出してエモーショナルな気持ちに浸ったりだとか。視聴者の方にとって、私の音楽がそういった良質で特別な刺激になることを望んでいます。私自身が敬愛する音楽を通していろんな場所へ脳内旅行へ繰り出すように、新たなひらめき・気づきを与えてくれるような音楽が作りたいですね。

ファンの方とのつながり方って難しい一面もありますよね。SNSなどでの工夫はありますか?

これは最初の「神秘的」というテーマとも共通していますが、ミステリアスな部分が垣間見えるといいな、と思っています。インディーズの3年間は顔を出さずに活動していましたし…。

今は顔を出して活動していますが、プライベートな部分は見せすぎないようにしていますね。見てくださる方が、その人の見たいように見れる「ゆとり」がある方が想像力を掻き立てられると思います。あとは憧れの存在であり続けなければ、という気持ちもありますね。私が表現したいアーティストとしてのDaoko像と、普段の生活での私が割と解離しているから、がっかりされるんじゃないかと心配している部分もあります。

少し意外です。音楽を作るときに、他に考えていることはありますか?

全てを作詞作曲してるシンガーソングライターではないので、いろんなアーティストと曲作りをしているんですけれど、以前岡村靖幸さんとご一緒したときに印象的な言葉があって。

「媒介力があるね」というふうに言っていただいたんです。確かに考えてみると、私の声質って割とどんな人ともご一緒できるな、と思うんです。ご飯でいうと白米みたいな感じ。かっこいい言葉じゃないかもしれないですけれど、誰とでもマッチする役割をこれからもやっていきたいです。

白米!生活に欠かせないものでもありますね。Daokoさんは音楽の他に絵も描かれていますが、女性のイラストが多いのが印象的です。

絵を描いているのは、音楽制作に比べてすごくナチュラルな行為で、新陳代謝でもあるし、
アイデンティティの確認作業にもなっています。他の表現よりも、割とパーソナルな部分が出やすいですね。イラストで少女を描いているのは、女性の身体を美しいと思っているからですね。自分自身を描いているわけではないのですが、無意識に「こうなりたい」と思う姿が投影されているのかもしれません。

音楽やイラスト、ファッションなど、様々な分野で活躍されていますが、それぞれの表現は互いにどのように作用しているのでしょうか?

音楽・ファッション・絵は、どれも自己表現です。共通しているのはアイデンティティを掲示する行為であることですね。私の中で音楽は、言葉と自分の持っている声で自己表現するツールです。でもそれだけじゃなくて、他のアーティストさんとの化学反応を楽しんだり、新たな感性の扉が開いていく場所でもありたいです。

絵は、先ほどもお話しした通り、自分のパーソナルな部分に一番近いです。アイデンティティの確認にもなるので、ずっと続けていきたいと思っていますね。

インスタでも中国ブランドを着用されていました。今日も私服のアウターが中国ブランドということで、普段からアジアのファッションには注目されているのでしょうか?


そうですね。中国はじめアジア圏のブランドはチェックしていますね。変わったデザインのアイテムも多いですし、好きです。

今回の撮影は韓国ブランドdydoshopを着用いただきました。コンテンポラリーをコンセプトに注目を集めるブランドですが、着用してみていかがでしたか?

フォトプリントっぽいデザインで、遊び心もありつつ、シルエットはスリットが入っていたり、ボディーに沿っていたり、女性的で素敵だなと思います。日本にはないデザインですし、生地感とかも素敵だなって。春になったら、色合いもさわやかだし個人的にも着たいですね。

ありがとうございます。最後に、今後の展望を教えてください。

私にとっての一番の理想は、“やさしい世界”になることです。今は世界中のいろんなことが大変で、だんだんひずみも大きくなっているように感じています。そういう世界が、これからやさしくなるためのひとつの要素として、表現が在ってほしいと思っています。

それは文学でも、音楽でも、アートでも、表現においてなんでもです。自分自身が音楽やアートに救われて生きているので、余計にそう思うんだと思います。やっぱり、作品やアートは人間の可能性を実感できるから好きなんですよね。たくさんの人に表現行為を試してみてほしいです。

もっと具体的に話すと、歌は末長く続けていきたいです。日本の音楽シーンにもっと働きかけていきたいし、最近は一緒にプロジェクトを進めているアーティストの方やスタッフの方のためにも、もっと世間に認められたいと思うようになりました。

絵も細々と続けていきたいです。あとは、少し新しいことだとずっと子供が好きなので保育の分野に関わる仕事もしていきたいです。保育をコアな部分としながら大人と子供が楽しめる音楽と表現のプロジェクトを温めています。ファッションモデルや女優業も、20代のうちに、できることなら挑戦していきたいですね。

Model:Daoko
Photographer:Horie Yuri
Stylist:Tachibana Shogo
Stylist Assistant:Abe Junya
Hair&Make:Kuji Megumi
Hair&Make Assistant:Chiba Ayako
Designer:RELESS
Interview&Text:Yoshimura Ayaka
Edit:Tajima Ryoko

〈Costume credit〉
Tops&Bottoms:dydosyop

〈Daoko〉

Daoko(だをこ)1997 年⽣まれ、東京都出⾝。アーティスト。
15 歳の時にニコニコ動画へ投稿した楽曲で注⽬をあつめ、2015 年『DAOKO』でメジャーデビュー。その後も⽶津⽞師との「打上花⽕」、岡村靖幸との「ステップアップLOVE」など、実⼒派アーティストとの共作を⾏いつつ、ソロとしての個性も強めている。
 
⼩説の執筆、写真と絵の初個展の開催、⾃主企画ライブイベントの主催や、あらたなバンド形式でのツアーを成功させるなど、多様なクリエイティヴ表現を続け、国内外で注⽬を集めている。
 
2019 年には個⼈事務所“てふてふ”を設⽴し、昨年には4th アルバム『anima』を発表。
2021年6⽉30⽇に⾃主レーベル「てふてふ」から初のEP『the light of other days』を配信リリース。9⽉29⽇にはTAARとの連名シングル「groggy ghost」を配信リリース。